2024年6月30日日曜日

日本の救貧制度の歴史に関する問題

日本の救貧制度に歴史問題は,出るポイントが限られています。


恤救規則

救護法

旧・生活保護法

現・生活保護法



たった4つしか問われません。


過去には以下のような問題が出題されています。


我が国の現行生活保護法が成立する経過に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。 (第22回・問題58)

1 生活困窮者緊急生活援護要綱(昭和20年)は,生活援護を要する者のうち失業者は除外した。

2 旧生活保護法(昭和21年)は制定時,民生委員を市町村が行う保護事務の協力機関と定めていた。

3 旧生活保護法(昭和21年)は,その目的を生活の保護を要する状態にある者の生活を国が差別的又は優先的な取扱をなすことなく平等に保護して,社会の福祉を増進するとしていた。

4 連合国軍総司令部(GHQ)は,覚書「社会救済」(昭和21年)によって,日本政府に生活保護の算定基準に関するガイドラインを示した。

5 社会保障制度審議会の「生活保護制度の改善強化に関する件」(昭和24年)では,生活保護制度を社会保険制度へ転換すべきであると提言した。


我が国の公的扶助制度の沿革に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。(第23回・問題56)

1 恤救規則(明治7年)では,生活に困窮する「無告の窮民」に対し米の現物給付を行った。

2 救護法(昭和4年)では,救護を受ける者は施設に収容することを原則とした。

3 救護法(昭和4年)では,救護の対象となる者について,扶養義務者が扶養できる場合には,急迫した場合を除き救護しないとされた。

4 旧生活保護法(昭和21年)では,能力があるにもかかわらず勤労の意思のない者は,急迫した場合を除き保護の対象から除外された。

5 旧生活保護法(昭和21年)では,日本国憲法に基づく健康で文化的な最低生活保障の考え方を導入した。


旧生活保護法(昭和21年)の内容に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。 (第24回・問題56)

1 第1条の保護の目的は,最低生活の保障と無差別平等であった。

2 保護を行う責任は,都道府県知事によることとされていた。

3 教育及び住宅に関する保護は,生活扶助に含まれていた。

4 国家責任を明確にする目的から,保護費のすべてを国が負担していた。

5 数次の基準改訂を行い,エンゲル方式による最低生活費の算定方式の導入を行った。


我が国における戦前の低所得・貧困者救済の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 (第25回・問題64)

1 恤救規則では,生活困窮者が生活に必要な食料を現物で給付していた。

2 方面委員制度は,救護法を実施するために創設されたものであり,これを契機にして全国に方面委員が配置された。

3 防貧的な経済保護事業においては,公設市場,公益質屋,公営浴場などの施設が設置され,更に,職業紹介などの失業保護事業が展開された。

4 救護法の成立に伴い,法の運営を行うために内務省に救護課が設置された。

5 軍事救護法は,戦時体制において一般の生活困窮者及び軍人やその家族を救済の対象としていた。


現在の生活保護法成立前の公的扶助制度に関する記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 (第28回・問題63)

1 恤救規則(1874年(明治7年))は,高齢者については65歳以上の就労できない者を救済の対象とした。

2 救護法(1929年(昭和4年))は,救護を目的とする施設への収容を原則とした。

3 救護法(1929年(昭和4年))における扶助の種類は,生活扶助,生業扶助,助産の3種類であった。

4 旧生活保護法(1946年(昭和21年))は,勤労を怠る者は保護の対象としなかった。

5 旧生活保護法(1946年(昭和21年))は,不服申立ての制度を規定していた。


何度も同じことが問われているのがよく分かることでしょう。


それでは,今日の問題は,上記のうちの第25回の問題です。



第25回・問題64

我が国における戦前の低所得・貧困者救済の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 恤救規則では,生活困窮者が生活に必要な食料を現物で給付していた。

2 方面委員制度は,救護法を実施するために創設されたものであり,これを契機にして全国に方面委員が配置された。

3 防貧的な経済保護事業においては,公設市場,公益質屋,公営浴場などの施設が設置され,更に,職業紹介などの失業保護事業が展開された。

4 救護法の成立に伴い,法の運営を行うために内務省に救護課が設置された。

5 軍事救護法は,戦時体制において一般の生活困窮者及び軍人やその家族を救済の対象としていた。


この科目の歴史問題はいつも簡単ですが,さすがは魔の第25回国試と呼ばれる年の問題です。

見たことのないものが並んでいます。


このような問題は,問題の中に手掛かりを見つけて消去する慎重さが求められます。

それでは,詳しく見て行きましょう。


1 恤救規則では,生活困窮者が生活に必要な食料を現物で給付していた。


江戸時代ならともかく恤救規則は明治時代の法律です。

食料の現物給付は考えられません。


米代の金銭給付が正しいです。


よって×。



<余談>


江戸時代,年貢は物納でした。

明治政府になって,1873年に地租改正を行います。

これによって物納から金納に変わりました。


地租改正は明治政府にとっては大事業です。

恤救規則は地租改正の次年の1874年に成立しています。


地租改正は農民の大反発を受けながらも断行しました。

そんな時代背景にあって,食料の現物給付は絶対に行わないはずです。


2 方面委員制度は,救護法を実施するために創設されたものであり,これを契機にして全国に方面委員が配置された。


方面委員制度は1918年にできています。


救護法は,世界大恐慌が起きた年,1929年(にくい年と覚えます)に成立しました。

第29回国試では,


戦前の方面委員による救護法制定・実施の運動は,ソーシャルアクションの事例とされる。(第29回・問題35・選択肢2)


これは正解です。


これから分かるように,方面委員の活動が救護法制定につながっていきます。


救護法の生みの親は方面委員であり,救護法を実施するために創設されたものでは決してありません。


よって×。


3 防貧的な経済保護事業においては,公設市場,公益質屋,公営浴場などの施設が設置され,更に,職業紹介などの失業保護事業が展開された。


これはよく分かりません。こんな時は冷静に▲をつけます。


答えを言うと,これが正解です。



4 救護法の成立に伴い,法の運営を行うために内務省に救護課が設置された。


厚生省設置までの歴史を確認しましょう。


1917(大正6)年 内務省に救護課設置。

1919(大正8)年救護課を社会課に改称。

1920(大正9)年に社会課を社会局に昇格させる。

1938(昭和13)年に内務省から独立して,厚生省を設置する。


初代内務卿は,大久保利通です。


以来ずっと内務省はエリート官庁です。

内務省から独立して厚生省になってもエリート官庁であるのは今も変わりません。


国家予算の30%も預かる官庁です。

当然ですね。



さて,問題に戻ります。


内務省救護課設置は,1917年。


救護法制定は,にくい年の1929年です。


救護法の運営を行うために,内務省に救護課を設置したわけではありません。

軍事救護法(1917年)の事務を行うために,救護課がつくられました。

よって×。


その直後に米騒動が起き,国民の生活が困窮することで国が転覆しかねないことに気づいた政府は,社会事業(現在の社会福祉事業)に関与するようになっていきます。

その事務を行うために,救護課を改変して社会課になります。


5 軍事救護法は,戦時体制において一般の生活困窮者及び軍人やその家族を救済の対象としていた。


軍事救護法は1917年に制定されています。


軍事救護法は,その名の通り,傷ついた兵士,兵士の遺族のうち,貧困に陥った者を対象としていました。


よって×。


一般の生活困窮者は明治初期に制定された恤救規則がその対象としていた時代です。


軍事救護法が一般の生活困窮者を対象とするなら,その後に出来た救護法は必要ないでしょう。


この選択肢は難しいものだと思いますが,軍事救護法が一般の生活困窮者を対象とするなら,救護法の存在価値は何? といった疑問が持てたなら消去できます。


選択肢5を消去出来た人だけが,おそらくこの問題で正解できたのではないでしょうか。


法制度は,適用範囲が重ならないように作られていくことを覚えておきたいです。


<今日の一言>


 知らないものが出題されても,ヒントは必ずどこかにある!!

