2024年7月4日木曜日

行政法の覚え方の決定版!


今日のテーマは「行政法の覚え方の決定版!」です。


行政法とは,特定の法律名ではなく,行政にかかわる法律全般のことを指します。


公務員試験を受けたことがある方なら,なじみのあるものだと思います。


なじみがあるどころか,これを覚えなければ合格はないと言っても過言ではないです。


しかし,民間で働いていると,ほとんどがなじみないものばかりなので,覚えるのはとても辛いことでしょう。


まったく覚えられなければ捨てても良いと思います。


しかし,捨ててしまうのはもったいないので,覚えるためのポイントをご紹介します。


行政法の特徴は,行政には一定の権限が与えられていますが,その濫用を防ぐための意味合いが強いです。


行政法のもう一つの側面は,行政が機能するためのルールを定めたものです。

行政は,先述のように,一定の権限があります。


なじみのあるところでは,認可,許可,認定,命令などでしょう。これらのことを行政行為と言います。


社会福祉法人と医療法人の設立は認可,NPO法人の設立は認定でしたね。


行政行為を有効にしているのは,法的効力というものです。


この法的効力が今日の問題のテーマとなります。


それでは,今日の問題「法的効力」です。


第25回・問題79

行政行為の効力の原則に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 国民健康保険料(税)滞納処分に対する行政不服申立て又は行政訴訟が提起されると,行政行為の自力執行力は停止する。

2 違法な行政行為も職権取消・争訟取消があるまでは有効なものとして取り扱われる。

3 不服申立期間・出訴期間を過ぎた行政行為は,もはやその効果を争うことができなくなる。

4 行政行為に関する職権取消及び争訟取消は,いずれも一定の期間が過ぎると取消しができなくなる。

5 重大かつ明白な瑕疵のある行政行為であっても,公定力や不可争力はある。


一見,難しそうに見える問題だと言えますが,視点を変えると答えが見えてくる問題です。


以前,中学受験を目指す小学生の実力の話を書いたことがあります。


小学生でも,内容は分からなくても,文脈で答えを導くことができます。


さて,それではそれぞれを詳しく見て行きますね。


1 国民健康保険料(税)滞納処分に対する行政不服申立て又は行政訴訟が提起されると,行政行為の自力執行力は停止する。


自力執行力(執行力)とは,強制執行ができることです。


不服申立てや行政訴訟を提起されただけでは,この効力を止めることはできません。


よって×。


行政法を覚える時のコツ1


具体的な例をイメージしてみましょう。


法律用語が分からなくても,多くの場合はこれで第一関門は突破できます。


現実的に考えてみてください。


この場合は,税金を滞納したために差し押さえされた時,審査請求したら差し押さえは一時的にされなくて済む,ということになります。


審査請求されただけで,行政行為ができなくなると行政が機能するのは極めて難しいです。


2 違法な行政行為も職権取消・争訟取消があるまでは有効なものとして取り扱われる。


これを公定力と言います。


正解です。


今日の問題には出て来ませんが,法的効力には「不可変更力」というものがあります。


不可変更力は,公定力と対になるもので,自分が行った行政行為は,自分では取り消すことができないことを言います。


行政法を覚える時のコツ2


日本語をばらして考えてみましょう。


法律用語は漢字の組み合わせでできているので,意味が何となくでも分かります。


公定力 おおやけ・が・さだめる・ちから → ここから公が定めるものには力がある。


というイメージができます。


そうすると,公が定めるものには力があるので,何かがない限り法的効力は続くと考えることができます。


3 不服申立期間・出訴期間を過ぎた行政行為は,もはやその効果を争うことができなくなる。


これを不可争力と言います。


これも正しいです。この考え方は,後述します。


4 行政行為に関する職権取消及び争訟取消は,いずれも一定の期間が過ぎると取消しができなくなる。


今日の問題では,これが一番難しいものかもしれません。


ここでは冷静に▲をつけておきます。


答えを言えば,公定力に従って法的効力があったものを,職権取消及び争訟取消によって無効とするので,一定の期間が過ぎても取消すことができます。


ここで重要なのは,不可争力があることです。


定められた期間を過ぎてしまったら,不服申立てしたり,出訴できなくなります。


つまり,つまりその期間に不服申立てあるいは出訴すれば,処分取消しの可能性があると考えることができます。


定められた期間内に出訴したのに,裁判が長引いてしまったために,取り消しするための期間が過ぎてしまった,ということでは国民が困ってしまいます。


因みに,行政事件訴訟法では,出訴期間は処分があったことを知ってから,あるいは採決から6か月と定められています。不服申し立ては,行政不服審査法で3か月です。


5 重大かつ明白な瑕疵のある行政行為であっても,公定力や不可争力はある。


これは選択肢4の次に難しいものだと思います。


行政法を覚える時のコツ3


最初に述べたように,行政法の特徴は,行政には一定の権限が与えられていますが,その濫用を防ぐための意味合いが強いです。その視点で覚えてみましょう。


この場合,たとえば,何の問題もない事業所が,監督官庁のミスによって,解散命令を出してしまった,ということを考えてみます。


とんでもないことですよね。


公定力があったらたまったものではないです。


このような場合は,最初から行政行為自体が無効となります。

濫用を防ぐためなのですから当然と言えるでしょう。


よって×。


さて,最初に話題に振っておいた小学生の視点です。


選択肢2は正解にできなかったですが,問題を見て選択肢3は正しいと言いました。


なぜか。


ルールを決めているのに,ルールをやぶったら話にならないでしょ?


とのことです。


この場合のルールは,期間ですね。


ここまでOKですよ。どうぞどうぞ,と門を開けているのに,門が閉まった後に,開けてくれ~,というのはルール違反だということです。

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