今日は,前説なしに問題です。
第25回・問題75
理学療法士,作業療法士,言語聴覚士及び介護福祉士の資格と業務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 理学療法士又は作業療法士の行う理学療法又は作業療法は,保健師助産師看護師法の規定にかかわらず,診療の補助としての位置づけがなされている。
2 理学療法とは,身体又は精神に障害のある者に対し,主として応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図ることを目的としている。
3 作業療法の対象となる者に,精神に障害のある者は含まれていない。
4 言語聴覚士の業務の範囲に,嚥下訓練は含まれていない。
5 介護福祉士であれば,痰の吸引,経管栄養等の医行為を,介護施設,在宅の訪問介護等において実施できる。
5つの選択肢を別々のものを並べるのは,大変です。
5つの種類があるものがあったら,おそらく試験委員は飛びつくことでしょう。
今は思いつきませんが,試験問題としては実に美しい問題になります。
そういう面で言えば,今日の問題は,PT,OT,ST,及び介護福祉士ということで,一つ足りません。
バランスが悪いです。
今日の問題は,そこにヒントがあります。
さて,それでは詳しく見て行きましょう。
1 理学療法士又は作業療法士の行う理学療法又は作業療法は,保健師助産師看護師法の規定にかかわらず,診療の補助としての位置づけがなされている。
5つの選択肢 ― 4つの職種 = 余った選択肢がこれです。
答えとしてはこれが正しいのですが,「保健師助産師看護師法の規定にかかわらず」という余計な言葉がついているので,これをすぐ正解にすることができません。
とりあえずは,この時点では▲をつけておきます。
結果的にはこれが正解です。
2 理学療法とは,身体又は精神に障害のある者に対し,主として応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図ることを目的としている。
現場にいると理学療法と作業療法の違いが分かりにくいかもしれません。
明確に違うのは
精神障害者を対象としているかどうかです。
対象としている → 作業療法
対象としていない → 理学療法
これをしっかり押さえておきましょう。
設問では,精神が入っているので,理学療法ではないことが分かります。
よって×。
3 作業療法の対象となる者に,精神に障害のある者は含まれていない。
選択肢2で紹介したように,精神障害者を対象としているのが作業療法ということになります。
よって×。
4 言語聴覚士の業務の範囲に,嚥下訓練は含まれていない。
STは,その名の通り,音声機能,言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため,言語訓練その他の訓練,これに必要な検査及び助言,指導その他の援助を行うことを業とする者です。
このイメージがあるので,この選択肢が出題されたのだと思いますが,以下の規定もあります。
言語聴覚士は,保健師助産師看護師法の規定にかかわらず,診療の補助として,医師又は歯科医師の指示の下に,嚥下訓練,人工内耳の調整その他厚生労働省令で定める行為を行うことを業とすることができる。
よって×。
ここでまた「保健師助産師看護師法の規定にかかわらず」という規定がされていますね。
5 介護福祉士であれば,痰の吸引,経管栄養等の医行為を,介護施設,在宅の訪問介護等において実施できる。
現在のカリキュラムで介護福祉士になった人は「喀痰吸引等研修」を受けると医行為を実施できます。しかし,以前のカリキュラムで学んだ人はできません。
介護福祉士であれば誰でもできるわけではありません。
よって×。
さて,選択肢1の「保健師助産師看護師法の規定にかかわらず」という規定です。
理学療法士及び作業療法士法によると・・・
理学療法士又は作業療法士は,保健師助産師看護師法の規定にかかわらず、診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。
とされています。
保助看法の方が古いので,先に「看護師は,傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行う」とされ,看護師以外の者は,これらを業としてはならないと規定しています。
そのために,後から出来たPT,OT,STは「保助看法の規定にかかわらず」という除外する規定を設けたのです。
今度同じような問題が出題される時は,
言語聴覚士の行う言語療法は,保健師助産師看護師法の規定にかかわらず,診療の補助としての位置づけがなされている。
といったものに関連するものでしょう。
今度の試験委員が問題の美しさにこだわるとすれば,足りないもう一つの関連職種を追加して出題するのかなぁ,と思います。
他のものも同じですが,なかなか5つそろえるのは難しいので,3+2,4+1 といったようなスタイルになります。
5つそろった方が美しい問題だと思いませんか?