2024年6月29日土曜日

日本の社会保障制度の仕組み

日本の社会保障制度は,1922年・大正11年にできた炭鉱労働者などのいわゆるブルーカラーを対象とした健康保険法から始まりました。


日本の社会保障制度の施策を整理すると・・・


1962年 社会保障制度審議会による


社会保険 → 一般所得階層に対する施策

社会福祉 → 低所得階層に対する施策

公的扶助 → 貧困階層に対する施策


人口割合でみると


一般所得階層 > 低所得階層 > 公的扶助


となります。


ベンサムによる功利主義「最大多数の最大幸福」で考えると,最大多数なのは一般所得階層なので,社会保険制度を充実させることが,国家全体で見た時,最も幸福度が大きくなります。


さて,今日のテーマは「日本の社会保障制度の仕組み」です。


社会保障制度は,財源によって,社会保険と社会扶助に分けられます。


社会保険は,日本には5つの制度があります。日本の社会保険には財源には公費も使われていますが,基本的には社会保険料を使って運用されます。


そのため,財源割合で言えば,公費が社会保険料を上回ることは絶対にありえません。

公費負担分は社会保険を支えるためのものです。


社会扶助は,児童手当などの各種手当や公的扶助(生活保護)などです。

社会扶助は,公費で行われ,事前の拠出は必要とされていません。


それでは特徴を整理してみましょう。



<社会保険> 

・防貧的に作用する。(貧困にならない)

・保険料の拠出を前提とする。

・保険事故が発生した場合に給付される。

・基本的には給付に所得制限はない(基本的という条件をつけているのは,20歳前に初診日がある場合は,20歳になると障害年金が給付されるが,所得が多いと給付されないため)。


<社会扶助> 

・救貧的に作用する。(貧困から救う)

・事前に納税していなければならないなどの条件はない。

・所得制限があるものが多い。


さて,これらを元に今日の問題です。


第25回・問題63

我が国における社会保険と公的扶助の性質・機能の違いに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会保険は原則として金銭給付により行われ,公的扶助は原則として現物給付により行われる。

2 社会保険は保険料の拠出を給付の前提とし,公的扶助は事前の納税を給付の前提としている。

3 社会保険では個別の事情に応じた給付が行われるのに対し,公的扶助では最低限度の生活を保障するために定型的に一律の給付が行われる。

4 社会保険は貧困に陥った後に給付が開始され,公的扶助は貧困に陥らないように事前に支給される。

5 社会保険では保有する資産に関係なく給付が行われるが,公的扶助では資産調査を経て給付が行われる。


社会保険と公的扶助の違いに関する問題です。


「社会保障」の科目では,社会保険と社会扶助の違いとして出題されます。

2つの科目にまたがるのでしっかり覚えておきたいです。


それでは詳しく見て行きましょう。


1 社会保険は原則として金銭給付により行われ,公的扶助は原則として現物給付により行われる。


どちらも原則は,金銭給付です。


よって×。


公的扶助のうち,原則現物給付なのは,医療扶助と介護扶助の2つだけです。

社会保険も基本は,金銭給付です。医療保険と介護保険は,原則現物給付です。


医療と介護は,それぞれのサービスを提供することで,それぞれのニーズを充足するからです。


2 社会保険は保険料の拠出を給付の前提とし,公的扶助は事前の納税を給付の前提としている。


公的扶助は,貧困層を対象としています。


生活保護は,憲法第25条の生存権保障,つまりは「健康で文化的な最低限度の生活保障」のための法律です。


事前の納税を前提としていたら,セーフティネットとしての機能は果たさなくなってしまいます。


もちろんこんな規定はありません。


よって×。


3 社会保険では個別の事情に応じた給付が行われるのに対し,公的扶助では最低限度の生活を保障するために定型的に一律の給付が行われる。


社会保険は,その保険が設定した保険事故が発生した場合に給付されます。


個別の事情は考慮されません。


公的扶助は,最低限度の生活を維持できない不足分を給付するものです。


社会保険の記述も公的扶助の記述もどちらも間違いです。


よって×。


4 社会保険は貧困に陥った後に給付が開始され,公的扶助は貧困に陥らないように事前に支給される。


社会保険は,貧困に陥らないように防貧的に機能します。


公的扶助は貧困に陥った人を救うために機能します。


よって×。


5 社会保険では保有する資産に関係なく給付が行われるが,公的扶助では資産調査を経て給付が行われる。


これは正解です。資産調査(ミーンズテスト)が行われるのは,公的扶助です。


「貧困に対する支援」は,覚えるアイテムが少ないので,法制度系の科目の中では最も点数が取りやすい科目です。

2024年6月28日金曜日

合格したいなら:決してしてはいけない勉強法はこれだ!!


もっとも避けたい勉強法は・・・


すべてを丸暗記すること!!



法制度は丸暗記が比較的使えます。それと同じように理論系も丸暗記すると,まったく歯が立たないでしょう。



文章は,ちょっと変えていますが,以下のような出題があります。



①バートレットは,社会生活機能の概念を,環境からの要求と個人が試みる対処との交換及び均衡に焦点化してとらえた。


②バートレット(BartlettH)は,人々が試みる対処と環境からの要求との間で保たれる均衡関係としてとらえた。



どちらも正しい文章です。


実は,①は,以下のように出題されたものです。



ゴスチャ(GoschaR.)らは,社会生活機能の概念を,環境からの要求と個人が試みる対処との交換及び均衡に焦点化してとらえた。(第25回問題101選択肢4



環境からの要求
 ↓  ↓
(交互作用) ⇒ バランスを取る
 ↑  ↑
人が試みる対処


このような理解が最低でも必要です。


バートレットは,社会生活機能の概念を,環境からの要求と個人が試みる対処との交換及び均衡に焦点化してとらえた。


と丸暗記していたら,おそらく正解選択肢の


バートレット(BartlettH)は,人々が試みる対処と環境からの要求との間で保たれる均衡関係としてとらえた。


は正解だと思えないのではないでしょうか。


法制度には,丸暗記は使えます


しかし,それでも意味を理解していないと,あれっ,どうだったのだろうと思ってしまいます。


何度か紹介しているように,理論系の問題で,間違い選択肢を作る時は,かなりうまく作らないと文章が不自然になることがあります。


それに比べて,法制度は,法律に基づいて作られているので,都道府県を市町村に変えるような単純な処理で間違い選択肢を作ることができます。


そのため,問題文を見た時,どうだったのかなぁ,と分からなくなってしまうのです。


理論系の問題は難しいので,かなり勉強しても分かりにくい問題は,誰もが正解しにくいです。

それに比べて,


法制度は,しっかり覚えた人と曖昧に覚えていた人で,大きく差がつきます。


注意が必要です。合否を分けるのは,本当は法制度です。



それでは,今日の問題です。



第25回・問題62

「障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村長は,毎年度,障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の状況,虐待があった場合に採った措置等を公表しなければならない。

2 養護者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は,速やかに,市町村に通報しなければならない。

3 市町村障害者虐待防止センターの長は,精神障害者,知的障害者に対する後見開始等の審判の請求をすることができる。

4 都道府県及び都道府県障害者権利擁護センターは,使用者による障害者虐待の通報を受けたときは,公共職業安定所(ハローワーク)に報告しなければならない。

5 地域の住民による虐待は,この法律における障害者虐待に当たる。



超難しかった第25回国試の割に,ちゃんと勉強した人には,珍しく点数を取らせてくれる問題だったかもしれません。

それでは,詳しくみていきましょう。


1 市町村長は,毎年度,障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の状況,虐待があった場合に採った措置等を公表しなければならない。


市町村長は都道府県知事に対して,報告義務があります。

都道府県知事はそれを公表しなければなりません。

よって×。


2 養護者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は,速やかに,市町村に通報しなければならない。


