今回は,社会集団のうち,内集団と外集団を取り上げたいと思います。
内集団は,仲間意識を持てる集団です。
外集団は,内集団以外の集団です。
「内集団は,外集団よりも良い集団だ」と感じることを内集団ひいき(内集団バイアス)といいます。
内集団は,集団内の結びつきを強くし,時には,外集団と敵対することもあります。
別な言い方をすれば,意識的に敵対する外集団をつくることで,内集団の結びつきを強くすることができます。
時の為政者は,往々にして,外部に敵を作って,国民をまとめようとします。
何となくでも,内集団と外集団のことがわかるでしょうか。
それでは,今日の問題です。
第33回・問題17 社会集団などに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 準拠集団とは,共同生活の領域を意味し,地域社会を典型とする集団を指す。
2 第二次集団とは,親密で対面的な結び付きと協同によって特徴づけられる集団を指す。
3 内集団とは,個人にとって嫌悪や軽蔑,敵意の対象となる集団を指す。
4 ゲマインシャフトとは,人間が生まれつき持っている本質意志に基づいて成立する集団を指す。
5 公衆とは,何らかの事象への共通した関心を持ち,非合理的で感情的な言動を噴出しがちな人々の集まりを指す。
社会集団には,いろいろありますが,ここで初めて「公衆」という社会集団が登場しています。
この問題の正解は,選択肢4です。
4 ゲマインシャフトとは,人間が生まれつき持っている本質意志に基づいて成立する集団を指す。
ゲマインシャフトは,本質意思に基づいた集団です。
これに対して,ゲゼルシャフトは,選択意思に基づいた集団です。テンニースが提唱した社会集団と重ねると以下のようになります。
コミュニティ ≒ ゲマインシャフト
アソシエーション ≒ ゲゼルシャフト
この意味が何となくでも理解できるようだと理解がかなり進んでいると言えます。そして,国家試験でもミスは減るでしょう。
それではほかの選択肢も確認します。
1 準拠集団とは,共同生活の領域を意味し,地域社会を典型とする集団を指す。
共同生活の領域を意味し,地域社会を典型とする集団は,コミュニティです。
準拠集団(リファレンス・グループ)は,自分の価値・行動・判断などに影響を与える集団のことです。
準拠とは,「参考にする」といった意味合いです。
2 第二次集団とは,親密で対面的な結び付きと協同によって特徴づけられる集団を指す。
第二次集団は,非対面的な大きな集団です。国家試験では,会社,教会などが第二次集団の例として出題されています。
親密で対面的な結び付きと協同によって特徴づけられる集団は,第一次集団といいます。
国家試験では,仲間などが第一次集団の例として出題されています。
3 内集団とは,個人にとって嫌悪や軽蔑,敵意の対象となる集団を指す。
内集団は,仲間意識が持てる集団です。
個人にとって嫌悪や軽蔑,敵意の対象となる集団は,外集団です。
5 公衆とは,何らかの事象への共通した関心を持ち,非合理的で感情的な言動を噴出しがちな人々の集まりを指す。
何らかの事象への共通した関心を持ち,非合理的で感情的な言動を噴出しがちな人々の集まりは,群衆といいます。
確かに,公衆や大衆に比べると,群衆は暴動を起こしそうなイメージがある言葉です。
公衆は,群衆の対義語に近いもので,理性のある集団です。
大衆は,大多数を占める集団です。