第37回国家試験を見据えて,第34回国家試験以降,新しいカリキュラムで加わったものを少しずつ出題しています。
第36回国家試験では,ファンドレイジングや応用行動分析などが出題されています。
ファンドレイジングはあったけれど,応用行動分析はあっただろうか,と思う人もいるはずです。応用行動分析という言葉は使っていないので,気がつかない人も多いと思います。
今回は,応用行動分析がテーマです。
応用行動分析は,学習理論のオペラント条件づけを基盤として,問題となる行動を変容させるものです。
応用行動分析は,3つの段階に分けて,分析します。
先行条件(先行事象)
↓
行動
↓
結果(結果事象)
行動の前後を分析して,望ましい行動を強化していきます。
それでは,今日の問題です。
第36回・問題101
事例を読んで,就労継続支援B型事業所のE職員(社会福祉士)が,クライエントに危険が及ぶような行動を減らすために,行動変容アプローチを応用して行う対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
知的障害があるFさん(20歳)は,作業中に興味があるものが目に入ると勢いよく外に飛び出してしまうことや,作業時間中でも床に寝転がること等の行動が度々あった。寝転がっているところに起き上がるよう声かけを行うと,引っ張り合いになっていた。Fさんのこれらの行動は,職員や仲間からの注目・関心を集めていた。そこで,Eは,Fさんが席に座って作業を継続することを目標行動にして支援を開始した。
1 Fさんが何かに気を取られて席を立つたびに,報酬を与える。
2 支援を始めて1か月後に,目標行動の変化を評価しベースラインをつける。
3 不適切行動のモデリングとして,職員が転がって見せる。
4 作業が継続できるたびにベルを鳴らし,ベルの音と作業を条件づける。
5 寝転がる前の先行条件,転がった後の結果といった行動の仕組みを分析する。
正解は,選択肢5です。
5 寝転がる前の先行条件,転がった後の結果といった行動の仕組みを分析する。
この事例に当てはめます。
先行条件(作業中に興味があるものが目に入る)
↓
行動(寝転がる)
↓
結果(引っ張り合いになる)
寝転がる前に何があるのか(先行条件)を分析して,そのようなことが起きそうになったら,何かによって,そのような行動をしないようにします。
あるいは,先行条件が起きないように支援していきます。
これが応用行動分析の基本です。
公認心理師では,以下のように出題されています。かなり難しいです。
第4回・問題137
30歳の男性A、会社員。喫煙をやめたいが、なかなかやめられないため、会社の健康管理室を訪れ、公認心理師Bに相談した。Bは、Aが自らの行動を観察した結果を踏まえ、Aの喫煙行動を標的行動とし、標的行動の先行事象と結果事象について検討した。
先行事象が、「喫煙所の横を通ったら、同僚がタバコを吸っている」であるとき、結果事象として、最も適切なものを1つ選べ。
① 喫煙所に入る。
② タバコを吸う。
③ 同僚と話をする。
④ 自動販売機で飲み物を買う。
⑤ コンビニエンス・ストアでタバコを買う。
先行事象(喫煙所の横を通ったら、同僚がタバコを吸っている)
↓
行動(タバコを吸う)
↓
結果事象(同僚と話をする)
つまり,答えは,選択肢③です。
先行事象が起きたとき,自動販売機で飲み物を買って,同僚と話をすれば,タバコは吸わずに済みます。
社会福祉士の問題に話を戻すと,
1 Fさんが何かに気を取られて席を立つたびに,報酬を与える。
先行条件(作業中に興味があるものが目に入る)が起きた時に,席に座っていることができたなら,報酬を与えるという方法もあります。
オペラント条件づけの正の強化の応用です。