秘密保持義務(社会福祉士及び介護福祉士法)
社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなつた後においても、同様とする。
と規定されています。
これに違反すると,罰則は「一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」と規定されています。
一度知った秘密は,社会福祉士でなくなった後も,一生秘密にしておかなければなりません。
国試では,過去には「社会福祉士でなくなった」「やめて10年を経たら」などと出題されています。もちろん間違いです。
法では,信用失墜行為禁止がありますが,これには秘密保持義務違反のような罰則は規定されていません。
今日のテーマ「通報義務は,秘密保持(守秘)義務に優先されます!」は当然ですね。
虐待が疑われるのに,秘密保持義務を盾に通報できないということになったら,クライエントの権利擁護者としての役割を果たせないことになってしまいます。
さて,今日の問題です。
第25回・問題95
児童虐待を担当する児童福祉司(社会福祉士)の守秘義務に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 施設入所措置の場合,児童養護施設に子どもの養育者以外の親族に関する情報を提供してはならない。
2 虐待防止の啓発のために,自分の担当する虐待ケースについての個別的な情報を地域の子育て支援団体連絡会に提供してもよい。
3 近隣住民からの虐待の通告について,通告者を特定させるような情報を他に漏らしてはならない。
4 公務員である児童福祉司の守秘義務違反については,刑事責任の問題にはなるが,民事責任の問題としては扱われない。
5 子どもの養育支援を行うために,虐待している親の了解がなくても,虐待を心配する近隣住民に情報を提供できる。
守秘義務というよりは,個人情報保護に関する問題のように感じます。
それはさておき,個人情報保護はとても重要なのでしっかり押さえて行きましょう。
それでは詳しく見て行きましょう。
1 施設入所措置の場合,児童養護施設に子どもの養育者以外の親族に関する情報を提供してはならない。
適切に対応するためには,情報は共有されていなければなりません。
特に本事例の場合は,虐待に関連するものだけに,児童の保護のために共有しなければならない情報もあると考えられます。
よって×。
もちろん,児童養護施設側にも守秘義務が課せられます。
2 虐待防止の啓発のために,自分の担当する虐待ケースについての個別的な情報を地域の子育て支援団体連絡会に提供してもよい。
介護保険法に規定される地域ケア会議などでは,個別的な情報を使って事例検討することはあります。
それでさえ,個人が特定できないような配慮は必要ですし,終了後には資料を回収するといったことも行われます。
この選択肢の場合は,虐待防止の啓発が目的であるため,個別の情報の必要性は認められません。
よって×。
3 近隣住民からの虐待の通告について,通告者を特定させるような情報を他に漏らしてはならない。
もちろんこれが正解です。
と言うか,
この問題は珍しく答えがわかる問題だと思います。
4 公務員である児童福祉司の守秘義務違反については,刑事責任の問題にはなるが,民事責任の問題としては扱われない。
公務員ももちろん守秘義務違反があるので,刑事責任は問われます。
民事も損害を受けた個人や団体から賠償を求める訴訟を起こされることはあるでしょう。
よって×。
ちなみにこの場合と違って公務上の不法行為は,国家賠償法の対象となり,本人に損害賠償されることはありません。
5 子どもの養育支援を行うために,虐待している親の了解がなくても,虐待を心配する近隣住民に情報を提供できる。
養育支援するために,児童委員等に必要な情報を提供するするとあると思います。
しかし,虐待を心配している近隣住民に提供するのは,不適切だと考えます。
うわさ好きご近所さんも含まれてしまいます。
よって×。
<今日の一言>
簡単な問題であるように思っても,試験会場では読み間違える!
今日の問題は,そんなに難しくないです。
しかし,こんな問題でも読み間違いが起きるのが,国試の怖いところです。
決して慌てず,それでいて,ポイントを押さえながら,文章を読むことが必要です。
それには訓練が必要です。
これは問題を解くことでしか身につきません。