社会福祉士の国家試験は,出題範囲が広いことが特徴です。
そのため,出題基準に示されている範囲であっても出題されないのがほとんどです。
そんな中であっても,毎年必ず出題される範囲があります。
その一つが「様々なアプローチ」です。
種々のアプローチを紹介している「ソーシャルワーク・トリートメント」(中央法規出版,1999,第5版)では,全29の理論が紹介されています。
2023年に出た第6版は,38に増えています。
国家試験で出題されているのは,以下の13種類です。
国家試験に出題されているアプローチ |
①心理社会的アプローチ |
②機能的アプローチ |
③問題解決アプローチ |
④課題中心アプローチ |
⑤危機介入アプローチ |
⑥行動変容アプローチ |
⑦エンパワメントアプローチ |
⑧ナラティブアプローチ |
⑨解決志向アプローチ |
⑩フェミニストアプローチ |
⑪実存主義アプローチ |
⑫エコロジカルアプローチ |
⑬ユニタリーアプローチ |
他にもまだありますので,今後は別なものも出題されることがあるかもしれませんが,とりあえず,これでは覚えておきたいです。
複数のアプローチが選択肢になっている問題なら,よく分からないアプローチがあっても消去法で何とかなりますが,一問まるごと一つのアプローチが出題された場合,太刀打ちできなくなってしまうので,どれも同じように覚えたいです。
それでは今日の問題です。
第25回・問題102
課題中心アプローチに関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 リード(Reid,W.)とエプスタイン(Epstein,L.)によって開発され,心理社会的アプローチ,問題解決アプローチ,行動変容アプローチなどの影響を受けて発達した。
2 ターゲットとなる問題は,クライエントの気付きの有無にかかわらず,クライエントの努力で解決できる可能性があるという基準によって選択される。
3 様々なアプローチを折哀したものであるので,それらを統合するためにシステム理論をその基礎理論としている。
4 現在の課題の元となる問題の原因を解明することから援助を始め,その原因の除去を援助の目標とする。
5 時間的な構造が重要と考え,援助に要する期間を早い段階から定めることを重視し援助を進める。
今日の問題は,課題中心アプローチです。
課題中心アプローチは,1970年代にリードとエプスタインによって提唱されたものです。
クライエントと一緒に課題を明らかにして目標を設定し,目標が達成されたか,されなかったのかを評価します。
心理社会的アプローチ(基盤となる理論は,精神分析理論),問題解決アプローチ(基盤となる理論は,役割理論),行動変容アプローチ(基盤となる理論は,学習理論)などに影響を受けていますが,それらは長期的に関わり,結果を導き出しますが,課題中心アプローチは,短期的に関わるのが特徴です。
効果があることを重視する「プラグマティズム」が強い影響を与えています。
評価しやすいこともあり,1980年代以降広まっていきました。
これらの基礎知識を頭に入れながら,詳しく見ていきましょう。
1 リード(Reid,W.)とエプスタイン(Epstein,L.)によって開発され,心理社会的アプローチ,問題解決アプローチ,行動変容アプローチなどの影響を受けて発達した。
先述のとおり,これが正解です。
2 ターゲットとなる問題は,クライエントの気付きの有無にかかわらず,クライエントの努力で解決できる可能性があるという基準によって選択される。
課題中心アプローチの特徴は,クライエントと一緒に課題を明らかにして目標を設定します。
クライエントがターゲットとなる問題に気が付かないと目標設定はできません。
課題中心アプローチの前提が根底から覆されてしまいます。
よって×。
3 様々なアプローチを折哀したものであるので,それらを統合するためにシステム理論をその基礎理論としている。
様々なアプローチを折哀したものであるのは正しいですが,統合するためにシステム理論が基礎理論とはなっていません。
システム理論が基礎理論となるのは,家族システムアプローチやエコロジカル・アプローチなどです。
4 現在の課題の元となる問題の原因を解明することから援助を始め,その原因の除去を援助の目標とする。
原因の除去を援助の目標にするのは,どちらかと言えば精神分析理論を基盤とする心理社会的アプローチです。
課題中心アプローチは心理社会的アプローチに影響は受けていますが,援助の目標は,クライエントと一緒に目標を設定し,その目標が達成できるように援助していきます。
よって×。
短期処遇の課題中心アプローチには,過去に目を向けるのではなく,「今,ここ」を重視します。
5 時間的な構造が重要と考え,援助に要する期間を早い段階から定めることを重視し援助を進める。
課題中心アプローチは,クライエントと一緒に目標を設定します。目標は期限が設けられます。評価する日は〇月〇日と決めます。
この日になって評価した時,その目標は達成できたのか,できなかったのかが明確になります。
このアプローチの特徴は,短期処遇です。
そのために時間は重要です。
よって正解です。
因みに短期処遇なのは,13のアプローチの中では,「課題中心アプローチ」と「危機介入アプローチ」です。
この2つについて,「長期」という言葉が出て来たら,即刻消去できます。
国試勉強をすすめる中,もし身近に援助者がいた場合,今の課題を明らかにして,〇月〇日の模擬試験で,65点以上得点する,という目標を設定します。
試験が終わったら,目標が達成できたのか,できなかったのが明確になります。
達成できていなければまた新しい目標を設定していきます。
最終目標は,3月に合格をつかむことです。
多くの受験生は,「合格したい」という気持ちを持って勉強していると思いますが,確かな方法論は持たないで勉強しているように思います。
課題設定して結果を検証する。そしてまた課題設定して結果を検証する。といったことはとても重要です。
社会福祉士の場合,課題設定しやすいのは,問題を解いた時の点数ではないかと思います。
受験生が辛いのは,覚えたのか,覚えていないのかが,よくわからないことでしょう。
そういった面でも,問題を解くことを勉強の一つの柱にすることは,明確な目標設定ができるだけに,有効だと思います。
問題は,過去問,模擬問題集,模擬試験など,いろいろあります。
一問一答式の教材や,穴埋め式になっている教材もありますが,やっぱり最終的には,国試と同じスタイルの五者択一(あるいは択二)の問題を解くことが大切だと強く思います。