2025年2月8日土曜日

タクソノミーⅢ型の問題(秀逸です)

第37回の国家試験は,問題の重複があり,全体のクォリティとしては,ほめられたものとは言えませんが,問題を個別に見た時,クォリティの高い問題は数多くあります。


その一つは,以下の問題です。


第37回・問題72 

事例を読んで,この段階のA病院のB医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)が行った実践モデルやアプローチに関して,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Cさん(46歳,男性)は夫婦で生まれ故郷に戻り,5年前から喫茶店を営んでいる。1か月前に,脳出血を患い,A病院でリハビリテーションを受け,数週間後に自宅退院を控えている。BはCさんと退院に向けた面談を行った。Cさんは「左片(かた)麻痺(まひ)があるのは仕方がないとしても,妻もまた一緒にお店をやっていこうと言ってくれているので仕事がしたい。地元の友達も戻ってきたら店に行くよと声をかけてくれているから」と語った。Bは「奥様もお友達もCさんがお店に戻ってこられるのを待っておられるんですね。お店に戻られるまで,どのように暮らしを整えていったら良いか,ご一緒に考えていきましょう」と提案した。

1 行動変容アプローチ

2 治療モデル

3 実存主義アプローチ

4 生活モデル

5 課題中心アプローチ


簡単に消去できるのは,選択肢1~3です。もしこの3つを消去できなければ,タクソノミーⅠ型の問題であっても正解できない明らかな知識不足です。


迷うのは,生活モデルなのか,課題中心アプローチなのか,です。

以下の知識がなければ,確実に正解することはできません。


生活モデル

クライエントの生活全体をとらえ,人と環境の交互作用から生じた問題に着目します。


課題中心アプローチ

課題を明らかにして,ワーカーとクライエントが達成可能な目標を期限を定めて共有化すること。



一読するだけでは,この2つとも当てはまらないように感じると思います。


それがこの問題の優れたところです。


ここで事例をもう一度確認するという作業が生じます。(1回目の解釈)


生活モデルに従えば,「左片麻痺があるのは仕方がない」という発言はさせないでしょう。


むしろ,左片麻痺にスポットを当てるのではないかと思います。


その不便さをどのように整えるのか,ということを提案すると生活モデルになります。


そこで,提案内容を確認します。(2回目の解釈)


「お店に戻られるまで,どのように暮らしを整えていったら良いか,ご一緒に考えていきましょう」と提案した。


この中には,A「お店に戻られるまで」という期限が述べられています。


そのうえで,B「どのように暮らしを整えていったら良いか,ご一緒に考えていきましょう」と提案しています。


Aの部分が,「期限を定めて」です。


Bの部分が,「課題を明らかにして,ワーカーとクライエントが達成可能な目標を共有化すること」です。


出題されている内容は,何ら奇抜なものではありません。


しかし,確実な知識を使って,考えることで答えを推測しなければ,答えられないというタイプの問題となっています。しかも,解釈を2回しなければならないタクソノミーⅢ型です。

タクソノミーⅡ型は,少し楽に正解できます。これについては,次回,解説したいと思います。

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