2024年7月23日火曜日

2016年の社会福祉法人改革のポイント

今回は,2016年(平成28)年の社会福祉法の改正によって行われた社会福祉法人改革です。


1.社会福祉法人制度の改革

・経営組織のガバナンス強化


<評議員会>


評議員会は,これまでは一部の社会福祉法人を除いて,設置は任意とされていました。


今回の改正で,評議員会は必置となり,役割は今までの諮問機関から「議決機関」へと変わりました。


理事,監事,会計監査人の選任や解任を行うことになります。


また役員報酬も決定します。


資格者は,「社会福祉法人の定期性に運営に必要な識見を有する者」となります。


評議員の人数は,これまでは理事の定数の2倍を超える数とされていましたが,この改正で,理事の員数を超える数(6名以上)となりました。


理事との兼任は出来ません。


<理事会>


理事会は,業務執行に関する意思決定機関に位置付けられました。


評議会で選任された理事は理事会を開き,理事長を選出します。


理事長以外に,法人の業務を執行する理事として,業務執行理事を選任することができます(必置ではない)。


ただし,業務執行理事は代表権を持ちません。


理事は,理事長,業務執行理事,それ以外の理事に分類されます。


その他の理事は,業務執行の意思決定に参画するとともに,他の理事長その他の理事の職務の執行を監督することになります。


理事の中には,


①社会福祉事業の経営に関する識見を有する者

②法人が行う事業の区域における福祉に関する事業に通じている者

③法人が施設を設置している場合は,当該施設の管理者


が含まれていなければなりません。


<幹事>


幹事は,理事の職務執行を監査します。

理事会への出席と報告が義務付けられました。


監事には,

①社会福祉事業に識見を有する者

②財務管理に識見を有する者

が含まれていなければなりません。


<会計監査人>


会計監査人は,一定規模以上の法人への会計監査人による監査が義務付けられました。


会計監査人は,公認会計士又は監査法人でなければなりません。


因みに,平成24年から社会福祉法人の会計基準が導入され,平成27年からすべての法人で実施されています。



・運営の透明性の確保について


 定款,事業計画書,役員報酬総額,事業計画書を閲覧対象にして,閲覧請求者をこれまでの利害関係者から国民一般に広げています。


これらは,備え置き・閲覧だけではなく,ホームページ等を活用して公表します。



・社会福祉法人の財務規律について


 社会福祉法人が保有する財産のうち,社会福祉充実財産(再投下対象財産)を明確にして,社会福祉充実財産が生じた法人は,社会福祉充実財産を策定します。


使い道は,社会福祉事業,地域公益事業,公益事業の順に既存事業の充実や新たな取組みを検討します。



・地域における公益的な取組みについて


社会福祉法人は,公益性,非営利性の高い法人であることを踏まえて,「地域における公益的な取組み」を行う責務があることが明記されました。


ただし,責務(提供するよう努めなければならない)であり,義務付けられているものではないことに注意しましょう。


これによって,従来の社会福祉事業に加えて,無料又は低額の社会福祉事業,従来の公益事業に加えて,無料又は低額の公益事業を行うことになります。


この無料又は低額の公益事業が,地域公益事業と呼ばれるものです。


社会福祉法人改革のポイントを挙げてみました。


国試ではここまで詳しく覚えておかなくても解ける問題が出題されてくるとは思いますが,福祉を実施する担い手として社会福祉法人は重要なので,しっかり覚えておきましょう。



それでは,今日の問題です。


第25回・問題119

社会福祉法人が行う事業に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 自主的に福祉サービスの質の向上に取り組むとともに,地域住民が求める限りにおいて,事業経営を透明にすることに,できるだけ協力しなくてはならない。

2 社会福祉事業を実施する必要があるが,当該法人の実施する事業において社会福祉事業は主たる地位を占める必要はない。

3 公益事業において剰余金が生じたときには,当該社会福祉法人の社会福祉事業や公益事業に充てることとされている。

4 収益事業として行う事業は,法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるものや投機的なものはもちろん,福祉に関連しないものは適当ではないとされている。

5 社会福祉事業を行うために必要な物件について,所有権を持つべきかどうかについて,特段の定めはない。


この問題は,まだ改革が始まる前の出題なので,極めてスタンダードなものです。

しっかり押さえていきましょう。


1 自主的に福祉サービスの質の向上に取り組むとともに,地域住民が求める限りにおいて,事業経営を透明にすることに,できるだけ協力しなくてはならない。



社会福祉法では


(経営の原則)

第二四条 社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため,自主的にその経営基盤の強化を図るとともに,その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならない。

と明記しています。


地域住民が求める限りできるだけ協力しなければならないではありません。


よって×。


2 社会福祉事業を実施する必要があるが,当該法人の実施する事業において社会福祉事業は主たる地位を占める必要はない。


社会福祉法人は,社会福祉事業の他に公益事業及び収益事業を行うことができます。

しかし,社会福祉事業は主たる地位を占めていなければなりません。


よって×。


3 公益事業において剰余金が生じたときには,当該社会福祉法人の社会福祉事業や公益事業に充てることとされている。


これが正解です。


4 収益事業として行う事業は,法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるものや投機的なものはもちろん,福祉に関連しないものは適当ではないとされている。


収益事業は,福祉に関連しないものでも行うことができます。よって×。

福祉に関連しないものができないのは,公益事業です。


5 社会福祉事業を行うために必要な物件について,所有権を持つべきかどうかについて,特段の定めはない。


社会福祉法人審査基準では,「社会福祉事業を行うために必要な物件は,所有権を持っていること,または貸与,使用許可を得ていること」と規定しています。


よって×。

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