今回から「社会学理論と社会システム」(旧名:社会理論と社会システム)に取り組んでいきたいと思います。
カリキュラムの内容は,新・旧カリキュラムではあまり変わっていないので,過去問も十分に使えると思います。
社会問題に関する問題は対策を取りにくいことはいつも一緒ですが,教科書に書かれていないものをどこまで出題するのか興味深いところです。
さて,今日のテーマは,「機能主義って何だ?」です。
機能主義は,社会システムに関連するもので,社会に生じている事象は,システム全体の発展・向上するように機能しているととらえるものです。
機能主義として登場する用語には,「順機能」「逆機能」「顕在的機能」「潜在的機能」「機能的等価性」「機能的合理性」などがあります。
とても難しそうですね。
この中で国試での登場回数が最も多いのは「逆機能」です。
システムの発展・向上にかかわるものは,「順機能」,その「逆」にシステムに良い影響を与えないものを「逆機能」といいます。
社会がうまく機能している「順機能」の裏で「逆機能」も生じるのが世の常です。
その一つが,マートンが論じた「官僚制の逆機能」です。
官僚制は,ウェーバー(ヴェーバー)が示したもので,組織が機能するための仕組みのことです。
組織には規則があることで,組織は適切に機能します。しかし,その規則を守ることが目的化することで,組織が規則に支配され。組織が機能しなくなることがあります。
これが「官僚制の逆機能」です。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題15 次の記述のうち,社会現象の性質や働きを機能主義的な考え方で説明しているものとして,正しいものを1つ選びなさい。
1 ある社会現象において,特定の行為者たちが,意図・認知している働きだけでなく,彼らが予想もせず気づいてもいない働きのことを逆機能という。
2 複数の要素が交じりあい,一定量を超えて蓄積されていくことで,元の要素にない新たな性質が生成してくることを創発特性という。
3 あるシステムが存続・発展したり,そこでの目標を達成するために必ず必要とされる働きのことを機能的等価性という。
4 規則は課題を公正かつ効率的に処理するためのものであるはずなのに,それを守ること自体が神聖化されて目的となっていくことを機能的合理性という。
5 急激な社会変動や社会的諸勢力の不均衡により,伝統的な価値や規範の学習機会が失われ,個々の集団成員に対するそれらの影響力が減退することを社会淘汰という。
この科目が嫌いな人は,見るのも嫌だと思うような問題かもしれません。
かなり難しいものかもしれません。
それでは解説です。
1 ある社会現象において,特定の行為者たちが,意図・認知している働きだけでなく,彼らが予想もせず気づいてもいない働きのことを逆機能という。
ある社会現象において,特定の行為者たちが,意図・認知している働きだけでなく,彼らが予想もせず気づいてもいない働きのことは,潜在的機能といいます。
2 複数の要素が交じりあい,一定量を超えて蓄積されていくことで,元の要素にない新たな性質が生成してくることを創発特性という。
これが正解です。創発特性は,簡潔に説明すると,チームの力は,チームメンバー個々の力の総和以上となるといったものです。
いかにもシステム理論といった感じがします。
3 あるシステムが存続・発展したり,そこでの目標を達成するために必ず必要とされる働きのことを機能的等価性という。
あるシステムが存続・発展したり,そこでの目標を達成するために必ず必要とされる働きのことは,機能的要件のことです。
機能的等価性は,別なものでも機能的な意味は同じものです。
たとえば,「運動」の機能を考えた時,健康のために行うのなら「散歩」と「水泳」は同じ機能です。
楽しむために行うなら「スポーツ」と「手芸」は同じ機能です。
4 規則は課題を公正かつ効率的に処理するためのものであるはずなのに,それを守ること自体が神聖化されて目的となっていくことを機能的合理性という。
規則は課題を公正かつ効率的に処理するためのものであるはずなのに,それを守ること自体が神聖化されて目的となっていくことは,官僚制の逆機能です。
機能的合理性は,覚える必要はありませんが,システムの構成要素がそのシステムが機能するために適切に配置されていることです。野球で言えば,勝つために選手をどのように活用するかを考えて,それで優勝することができたなら,機能的合理性と言えるでしょう。
5 急激な社会変動や社会的諸勢力の不均衡により,伝統的な価値や規範の学習機会が失われ,個々の集団成員に対するそれらの影響力が減退することを社会淘汰という。
急激な社会変動や社会的諸勢力の不均衡により,伝統的な価値や規範の学習機会が失われ,個々の集団成員に対するそれらの影響力が減退することは,なんだかよくわからない表現ですが,無秩序状態を意味するアノミーのことを述べているものだと思います。