ウェーバーが示した支配システムは,これまでに何度か紹介してきましたが,ここで一度整理しておきたいと思います。
①伝統的支配 |
神聖なもの,慣習によるもの,などによるものです。 日本では昔の天皇制,家父長制(親の言うことは絶対的)などが伝統的支配の類型になります。 |
②カリスマ的支配 |
特別な能力(カリスマ)を持った人による支配です。 「ちょっと極端だけれど,この人の言うことなら従える」と思えるようなものです。 戦国武将の織田信長や豊臣秀吉などがカリスマ的支配と言えるでしょう。 |
③合法的支配 |
規則(法)による支配です。 近代民主国家は,合法的支配です。 伝統的支配やカリスマ的支配と違い,規則により命令し,人々は規則によって従います。 |
簡単にイメージできるまで理解できたら,今日の問題に取り組んでください。
第28回・問題15 ウェーバー(Weber,M.)の支配の諸類型に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 合法的支配とは,ある私的な関係に限って認められたルールに基づく支配体制である。
2 官僚制による支配とは,権力者の恣意的な判断や決定による支配体制である。
3 カリスマ的支配とは,非日常的な資質の持ち主によって成立する支配体制である。
4 家父長制的支配とは,家業を遂行する経営的な能力に基づく支配体制である。
5 伝統的支配とは,過去に制定された法に基づく支配体制である。
知識が不足している人なら混乱するようにうまくまとめた問題だと思います。
そういった面では,かなりのハイセンスだと言えるものかもしれません。
正解は,選択肢3です。
3 カリスマ的支配とは,非日常的な資質の持ち主によって成立する支配体制である。
カリスマ的支配が正解になったのは,もしかするとこの出題が初めてであり,最後ではないかと思います。
変化が大きな時代には,カリスマ的支配が必要となりますが,わざわざカリスマ的支配を取り上げずとも,現代のリーダーシップ理論では学ぶべきものがたくさんあるからです。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 合法的支配とは,ある私的な関係に限って認められたルールに基づく支配体制である。
合法的支配は,ルールに基づく支配体制であることは適切ですが,私的な関係のみならず,官僚制の原理となるのが合法的支配です。
2 官僚制による支配とは,権力者の恣意的な判断や決定による支配体制である。
官僚制による支配は,合法的手配であり,権力者の恣意的な判断や決定による支配体制ではありません。
4 家父長制的支配とは,家業を遂行する経営的な能力に基づく支配体制である。
家父長制的支配は,伝統的支配の一類型であり,家業を遂行する経営的な能力に基づくのではなく,長男が経営を引き継いでいくものです。
経営能力は問われません。
5 伝統的支配とは,過去に制定された法に基づく支配体制である。
伝統的支配は,神聖なものをバックにした支配システムです。