障害者虐待防止法,児童虐待防止法,高齢者虐待防止法は,発見者に通報義務を課しています。

よって正解です。


DV防止法は,努力義務となっています。


障害者の場合の通告先はちょっと複雑です。


養護者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。


障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。


使用者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村又は都道府県に通報しなければならない。



<通報先のまとめ>

擁護者,障害者福祉施設従事者等による虐待の場合 
 → 市町村

使用者による虐待の場合 
 → 市町村又は都道府県

となっています。なぜか使用者の場合は都道府県も含まれているのです。

しっかり覚えおきましょう。


3 市町村障害者虐待防止センターの長は,精神障害者,知的障害者に対する後見開始等の審判の請求をすることができる。


<成年後見制度の申立権者>

「本人」「配偶者」「四親等以内の親族」「検察官」等。


親族等がいない認知症高齢者,知的障害者,精神障害者等の場合,市町村長も申立てることができることとなっています。


市町村障害者虐待防止センターの長は,申立権者ではありません。

よって×。


4 都道府県及び都道府県障害者権利擁護センターは,使用者による障害者虐待の通報を受けたときは,公共職業安定所(ハローワーク)に報告しなければならない。


都道府県が報告しなければならないのは,都道府県労働局です。


よって×。


5 地域の住民による虐待は,この法律における障害者虐待に当たる。



何度も出て来ましたが,障害者虐待は,


養護者による虐待
障害者福祉施設従事者等による虐待
使用者による虐待


この3つだけが対象です。

よって×。

2024年6月27日木曜日

総合支援法と雇用促進法の就労支援の整理

障害者福祉は,障害者分野になじみのない人にとっては,法制度を覚えるのはとても大変に感じることでしょう。


しかし前回ご紹介したように,他の分野と似た部分もあるので,それらと比較することで覚えやすくなるものもあります。


この分野が難しく感じるのは,覚えなければならない法制度が多いということもあります。

その中の中心は,障害者総合支援法です。しっかり覚えたいです。


さて,今日のテーマは,総合支援法と雇用促進法の就労支援の整理です。


障害者総合支援法の就労支援(福祉的就労)

・就労移行支援

・就労継続支援(A型・B型)

・就労定着支援

・就労選択支援(2025年10月~)


障害者雇用促進法の就労支援(一般就労)

・障害者職業センター(職業評価,ジョブコーチなど)

・障害者就業・生活支援センター(就業,生活両面の相談など)


その他(一般就労)

ハローワーク(職業紹介など)


等が中心です。


配置される職員等


障害者職業センター

 ジョブコーチ

 障害者職業カウンセラー

障害者就業・生活支援センター

 就業支援担当者&生活支援担当者

ハローワーク

 就職支援ナビゲーター

 障害者就労支援チーム


これをもとに,今日の問題です。


第25回・問題59

障害者就労を支援する連携機関,専門職及び事業に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 地域の関係機関との連携による障害者就労支援チームは,障害者職業センターが中心となって設置する。

2 公共職業安定所(ハローワーク)は,職場適応援助者(ジョブコーチ)の養成,研修を行っている。

3 障害者就労支援基盤整備事業は,福祉施設や学校等の関係者に対する,一般雇用についての理解の促進,就労支援に関する理解,ノウハウの向上を図り,障害者の福祉から一般雇用への移行を推進する基盤を整備することを目的とする。

4 障害者職業カウンセラーは,障害者就業・生活支援センターに配置され,就業に関する相談支援等を行う。

5 公共職業安定所(ハローワーク)は,精神障害者及び事業主に対して,主治医等の医療関係者との連携のもと,新規雇入れ,職場復帰,雇用継続等のための支援ニーズに対して,専門的・総合的な援助を行う精神障害者総合雇用支援事業を実施している。


先述の情報だけでは分からないものもあると思います。


それでは,詳しく見ていきましょう。


1 地域の関係機関との連携による障害者就労支援チームは,障害者職業センターが中心となって設置する。


障害者就労支援チームは,ハローワークが中心となって,福祉施設利用者,特別支援学校卒業者等の福祉的就労から一般雇用への移行を図るため、就職に向けた準備から職場定着までの一貫したチーム支援を行っています。


障害者職業センターではないので,×。


2 公共職業安定所(ハローワーク)は,職場適応援助者(ジョブコーチ)の養成,研修を行っている。


ジョブコーチは,地域障害者職業センターです。


よって×。


3 障害者就労支援基盤整備事業は,福祉施設や学校等の関係者に対する,一般雇用についての理解の促進,就労支援に関する理解,ノウハウの向上を図り,障害者の福祉から一般雇用への移行を推進する基盤を整備することを目的とする。


障害者就労支援基盤整備事業だけが分からないと思います。


国は,やっていることを広めたいという気持ちがあります。

よく知られていないものは,国試に出題すると広く知られることになります。


結論をいうと,これが正解です。


しかしこの国試が実施された時点では,知らなかったと思うので▲をつけておきます。


4 障害者職業カウンセラーは,障害者就業・生活支援センターに配置され,就業に関する相談支援等を行う。


障害者職業カウンセラーが配置されているのは,地域障害者職業センターです。


よって×。


5 公共職業安定所(ハローワーク)は,精神障害者及び事業主に対して,主治医等の医療関係者との連携のもと,新規雇入れ,職場復帰,雇用継続等のための支援ニーズに対して,専門的・総合的な援助を行う精神障害者総合雇用支援事業を実施している。


精神障害者及び事業主に対しての支援を行っているのは,地域障害者職業センターです。

特に事業主支援は地域障害者職業センターの特徴です。


精神障害者総合雇用支援事業も知らないと思いますが,間違いであることを示すポイントを入れ込んでくれています。


ここに気が付かないと引っ掛けられます。


これを消去できた人は,▲をつけていた選択肢3を正解にすることができました。


国家試験の特徴として,「はじめまして問題」を出す時は,誰もが分からないので,次のような処理がされて出題されます。


はじめまして問題を正解選択肢にする場合

 ほかの選択肢が間違いだと分かるような頻出のものを出題する。消去法ではじめまして問題が残る。


はじめまして問題を間違い選択肢にする場合

 ほかの選択肢の中に頻出のものを出題し,その選択肢を正解にする。


「はじめまして問題」を見るとかなりドキドキしますが,落ち着けばこのルールに従って出題されていることに気が付くことでしょう。


決して怖くないです。

2024年6月26日水曜日

地域相談支援と計画相談支援の整理の仕方

障害者分野になじみがない人にとっては,この分野は苦手に感じるかもしれません。


しかし,障害者福祉制度の多くは,介護保険になぞって作られているので,高齢者分野の人は理解しやすいと思います。


高齢者分野に関連のない人は,2つの制度を整理しながら覚えると知識が定着します。



さて,今日のテーマは「地域相談支援と計画相談支援の整理の仕方」です。


地域相談支援には,地域移行支援と地域定着支援があります。


精神科病院や入所施設で生活している精神障害者などが地域で生活するための相談支援です。


基本は医療の領域です。

医療に関するものの多くは,市町村の役割ではなく,都道府県の役割となっています。


地域相談支援は,指定一般相談支援事業者が行います。


指定するのはもちろん都道府県です。


もう一方の計画相談支援は,ケアマネジメントです。


ケアプランを作成するサービス利用支援,モニタリングを実施する継続サービス利用支援,の2つがあります。


計画相談支援は,指定特定相談支援事業者が行います。


指定するのは市町村です。


介護保険の居宅介護支援事業者の指定も市町村が行っています。

以前は,都道府県,指定都市,中核市が行っていましたが,現在は,市町村に権限移譲されています。


ケアマネジメントを行う事業者の指定は市町村


と覚えるのがシンプルになりました。



介護保険と似たものには,基幹相談支援センターがあります。


地域包括支援センターと業務もよく似ています。


しかし違う点もあります。


地域包括支援センターの設置は,任意


基幹相談支援センターの設置は,努力義務


2024年4月の改正で,基幹相談支援センターは,任意から努力義務に変更になりました。


この部分は,覚えるのが少し面倒になりました。


さて,これらの情報をもとに今日の問題です。



第25回・問題57 

障害者総合支援法のもとでの相談支援に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 支給決定プロセスにおいて,サービス等利用計画案は支給決定がなされた後に作成されるものである。

