社会的ジレンマとは,国家試験の表現に従えば,各個人が自らの利益を考えて合理的に行動した結果,集団あるいは社会全体として不利益な結果を招いてしまう状況です。
社会的ジレンマの例として,国家試験では,「共有地の悲劇」「フリーライダー」「囚人のジレンマ」が出題されています。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題20 次の記述のうち,「共有地の悲劇」に関する説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 公共財の供給に貢献せずに,それを利用するだけの成員が生まれる状況を指す。
2 協力してお互いに利益を得るか,相手を裏切って自分だけの利益を収めるか,選択しなければならない状況を指す。
3 他の成員の満足度を引き下げない限り,ある個人の満足度を引き上げることができない状況を指す。
4 それぞれの個人が合理的な判断の下で自己利益を追求した結果,全体としては不利益な状況を招いてしまうことを指す。
5 社会全体の幸福が,諸個人の快楽から苦痛を引いた後に残る快楽の総計と一致する状況を指す。
よくわからない選択肢も含まれますが,問題の難易度自体はそれほど高くないように思います。
共有地の悲劇のことを述べているのは選択肢4です。
4 それぞれの個人が合理的な判断の下で自己利益を追求した結果,全体としては不利益な状況を招いてしまうことを指す。
そのまま覚えておきたいくらいによくまとまっている文章だと思います。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 公共財の供給に貢献せずに,それを利用するだけの成員が生まれる状況を指す。
これは,フリーライダーを述べたものです。
2 協力してお互いに利益を得るか,相手を裏切って自分だけの利益を収めるか,選択しなければならない状況を指す。
これは,囚人の選択を述べたものです。
3 他の成員の満足度を引き下げない限り,ある個人の満足度を引き上げることができない状況を指す。
これがよくわからないものです。おそらくパレート効率性のことを述べたものではないかと思います。
パレート効率性は,何かを改善しようとする際,ほかが悪くなるような状況をいいます。
しかし,問題で出題されているものがパレート効率性だと言い切れないのは,パレート効率性は,財の配分のことだからです。パレート効率性の結果,満足度が上がったり,下がったりすることもあるかもしれませんが,ちょっと違和感があります。
しかし,いずれにせよ,共有地の悲劇ではないことは明らかです。
5 社会全体の幸福が,諸個人の快楽から苦痛を引いた後に残る快楽の総計と一致する状況を指す。
これは,快楽計算のことを述べたものです。
快楽計算は,功利主義で知られるベンサムが提唱したものですが,覚える必要はありません。単なる数合わせの出題です。
社会福祉士の国家試験に出題される社会的ジレンマの3つの例が出そろいました。
まとめてみます。
〈社会的ジレンマ〉
社会的ジレンマ |
各個人が自らの利益を考えて合理的に行動した結果,集団あるいは社会全体として不利益な結果を招いてしまう状況。 |
社会的ジレンマの例① ~共有地の悲劇~ |
それぞれの個人が合理的な判断の下で自己利益を追求した結果,全体としては不利益な状況を招いてしまうこと。 |
社会的ジレンマの例② ~フリーライダー~ |
公共財の供給に貢献せずに,それを利用するだけの成員が生まれる状況。 |
社会的ジレンマの例③ ~囚人のジレンマ~ |
協力してお互いに利益を得るか,相手を裏切って自分だけの利益を収めるか,選択しなければならない状況。 |