2022年10月11日火曜日

ホネットの承認論

令和元年度のカリキュラムの「社会福祉の原理と政策」では,想定される教育内容の例として「社会的承認」が含まれています。


しかし,テキストには載っていません。なぜか不思議です。


とは言っても国家試験では,既に一度出題されています。それが今日のテーマのホネットの承認論です。


社会的に認める,社会的に認められる,という双方の意味を持つ概念です。


ホネットは,

①愛情

②法制度

③連帯


が社会的承認につながるものだと考えました。


①愛情は,何となくわかると思います。


②法制度は,法によって守られるという要素があります。法が認めているのだから,自分も認めるということにつながるのでしょう。


③連帯は,人のつながりです。サムナーは,社会集団をわれわれという概念を持つ「内集団」と彼らという概念を持つ「外集団」に分類しました。


内集団のほうが連帯意識を持つのではないかと思います。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題23 福祉社会づくりに関わる次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ポランニー(Polanyi,K.)の互酬の議論では,社会統合の1つのパターンに相互扶助関係があるとされた。

2 ブルデュー(Bourdieu,P.)が論じた文化資本とは,地域社会が子育て支援に対して寄与する財のことをいう。

3 ホネット(Honneth,A.)が論じた社会的承認とは,地域社会における住民による福祉団体に対する信頼と認知に関わる概念である。

4 デュルケム(Durkheim,E.)が論じた有機的連帯とは,教会を中心とした共助のことをいう。

5 バージェス(Burgess,E.)が論じた同心円地帯理論は,農村の村落共同体の共生空間をモデルにしている。


ものすごく難しい問題です。


難しい問題があると批判が出ますが,合格基準点が下がるだけの話なので,何の心配もありません。



それでは解説です。


1 ポランニー(Polanyi,K.)の互酬の議論では,社会統合の1つのパターンに相互扶助関係があるとされた。


これが正解です。


互酬とは,お互い様という概念です。何かをしてもらったら何かをして返すといったことが互酬の一つです。


相互扶助の原点に互酬があるのが分かるのではないかと思います。


2 ブルデュー(Bourdieu,P.)が論じた文化資本とは,地域社会が子育て支援に対して寄与する財のことをいう。


文化資本は,立ち居振る舞いや教養などが世代を超えて継承される資本のことをいいます。


医師の子どもは医師が多い,というのも勉強するという家庭文化があるからだと言えます。


3 ホネット(Honneth,A.)が論じた社会的承認とは,地域社会における住民による福祉団体に対する信頼と認知に関わる概念である。


今日のテーマの「ホネットの承認論」が登場しました。


地域社会における住民による福祉団体に対する信頼と認知に関わる概念という小さな事象に関する概念ではありません。


社会的に認める,社会的に認められる,という双方の意味を持つ概念です。


4 デュルケム(Durkheim,E.)が論じた有機的連帯とは,教会を中心とした共助のことをいう。


有機的連帯とは,必要に応じて,様々な能力・技能をもった人たちが集まって行う分業のことをいいます。


有機的とは,変化していくという意味です。


有機的連帯の対義語は,機械的連帯です。機械的連帯は,同質の人たちによる協力といった意味合いです。


機械的連帯では,得意・不得意に関係なく,みんなで同じことをするので,作業効率は決して高くありません。


それに対して,有機的連帯は,さまざまな専門家集団が発生するので,作業効率が上がります。


社会の発展の点からみるとも機械的連帯から有機的連帯に発展していくと考えられます。


5 バージェス(Burgess,E.)が論じた同心円地帯理論は,農村の村落共同体の共生空間をモデルにしている。


同心円地帯理論は,久しぶりに出題されてびっくりしました。数合わせで出題したのかなぁと思ってしまいます。


都市は,都心部を中心とした同心円によって,発展していくと考えるのが同心円地帯理論です。


都心に近いところに住む人は労働者,その郊外に工場地帯,またその先には,富裕層の住宅地といったように広がっていくのが,同心円地帯理論です。都市社会学の概念の一つです。


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