2 相談支援専門員は,指定計画相談支援においてサービス等利用計画を作成し,地域移行支援と地域定着支援を行う。

3 地域定着支援は,障害者支援施設に入所している障害者や精神科病院等に入院している精神障害者に対して,住居の確保や新生活の準備等について支援するものである。

4 相談支援専門員は,サービス利用支援においてサービス等利用計画を変更するとともに,関係者との連絡調整を行う。

5 基幹相談支援センターは,虐待防止等権利擁護のために必要な援助を行うことが期待されている。


先の情報だけでは,分かるものと分からないがあるかもしれませね。


それでは,詳しく見ていきましょう。


1 支給決定プロセスにおいて,サービス等利用計画案は支給決定がなされた後に作成されるものである。


さきほどの説明にはなかったので,分からない人は▲をつけておきましょう。


先に,サービス等利用計画案を作成して,それをもとに市町村審査会の意見などを含めて,市町村が支給決定します。


支給決定後には,正式なサービス等利用計画を作ります。


よって×です。


2 相談支援専門員は,指定計画相談支援においてサービス等利用計画を作成し,地域移行支援と地域定着支援を行う。


計画相談支援は,ケアマネジメントです。


地域移行支援と地域定着支援は,地域相談支援です。


よって×。


3 地域定着支援は,障害者支援施設に入所している障害者や精神科病院等に入院している精神障害者に対して,住居の確保や新生活の準備等について支援するものである。


地域移行支援と地域定着支援は,詳しく説明しませんでした。


しかし,イメージは湧くでしょう。


地域移行支援は,施設・病院から地域に移行するための支援,地域定着支援は,地域に移行した障害者が地域生活を継続するための支援です。


施設入所・病院入院者に対して行うのは,地域移行支援です。


よって×。


4 相談支援専門員は,サービス利用支援においてサービス等利用計画を変更するとともに,関係者との連絡調整を行う。


サービス利用支援は,最初にケアプランをつくる支援です。


支給決定後,定期的に行うのは,継続サービス利用支援における継続サービス等利用計画の作成です。継続サービス利用支援は,モニタリングとケアプランの見直しを行います。


よって×。


5 基幹相談支援センターは,虐待防止等権利擁護のために必要な援助を行うことが期待されている。



基幹相談支援センターは,介護保険の地域包括支援センターに相当します。権利擁護を業務の一つとしているのは,障害者も介護保険も同じです。よって正解です。


丸覚えするのではなく,一つひとつの制度の理由を考えると,名称も覚えやすくなり,ど忘れも起きにくくなります。

漢字は,それだけで意味を持っています。そこから業務を推測することが可能です。


選択肢1は,▲を付けました。


しかし推測することはできます。


支給決定しているのに,サービス等利用計画案はおかしいのではないか,と思うでしょう。


この疑問が湧けば,サービス等利用計画案ではなく,正式なサービス等利用計画はいつ作成するのだろう,といったもう一つの疑問が出て来ます。


このように,制度の内容を知らなくても,対応が可能なこともあります。

2024年6月25日火曜日

一見難しそうに見えても,それは見せかけです!

 敵を知れば,百戦危うからず


国家試験問題がどのように設計されているのかを知ることは,覚える時もポイントを外さずに済みます。

つまり遠回りせずに済むということです。


ある方が面白い表現を使っていたので,それを使わせていただきますが,どんなに勉強しても「はじめまして問題」が出題されます。


それは解けたらラッキーなレベルの問題と言えます。


しかし,試験センターは,そんな中にも必ずヒントを含めて出題しています。



さて,今日の問題です。


第25回・問題56

障害者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 1997(平成9)年から2000(平成12)年にかけて社会福祉基礎構造改革が行われ,障害種別ごとに分かれていた制度が一元化された。

2 2003(平成15)年には,支援費制度が施行され,身体障害者,知的障害者,精神障害者,障害児について,従来の措置制度に代わり利用契約制度が導入された。

3 2005(平成17)年に制定された障害者自立支援法では,市町村の支給決定の手続きにおいて,市町村審査会が行う障害程度区分に関する審査及び判定の結果に基づき,障害程度区分の認定が行われるようになった。

4 「障害者の権利に関する条約」の批准に向けた国内法の整備に向けて,2009(平成21)年に「障がい者制度改革推進会議」が厚生労働省に設置された。

5 2011(平成23)年に改正された障害者基本法において,「障害を理由として,差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」とする障害者差別禁止が規定された。


社会福祉士の国試の特徴は,出題範囲がとても広いことです。


一見するとそれは受験生にとって不利に思えるかもしれませんが,その分,深掘りして出題しにくいことにつながります。


国試問題は,適度に難しいのが適切です。


深掘りしないという原則を考えた時,知らない問題は,正解以外の選択肢として出題するために作ったものが多いことに気が付くことでしょう。


さて,今日の問題は,障害者の福祉の歴史問題です。冷静に問題を読めば解ける,比較的難易度の低い問題かもしれません。


しかし,そんな中にも落とし穴があるので,注意が必要です。


それでは詳しく見て行きましょう。


1 1997(平成9)年から2000(平成12)年にかけて社会福祉基礎構造改革が行われ,障害種別ごとに分かれていた制度が一元化された。


押さえておきたいポイントは,障害者福祉の発展は高齢者よりも遅かったことです。


役人は本当に頭がいいなぁ,と思ってしまうストーリーがそこにあります。


当初,介護保険を導入する際,高齢者と障害者は一つの制度として作ろうと考えました。


しかし,障害者団体などからの反対があり,高齢者の介護保険を先にスタートさせます。


介護保険がうまくスタートしたことから,障害者福祉も措置ではなく契約制度が良いだろうと思うようになって支援費制度が導入します。


次は法律を作ります。それが障害者自立支援法です。


この法律は,現・障害者総合支援法となって存続しています。


時の政権は,自立支援法を廃止して,新しい制度に移行させようと画策しましたが,緻密なストーリーによって積み上げてきた制度を簡単には放棄することは優秀な官僚は決して許しません。


結局出来たのは,法律名を変えたマイナーチェンジの現行法です。


その流れで分かる通り,現行法による制度の基本は,自立支援法の時に出来上がっていることになります。


さて,問題に戻ります。


支援費制度の時は,まだ精神障害者は含まれていませんでした。


精神障害者を含めて3障害が一元化されたのは,自立支援法の時です。

2000年にはまだ一元化はされていません。


よって×。


支援費制度の実施主体は,市町村でした。そのため,都道府県が行っていた,精神障害者,児童の入所措置は,支援費制度の対象とはなりませんでした。


精神通院医療の支給決定,児童の入所措置は,現在も都道府県の役割のままです。


2 2003(平成15)年には,支援費制度が施行され,身体障害者,知的障害者,精神障害者,障害児について,従来の措置制度に代わり利用契約制度が導入された。


支援費制度は,2003~2005年のわずか3年しかなかった制度。


障害福祉にも契約制度が導入されたことは,介護保険よりも3年遅れましたが,とても画期的なものでした。


支援費制度の時は,精神障害者は対象ではありませんでした。理由を押さえると覚えやすいのではないかと思います。

よって×。


先に書いたように,障害児でも支援費制度の対象となったのは,通所です。入所は,いまだに都道府県の役割のままです。


児童は,通所は市町村,入所は都道府県,というように役割が分担されていることを覚えておきたいです。


精神障害者は,障害者自立支援法の時に,都道府県から市町村に権限移譲されましたが,精神通院医療の支給決定は,今も都道府県の役割のままです。


このように,覚えにくいところは,確実に覚えておかなければなりません。


3 2005(平成17)年に制定された障害者自立支援法では,市町村の支給決定の手続きにおいて,市町村審査会が行う障害程度区分に関する審査及び判定の結果に基づき,障害程度区分の認定が行われるようになった。


本来なら,2000年に介護保険と同時に同様の制度が発足しても良かったのですが,慎重に策を練って導入したのが,自立支援法の時です。


よって正解です。


制度は行き当たりばったりではなく,日本の優秀な官僚によって慎重に制度設計がなされます。

国会議員も国民も既に描かれているレールに乗せられていることに気づかずにいるだけのような気がします。


4 「障害者の権利に関する条約」の批准に向けた国内法の整備に向けて,2009(平成21)年に「障がい者制度改革推進会議」が厚生労働省に設置された。


障害者権利条約の批准には,長い時間がかかりました。


批准すると法的責任を伴うので,権利条約にのっとった法の整備が必要だからです。


障がい者制度改革推進会議は「はじめまして問題」です。


しかし国際条約批准に向けての動きが,一省庁だけに任されるはずはありません。


設置されたのは,厚労省ではなく,内閣府でした。


よって×。


もし,厚労省に設置されたのなら,当たり前すぎて出題しないでしょう。そして出題するなら,設置された直後であるように思います。


5 2011(平成23)年に改正された障害者基本法において,「障害を理由として,差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」とする障害者差別禁止が規定された。


選択肢3を正解にできなかった場合,もっとも多くの人が引っかかったのは,この選択肢だと思います。


先述のように障害者権利条約批准のために多くの法整備を必要としました。


その中には,障害者差別についての規定も含まれていると考えても違和感はないはずです。


うまく出題しています。


しかもこの選択肢をこの時点で出題しておくことで,障害者差別禁止については,障害者差別解消法が出来上がる前から障害者基本法で規定されている旨の出題が今後可能となったわけです。


さて,それでは障害者差別禁止が規定されたのがいつのことでしょうか。


答えは,2004年の法改正です。


よって×。



<今日の一言>


国試問題には,出題する意義と意図があります


国家試験は,厚労省の指定を受けた公益財団法人社会福祉振興・試験センターが行っています。

国家試験の作成には,厚労省もかかわります。


高級官僚の世界はよく分かりませんが,社会福祉士の国試に限れば,官僚が何を考えているのかが垣間見えてくるような気がしませんか。


国試会場は独特の雰囲気です。

受験を楽しむことはできないかもしれません。


しかし,今日の問題のように裏の世界が見えてくる問題を見つけられるととても楽しいです。

2024年6月24日月曜日

労働保険は覚えるポイントが少ない! チャンス!


