2024年7月30日火曜日

市町村,都道府県の役割を徹底解剖

市町村と都道府県の役割は法制度の科目では頻出です。


しっかり押さえて得点を稼ぎましょう。合否を分けるのは案外こんなところにあるのではないでしょうか。


<押さえるポイント>


市町村は,国民に最も近い基礎的自治体。

それをカバーするのは都道府県。


※国は,基本指針や基本計画で,条件整備をします。



市町村は,基礎的自治体なので,基本的な相談窓口は市町村にあります。


基本的な相談は市町村が行い,専門的相談は都道府県が行います。


専門的な相談窓口には,障害者領域では,身体障害者更生相談所,知的障害者更生相談所,そして,児童領域では,児童相談所があります。


高齢者は,都道府県には専門的な窓口はありません。高齢者はすべて市町村が担います。

手帳関係では,身体障害者手帳,精神障害者福祉手帳,療育手帳は,都道府県が交付します。


母子健康手帳は,市町村が交付します。介護保険証は,市町村が交付します。



<効率的,かつ効果的な覚え方のコツ>


①基本ライン(上記の「押さえるポイント」)を覚える。


②市町村・都道府県の役割が出てきたら,基本ラインを思い出す。


③基本ラインのままだったら,そのまま覚える。


④基本ラインと違ったら,特にそこを重点的に押さえる。



<応用編>


「基本計画」「基本方針」と出てきたら,国の役割です。


しかし,同じように「基本」がついていても「基本構想」となると,国ではなく,地方公共団体の役割となります。


さて,それでは今日の問題です。


問題25回・問題142 

児童家庭相談における児童相談所と市町村の制度的関係に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 児童虐待を受けた児童については,住所地を管轄する市町村が通告を受理し,必要に応じ子どもの心理学的,社会学的,医学的判定を行う。

2 市町村は,乳児院,児童養護施設等入所型の児童福祉施設への措置を必要と認める場合には,その児童を児童相談所に送致する。

3 市町村長は,療育手帳についての申請を受け付け,児童相談所の判定結果をもとに療育手帳を交付する。

4 児童相談所長は,児童委員の職務について,市町村長に委任して必要な指示をすることができる。

5 児童相談所長は,児童福祉法第33条に基づく一時保護に関して,必要な場合,市町村長が一時保護するよう指示することができる。



先述の解説で,分かるものもあると思いますが,分からないものもあるでしょう。


それでは,詳しく見て行きましょう。


1 児童虐待を受けた児童については,住所地を管轄する市町村が通告を受理し,必要に応じ子どもの心理学的,社会学的,医学的判定を行う。


判定は,かなり専門的なものです。


市町村ができるようなものではありません。


判定は児童相談所の業務です。


よって間違いです。


児童相談所は判定を行う専門機関です。専門的な業務は市町村の役割ではありません。


2 市町村は,乳児院,児童養護施設等入所型の児童福祉施設への措置を必要と認める場合には,その児童を児童相談所に送致する。


児童福祉施設への入所措置を行うのは,都道府県知事です。


その流れは,入所措置が必要だと認められる場合,市町村は児童相談所に送致し,児童相談所が必要と認める場合,都道府県知事に報告して,入所措置をとります。


よって正解です。


保護処分で,児童自立支援施設送致,児童養護施設送致の場合も,都道府県知事の措置が必要となります。


入所措置は,かなり高度な判断です。専門的で高度な判断を伴う業務は,市町村では行いません。


3 市町村長は,療育手帳についての申請を受け付け,児童相談所の判定結果をもとに療育手帳を交付する。


市町村長が交付する手帳は,母子健康手帳です。


療育手帳を交付するのは都道府県知事です。


よって間違いです。


障害者手帳の交付は専門的ですよね。


判断は児童相談所に行ってもらったとしても,かなり高度であることは間違いないです。


それに比べて・・・


母子健康手帳の妊娠したことを届け出た妊婦に対して交付するものです。


専門性の違いは歴然としていますね。専門的で高度な判断は必要とされていないからです。


4 児童相談所長は,児童委員の職務について,市町村長に委任して必要な指示をすることができる。


これは,ちょっと難しいです。


児童福祉法では,児童委員は,


児童福祉司又は福祉事務所の社会福祉主事の行う職務に協力すること。


児童委員は、その職務に関し、都道府県知事の指揮監督を受ける。


市町村長は、児童委員に必要な状況の通報及び資料の提供を求め、並びに必要な指示をすることができる。


と定めているだけで,児童相談所長が,市町村長に委託して必要な指示を出すことについての規定はありません。


よって間違いです。


このような「基本ライン」とは違うものは,特にねらわれやすいポイントとなりやすいです。


「児童相談所長が市町村長に委託して必要な指示を出す」は聞いたことがない。 ➡ 勉強不足


このように思ってしまうと,迷いの森に入り込みます。


聞いたことがないのは,勉強不足ではありません。こんな規定はないからです。


このように強い気持ちを持つことが,国試での実力発揮につながります!!



5 児童相談所長は,児童福祉法第33条に基づく一時保護に関して,必要な場合,市町村長が一時保護するよう指示することができる。



一時保護は,かなり判断が難しいですし,専門性は極めて高いです。


市町村長ができるようなものではないです。


よって間違いです。


一時保護を行うのは児童相談所長です。


一時保護を開始する場合,親権者等の意に反して2か月を超えて一時保護を行う場合は,家庭裁判所の承認を得ることが必要です。



<今日の一言>


基本ラインを押さえておけば,市町村,都道府県の役割の違いを押さえるのが簡単になります。


試験会場でも「あれっ,どっちだったっけ?」といった度忘れがなくなります。


おまけ


児童相談所は,従来,都道府県,指定都市は必置,中核市はおくことができるとされていました。


児童福祉法の改正により,特別区(東京23区)もおくことができるようになりました。


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