日本は,昭和30~40年代にかけて,高度経済成長を成し遂げました。
その時代の典型的家族は,核家族で父は外で働いてお金を稼ぎ,母は専業主婦というものです。
共働き家族が多くなったのは,1990年代の後半のことです。
それから20年余りが過ぎ,新しいライフスタイルが目指されています。
その一つがワークライフバランス(仕事と生活の調和)です。
本当にライフスタイルを考えるターニングポイントに差し掛かっているように思います。
ある政党の代表は,ガラスの天井の上に「鉄の天井があることを知った」と語りました。
文化や科学が進化しても,人の考え方は大きくは変わりません。このタイムラグを社会学では「文化遅滞」と言います。
さて,今日の問題は,出産,子育てに関する法規定に関するものです。
第25回・問題124
妊娠・出産・育児に関連する法律に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 労働基準法に定められている産前産後休業の6週間の間であっても,労働者の請求があれば,就業させることができる。
2 「育児介護休業法」に定められている育児休業は,契約期間のある非正規職員は取得できない。
3 「育児介護休業法」では,病気やけがをした子のための看護休暇が取れ,日数に制限はないと規定する。
4 労働基準法は,妊娠中の女性に対して,請求の有無にかかわらず,深夜労働をさせてはならないと規定する。
5 「男女雇用機会均等法」は,女性の妊娠,出産,産前産後休業の請求や取得を理由とした解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと規定する。
いろいろな法律が出題されているので,難しく感じると思いますが,冷静に読めば,法制度を知らなくても解ける可能性はあります。
焦らないのが必勝法です。
それでは,詳しく見て行きましょう。
1 労働基準法に定められている産前産後休業の6週間の間であっても,労働者の請求があれば,就業させることができる。
かつては出産ぎりぎりまで働いたという人も多かったと聞きます。
しかし,それで何が起きたかと言えば子の流産や母の死亡などです。
周産期はとても危険です。
そのために,母性保護のために,産前産後は就業させてはならないという規定が設けられました。
もし本人から請求があった場合は,就業させることが出来るので,この規定はなし崩し的になり,母性保護にはならなくなってしまいます。
もちろん間違いです。
2 「育児介護休業法」に定められている育児休業は,契約期間のある非正規職員は取得できない。
非正規職員は育児休業が取れないということなら,非正規職員は仕事ができなくなってしまいます。
契約期間のある非正規職員の場合は,雇用期間が1年以上あることなどの制約はあるものの育児休業は取れます。
よって間違いです。
3 「育児介護休業法」では,病気やけがをした子のための看護休暇が取れ,日数に制限はないと規定する。
このような問題が出題された時は,極端な例を考えてみると良いです。
具体的には,日数に制限がない,ということなら,何か月も休むことができるということになってしまいます。
もちろん制限はあります。
看護休暇の期間は,子ども一人に対して年間5日までです。
よって間違いです。
子の対象が小学校3年生修了まで(現在は小学校入学前)に拡大され,休暇の理由に,学校の行事も含まれることになりました。
4 労働基準法は,妊娠中の女性に対して,請求の有無にかかわらず,深夜労働をさせてはならないと規定する。
よって間違いです。
5 「男女雇用機会均等法」は,女性の妊娠,出産,産前産後休業の請求や取得を理由とした解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと規定する。
<労働基準法と男女雇用機会均等法の違い>
労働基準法 ➡ 労働条件を規定する法
男女雇用機会均等法 ➡ 特に女性の労働環境を整備するための法
男女同一賃金を定めているのは,どっちの法でしょうか。
答えは,労働基準法です。
国試では,過去に2回ほど男女雇用機会均等法で規定していると出題されていましたが,間違いですね。
さて,問題に戻ります。これは正解です。
先述のように男女雇用機会均等法は,特に女性の労働環境を整備するための法であることはしっかり押さえておきたいです。
高度経済成長の時代には,モーレツ社員という働き方がありました。
その陰には,女性のシャドウワーク(家事や家族介護などのような賃金が支払われない労働)が支えていたことを忘れてはいけません。