日本の社会保険制度は,年金,医療,雇用,労災,介護の5つです。


このうち,雇用保険と労働者災害補償(労災)保険を合わせて労働保険と言います。


労働保険は,年金保険と医療保険に比べると制度がシンプルです。


年金保険も医療保険もいろいろな制度を組み合わせて,国民皆保険,国民皆年金を実現しています。


この2つの社会保険はいずれも第二次世界大戦以前から存在しています。


それに比べると,労働保険は戦後に出来た制度です。年金保険や医療保険のように,いろいろな制度を組み合わせたものではないため,制度自体がとてもシンプルです。


覚えるものが少なくても1問丸ごと出題されるので,とてもありがたい領域だと言えます。

しっかり覚えて,確実に得点することが大切です。


それでは,今日の問題です。


第25回・問題54

雇用保険の基本手当に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 基本手当は,受給資格者が労働基準監督署において失業の認定を受けることにより支給される。

2 基本手当は,被保険者が転居や結婚など自己の都合により退職した場合には支給されない。

3 公共職業安定所(ハローワーク)で紹介された就職先の賃金がその地域の同種の業務及び同程度の技能に係る一般の賃金水準と比べて不当に低いときには,就業を拒否しても基本手当は支給される。

4 基本手当の給付日数は被保険者期間に応じて定められており,倒産や解雇などの離職理由は考慮されない。

5 基本手当の受給を終了し,受給資格を有しない者は,「求職者支援法」に基づく職業訓練受講給付金の対象者となることができない。

(注)「求職者支援法」とは,「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律」のことである。


失業保険法が雇用保険法に変わったのは,1974年のことなので,40年以上が過ぎています。

それにもかかわらず,未だに「失業保険」と呼ぶ人が多いのは,失業等給付のイメージが強いからなのでしょうか。

せめて国会議員くらいは,正しく雇用保険と言ってもらいたいものです。


さて,それでは詳しく見て行きましょう。


1 基本手当は,受給資格者が労働基準監督署において失業の認定を受けることにより支給される。



雇用保険の現業機関は,ハローワークです。

労働基準監督署は労災保険の現業機関です。


よって×。


2 基本手当は,被保険者が転居や結婚など自己の都合により退職した場合には支給されない。



自己都合によって退職した場合は,支給期間は短くなりますが,支給されます。


よって×。



3 公共職業安定所(ハローワーク)で紹介された就職先の賃金がその地域の同種の業務及び同程度の技能に係る一般の賃金水準と比べて不当に低いときには,就業を拒否しても基本手当は支給される。



<基本手当の給付制限>

公共職業安定所の紹介する職業に就くこと又は公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けることを拒んだときは,その拒んだ日から起算して一箇月間は,基本手当を支給しない。


とされています。


しかし,以下の場合などには,給付制限がありません。


●紹介された職業又は公共職業訓練等を受けることを指示された職種が、受給資格者の能力からみて不適当であると認められるとき。

●就職するため、又は公共職業訓練等を受けるため、現在の住所又は居所を変更することを要する場合において、その変更が困難であると認められるとき。

●就職先の賃金が、同一地域における同種の業務及び同程度の技能に係る一般の賃金水準に比べて、不当に低いとき。


よって正解です。


しかし,こんな規定をつくるよりも,ハローワークでそのようなところを紹介しない,という方法もあるような気がします。


でもそれは難しそうですね。


なお,正当な理由がないにもかかわらず,職業指導を拒んだ場合にも,給付制限があります。


この問題が出題された時点で,この選択肢を〇にするのはとても難しかったかもしれません。


しかし,ほかの選択肢を丁寧に消去していけば,この選択肢か残ったはずです。



4 基本手当の給付日数は被保険者期間に応じて定められており,倒産や解雇などの離職理由は考慮されない。


もちろん考慮されます。

よって×。


5 基本手当の受給を終了し,受給資格を有しない者は,「求職者支援法」に基づく職業訓練受講給付金の対象者となることができない。


言い切り表現に正解少なしは,国家試験の常とう手段です。


しかし線引きがしっかりされる法制度には使えないことが多いのですが,この場合は使えます。

よって×。

2024年6月23日日曜日

国際比較の覚え方

わが国の社会保障の費用は,国立社会保障・人口問題研究所が「社会保障費用統計」として毎年発表しています。

この費用統計は,国際基準で作成されているので,国際比較が容易にできるのが特徴です。


それでは,早速今日の問題です。


第25回・問題51 

我が国における社会保障の給付と負担に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 国民負担率は,国民所得に対する社会保障負担の割合で示される。

2 2012(平成24)年度における我が国の社会保障給付費(予算)の規模は,国の一般会計当初予算の規模を上回っている。

3 2009(平成21)年度の社会保障給付費を「年金」「医療」「福祉その他」とに分類した場合,最も多いのは「医療」である。

4 2001(平成13)年度から2011(平成23)年度までの期間において,我が国では,租税負担率は増加したが,社会保障負担率は減少した。

5 日本,フランス,スウェーデン,ドイツ,イギリス,アメリカの中で,2009(平成21)年度の国民負担率が2番目に高いのは日本である。

社会保障の数字は,金額が大きいだけに,毎年の傾向はまったく変わらないのが特徴です。



かなり前の統計ですが,傾向自体は今でもほとんど同じです。

社会保障給付費は,130兆円を超える規模です。


さて,それでは詳しく見て行きましょう。


1 国民負担率は,国民所得に対する社会保障負担の割合で示される。


国民負担率は,社会保障に関する負担と税金分を足したものを国民所得で割ったものです。

よって×。


日本は約40%です。


国民所得と個人の所得は別物ですが,分かりやすく言うと,20万円の収入があっても,手元に残る可処分所得は12万円ということになります。


ものすごい負担ですね。

日本の国民負担率は,国際的に見た場合,どの位置にいるのでしょう?


