知識をつけながら,得点力を上げていくには,やっぱり国試問題を使うのが一番の近道です。
第26回・問題1
老化に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 加齢に伴う疾患の増加は,生理的老化の原因になる。
2 生理的老化の特徴の一つに可逆性がある。
3 老化は環境因子に影響されるが,遺伝因子には影響されない。
4 老化が進むとともに,生理機能低下度の個人差は減少する。
5 肺や腎臓は,老化による生理機能低下が顕著な器官である。
今なら参考書類に書いてあるので難しく感じないかもしれません。
しかし,国家試験会場で問題を初めて見たときには,そんなに簡単ではないです。
まず言葉がすぐ入ってきません。
⇒ 1 加齢に伴う疾患の増加は,生理的老化の原因になる。
加齢に伴う疾患とは?
生理的老化とは?
そして,「加齢に伴う疾患」と「生理的老化」の関係性とは?
加齢に伴う疾患とは,どんなものなのだろうか・・・
年をとるとなりやすい病気には,認知症やパーキンソン病などがありそうですね。
生理的老化とは,どんなものだろうか・・・
生理の反対語は病理というらしいです。つまり生理は「正常の」という意味合いになります。正常の老化だったら意味がわかりやすいですね。
耳が遠くなる,目が見えにくくなる,白髪になる,顔のシミが増える,などは正常な老化っぽいです。
問題文に置き換えると・・・
認知症やパーキンソン病などの病気が増えると,耳が遠くなる,目が見えにくくなる,などの正常な老化の原因となる。
何か変ですね。
これは正常な老化ではなく,正常ではない老化,つまり「病的老化」のことを言っているのではないか?
と考えられます。
ここでのキーワードは,「生理的老化」=「正常な老化」がわかっていることです。
⇒ 2 生理的老化の特徴の一つに可逆性がある。
生理的老化はわかりました。
次の疑問は,「可逆性」です。
可逆性は,元に戻ることです。元に戻らないことは不可逆性です。
先の例を,あてはめてみると・・・
耳が遠くなるなどの正常な老化の特徴の一つに,元に戻ることがある。
不老不死でない限り,老化現象はもとに戻ることはなさそうです。もちろんアンチエージングで老化の進行を遅くはできます。
この問題は,
生理的老化の特徴の一つに,不可逆性がある。
あるいは,
病的老化の特徴の一つに,可逆性がある。
というのが,正しいものとなります。
可逆性,不可逆性,の言葉は難しいですが,日本語なら,何とか意味は類推できそうです。
この問題のキーワードは,可逆性の意味がわからなくても,類推できる発想力です。
⇒ 3 老化は環境因子に影響されるが,遺伝因子には影響されない。
環境因子,遺伝因子は,環境が原因となるもの,遺伝が原因となるもの,ですね。遺伝が原因となる老化が存在するかどうかはわかりませんが,「影響されない」という言い切りは,一つでも例外があれば,成り立たなくなります。
⇒ 4 老化が進むとともに,生理機能低下度の個人差は減少する。
80歳代でも60歳代に見える人や,逆に60歳代でも80歳代に見える人がいるのは,経験的にもよくわかることでしょう。
こんな問題に間違う人はいない,と笑っているあなた・・・
国家試験会場では,とにかく冷静になるのは難しいです。どんな問題でも間違う可能性はあります。慎重に・・・。
⇒ 5 肺や腎臓は,老化による生理機能低下が顕著な器官である。
肺は,肺活量が落ちますし,腎臓は,腎機能が落ちます。生理機能の低下が顕著かどうかはわかりませんが,低下するのは間違いないです。
正解は,この選択肢でした。
この問題の特徴は,難しい選択肢を前半に配置していることがわかります。
そこで混乱させようという意図がありそうです。
その証拠に,そんなに難しくない答えを5つめの選択肢に配置しています。
最後の選択肢に至るまでにかなり混乱しているので,難しそうではない問題でも間違う可能性は高いです。
5つめの選択肢も若干難しめに作成されていることはわかりますか?
肺や腎臓は,老化による生理機能低下が顕著な器官である。
肺 腎臓 と2つ並べています。
いくつか並べると,その中に例外を入れることができるので間違い選択肢をつくりやすいです。
この問題に似た間違いをつくると・・・
心臓や腎臓は,老化による生理機能低下が顕著な器官である。
となります。
脳死という概念がなかったときは,心臓の停止が死である,とされていたことから類推できるように,心機能はそれほど低下しません。
肺や腎臓は,老化による生理機能低下が顕著な器官である。 〇
心臓や腎臓は,老化による生理機能低下が顕著な器官である。 ×
試験委員は,受験生は過去問を解いて受験に臨んでいることをよく知っています。
しかも,試験センターは今までの受験生の膨大なデータを持っています。
こういう問題を出せば,間違う,正解する,といったデータです。
機械的に,過去問を解いていたら,
心臓や腎臓は,老化による生理機能低下が顕著な器官である。
という出題をされれば,正解だと思いがちになります。
試験センターもそれをねらっています。
生理的老化の特徴の一つに可逆性がある。×
という問題も,
生理的老化の特徴の一つに不可逆性がある。〇
というように,たった一文字「不」をつけるだけで正解選択肢にすることができます。
この問題で「可逆性」「不可逆性」などの出題から分かるように,国試は,国語力との闘いとも言えます。