2025年2月4日火曜日

受験生を苦しめるタクソノミーⅡ型,Ⅲ型

 第37回国家試験から令和元年度改正のカリキュラムによる出題となりました。


受験された方からは,問題が変わったという感想も聞かれます。


最も変化があったのは,出題方法です。


社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会報告書



これでわかるように,タクソノミーⅡ型・Ⅲ型は,単なる知識だけでは正解することができないので,かなり高度な能力が求められます。

求められる能力は,報告書に書かれているように,タクソノミーⅡ型では「解釈力」・「判断力」,タクソノミーⅢ型では「思考力」・「判断力」です。



第37回・問題42 
事例を読んで,成年後見の開始がAさんに及ぼす影響に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
 Aさん(30歳)は,交通事故の被害に起因する高次脳機能障害で判断力が著しく低下し生活が困難となったので,親族のBさんが成年後見開始の審判の申立てをすることとなった。Aさんは,この審判によって自分にどのような影響が及ぶのかを心配している。
1 Aさんは当然に国政の選挙権を失うこととなる。
2 Aさんは当然に公務員になることができなくなる。
3 Aさんは当然に社会福祉法人の理事になることができなくなる。
4 Aさんは当然に株式会社の役員になることができなくなる。
5 上記1から4までの記述はいずれも不適切である。

第37回・問題57 
事例を読んで,大学の学生支援センターのA相談員(社会福祉士)のBさんへの対応に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
 統合失調症の診断を受けた大学3年生のBさんは,周囲から聞こえてくる悪口と薬の副作用に悩み,授業も休みがちである。Bさんは,主治医から「悪口は幻聴である。薬物療法で緩和できる」との説明を受けているものの,不安は消えない。悩んだBさんは,学生支援センターを訪れ「薬の副作用がつらい。今後の就職活動も不安でたまらない。自分と同じ経験をしている学生は他にもいるのか。いるなら話をしてみたい」とAに訴えた。Bさんの不安や焦燥感を受け止めたAは,Bさんにどのように対応すべきかを考えている。
1 主治医に相談するよう伝える。
2 学生支援センターに登録しているピアサポートスタッフの紹介を検討する。
3 地域の指定特定相談支援事業所の相談支援専門員の紹介を検討する。
4 就労移行支援事業所のサービス管理責任者の紹介を検討する。
5 精神障害者保健福祉手帳の取得を勧める。

問題11 事例を読んで,マイクロカウンセリングのかかわり行動や基本的傾聴技法に基づいた面接の最初の段階の応答として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
 認知症のある親の介護について負担を感じている相談者が,地域包括支援センターを訪れ,社会福祉士が面接を行った。相談者は「何度も同じことを聞いてくるのでイライラして,つい強い口調で怒ってしまう」と訴えた。
1 「同じことを聞かれても,いつも初めてのように答えるといいですよ」
2 「それは適切な行動ではないですよね」
3 「私もあなたと同じような経験をしたので,あなたの気持ちがよくわかります」
4 「その状況について,もう少し詳しく話してもらえませんか」
5 「正確に記録したいので,ゆっくり話してもらえませんか」


社会福祉士の国家試験のタクソノミーⅡ型,タクソノミーⅢ型は,これらのように事例で問うスタイルです。

タクソノミーⅠ型は以下のような問題です。

第37回・問題1 思春期・青年期における心身の特徴に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 思春期には,男女ともに緩やかな身体の変化がみられる。
2 思春期における心理的特徴としては,自意識過剰がある。
3 思春期には,アイデンティティは形成されている。
4 第二次性徴に性差はみられない。
5 青年期の死亡原因としては心疾患が最も多い。

この問題でさえ,タクソノミーⅡ型を志向したものが含まれます。
選択肢3がそうです。

エリクソンの発達理論によるアイデンティティの確立は青年期の発達課題であるという知識を使って,消去することが必要です。

選択肢5も15~39歳の死因の第一位は自殺であるという知識を使って,消去します。

このように,さまざまな知識を使って,思考することで答える問題は,今後も出題されます。

単純な知識を問う問題ではないので,受験生は苦しむことになるでしょう。問題を読むのも時間がかかります。

考える訓練は欠かせません。

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