2 2012(平成24)年度における我が国の社会保障給付費(予算)の規模は,国の一般会計当初予算の規模を上回っている。



この年の数字は,どうなっていたのかは分かりませんが,数年前までは,国家予算額よりもちょっと社会保障給付費の方が大きい規模でした。


国家予算の伸び率よりも社会保障給付費の伸び率の方が大きくなっています。


現在では,国家予算額は約110兆円。


社会保障給付費は130兆円ほどです。


よって正解です。



3 2009(平成21)年度の社会保障給付費を「年金」「医療」「福祉その他」とに分類した場合,最も多いのは「医療」である。


1980年代の初めまでは,最も多いのは医療でした。


現在は,「年金」「医療」「福祉その他」の割合は,ほぼ,5:3:2に近くなっています。


つまり一番多いのは「年金」です。


よって×。


4 2001(平成13)年度から2011(平成23)年度までの期間において,我が国では,租税負担率は増加したが,社会保障負担率は減少した。


この選択肢自体は,かなり難しいです。


答えとしては,社会保障負担率は増加し,租税負担率は減少しているので,間違いです。


社会保障の問題の特徴は,難しい選択肢が含まれていても,「答えはこれだ!」と分かることが多いのです。


しっかり基礎を押さえた人は,選択肢2以外は選ばないはずです。


5 日本,フランス,スウェーデン,ドイツ,イギリス,アメリカの中で,2009(平成21)年度の国民負担率が2番目に高いのは日本である。


さて,今日のテーマの国際比較です。

日本の国民負担率の40%が国際的にどのようになっているのかが分からないと解けないと思われるかもしれません。


社会保障の国際比較で使うのは,エスピン-アンデルセンの福祉レジームです。


現在は,フランスがとても高くなっていて,


フランス>スウェーデン>ドイツ>イギリス>日本>アメリカの順です。


しかし,基本的には


社会民主主義レジーム>保守主義レジーム>自由主義レジーム


となります。


社会民主主義レジームは,スウェーデン

保守主義レジームは,フランス,ドイツ

自由主義レジームは,イギリス,アメリカ


日本は,イギリスとアメリカのちょうど中間に位置します。



国試では,フランスとドイツを比べる問題は出題されたことがないです。


このルールにのっとると,日本は上から2番目ということは,有り得ません。


逆に下から2番目です。


よって×。



今日の問題は,国民負担率でしたが,社会支出でもこの傾向はほとんど一緒です。


日本が社会保障に使っている金額は,国際的にみると決して高くはないのです。


実は,あまり社会保障制度が発達しているとは言えないアメリカを少し上回るレベルなのです。


勉強があまり十分でない人は,実感と実際のキャップを知らないので,勉強した人なら,かなり楽だと言える問題でも得点できないということになります。


2024年6月22日土曜日

歴史問題の攻略法

今日のテーマは「歴史問題の攻略法」です。


苦手な人にとっては,攻略法なんて存在するのか,と思うかもしれません。


それをつかむと何とか見えてくることでしょう。


社会福祉士の国試は,歴史の試験ではありません


時代背景を知っておくことが攻略法の一つです


覚えるものは数がものすごく少ないです。苦手にするにはもったいないです。


それでは今日の問題です。


第25回・問題50

医療保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 我が国初の社会保険立法である健康保険法は,1911 (明治44)年に制定された。

2 1938(昭和13)年には,強制加入を求める国民健康保険法が制定された。

3「福祉元年」と呼ばれた1973(昭和48)年から,老人保健制度が実施された。

4 1984(昭和59)年の健康保険法等の改正で,退職者医療制度が創設された。

5 2004(平成16)年の医療制度改革で,高齢者医療制度が創設された。


医療保険制度の発展過程です。


日本の公的社会保険の中では,もっとも古いのが医療保険です。


労働争議を収拾するために,創設したのが始まりです。


時代背景とともに覚えていきましょう。


1  我が国初の社会保険立法である健康保険法は,1911 (明治44)年に制定された。


健康保険法は,1922年に創設されたものです。

1911年ではありません。


よって×。


このような問題を見るとやっぱり年号を覚えなければならない,と思うかもしれません。


1917年にロシア革命があり,ソビエト連邦という共産主義国家が設立されたのは,当時の国家指導者にとって脅威だったはずです。


この後に健康保険法が成立しています。

1911年であることはあり得ないのです。


ちなみに1911年にできたのは,工場法です。

工場法は,戦後に労働基準法ができるまで存続しました。


2 1938(昭和13)年には,強制加入を求める国民健康保険法が制定された。


国民健康保険法ができたのは,戦時中である1938年であることは正しいです。


しかし強制加入になったのは,1961年の国民皆保険の時です。


よって×。


3 「福祉元年」と呼ばれた1973(昭和48)年から,老人保健制度が実施された。


老人保健制度が実施されたのは,老人保健法ができた1983年です。

これによって老人無料化の時代が終わりました。


無料化が実施されたのが福祉元年と呼ばれた1973年です。

奇しくもこの年の暮れに第一次石油危機が起きて,高度経済成長が終わります。


4 1984(昭和59)年の健康保険法等の改正で,退職者医療制度が創設された。


退職者医療制度は,いつできたかは知らないと思います。


ここでは冷静に▲をつけます。

答えを先に言うとこれが正解です。


退職者医療制度は,サラリーマン等が退職すると,国民健康保険に加入します。

しかし国保の負担が大きいので被用者保険の保険者の拠出金で賄われていました。


同制度は平成26年度末で廃止されています。


5 2004(平成16)年の医療制度改革で,高齢者医療制度が創設された。


後期高齢者医療制度は,2008年に実施されています。


2004年の医療制度改革で創設されたものではありません。


よって×。


後期高齢者医療制度は,老人保健法を改正した「高齢者の医療を確保する法律」(高齢者医療確保法)によって創設されています。


福祉元年はリアルタイムでは知らなくとも,後期高齢者医療制度はいつできたのかは覚えているのではないでしょうか。こういうところに人生経験が豊富な社会人は有利だと言えます。



退職者医療制度は,廃止されることが決まっているのに,あえて出題したのは第25回の国家試験的だなぁと感じます。


試験委員のレクイエム,あるいはノスタルジックのようなもののような感じがします。


老人保健法ができても国保の負担が大きかったため,退職者医療制度ができました。


今後出題されるとしたら,歴史の中でしか出題されるものではないですが,わが国の医療保険の発展過程上では,語り継がれていくものでしょう。



社会福祉制度は,時代が必要として生まれていきます


必然性がないのに,突然生まれてくるものではありません。


国家試験でもし分からないものが出題された時,時代を想起してみると良い


必ず何かが見えてきます。

2024年6月21日金曜日

福祉計画の関連性の攻略法

 福祉計画は,単体で存在しているのではなく,他の福祉計画と関連しています。


関連性のルール


一体のものとして策定しなければならない(義務)


 老人福祉計画と介護保険計画のみ



整合性の確保が保たれたものでなければならない


 市町村介護保険事業計画&市町村計画(医療介護総合確保推進法)


 都道府県介護保険事業支援計画&都道府県計画(医療介護総合確保推進法)&医療計画


調和が保たれたものでなければならない


 その他大勢


このほかに


一体のものとして策定することができる(任意)


 障害福祉計画&障害児福祉計画


がありますが,覚える優先度合いは低いです。


あと,法規定はなく,通知などで一体のものとして策定できる(任意)とされているものもありますが,それは覚える必要なしです。


それでは,今日の問題です。


第25回・問題48

各種福祉計画策定に際して,相互の連携に関する各福祉法の規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村地域福祉計画は,地方自治法の定める基本構想に即して策定されなければならない。

2 市町村地域福祉計画は,市町村老人福祉計画と一体のものとして策定されなければならない。

3 市町村老人福祉計画は,市町村介護保険事業計画と一体のものとして策定されなければならない。

4 母子家庭及び寡婦自立促進計画は,次世代育成支援対策推進法に定める市町村行動計画と一体のものとして策定されなければならない。

5 都道府県介護保険事業支援計画は,医療法に規定される医療計画と一体のものとして策定されなければならない。


ルールさえ,押さえておけば比較的楽に問題です。



それでは,詳しく見て行きましょう。


1 市町村地域福祉計画は,地方自治法の定める基本構想に即して策定されなければならない。

地方自治法の基本構想は,現在は削除されています。


しかし,根拠法以外のものに即して策定しなければならないということは絶対にありません。


ということで,地方自治法の基本構想に即して作成しなければならないということはありません。


よって×。


基本構想を知らずとも,地域福祉計画の策定は努力義務であることを考えると,これは誤りであるとわかります。策定が努力義務なのに,策定するときは義務になるのはおかしなことです。



2 市町村地域福祉計画は,市町村老人福祉計画と一体のものとして策定されなければならない。


一体での策定義務があるのは,老人福祉計画と介護事業計画のみ。


よって×。


3 市町村老人福祉計画は,市町村介護保険事業計画と一体のものとして策定されなければならない。


もちろんこれが正解です。


一体での策定義務があるのは,老人福祉計画と介護事業計画のみです。



4 母子家庭及び寡婦自立促進計画は,次世代育成支援対策推進法に定める市町村行動計画と一体のものとして策定されなければならない。


しつこいですね。

一体での策定義務があるのは,老人福祉計画と介護事業計画のみ。


よって×。


5 都道府県介護保険事業支援計画は,医療法に規定される医療計画と一体のものとして策定されなければならない。


本当にしつこいですね。

一体での策定義務があるのは,老人福祉計画と介護事業計画のみ。


よって×。


2024年6月20日木曜日

福祉計画の整理法


福祉計画はたくさんありますが,その中心は地域福祉計画です。

福祉計画はたくさんありますが,その中心は地域福祉計画です。


さて,今日の問題です。



第25回・問題46

福祉計画等の目的に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 高齢者の医療の確保に関する法律では,後期高齢者医療広域連合は,国が定める医療費適正化基本指針に基づき,広域連合内の医療費適正化を推進するための医療費適正化計画を定めるものとしている。

