第26回・問題2
人体の部位と病変に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 変形性関節症が頻発する部位は,肘関節である。
2 手をついて転倒して起きる骨折は上腕骨に多い。
3 側臥位では,仙骨部に褥瘡ができる。
4 対麻痺とは,左右両側の下肢の麻痺である。
5 脳死とは,脳幹以外の機能の不可逆的な停止をいう。
第26回国試は,魔の第25回国試の次年度だったということもあり,慎重な問題の作り方がなされていたようです。
第25回がなぜ悪夢のような魔の国試だったかというと,その前の年の26.3%からこの年は18.8%まで低下したからです。
勉強しても得点できない問題が多く,そして答えを2つ選ぶ問題がひっそりと出現した年でもあります。2つ選ぶ問題があったことを最後の最後まで気がつかなかった人も多かったと聞きます。
話を戻します・・・
なぜ,この問題を見て,慎重な作問だったと思ったかと言うと・・・
第23回・問題2
成人疾患と人体部位に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 側臥位での褥瘡好発部位は,仙骨部である。
2 対麻痺では,両側上肢に麻痺が認められる。
3 痛風発作は,足の親指のつけ根部の関節に多い。
4 手をついて転倒すると,前腕の橈骨近位端で骨折することが多い。
5 脳血管障害による片麻痺は,脳の障害部位と同側に症状が出る。
この問題を下書きにして,問題をつくったのだなあ,と感じたからなんです。
受験生が最も苦労するのは,今までと違うスタイルの問題に対応しなければならないことです。
同じような出題でも,スタイルが変わった出題になると極端に難しく感じてしまいます。
第23回問題3と第26回問題2は見れば見るほどそっくり・・・
5つの選択肢のうち,実に3つが同じです。手抜きかいな,と思ってしまうほどです。
第23回 手をついて転倒すると,前腕の橈骨近位端で骨折することが多い。 ×
第26回 手をついて転倒して起きる骨折は上腕骨に多い。 ×
これは2つとも間違い。
第23回 側臥位での褥瘡好発部位は,仙骨部である。 ×
第26回 側臥位では,仙骨部に褥瘡ができる。 ×
これも2つとも間違い。
第23回 対麻痺では,両側上肢に麻痺が認められる。 ×
第26回 対麻痺とは,左右両側の下肢の麻痺である。 〇
ここに来てようやく正解が出て来ました。
第23回問題2の答えは,3の痛風発作は,足の親指のつけ根部の関節に多い。自分自身が痛風だったり,周りに痛風の人がいたら,チョー簡単! 1点ゲット!!
でもでも・・・
痛風を覚えても第26回の問題でわかるように,痛風はもう出題されません。選択肢も同じ,答えも一緒なら,問題は易しくなりすぎるからです。
簡単すぎる選択肢は,出題されにくいという傾向が見えてきそうですね。
それに比べて,対麻痺は勉強した人でなければ分かりにくいものではないでしょうか。
さて,それでは第26回の問題を一緒に見ましょう。
1 変形性関節症が頻発する部位は,肘関節である。
介護の仕事をしている人なら,変形性関節症とはどんなものかわかるかもしれませんね。極端なO脚になっている高齢女性を見たことはないですか? あれが変形性膝関節症です。
2 手をついて転倒して起きる骨折は上腕骨に多い。
これも簡単そうで難しいです。第23回での出題がなければ,これを選んでしまいそうです。「橈骨遠位端に多い」。これはしっかり覚えておきたいです。遠位端は体の中心側から遠い側,近位端は体の中心部に近い側ですね。
3 側臥位では,仙骨部に褥瘡ができる。
側臥位(横向き),仰臥位(あおむけ)がわかっていることが前提の問題です。褥瘡は,圧迫されることで血液の流れが悪くなるなどでおきますね。
介護現場にいる方ならそんなに難しい問題ではないですが,学生は「仙骨部」とはどこなのかが引っかかると思います。国試では,このようなちょっぴり難しい用語を入れ込むことで,受験生を混乱させます。
仙骨部は骨盤の真ん中にあたる部分です。
4 対麻痺とは,左右両側の下肢の麻痺である。
第23回の問題で痛風に意識がいって,対麻痺をあいまいに覚えていると解けない問題です。
これが正解です。
片麻痺に比べると対麻痺は聞き慣れない率が高いので,これからも繰り返し出題されるでしょう。
対麻痺は,両下肢の麻痺。これが上半身にも麻痺があると四肢麻痺になります。
片麻痺は,右あるいは左の半身の麻痺です。
5 脳死とは,脳幹以外の機能の不可逆的な停止をいう。
問題1に続き,不可逆という言葉が出てきました。しつこいです。可逆的,不可逆的に拒否反応があると,とてもいやな気持ちになるでしょう。試験委員は,本当にいやらしいです。少しずつ少しずつ,戦意を喪失させようとする意図がこんなところにも見えてきます。
可逆的=もとに戻る
不可逆的=もとに戻らない
ここで,注目するのは,この部分ではなく,「以外の」という部分です。
不可逆的という部分に目をもっていかせて,「以外の」という部分に目をいかせないようにする出題テクニックです。正しくは脳幹も含めてすべての脳機能です。
「以外の」「含めて」などは地味な表現ですが,間違い選択肢をつくりやすい表現であることは要注意です。これから過去問を解くときは,このような表現があったら,特に気を付けて問題を読んでみることが大切です。
試験が終わった後に問題を見ると,なぜこんな問題を間違ったのだろうということはよくあることです。
国家試験問題は,一つひとつの問題の難易度は高くないのに,実際には正解するのは簡単ではないということをよく肝に銘じておきましょう。