まずは,前回の振り返り
難しい言葉に惑わされるな!
簡単な言葉に置き換えることができれば一番良いですが,それができなかった場合,そこを飛ばして読むという方法もあります。
社会的促進は,未学習で複雑な課題については,動因水準が高まるほど,顕著に生じる。
これを以下のように変えます。
社会的促進は,未学習で複雑な課題については,顕著に生じる。
これでも意味が通ります。
この割り切りは,実は得点力を上げるためには,重要だと言えます。
機会があったら,またご紹介します。
それでは今日の問題です。
第26回・問題11
発達に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 身体的発達は,首→胸→腰→脚→足首→足指という頭部から尾部への方向性と,肩→腕→手首→指先という中軸部から末梢部への方向性をとる。
2 個体発生は,それぞれの生物種が成立し絶減するまでの形態的変化,系統発生は,受精卵が成体に達し,更に死に至るまでの形態的変化をいう。
3 言語発達は,喃語,模倣語の言語形成準備期から,言語体系の基礎形成期,言語による抽象的思考が可能となる時期を経て,言語をイメージする力の獲得へと展開する。
4 発達心理学では,時間的経過による発達的変化についての一般的な特徴や法則性を明らかにすることから,出生後から心身の成熟する成人期までを対象範囲としている。
5 新生児は,親和欲求に基づく漠然とした生理的興奮を示すが,やがてこの興奮状態から,情緒の原初形態である快・不快の感情が芽生えてくる。
細かく見ていきましょう。
1 身体的発達は,首→胸→腰→脚→足首→足指という頭部から尾部への方向性と,肩→腕→手首→指先という中軸部から末梢部への方向性をとる。
発達に関する問題は,子育て経験が役立ちます。
この問題を見て,私の子どもが,手を自分で動かせるようになった時,それを面白がって手を動かしながらずっと眺めていたことを思い出しました。ただし,子育て経験がないからといっても不利になることはありません。そのことについては安心して良いと思います。
正解はこの選択肢です。ここで正解を選べなかった人は,迷いの道に引き込まれていきます。
2 個体発生は,それぞれの生物種が成立し絶減するまでの形態的変化,系統発生は,受精卵が成体に達し,更に死に至るまでの形態的変化をいう。
「何だ,この問題は?」
迷いの道の第一歩です。
それでも冷静に読むことができると,次のことに気が付くでしょう。
個体発生 → その人個人
系統発生 → 先祖代々
つまり・・・
個体発生は,受精卵が成体に達し,更に死に至るまでの形態的変化。
系統発生は,それぞれの生物種が成立し絶減するまでの形態的変化。
が正しいこととなります。よって×。
冷や汗ものです。
3 言語発達は,喃語,模倣語の言語形成準備期から,言語体系の基礎形成期,言語による抽象的思考が可能となる時期を経て,言語をイメージする力の獲得へと展開する。
さてさて,次の迷いの道が現れました。
ここで,ヒントになる手掛かりは,ピアジェの発達理論です。
「抽象的思考」があるからです。
ピアジェの発達理論では,
感覚運動期
↓
前操作期
↓
具体的操作期
↓
形式的操作期
というように発達します。
抽象的思考ができるようになるのは,このうちの「形式的操作期」です。つまり最後の段階です。
抽象的思考はかなり高度であることがわかります。
問題文では・・・
言語による抽象的思考が可能となる時期を経て,言語をイメージする力の獲得へと展開する。
とさらに次の段階が示されているので,間違いとなります。
4 発達心理学では,時間的経過による発達的変化についての一般的な特徴や法則性を明らかにすることから,出生後から心身の成熟する成人期までを対象範囲としている。
またまた新たな迷いの道です。
先ほどは,ピアジェの発達理論の知識が求められました。今度はエリクソンの発達理論です。
エリクソンは,乳児期から老年期まで8つの段階に分けて,それぞれの発達課題を示しています。
つまり,人は死ぬまで発達することを示しています。よって×。
5 新生児は,親和欲求に基づく漠然とした生理的興奮を示すが,やがてこの興奮状態から,情緒の原初形態である快・不快の感情が芽生えてくる。
親和欲求という難しい用語が出てきました。これは読み飛ばすことができません。
親和欲求とは,誰かと一緒にいたいと思う欲求です。この気持ちは,快・不快の感情よりも上位にあると考えられます。よって×。
赤ちゃんが母親と離れたくないという感情はわかりますが,誰かと一緒にいたいというのは,よく考えてみると不自然ですね。
最後の最後まで,迷いの道だらけで構成された問題です。
最初の選択肢を選べなかったら,迷いの道に深く深く入り込むように意図された問題です。
そのため,簡単に感じる人ととてつもなく難しく感じる人に分かれたのではないかと思います。