今回も社会的ジレンマに取り組みます。テーマは「外部不経済」です。
たった1回しか出題されたことはないですが,知らないと国試当日慌てる原因となるので,紹介したいと思います。
外部不経済とは,企業などの経済活動が,個人や地域などに悪影響を与えることをいいます。
外部不経済の例としてよく使われるのは,公害です。
公害以外の例です。
たとえば郊外に大規模なアウトレットモールができると,良いものを安く手に入れることができるようになります。とても有難いことですね。
しかし,一方では週末になると渋滞し,その地域の住民が車でどこかに出かけようとしても思うように出かけることができないという状況が生じます。
こういった状況が「外部不経済」です。もっとわかりやすい言葉にしてほしかったものです。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題20 社会的ジレンマに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 企業などで生産された財やサービスが貨幣換算されないために,国家のGDPに含まれないことを「外部不経済」という。
2 犯罪容疑者である共犯者が,逮捕されていない主犯者の利益を考えて黙秘する結果,自分が罪をかぶることを「囚人のジレンマ」という。
3 社会にとって有用な資源へのアクセスが特定の人に限られていることを「共有地の悲劇」という。
4 ある財やサービスの対価を払うことなく,利益のみを享受する人のことを「フリーライダー」という。
5 協力的行動の妨害に与える報酬のことを「選択的誘因」という。
選択肢1で外部不経済が出題されていますが,まったく違うものであることがわかるでしょう。
こんなところに引っ掛からないで,問題を読み進めていくことが大切です。
選択肢1に難しい内容があると,慌ててしまうので,問題を冷静に読めなくなってしまうので注意が必要です。
それでは,選択肢2以降を開設します。
2 犯罪容疑者である共犯者が,逮捕されていない主犯者の利益を考えて黙秘する結果,自分が罪をかぶることを「囚人のジレンマ」という。
囚人のジレンマは,協力してお互いに利益を得るか,相手を裏切って自分だけの利益を収めるか,選択しなければならない状況をいいます。
3 社会にとって有用な資源へのアクセスが特定の人に限られていることを「共有地の悲劇」という。
共有地の悲劇は,それぞれの個人が合理的な判断の下で自己利益を追求した結果,全体としては不利益な状況を招いてしまうことをいいます。
4 ある財やサービスの対価を払うことなく,利益のみを享受する人のことを「フリーライダー」という。
これが正解です。フリーライダーは,公共財の供給に貢献せずに,それを利用するだけの成員が生まれる状況をいいます。
5 協力的行動の妨害に与える報酬のことを「選択的誘因」という。
選択的誘因もなかなか難しいものです。
選択的誘因は,協力的行動をとることが良いことだと思えるような仕組をつくることをいいます。
非協力的行動に対して報酬を与える,その逆に罰を与える,といった仕組みをつくることによって,協力的な行動をとることが良いことだと思わせることが「選択的誘因」といいます。
外部不経済もそうですが,なんでこんなにわかりにくい表現をするのでしょうね。センス悪すぎです。
しかし,多くの場合,こういったものは正解になりにくい傾向にあるので,知らないものが出題されても決して焦らず,知っているものがないか慎重に問題を読むことが必要です。