今日のテーマは,「システム理論は,現代のソーシャルワークには欠かせない!」です。
システム理論は,昨日の問題のジェネラリスト・アプローチにも取り入れられています。
そういう面で,システム理論は,現代のソーシャルワークでは,極めて重要なものとなります。
なぜなら,人はそれだけで存在しているものではなく,環境とのバランスの中で存在しているからです。
その時に必要なのがシステム理論です。
それでは,今日の問題です。
第25回・問題98
ベルタランフィ(Bertlanffy,L.)の「一般システム理論」を構成する概念に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 システムを,有機体としてではなく,機械論的な立場からとらえる。
2 システムを,外部環境に対して開かれている開放システムとしてとらえる。
3 システムの変容結果は,初期条件によって決定づけられるものと考える。
4 システムを要素還元主義の立場から,全体は部分の総和であると考える。
5 個々のシステムを独立したものととらえ,システム間の非階層性を強調する。
第25回国試は,とんでもなく難しい問題が続きました。
その中でこの問題は,5本指の中に入るとびっきり難しい問題だったと思います。
今でも十分難しいですが,この年の国家試験を受験した人は,もっと難しく思ったはずです。
それでは,詳しく見ていきたいと思います。
1 システムを,有機体としてではなく,機械論的な立場からとらえる。
システムというと一般的には「仕組み」というイメージが強いので,「機械論的」という出題がなされたのだと思います。
しかし一般システム理論では,システムの構成要素がそれぞれ影響し合い,発展していくものととらえます。
機械的ではなく,有機的です。
よって×。
機械的,有機的と聞くと「あれっ,デュルケムはそんなことを言っていたなぁ」と思う人もいるはずです。
社会は,機械的連帯から有機的連帯へ進化すると述べたものですね。
勉強が進んでいけば,どんどんいろいろな知識がつながっていきます。
それまでは辛いかもしれませんが,それでも歯を食いしばって勉強していけば,必ず知識がつながる時がやって来ます。
そのためには,一つひとつに時間をかけていくよりも,うろ覚えでも先に進んで,何度も何度も繰り返すのが有効だと思っています。
2 システムを,外部環境に対して開かれている開放システムとしてとらえる。
まったく意味が分かりません。
こんな時は,冷静に▲をつけます。
結果的には,これが正解です。
システムには,内部完結する閉鎖システムと,外部に開かれた解放システムがあります。ソーシャルワークが対象とするのは,そのうちの解放システムです。
3 システムの変容結果は,初期条件によって決定づけられるものと考える。
これも選択肢1と同じく,システム=仕組み,と思われがちなところからの出題だと思います。システムは,システムの構成要素が影響して新しいものが作られていきます。
社会学ではそれを「創発特性」と名付けています。
よって×。
ブトゥリムは,ソーシャルワークの重要な側面として,「変化の可能性」を挙げています。
4 システムを要素還元主義の立場から,全体は部分の総和であると考える。
これも,システム=仕組み,という連想から作られたものだと思います。
要素還元主義というものはどのようなものかはわからなくても,全体は部分の総和ではないことはわかります。
総和以下にしかならないこともあるでしょうし,総和以上になることもあるからです。
よって×。
5 個々のシステムを独立したものととらえ,システム間の非階層性を強調する。
システムには,階層があります。
例えば,地域社会システム,その下位システムとしての家族システムなどです。
これらが独立したものではありません。
システム理論は,システムの構成要素が関連し合っていると考えることが特徴ですが,システムの階層も関連し合っていると考えます。
よって×。
ソーシャルワークの理論と方法の出題基準では「人と環境の交互作用」が一番初めにあります。
システム理論は,この科目を学ぶ上で,もっとも基礎的なものとなる証拠です。
しかし,受験生側としては,こんな難しい問題が最初にくるのはたまったものではありませんね。
今日の問題はとても難しいものでしたが,システム理論を理解する上で必要な要素はすべて入っていると思います。
これをクリアできれば,明るい明日が開けてくることでしょう。