2 介護保険法では,市町村介護保険事業計画は,当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に加え,老人福祉センターなどの介護給付等対象サービス以外の老人福祉事業の供給体制の確保に関する計画として定めるものとしている。

3 障害者基本法では,都道府県障害者計画は,厚生労働大臣が定める基本指針に即して,障害福祉サービスの提供体制の確保等について,各市町村を通ずる広域的見地から定めるものとしている。

4 児童福祉法では,市町村保育計画は,地域における子育て支援,児童の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備,職業生活と家庭生活との両立の推進などを実施するための計画として定めるものとしている。

5 社会福祉法では,都道府県地域福祉支援計画は,市町村地域福祉計画の達成に資するため,各市町村を通ずる広域的見地から,社会福祉を目的とする事業の健全な発展のための基盤整備に関する事項等を一体的に定める計画とされている。


今日の問題も複雑ですが,ちゃんと糸口は見つけ出せます。


1 高齢者の医療の確保に関する法律では,後期高齢者医療広域連合は,国が定める医療費適正化基本指針に基づき,広域連合内の医療費適正化を推進するための医療費適正化計画を定めるものとしている。


高齢者の医療の確保に関する法律は,後期高齢者医療制度の根拠法です。

実施主体は,都道府県のすべての市町村による後期高齢者医療広域連合です。

広域連合が行政計画を立てることはありません。


医療費適正化計画を策定するのは,都道府県です。


よって×。


医療に関するものは,市町村ではなく都道府県です。


後期高齢者医療広域連合は,都道府県区域を単位としていますが,市町村の広域連合です。都道府県ではありません。


2 介護保険法では,市町村介護保険事業計画は,当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に加え,老人福祉センターなどの介護給付等対象サービス以外の老人福祉事業の供給体制の確保に関する計画として定めるものとしている。


高齢者に関連する計画には,介護保険法に基づく介護保険事業計画と,老人福祉法に基づく老人福祉計画があります。


介護保険事業計画は,介護保険に基づく介護保険事業について定めます。

老人福祉計画は,老人福祉法に基づく老人福祉事業について定めます。


老人福祉センターなどの介護給付等対象サービス以外の老人福祉事業の供給体制の確保に関する計画は,老人福祉計画で定めます。


よって×。


いろいろな行政計画がありますが,一体での策定義務が法で規定されているのは,この2つしかありません。


一体で策定されるものだから,どうだって良いのでは? 


と思う人もいるでしょう。


しかし法律は極めて厳密です。


しっかり覚えましょう。


因みに,都道府県老人福祉計画で定めなければならないものには,養護老人ホームの入所定員があります。


特別養護老人ホームは老人福祉法に基づく施設ですが,指定を受けて介護保険施設にもなります。



3 障害者基本法では,都道府県障害者計画は,厚生労働大臣が定める基本指針に即して,障害福祉サービスの提供体制の確保等について,各市町村を通ずる広域的見地から定めるものとしている。



障害者分野にも,二つの法律があります。



障害者基本法を根拠法とする障害者計画。

障害者総合支援法を根拠法とする障害福祉計画



障害福祉サービスについて定めているのは,障害福祉計画です。


よって×。



紛らわしいからこそ出題されやすいです。


4 児童福祉法では,市町村保育計画は,地域における子育て支援,児童の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備,職業生活と家庭生活との両立の推進などを実施するための計画として定めるものとしている。



今は,子ども・子育て支援法に基づく子ども・子育て支援事業計画があるため,児童福祉法に基づく保育計画の内容は子ども・子育て支援事業計画に移行しています。


それはさておき・・・


地域における子育て支援,児童の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備,職業生活と家庭生活との両立の推進などを実施するための計画


こんなにいろいろな内容があるのに,保育計画ということはなさそうです。


正しくは,次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画です。


よって×。


現在は,都道府県と市町村には,行動計画の策定は任意となっています。


5 社会福祉法では,都道府県地域福祉支援計画は,市町村地域福祉計画の達成に資するため,各市町村を通ずる広域的見地から,社会福祉を目的とする事業の健全な発展のための基盤整備に関する事項等を一体的に定める計画とされている。


地域福祉計画の策定は,市町村,都道府県とも登勢力義務ですが,策定する場合,内容に盛り込むべき事項が定められています。


市町村地域福祉計画

地域福祉の推進に関する事項を一体的に定める。


都道府県地域福祉支援計画

各市町村を通ずる広域的な見地から,市町村の地域福祉の支援に関する事項を一体的に定める。


よって正解です。


都道府県と市町村は,市町村が基礎的自治体で,都道府県が市町村を支援する,という関係です。しっかり押さえておきましょう。

2024年6月19日水曜日

答えは問題文の中にある!

 

この時期は,知識が足りないので勉強は辛いかもしれません。

 

それでも,繰り返し繰り返し覚えていくことで,

基礎力は確実につきます。

 

答えは問題文の中にある!

 

社会福祉士の国家試験は,マーク式です。

必ず問題文の中に答えがあります。

 

苦しくても,辛くても,繰り返し繰り返し勉強していくと,

ポイントが見えてくる瞬間があります。

 

問題文を読んだ時に,そのポイントが何となくでも見えて来たら,正解に限りなく近づきます。

 

必ず問題文の中に答えがあることを信じることが,すべてのスタートとなります。

 


難易度が高い問題は,解けても解けなくて何ら問題はありません。

 難易度が中くらいのものは,確実に得点できることが必要です。

 

今日の問題を見る前に,また文末のみを紹介します。

 

1 サービスを利用する住民は含まれない。

2 人件費に充てることは認められていない。

3 市民後見人は保佐人及び補助人になることが適切であるとされている。

4 住民の主体性を損なう可能性がある。

5 専ら社会福祉士などの専門職であるとされている。

 

 

これだけを見て「ハハーン,あれだな」と思った人がいるはずです。

 

どれが消去できそうで,どれが正解になるかをちょっと考えてみましょう。

 

考えてみましたか?

 

それでは,改めてヒントです。

  

言い切り表現に正解少なし!

 

あいまい表現に正解多し!!

 

この分析軸をもとに今日の問題です。

 

難易度は「低」です。

 

25回・問題40

地域福祉における社会資源に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 地域福祉における社会資源とは,地域住民のニーズを充足するために用いられるものをいうことから,サービスを利用する住民は含まれない。

2 共同募金は地域福祉活動を推進するための財源でもあり,社会資源の一つといえるが,配分を受けた事業に伴う職員の人件費に充てることは認められていない。

3 権利擁護を推進していくための社会資源として市民後見人の養成が重要な課題となっているが,市民後見人は保佐人及び補助人になることが適切であるとされている。

4 インフォーマルな社会資源である住民の活動について,単にニーズ充足のために専門職が活用するという姿勢は,住民の主体性を損なう可能性がある。

5 社会資源を開発する手法の一つとしてのソーシャル・アクションにかかわるのは,専ら社会福祉士などの専門職であるとされている。

 

 

決して難しい問題ではないかもしれません。

 

しかし,国家試験会場では何が起きるか分かりません。

 

 

特に緊張のあまり,問題を読んでも上滑りするようなことがあると,正しく文章を把握できなくなることはよくあることです。

 

まずは,もう一度,文末だけを見て行きましょう。

 

1 サービスを利用する住民は含まれない。

2 人件費に充てることは認められていない。

3 市民後見人は保佐人及び補助人になることが適切であるとされている。

4 住民の主体性を損なう可能性がある。

5 専ら社会福祉士などの専門職であるとされている。

 

12は,言い切り表現

 

4は,あいまい表現

 

34は,中立的です。


しかし,5は「専ら」と限定表現を入れているところから,言い切り表現に近いと言えます。

 

123は,消去できそうです。

 

それでは,すべてを見ます。

 

1 地域福祉における社会資源とは,地域住民のニーズを充足するために用いられるものをいうことから,サービスを利用する住民は含まれない。

 

