2022年10月23日日曜日

役割葛藤

今回が役割概念(〇〇役割)を取り上げる最終回です。

 

これだけ集中的に勉強すれば大丈夫だと思うのは危険です。

 

丸暗記型の勉強で知識を押し込んでも,得点するのは容易ではありません。

 

自分なりに簡単でも良いので,説明できるくらいの理解が必要です。丸暗記型の勉強法が得点に結びつきにくいのは,国家試験では同じ文章では出題されることがないからです。

 

また文章で覚えるのは,かなりハードルが高いことです。ポイントを絞って絞って,絞り込んでなるべくシンプルに覚えるのが良いように思います。

 

それの方が形を変えて出題されたとき,応用が効きます。

 

今日のテーマの役割葛藤は以下のように押さえます。

 

役割葛藤のポイントは,複数の役割期待の中で葛藤することが役割葛藤だと押さえることです。

 

それでは,今日の問題です。

 

27回・問題21 役割葛藤の説明に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 幼少期での役割取得において発達上の困難を経験すること

2 他者からの役割期待に応えようとして過度の同調行動をとること

3 一定の場面にふさわしく見える自分を演技によって操作すること

4 他者からの役割期待と少しずらした形で行動すること

5 保有する複数の役割間の矛盾や対立から,心理的緊張を感じること

 

正解は,選択肢5です。

5 保有する複数の役割間の矛盾や対立から,心理的緊張を感じること 


すぐこれを選ぶことはできないかもしれません。しかし,役割葛藤のポイントである「複数の役割期待の中で葛藤すること」に関連しそうなものは,そのほかの選択肢にはありません。

 

それでは,ほかの選択肢も解説します。

 

1 幼少期での役割取得において発達上の困難を経験すること

 

おそらくこれは,危機を示しているものだと思います。危機には,災害や突発的な事故などに遭遇する「状況の危機」と発達課題を達成できないときに生じる「発達の危機」があります。

 

この問題では,「幼少期」に限定して出題されていますが,エリクソンの発達理論では,生まれてから死ぬまでを8つの段階に分けて,それぞれに発達課題を設定しています。

 

エリクソンによる発達段階の発達課題vs危機

乳児期(01歳) 基本的信頼 vs 基本的不信

幼児前期(13歳) 自立性 vs 恥・疑惑

幼児後期(36歳) 自主性 vs 罪悪感

児童期(711歳) 勤勉性 vs 劣等感

青年期(1220歳) 同一性獲得vs 同一性拡散

前成人期(2030歳) 親密 vs 孤立

成人期(3065歳) 世代性 vs 停滞

老年期(65歳以降) 統合 vs 絶望

 

ついでにこれもここで覚えてしまいましょう。

 

2 他者からの役割期待に応えようとして過度の同調行動をとること

 

これは覚える必要はない「過剰適応」を述べたものです。

 

国家試験では,5つの選択肢が必要なので,数合わせのために覚える必要がないようなものを含んで出題します。

 

これが国家試験では,正解するハードルを上げることになります。しかし,多くの場合,そんなところには正解はありません。

 

3 一定の場面にふさわしく見える自分を演技によって操作すること

 

これは印象操作を述べたものです。役割演技は,他者の役割期待に合うように演技するものですが,印象操作は,ほかの人にそれが伝わるように演技して,自分を印象づけるものです。

 

せっかく,役割を演じていてもそれが周りの人に伝わらなければ,意味がありません。

 

印象操作は,そのほかにもいくつかの使われ方をします。

 

おかしな人だと思われないように演技することもあります。これも印象操作です。そうしないと自分の自尊心が傷つくからです。

 

4 他者からの役割期待と少しずらした形で行動すること

 

これは,役割距離を述べたものです。役割距離は,他者からの役割期待と少しだけずらして行動します。ずらすのは少しだけです。

 

このことによって,自分の有能性を示したり,自分自身の心の余裕を生み出したりすることができます。

他者からの役割期待を知っていても,それを演じるのは気恥ずかしいために,大きくずらして行動するような人もいます。本当は気の優しい人なのに,不良っぽい態度を取るヤンキー少年少女です。

 

しかし,これだと他者からは理解できません。そのために,不良だというレッテルを貼られて,本当の不良になっていきます。

 

逸脱行動をこのようなプロセスで説明するのは,ラベリング理論といいます。

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