2022年10月29日土曜日

アノミー論(緊張理論・社会緊張理論)

 今回は,アノミー論を取り上げます。


アノミー論(緊張理論,あるいは社会緊張理論)は,文化的発展によって人々の欲求が高まるが,その欲求を満たすことができないときに逸脱すると考えるものでしたね。


覚えていない人は,復習してから今日の問題を解きましょう。

https://fukufuku21.blogspot.com/2022/10/blog-post_28.html


それでは,今日の問題です。


第33回・問題-21 次のうち,マートン(Merton,R.K.)が指摘したアノミーに関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ある現象が解決されるべき問題とみなす人々の営みを通じて紡ぎ出される社会状態を指す。

2 下位文化集団における他者との相互行為を通じて逸脱文化が学習されていく社会状態を指す。

3 文化的目標とそれを達成するための制度的手段との不統合によって社会規範が弱まっている社会状態を指す。

4 他者あるいは自らなどによってある人々や行為に対してレッテルを貼ることで逸脱が生み出されている社会状態を指す。

5 人間の自由な行動を抑制する要因が弱められることによって逸脱が生じる社会状態を指す。


理論系の問題は,表現が変わるので,丸覚え勉強している人は歯が立ちません。


それでは,解説です。


1 ある現象が解決されるべき問題とみなす人々の営みを通じて紡ぎ出される社会状態を指す。


これは構築主義を述べたものです。


2 下位文化集団における他者との相互行為を通じて逸脱文化が学習されていく社会状態を指す。


これは,文化学習理論を述べたものです。


3 文化的目標とそれを達成するための制度的手段との不統合によって社会規範が弱まっている社会状態を指す。


これが正解です。アノミー論は,文化的発展によって人々の欲求が高まりますが,その欲求を満たすことができないときに逸脱すると考えるものです。


お金があれば,愛情以外は何でも手に入ると思いますが,お金がなければ欲しいものを手に入れることができません。それでも手に入れたいと思った時に犯罪に手を染めてでも手に入れようとします。


社会規範が弱まっていると逸脱しやすくなります。

テレビドラマ「相棒 season21」第3話では,警察官が難病である自分の子の手術費用を手に入れるために,押収した覚せい剤を売人に横流ししたという話が描かれました。

もし子の難病を治療する医療技術が開発されていなければ,犯罪に手を染めることもなかったでしょう。

この話では,同僚の警察官が自分の子も難病で亡くしていて,この犯罪に協力してしまいます。同僚は社会規範的な役割になり得たと思いますが,そういった理由で手を貸してしまいました。

この話はこのようにアノミー論で説明できます。


4 他者あるいは自らなどによってある人々や行為に対してレッテルを貼ることで逸脱が生み出されている社会状態を指す。


これは,ラベリング理論を述べたものです。


レッテルを貼るという表現が見られるので,ラベリング理論だとわかりやすくなっています。


5 人間の自由な行動を抑制する要因が弱められることによって逸脱が生じる社会状態を指す。


これは社会統制論を述べたものです。


〈今日の一言〉


今日の問題はなかなかの難問でした。


しかし,出題されている内容は,今までに出題されたものだけで構成されています。そういった面では,知識のある人にとっては,答えがわかりやすい問題だったと言えるのかもしれません。

知らないものが一つでも含まれると問題の難易度は急に上がります。答えは同じであっても,ほかの選択肢との関連によって難易度が変わります。

一問一答式の勉強も良いですが,最後には必ず5者択一(択二)の問題で答えを選ぶという訓練で仕上げることが大切です。

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