民法は1,000条を超えます。
明治29年にできた古い法律なので,改正を繰り返すうちに必要事項が付け加えられていった結果です。
「権利擁護を支える法制度」の科目で覚えなければならないうち,ざっと3分の2は,民法に関連するものであると言っても過言ではないでしょう。
さて,今日のテーマは「4親等以上の親族には,扶養の義務はありません」です。
民法上の親族は,6親等以内の血族と3親等以内の姻族,及び配偶者です。
配偶者は0親等,つまり親等の上では,本人と同じということになります。
これを押さえて今日の問題です。
第25回・問題81
扶養義務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 直系血族及び同居の親族は,互いに扶養をする義務がある。
2 扶養の程度又は方法については,当事者が協議で定めるものであり,家庭裁判所が定めることはできない。
3 扶養をする義務のある者が数人ある場合において,扶養をすべき者の順位については,家庭裁判所が定めるものであり,当事者が協議で定めることはできない。
4 家庭裁判所は,特別の事情がある場合であっても,四親等の親族に扶養の義務を負わせることはできない。
5 扶養を受ける権利は,特別の事情がある場合には,処分をすることができる。
ちょっと難しそうですね。
しかし,答えだけは分かると思います。
1 直系血族及び同居の親族は,互いに扶養をする義務がある。
血族の場合,親族は6親等以内までとなります。
6親等とはどこの範囲かというと,またいとこ(はとこ)です。顔も知らないかもしれません。
いくら同居していてもそれは遠すぎます。
扶養義務があるのは,直系血族及び兄弟姉妹です。
よって×
2 扶養の程度又は方法については,当事者が協議で定めるものであり,家庭裁判所が定めることはできない。
家庭裁判所は,家庭内の紛争などを担当します。
もちろん,協議が整わなかった場合は,家庭裁判所が行うことができます。
よって×。
3 扶養をする義務のある者が数人ある場合において,扶養をすべき者の順位については,家庭裁判所が定めるものであり,当事者が協議で定めることはできない。
選択肢2と同じく,協議が整わなかった場合は,家庭裁判所が行うことができます。
よって×。
4 家庭裁判所は,特別の事情がある場合であっても,四親等の親族に扶養の義務を負わせることはできない。
扶養義務があるのは,直系血族及び兄弟姉妹です。
しかし,特別の事情がある場合は,3親等以内の親族に義務を負わせることができます。
つまり4親等以上の親族には扶養義務を負わせることはできません。
よってこれが正解です。
5 扶養を受ける権利は,特別の事情がある場合には,処分をすることができる。
選択肢4が正解ですから,これは間違いなのですが,民法では「扶養請求権の処分の禁止」が規定されています。
つまり処分することはできません。
よって×。