2025年2月24日月曜日

ちょっとかすった問題

今回も第37回国家試験の類似問題シリーズですが,かなり難しいです。

 

37回・問題17 

差別や偏見に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 ゴッフマン(GoffmanE.)は,主に身体に付随し,それが他者にとっての偏見を呼び起こす「印」として機能するものをスティグマと呼んだ。

2 オルポート(AllportG.)は,民族的偏見を「誤った,柔軟性のない一般化に基づいた反感」と定義づけた。

3 リップマン(LippmannW.)は,人々の知覚や認識を単純化して理解することをダブル・コンティンジェンシーと呼んだ。

4 コールマン(ColemanJ.)は,政治・経済・軍事などの分野のトップが社会の権力を握るとするパワーエリート論を展開した。

5 ミルズ(MillsC.)は,一次的逸脱と二次的逸脱という概念を用いて,逸脱的アイデンティティが形成されるメカニズムを説明した。

 

近年の過去問の知識を使えるのは,選択肢1のスティグマと選択肢3のダブル・コンティンジェンシーしかありません。

 

正解は,選択肢1と選択肢2です。

1 ゴッフマン(GoffmanE.)は,主に身体に付随し,それが他者にとっての偏見を呼び起こす「印」として機能するものをスティグマと呼んだ。

2 オルポート(AllportG.)は,民族的偏見を「誤った,柔軟性のない一般化に基づいた反感」と定義づけた。

 

選択肢1は,参考書や過去問の知識で選べますが,選択肢2は無理です。消去法でも選ぶことができません。

 

まずは,スティグマです。

 

34回・問題21 

他者や社会集団によって個人に押し付けられた「好ましくない違いを表わす印」に基づいて,それを負う人々に対して様々な差別が行われることをゴッフマン(Goffman,E.)は指摘した。次のうち,この「好ましくない違いを表わす印」を示す概念として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 自己成就的予言

2 マイノリティ

3 スティグマ

4 クレイム申立て

5 カリスマ

 

正解は,選択肢3の「スティグマ」でした。近年の過去問なので,多くの人は目にして国家試験に臨んだことでしょう。

 

次は,ダブル・コンティンジェンシーです。

 

34回・問題19 

社会的行為に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 パーソンズ(Parsons,T.)は,相互行為における無意識的,習慣的な行為に着目し,そうした行為において利用される個人の文化的な蓄積を「文化資本」と呼んだ。

2 ハーバーマス(Habermas,J.)は,個人に外在して個人に強制力を持つ,信念や慣行などの行為・思考の様式,集団で生じる熱狂などの社会的潮流を「社会的事実」と呼び,社会学の固有の領域を定式化した。

3 ブルデュー(Bourdieu,P.)は,相互行為が相手の行為や期待に依存し合って成立していることを「ダブル・コンティンジェンシー」と呼んだ。

4 ヴェーバー(Weber,M.)は,社会的行為を四つに分類し,特定の目的を実現するための手段になっている行為を「目的合理的行為」と呼んだ。

5 デュルケム(Durkheim,E.)は,言語を媒介とした自己と他者の間で相互了解に基づく合意形成を目指す行為を「コミュニケーション的行為」と呼んだ。

 

パーソンズ

ダブル・コンティンジェンシー

ハーバマス

コミュニケーション的行為

ブルデュー

文化資本

ヴェーバー

目的合理的行為

デュルケム

社会的事実

 

ということで,ダブル・コンティンジェンシーは,パーソンズが提唱したものでした。

 

この問題が第37回の問題と根本的に違うのは,すべて入れ替えになっていて,正解は,超頻出のものであることです。

 

こういったところが,第34回の合格基準点が7割(105点)となった理由の一つでしょう。

 

37回の問題のパワーエリート論を提唱したのは,ミルズです。

 

これは,遠い過去に一度出題されたことがあります。

 

19回・問題52 

社会的性格に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

1 フロム(Fromm,E.))は,ナチズムを支持したドイツ下層中産階級の分析から,彼らに典型的に見られる社会的性格を上位への服従と下位への軽蔑によって特徴づけた。

2 ミルズ(Mills,C.W.)は,第二次世界大戦にかかわって日本社会の研究を行い,その著「菊と刀」では,西欧の「罪の文化」に対して,日本を「恥の文化」であると位置づけた。

3 ホワイト(Whyte,W.)は,その著「孤独な群衆」のなかで,20世紀において「内部指向型」から「他人指向型」へと社会的性格の変化が見られたと唱えた。

4 リースマン(Riesman,D.)は,自分の全人格を過剰に組織に帰属させている人々を「オーガニゼーション・マン(組織人)」と名付けた。

5 ベネディクト(Benedict,R.)は,大衆社会における社会的性格は,一部のパワー・エリートによって操作されやすいものになると指摘した。

 

この問題の正解は,選択肢1です。

1 フロム(Fromm,E.))は,ナチズムを支持したドイツ下層中産階級の分析から,彼らに典型的に見られる社会的性格を上位への服従と下位への軽蔑によって特徴づけた。

 

この問題に出題された人は,ミルズ以外に一人もいません。つまり,覚えるべき優先度はかなり低いと言えます。

 

この問題自体もその当時の人にとっては,とても難しい問題だったと思います。

 

因みに第19回のボーダーラインラインは,150点満点のうち,81点でした。得点率は,54.0%,合格率はわずか27.5%です。

 

37回国家試験は,タクソノミーⅡ型,タクソノミーⅢ型が増えたことにより,簡単に得点できない手ごわい問題が多く出題されましたが,出題された内容自体の難易度はそれほど高くありません。

 

現在の国家試験は,かつてよりも合格しやすい試験になっていることは間違いありません。

なお,今後,出版される参考書には,第37回の問題で出題されたものが掲載されていきますが,それらが第38回の国家試験に出題されることは,ほぼありません。

これが嘘,偽りではないことは,1年後に証明されることでしょう。

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