心理学と心理的支援は,繰り返しの出題が多い科目です。
あえてここで紹介するまでもないでしょう。
今回は,一つとばして,社会学と社会システムの問題を見たいと思います。
第37回・問題14
都市に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 サムナー(Sumner,W.G.)は,都市に特徴的な生活様式をアーバニズムとした。
2 ジンメル(Simmel,G.)は,都市では多様な下位文化が形成されるとした。
3 フィッシャー(Fischer,C.)は,都市を人間生態学的に分析した。
4 倉沢進は,都市は同心円状的に形成されるとした。
5 鈴木榮太郎は,都市は結節機関を持つ聚落社会であるとした。
この中で,最も出題頻度が高いのは,ジンメルです。
第3回以降では,第5,7,8,9,13,19,22,26,34,37回に出題されています。
あまりよく知らない人も多いと思いますが,鈴木榮太郎も第7回の再試験,第10回,第18回に出題されています。
そのため,最近の参考書に掲載されているかはわかりませんが,古い参考書には掲載されていました。
ジンメルは形式社会学(上位,下位など)の提唱者であって,都市社会学ではありません。今回も数合わせの出題となりました。
なお,この問題の正解は,選択肢5です。
5 鈴木榮太郎は,都市は結節機関を持つ聚落社会であるとした。
さて,この問題の類似問題です。
第33回・問題16
都市化の理論に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 フィッシャー(Fiscer,C.)は,都市の拡大過程に関して,それぞれ異なる特徴を持つ地帯が同心円状に構成されていくとする,同心円地帯理論を提起した。
2 ワース(Wirth,L.)は,都市では人間関係の分節化と希薄化が進み,無関心などの社会心理が生み出されるとする,アーバニズム論を提起した。
3 クラッセン(Klaassen,L.)は,大都市では類似した者同士が結び付き,ネットワークが分化していく中で多様な下位文化が形成されるとする,下位文化理論を提起した。
4 ウェルマン(Wellman,B.)は,大都市では,都市化から郊外化を経て衰退に向かうという逆都市化(反都市化)が発生し,都市中心部の空洞化が生じるとする,都市の発展段階論を提起した。
5 バージェス(Burgess,E.)は,都市化した社会ではコミュニティが地域や親族などの伝統的紐帯から解放されたネットワークとして存在しているとする,コミュニティ解放論を提起した。
第37回の問題は,この問題の知識で答えられるように設計されたものです。
同心円地帯理論 → バージェス
下位文化理論 → フィッシャー
都市の発展段階論 フィッシャー
コミュニティ開放論 → ウェルマン
この知識から,
第37回の問題の以下の選択肢は消去できます。
1 サムナー(Sumner,W.G.)は,都市に特徴的な生活様式をアーバニズムとした。
2 ジンメル(Simmel,G.)は,都市では多様な下位文化が形成されるとした。
3 フィッシャー(Fischer,C.)は,都市を人間生態学的に分析した。
4 倉沢進は,都市は同心円状的に形成されるとした。
同心円地帯理論 → バージェス
みごとに符合していることがわかるでしょう?
そして,残った選択肢5が正解です。
5 鈴木榮太郎は,都市は結節機関を持つ聚落社会であるとした。
ここから,都市を人間生態学的に分析したのは,倉沢進ではないかと推測できます。
都市社会学の主な理論と提唱者
理論 |
提唱者 |
アーバニズム論 |
ワース |
同心円地帯理論 |
バージェス |
下位文化理論 |
フィッシャー |
都市の発展段階論 |
クラッセン |
コミュニティ開放論 |
ウェルマン |
結節機関 |
鈴木榮太郎 |
都市を人間生態学的に分析 |
倉沢進 |
第三の空間 |
磯村栄一 |