どんなに勉強しても「これで良い」ということはないので,不安や焦りを完全になくすことはできないでしょう。
今まで使ってきたものを何度も繰り返して覚えて行くことが大切です。
薄すぎる参考書は,それをメインに使う参考書にすることはできませんが,ある程度のボリュームがあるものは,その情報だけで十分です。
これから模擬試験を受ける機会が出てくると思いますが,それを受けた時,こんなものは勉強していなかった,と思う問題は,はっきり言って国試に出題されることは少ないです。
参考書に出ていないものは,本試験に出題される可能性が低いです。
それにも関わらず,それが載っていない参考書は良くない,と思ってしまい,他の参考書についつい手を伸ばしてしまいそうになります。
<受験の鉄則>
同じ参考書を繰り返す
浮気しちゃだめです。
さて,今日のテーマは,「尺度水準の理解はたったこれだけでOK!」です。
尺度水準と聞くと難しそうに思えるかもしれませんが,国試に出題されるのは
名義尺度
順序尺度
間隔尺度
比例尺度
の4つしかありません。
名義尺度
「1.はい」「2.いいえ」
「1.日本人」「2.アメリカ人」「3.中国人」「4.イギリス人」
のような性質を表わすのみの尺度。別の言い方をすると,区別するための尺度です。
数字には意味がないので,足したり,引いたりすることにまったく意味をもちません。
順序尺度
順番があるだけの尺度。数字の大小だけに意味があります。
研修会アンケートなどで
1.よく理解できた 2.理解できた 3.ふつう 4.理解できなかった 5.まったま理解できなかった
といったものです。
数字には順序はあっても,それぞれの間隔は人によって違うので,これも足したり,引いたりすることにはまったく意味を持ちません。
なお,例に挙げたものは,答えが5つあるので,五件法と呼びます。
数字を足したり,引いたりすることには意味がない名義尺度と順序尺度でも,最頻値(最も多く表れる値)は出すことはできます。
最も多いのは,「1.日本人」である
「1.よく理解できた」が一番多かった
といったことです。
間隔尺度
間隔が等しい尺度。絶対的なゼロはなく,ゼロ地点は自由に設定することができます。
数字を足したり引いたりすることはできますが,掛けたり割ったりすることはできません。
掛けたり割ったりすることができても意味のある数字にはなりません。
絶対的なゼロ地点がないために,数字の比率が出せないためです。
例としては,温度です。
0度以下のマイナスの温度が存在します。
温度を足したり割ったりすると
今日の最高気温は,昨日と比べて3℃高かった。
明日の最高気温は,今日よりも3℃高くなる。
のように表現することができます。
温度を掛けたり割ったりすると
今日の最高気温は,昨日と比べて30%高かった。
明日の最高気温は,今日よりも30%高くなる。
のようになります。こんなことをお天気キャスターが言うと「何を言っているの?」と思われるでしょう。
比例尺度
間隔が等しくて,絶対的なゼロがある尺度。
例えば,体重などです。
これは四則計算が可能です。
今日の体重は,先月よりも1kg増えた。
今日の体重は,出生時の2倍になった。
のように表わすことができます。
これだけ覚えれば,十分です。
もし,これで分からない問題があった時には,それぞれの典型例を思い出して,それで考えてみましょう。
必ず答えが導き出すことができるはずです。
なお,名義尺度 → 順序尺度 → 間隔尺度 → 比例尺度 の順でデータのもつ情報量が多くなります。
それでは,これを元にして今日の問題です。
第25回・問題86
測定の尺度水準に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 名義尺度は,単に対象を分類することだけに意味があるものなので,代表値を求めることはできない。
2 順序尺度は,名義尺度のようにただ分類するだけではなくて測定値の大小にも意味があるので,算術平均を計算することにも意味がある。
3 間隔尺度は,測定値の順序だけでなくその間隔(=差)にも意味があるが,測定値の比には意味がないので,「3と1の差」は「2と1の差」の2倍であるとは言えない。
4 比例尺度(比率尺度,比尺度)では測定値がゼロとなる点が決まっているが,間隔尺度では尺度上のどこをゼロ点とするかが自由に定められる。
5 名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度のうち,中央値・算術平均・標準偏差の3つの統計量すべてを有意味に計算することができるのは,比例尺度のみである。
最初のヒントで,答えが分かった問題もあると思います。
それでは詳しく見て行きましょう。
1 名義尺度は,単に対象を分類することだけに意味があるものなので,代表値を求めることはできない。
代表値というのは,平均値や中央値,そして最頻値などを指します。
平均値や中央値を出すことは意味がありませんが,最頻値は出すことは出来ます。
よって×。
2 順序尺度は,名義尺度のようにただ分類するだけではなくて測定値の大小にも意味があるので,算術平均を計算することにも意味がある。
順序尺度は,順序だけが意味があるものです。
測定値の大小には意味がありますが,間隔は同じではありません。
平均値を求めても,意味がありません。
よって×。
3 間隔尺度は,測定値の順序だけでなくその間隔(=差)にも意味があるが,測定値の比には意味がないので,「3と1の差」は「2と1の差」の2倍であるとは言えない。
間隔尺度は,間隔が等しいので,「3と1の差」は「2と1の差」の2倍です。
温度計の目盛りもそのようになっています。
よって×。
4 比例尺度(比率尺度,比尺度)では測定値がゼロとなる点が決まっているが,間隔尺度では尺度上のどこをゼロ点とするかが自由に定められる。
温度は,誰かが氷結点を0℃に設定しましたが,別な温度を0℃に設定することも可能です。
よってこれが正解です。
5 名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度のうち,中央値・算術平均・標準偏差の3つの統計量すべてを有意味に計算することができるのは,比例尺度のみである。
「のみ」と出てきた場合は,大抵何かが隠されていることが多いのですが,この場合,間隔尺度も計算することに意味があります。
よって×。
〈今日のヒント〉
名義尺度と順序尺度は,数字の間(「1」と「2」)に数字がありません。
1-1,1-2のように細分化しても,数字の間にはやっぱり数字はありません。
間隔尺度と比例尺度は,数字の間(「1」と「2」)は数字が連続しています。
体重の例では,3㎏から4㎏の間には,数字がつながっています。
間隔尺度と比例尺度が数字的な処理ができるのは,この理由です。