令和元年度カリキュラム改正では,精神保健福祉士との科目の共通化が図られ,「社会福祉調査の基礎」は,以前は専門科目だったものが共通科目に移行した科目です。
逆に,共通科目だったものが専門科目に移行した科目もあります。
それでも専門科目の問題数は少ないので,ボリュームアップした共通科目でどれだけ点数が取れるかが合格するための決め手となります。
「社会福祉調査の基礎」です。
日常生活でなじみのないものなので難しく感じるかもしれません。
しかし,思うほど覚えるポイントが少ないので,短時間で仕上げることができる科目と言えるかもしれません。
今日のテーマは「全数調査と標本調査のメリット・デメリット」です。
全数調査は,悉皆(しっかい)調査ともいいます。
標本調査は,母集団からサンプルを取り出して調査するので,サンプリング調査とも言います。
標本調査には,無作為抽出法(確率抽出法)と有意抽出法(非確率抽出法)があります。
全数調査
母集団をすべて取り出すので,母集団の性質とずれることはありません。当然です。
標本調査
全数を調査しないので,適切な方法で抽出しなければ,母集団の性質からずれたものになります。
選挙の話をします。
投票時間が終了するのとほぼ同時に「当確」が出る候補もいます。
事前の世論調査と当日の出口調査をもとに報道各社が分析して当確を判断します。
今はいろいろな方法があるのでほとんど違った結果が出ることはありません。
しかし,まだその技術が確立されていない1930年代のアメリカ大統領選挙では,世論調査とまったく違う結果となったことがあります。
それ以来,いろいろな方法が開発されてきたので,いろいろな方法があり,複雑に感じる理由だと思います。
それでは,今日の問題です。
第25回・問題85
標本調査の長所と短所に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 関心の対象である全員にではなく,その一部分の人々にのみ調査を行う限り,どれだけ適切に設計・実施された標本調査でも必ず標本誤差が生じる可能性がある。
2 訪問個別面接調査を行う場合でも,本来は標本調査より全数調査を行う方が誤差が生じないので望ましい。
3 標本抽出法には確率抽出法と非確率抽出法があり,実施が可能でさえあれば,偶然に左右されない非確率抽出法を行うのが望ましい。
4 無作為抽出が適切に行われていれば,調査対象者が多くても少なくても調査から得られる知見に違いはない。
5 標本調査によって母集団の性質についての統計的な推測ができるのは,母集団に含まれるすべての人が同じ確率で選ばれ得るような標本抽出の手続きをとる場合である。
それでは詳しく見て行きましょう。
1 関心の対象である全員にではなく,その一部分の人々にのみ調査を行う限り,どれだけ適切に設計・実施された標本調査でも必ず標本誤差が生じる可能性がある。
標本誤差とは,母集団の性質とのずれを言います。
母集団に近くなるような方法で抽出しても,標本誤差をゼロにするのは難しいです。
よって正解です。
2 訪問個別面接調査を行う場合でも,本来は標本調査より全数調査を行う方が誤差が生じないので望ましい。
全数調査は,標本誤差は生じません。
当然ですね。
訪問個別面接調査は,マンパワーが必要です。
全数調査を行うのは大変です。A市B地区の65歳以上の高齢者を調査しようと思ったら本当に大変ですね。
全数調査の方が望ましいとはとても言えませんね。
よって×。
3 標本抽出法には確率抽出法と非確率抽出法があり,実施が可能でさえあれば,偶然に左右されない非確率抽出法を行うのが望ましい。
非確率抽出法は,有意抽出です。A市B地区の65歳以上の高齢者を調査しようと思った時,サンプル50にしたとします。
知っている人で協力しやすい人に調査依頼するのは,有意抽出です。
母集団の性質を正しく探ることはできません。
確率抽出法は,無作為抽出法です。
乱数表などを作って,作為がなるべく入らないようにして,標本を抽出します。
確率抽出法の方が良いです。
よって×。
4 無作為抽出が適切に行われていれば,調査対象者が多くても少なくても調査から得られる知見に違いはない。
サンプル数は多い方が良いです。
これを大数の法則と言います。
よって×。
サイコロを振る回数が少ないと,確率はばらつきます。
回数が多くなると限りなく1/6に近づいていきます。
5 標本調査によって母集団の性質についての統計的な推測ができるのは,母集団に含まれるすべての人が同じ確率で選ばれ得るような標本抽出の手続きをとる場合である。
もちろんこれは正解ですね。
それが確率抽出法です。