2022年10月28日金曜日

社会問題のとらえ方~構築主義

今回は,社会問題のとらえ方のうち,構築主義を取り上げたいと思います。

 

国家試験で出題される主な逸脱行動理論 

ラベリング理論

周りが逸脱者だとレッテルを貼ることで逸脱すると考える。

分化的接触論

(文化学習理論)

逸脱者と交流し,逸脱行為を学ぶことで逸脱すると考える。

アノミー論

(緊張理論)

文化的発展によって人々の欲求が高まるが,その欲求を満たすことができないときに逸脱すると考える。

社会統制論

(社会的絆理論)

人の絆があるとき,仕事や学業などに打ち込んでいるときは,逸脱が減ると考える。

 

テキストには,漂流論(ドリフト論)なども記載されていますが,とりあえず,上記の4つを覚えておけば十分でしょう。

 

このほかには,今回のテーマである構築主義を押さえておきたいです。

 

構築主義は,社会問題は,ある状態を解決されるべき問題とみなす人々のクレイム申立てとそれに対する反応を通じて作り出されると考えるものです。

 

誰かが社会問題だと認識し,それを世間に広めることで社会問題化していくと考えるものが構築主義のポイントです。

 

近年の社会問題では,MeTooKuToo,保活,などが構築主義で説明できます。

 

これらはもともとあったものですが,クレイム申立て(問題だと言うこと)することで社会問題として多くの人に認知されました。

 

それでは今日の問題です。

 

32回・問題21 社会問題は,ある状態を解決されるべき問題とみなす人々のクレイム申立てとそれに対する反応を通じて作り出されるという捉え方がある。このことを示す用語として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会統制論

2 緊張理論

3 文化学習理論

4 構築主義

5 ラベリング論

 

クレイム申立てと出てきたらすぐ「構築主義」だとわかるでしょう。

 

正解は,選択肢4です。

4 構築主義

 

解説します。

 

1 社会統制論

 

社会統制論は,ほかのものと異なり,逸脱しないのはどんな時か,を分析した理論です。

人とのつながりが感じられる時,仕事や勉強に打ち込んでいる時は,逸脱が抑制されます。

 

2 緊張理論

 

緊張理論(アノミー論)は,文化的発展によって人々の欲求が高まりますが,その欲求を満たすことができないときに逸脱すると考えるものです。

 

お金があれば,愛情以外は何でも手に入ると思いますが,お金がなければ欲しいものを手に入れることができません。それでも手に入れたいと思った時に犯罪に手を染めてでも手に入れようとするのが文化学習理論の例です。

 

3 文化学習理論

 

文化学習理論は,逸脱者と交流し,逸脱行為を学ぶことで逸脱すると考えるものです。

 

不良グループに入って一緒に遊んでいるうちに自分も不良になるのが文化学習理論です。

 

5 ラベリング論

 

ラベリング理論は,周りが逸脱者だとレッテルを貼ることで逸脱すると考えるものです。

 

不良グループにたまたま親しい友達がいて,一緒に遊んでいると「お前は不良だ」とレッテルを貼られます。

 

これがラベリング理論です。本当は不良ではなかったのに,周りの人が不良というレッテルを貼ることで逸脱していきます。

 

ラベリング理論で着目するのは,レッテルを貼られる側ではなく,レッテルを貼る側の問題です。

 

 

この問題には,元ネタがあります。

 

28回・問題21 社会問題の捉え方に関する次の記述のうち,構築主義的なアプローチとして,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会がどうあるべきかについては,多くの人々に共有されている規範が存在するので,これに反するものが社会問題と認識される。

2 社会は統一されたシステムを成しているので,その目標達成にとってマイナスに働く事象は,社会問題と認識される。

3 社会問題とは,客観的に実在し誰の目にも明らかな現実として存在するものである。

4 社会問題とは,専門家でなければ可視化できないような,現代社会におけるリスクのことである。

5 社会問題とは,自明なものとして存在するのではなく,人々が主張することを通して認識される問題である。

 

正解は,選択肢5です。

5 社会問題とは,自明なものとして存在するのではなく,人々が主張することを通して認識される問題である。

 

「人々が主張すること」がクレイム申立てのことです。

 

 

〈今日の一言〉

 

最初の問題は第32回,後の問題は第28回のものです。

 

国家試験は,過去に出題されたものの繰り返しですが,過去3年間の過去問で役立つものは少ないです。

 

3年間の過去問を完璧に理解できたとしても,合格するのに必要な知識量には全然足りないことを忘れてはなりません。

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