2022年10月30日日曜日

ラベリング理論

 今回は,ラベリング理論を取り上げます。


ラベリング理論は,周りが逸脱者だとレッテルを貼ることで逸脱すると考えるものです。


ラベリング理論で着目するのは,レッテルを貼られる側ではなく,レッテルを貼る側の問題です。


それでは今日の問題です。


第29回・問題21 ラベリング論の説明として,正しいものを1つ選びなさい。

1 機能主義的な立場から順機能・逆機能,顕在的機能・潜在的機能といった概念を導入しつつ,逸脱や逸脱行動を説明する立場である。

2 地域社会にある文化摩擦に着目し,社会解体がその地域の犯罪などを生み出すとみる立場である。

3 資本主義社会における生産関係の矛盾から派生してくるものが社会的逸脱であるとみる立場である。

4周囲の人々や社会統制機関などが,ある人々の行為やその人々に対してレッテルを貼ることによって,逸脱は作り出されるとみる立場である。

5 犯罪や非行などの社会問題は,下位集団文化の中で学習され,その文化を通じて世代から世代へと伝承されていくとみる立場である。


正解はすぐわかりますが,それ以外は難しく,今まで出題されなかったものを含んで出題しています。


そのように出題すると問題の難易度が上がります。


それでは,解説です。


1 機能主義的な立場から順機能・逆機能,顕在的機能・潜在的機能といった概念を導入しつつ,逸脱や逸脱行動を説明する立場である。


これは緊張理論(アノミー論)を述べたものです。解説を見ているので緊張理論だと書けますが,国試が実施された当時は,ラベリング理論ではないことはわかりましたが,それでは何のことを述べたものであるのかまではわかりませんでした。


しかし,順機能・逆機能について述べたのはマートンです。緊張理論を述べたのはマートンなので,そこから緊張理論ではないかと推測することは可能です。


2 地域社会にある文化摩擦に着目し,社会解体がその地域の犯罪などを生み出すとみる立場である。


これは社会解体論を述べたものです。


国家試験には脈々と流れる文脈が存在します。試験委員が変わってもこういったものが正解になることはめったにありません。


国家試験問題よりも模擬試験の方が点数が取れないのは,そういった文脈を無視して(あるいは知らない?)問題を作っているからだと考えています。


3 資本主義社会における生産関係の矛盾から派生してくるものが社会的逸脱であるとみる立場である。


これはコンフリクト理論を述べたものです。


国家試験問題は,5つの選択肢が必要なので,「その他」みたいなものを出題する必要があります。これは数合わせで出題したものだと考えられます。覚える優性度合いはかなり低いと言えるでしょう。


4 周囲の人々や社会統制機関などが,ある人々の行為やその人々に対してレッテルを貼ることによって,逸脱は作り出されるとみる立場である。


これが正解です。


レッテルを貼る」というところから,ラベリング理論であることがすぐわかります。


5 犯罪や非行などの社会問題は,下位集団文化の中で学習され,その文化を通じて世代から世代へと伝承されていくとみる立場である。


これは文化学習理論(分化的接触理論)を述べたものです。


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