2024年2月23日金曜日

あいまいな表現は,正解になる率が高いのは本当?

 昨日の話をもうちょっとだけ確かめてみましょう。


まずは,昨日の教訓・・・


言い切り表現には正解少なし。 「よりも」問題に正解少なし。


それでは・・・



「言い切り表現に正解少なし」の逆は?


あいまい表現に正解多し


第26回・問題6

発達障害に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 

1 学習障害(LD)の原因は,不適切な学習環境である。

2 注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療には,薬物を用いることがある。

3 自閉症(自閉性障害)の症状は,通常6歳以降に出現する。

4 自閉症(自閉性障害)の多くは,精神遅滞を伴わない。

5 自閉症(自閉性障害)の原因は,親の冷たい養育態度である。


まずは,この問題の出題時点と現在の変更点です。


DSM-5では,それまでの自閉症,アスペルガー症候群という診断名はなくなり,自閉症スペクトラム障害に変更されています。


また,注意欠陥多動性障害は,注意欠如多動性障害となっています。


さて,この問題の答えは2です。


文章の結びに着目すると・・・


「用いることがある」


この逆の


「用いることはない」


であれば,


数多くの症例の中で,1例でも用いられることがあれば,成立しない文章になります。


「用いることがある」


であれば,先述のように,1例でも用いられれば,成立します。


薬剤の処方は,使用目的が限定されているかもしれないので,実際には試しに投与しているということはあり得ないかもしれません。あくまでも確率の話です。


「●●することがある」の問題例


第29回・問題27

個人の福祉ニードに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。 

1 利用者のフェルト・ニードとは,専門職が社会規範に照らして把握する福祉ニードのことである。

2 人々の心身機能の状態が同一であれば,福祉ニードも同一である。

3 経済的な福祉ニードは,相談援助の対象とはならない。

4 サービス供給体制の整備に伴い,潜在的な福祉ニードが顕在化することがある。

5 福祉サービスの利用を拒んでいる人の福祉ニードは,専門職の介入によって把握されることはない。


文章の結びを見てみると・・・



1 「ことである」

2 「同一である」

3 「対象とはならない」

4 「顕在化することがある」

5 「把握されることはない」


正解は4の「顕在化することがある」でした。


話は戻って,最初の問題文を見てみましょう。


1 学習障害(LD)の原因は,不適切な学習環境である。


発達障害は,「環境」が要因ではなく,「脳の機能障害」が要因です。そのため間違いですね。


発達障害は,「育て方が悪い」と母親が責められた時代がありました。今でも知識がない義理の両親などはそう思っている人もいるかもしれません。


そうではない,ということを広く知ってもらうための問題だと考えられます。


ソーシャルワークは,根拠をもつことで説得力が増します。


2 注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療には,薬物を用いることがある。


これは,先述のように正解です。


「ことがある問題」は正解になるかもしれないことを頭の片隅に置いて問題を解きましょう。


しかし,この時点では,まだ正解かどうかわからないので,▲をつけておきます。


3 自閉症(自閉性障害)の症状は,通常6歳以降に出現する。


発達障害者支援法では,


この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。


としています。


発達障害は,脳の機能障害であることを理解しておけば,「6歳以降」ということはなさそうだ,と思えるのではないでしょうか。


したがって間違いですね。


4 自閉症(自閉性障害)の多くは,精神遅滞を伴わない。


精神遅滞を伴うかどうかはわからなければお手上げに感じてしまうかもしれません。


知識がなければ答えられないので,この時点では▲をつけておきます。


5 自閉症(自閉性障害)の原因は,親の冷たい養育態度である。


1と同じように,発達障害の要因は「環境」にあるとする文ですね。もちろん間違いです。


国家試験で問われるのは,発達障害の要因は「環境」ではなく,「脳の機能障害」であることです。


国試では,答えがわからない時には,1と5の選択肢のように,同じ要素の選択肢がないかを考えることも時には有効です。


なぜって・・・


正しいものを1つ選ぶ問題の場合


言い方が違っても,同じようなことを言っている選択肢が2つある場合は,どちらも正しいということはあり得ないので,どちらも間違っていると考えられるからです。


この問題は,複数の選択肢を使って,発達障害は「環境」が要因ではなく,「脳の機能障害」が要因である,ということをしっかり押さえてほしい,という出題者のメッセージがこめられていそうです・・・


さて答えを選び出す最終段階までやってきました。


1 ×

2 ▲

3 ×

4 ▲

5 ×


となりました。



それでは,改めて▲の選択肢を見てみます。


2 注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療には,薬物を用いることがある。

4 自閉症(自閉性障害)の多くは,精神遅滞を伴わない。


ここで,登場させたいのが「ことがある問題」。


4も「伴わない」という言い切り表現になっているのが気になります。


どちらも選べなかったら,正解になりやすいほうを選びたいところです。



「ことがある問題」は正解になる可能性高し。 

  → 「あいまい表現に正解多し」 の応用


「言い切り表現」に正解少なし。


ということから,4を消去して2を残します。


今日の教訓


「ことがある問題」は正解になる可能性高し。


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