今回も役割概念を取り上げます。
かなり慣れてきたのではないでしょうか。
今回のテーマは,役割演技です。
役割演技は,役割を演じることです。
他者の役割期待を理解して,それにふさわしいようにその役割を演じます
求められている役割に応じて役割を演じることで,安定した社会生活を送ることができます。
それでは今日の問題です。
第29回・問題20 社会的役割に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 役割適応とは,個人が他者との相互作用を通じて自我を内面化する過程である。
2 役割期待とは,個人の行動パターンに対する他者の期待を指し,規範的な意味を持つ。
3 役割演技とは,個人が様々な場面にふさわしい役割を無意識のうちに遂行することを意味する。
4 役割葛藤とは,役割の内容が自分の主観と一致しないことによって生じる困難のことである。
5 役割距離とは,個人の内部で異なる社会的役割が対立し,両立しない状態を指す。
こういった問題を見ると,暗記型の勉強では正解するのは困難であることがわかります。
ほかの人に簡単にでも説明できるくらいの理解が必要です。
この問題の正解は,選択肢2です。
2 役割期待とは,個人の行動パターンに対する他者の期待を指し,規範的な意味を持つ。
役割期待は,他者からの期待です。
規範的意味とは,役割期待に添わないと社会的に好ましくない人だと思われてしまうので,役割期待に沿った行動を行うようになることを意味しています。
「言わなくても分かる」という状態です。しかし,これは共通の文化を持つ人だから通用する話であり,外国人のように別の規範を持つ人はそれがわかりません。
「言わないと分からない」ということとなります。外国人労働者が増える現代だからこそ,役割概念は重要となります。
頑張って覚えましょう。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 役割適応とは,個人が他者との相互作用を通じて自我を内面化する過程である。
何だかよくわからない文章です。
役割適応は,役割期待に添った行動ができていることを指す用語です。
個人が他者との相互作用を通じて自我を内面化する過程は,役割取得に関連したものでしょう。
3 役割演技とは,個人が様々な場面にふさわしい役割を無意識のうちに遂行することを意味する。
今日のテーマの役割演技が登場しました。
役割演技は,他者の役割期待を理解して,それにふさわしいようにその役割を演じることをいいます。
無意識に遂行するのではなく,意識的にその役割を演じます。
難しい表現で出題されていると思いますが,無意識のうちに遂行することなら,それを「演技」とは言わないだろうと推測することは可能です。
4 役割葛藤とは,役割の内容が自分の主観と一致しないことによって生じる困難のことである。
役割葛藤は,役割期待が複数ある中で葛藤することです。
選択肢5の「個人の内部で異なる社会的役割が対立し,両立しない状態」が役割葛藤に近いものでしょう。
5 役割距離とは,個人の内部で異なる社会的役割が対立し,両立しない状態を指す。
役割距離は,他者の役割期待から少しずらして役割を演じることです。
役割距離を説明する例として,子どもが木馬に逆に乗る,というものがあります。
子どもは木馬を揺らしながらかわいく遊ぶことが期待されます。
しかし,慣れてくると,「自分はこんなこともできるのだ」ということを示すために,木馬に逆向きに乗ります。
この程度なら,別に親からも叱られることはないでしょう。これが「少しずらす」という意味です。
役割距離は難しいように感じるかもしれませんが,例を考えるとよくわかります。
子どもがジェットコースターで,怖がらないというのも役割距離だと言えます。
子どもに限らず,ジェットコースターは怖いと思いますが,怖がらない様子を他人に見せることで自分を誇示しています。
子どもは本当は怖いのに,怖がらない様子を見せることがあります。そんなときは,子どもをぐっと抱きしめてあげることが大切です。