今回も社会的行為を取り上げたいと思います。
社会学が取り上げる行為とは,行為自体に本人の意図を含んだ概念です。
他人によって観察可能な行動とは異なります。
さて,今回のテーマは,「行為の意図せざる結果」です。
そのままとらえてよいと思いますが,行為が意図しない結果をもたらすことが「行為の意図せざる結果」の意味です。
行為は意図されたものですが,意図しない結果をもたらすこともあります。
よく用いられる例として,伝統的行為としての村祭りへの参加があります。
祭りは,娯楽が少なかった時代では,祭りを楽しむことが目的だったかもしれません。
しかし,祭りを実施することは,地域づくり,世代間の交流,技術の伝承,などさまざまな結果をもたらします。
これが,「行為の意図せざる結果」です。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題19 社会理論における行為に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 行為とは,行為者自身にとってどのような意味を持つかとは無関係に,他者から観察可能な振る舞いを意味する。
2 伝統的行為とは,行為対象に対して直接の感情や気分によって行われる振る舞いを意味する。
3 価値合理的行為とは,過去の経験に基づき諸個人の内に身についた知覚・思考・実践行動を生み出す性向を意味する。
4 コミュニケーション的行為とは,他者の選択を計算に入れながら,あるいは他者の選択に影響を与えることによって,自己の目的の実現を目指すものを意味する。
5 行為の意図せざる結果とは,ある意図によって行われた行為自体が,思わぬ影響をもたらすことを意味する。
これもなかなかの難問です。
正解は,前説のように,選択肢5です。
5 行為の意図せざる結果とは,ある意図によって行われた行為自体が,思わぬ影響をもたらすことを意味する。
これが正解になっていますが,正解することよりも,ほかの選択肢をしっかり覚えることがこの問題を解く目的であることを忘れないようにしましょう。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 行為とは,行為者自身にとってどのような意味を持つかとは無関係に,他者から観察可能な振る舞いを意味する。
他者からの観察可能な振る舞いは,行動といいます。
行為は,本人にとって意味のあるものです。
2 伝統的行為とは,行為対象に対して直接の感情や気分によって行われる振る舞いを意味する。
伝統的行為は,慣習や習慣などによって行う行為です。
3 価値合理的行為とは,過去の経験に基づき諸個人の内に身についた知覚・思考・実践行動を生み出す性向を意味する。
価値合理的行為とは,信奉する価値の実現のために行われる行為です。行動そのものに意味がある行為であり,結果は重視されません。
4 コミュニケーション的行為とは,他者の選択を計算に入れながら,あるいは他者の選択に影響を与えることによって,自己の目的の実現を目指すものを意味する。
他者の選択を計算に入れながら,あるいは他者の選択に影響を与えることによって,自己の目的の実現を目指すのは,戦略的行為といいます。
コミュニケーション的行為は,コミュケーションを通して相互の理解を目指す社会的行為です。