「サービスを利用する住民は社会資源ではない」ということになると,サービスを利用する住民は,何かのニーズを充足する存在ではないということになってしまいます。

 

それはとんでもないことです。

もちろん×。

 

2 共同募金は地域福祉活動を推進するための財源でもあり,社会資源の一つといえるが,配分を受けた事業に伴う職員の人件費に充てることは認められていない。

 

この選択肢が一番迷うところかと思います。

 

言い切り表現は正解少なしです。

 

しかし,制度系は,決まりがあるので,正解になることもあります。

 

そのため,この時点では▲をつけておきます。

 

答えを言うと,人件費も経費として認められるのでです。

 

3 権利擁護を推進していくための社会資源として市民後見人の養成が重要な課題となっているが,市民後見人は保佐人及び補助人になることが適切であるとされている。

 

市民後見人養成は市町村が行っています。

人材育成の多くは都道府県の役割です。

 

しかし市民後見人は,専門職ではなく市民が対象なので,身近な自治体である市町村が養成を担っていると考えられます。

 

さて,問題に戻ります。

 

成年後見制度では,後見人が難しくて,保佐人と補助人は役割が簡単ということはありません。

 

実際に行うのは,すべて簡単ではありません。

 

市民は,素人だから簡単な保佐人と補助人を担ってもらって,社会福祉士や行政書士などの専門職が後見人なんてことは,絶対にありません。

 

もちろん間違いです。

 

4 インフォーマルな社会資源である住民の活動について,単にニーズ充足のために専門職が活用するという姿勢は,住民の主体性を損なう可能性がある。

 

「可能性がある」。内容はともかく,「可能性がある」はかなり正解にしやすいものです。

 

確率論でも,1万の場面が場合,1回でもその事象が発生すると,その命題は成立します。

 

その逆に「可能性はない」となると,1万の場面が場合,1回でもその事象が発生すると,その命題は成立しなくなってしまいます。

 

問題に戻ります。

 

住民の活動は,もともとは自主的に始められます。

そこに専門職が何かのシステムとして活用しようとすると,無理や義務感が発生します。

 

たとえば,住民同士の見守りを行っていた場合,地域でシステム化すると,体が辛い時でもやらなければならないという義務感,あるいは誰かが指揮して整理してくれるので,自ら積極的に関わらなくなる,などが生じることがあり得ます。

 

よって正しいです。

 

5 社会資源を開発する手法の一つとしてのソーシャル・アクションにかかわるのは,専ら社会福祉士などの専門職であるとされている。

 

ソーシャル・アクションは,ソーシャルワークの一つの機能ですが,住民活動で行われることは多々あります。

 

制度を作るために署名活動をして,政府に働きかける,などといった活動はすべてソーシャル・アクションです。

 

専門職が専ら行うようなものではありません。

 

よって×。

 

今日の問題は,難易度が高くはないので,4を正解にできた人は多かったかもしれません。

 

しかし2も▲で残っているので,2を正解にしてしまった人も少なからずいたと思われます。

 

4の「可能性がある」に気がつけば,何とか2は消去できたはずです。

これに気づくか気づかないかで,1点が変わってきます。

 

〈今日の一言〉


消去できる選択肢が一つでも多い方が,正解に近づきます。


答えは問題文の中にある!


慎重に問題文を読んでいけば,どこかにヒントがあるのが見つかるものです。

2024年6月18日火曜日

国家試験で合格するためには,つまらないミスは極力なくすこと

 

国家試験問題には,


とても難しい問題

 と

やさしめの問題


があります。


とても難しい問題は,合格する人も解けません。


合格の決め手は,そんな問題が解けることではなく,やさしめの問題と誰でも正解できる問題でどれだけ点数が取れるかです。

ミスをおかすときに多いのは,文章の読み間違いです。


普段はちゃんと読めるのに,国試会場の独特の雰囲気に呑まれると,普通ではないことが起きます。しかも頻繁に起こります。


何度も受験して合格点に届かない人は,早とちりの傾向がないでしょうか。


今日の問題は,そんなに難しくない問題です。

読み間違い,早とちりは最低限気を付けなければなりません。


しかし,慣れるとこの手の問題は,全部読まなくても答えの見当はつけられるようになります。


時短できる問題です。

今日の問題を紹介する前に,まず語尾だけを紹介します。


1 担わなければならない。

2 運営しなければならない。

3 重要な課題となる。

4 大切である。

5 限定されている。


このうちどれが間違いで,どれが正解なのか,想像してみてください。


それでは,今日の問題です。


第25回・問題39

災害ボランティアセンター及び災害復興ボランティアセンター(以下「センター」という。)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 センターの運営は,継続的な支援や地元行政との連携を重視する観点から,それぞれの市町村社会福祉協議会が単独で担わなければならない。

2 センターの運営については,設置基準や運営マニュアルが整備されてきているため,それらに定められているとおり厳格に運営しなければならない。

3 センターには,被災者のニーズと災害ボランティアとをマッチングすることに加え,プログラムの開発,関係機関との調整などに高い専門性が求められることから,ボランティアコーディネーターの養成や研修が重要な課題となる。

4 救援物資や災害ボランティア活動は,個々人の意思に基づくものであるので,特定の物や場所に集中することがあるが,センターにおいて安易に調整してしまうよりもボランティアの自発的な善意を重視することが大切である。

5 生活支援相談員はセンターに所属し,各種の生活支援を担う役割を負っているが,その採用に当たっては,看護師・介護福祉士等の専門職に限定されている。


災害ボランティアに関する問題です。


さーどうでしょうか。語尾だけ見た時の最初の予想と当たりましたか?

答えはおおよそ見当がついていると思いますが,解説していきます。


1 センターの運営は,継続的な支援や地元行政との連携を重視する観点から,それぞれの市町村社会福祉協議会が単独で担わなければならない。


センターの運営は,機動性が大切です。自分たちも被災していることが予想されます。


そんなときに,自分の単独で行うのは,かなり厳しいと思います。

協力し合う体制が必要でしょう。


よって×。


2 センターの運営については,設置基準や運営マニュアルが整備されてきているため,それらに定められているとおり厳格に運営しなければならない。


センターの運営は,機動性が大切です。

マニュアルどおりにいかないことの方が多いでしょう。


柔軟な対応が必要です。


よって×。


3 センターには,被災者のニーズと災害ボランティアとをマッチングすることに加え,プログラムの開発,関係機関との調整などに高い専門性が求められることから,ボランティアコーディネーターの養成や研修が重要な課題となる。


当然これが正解です。とても自然です。


4 救援物資や災害ボランティア活動は,個々人の意思に基づくものであるので,特定の物や場所に集中することがあるが,センターにおいて安易に調整してしまうよりもボランティアの自発的な善意を重視することが大切である。


阪神・淡路大震災大震災は,ボランティアがたくさん駆け付けましたが,うまく機能することができませんでした。


この時にボランティアのコーディネートが必要だということがよく分かった出来事でした。


よって×。


5 生活支援相談員はセンターに所属し,各種の生活支援を担う役割を負っているが,その採用に当たっては,看護師・介護福祉士等の専門職に限定されている。


限定するには意味があります。


生活支援相談員が看護師・介護福祉士でなければならない理由は何でしょうか。


もちろん限定されるわけがありません。

よって×。


<今日の一言>


ある程度,先に予想することで,読み間違い,早とちりを減らすことができる!


過去問を何度も何度も何度も解いて,解きまくって,問題に慣れていきましょう。

2024年6月17日月曜日

民生委員は協力機関

民生委員法が規定している民生委員は,地域福祉の担い手の中でも重要な職種です。


しっかり押さえておきましょう。


それでは,今日の問題です。


第25回・問題35 

民生委員・児童委員に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 子育てサロン活動を普及させていくため,民生委員・児童委員がその活動の立ち上げや運営に携わることが法的に義務づけられている。

2 児童福祉法に定められる児童委員に関しては別途推薦の要件があるため,民生委員と兼務できないことがある。

3 民生委員は,その職務を遂行するに当たり,個人の人格を尊重し,その身上に関する秘密を守り,差別的又は優先的な取扱いをすることなく,実情に即して合理的にこれを行わなければならないとされている。

4 民生委員は,住民の身近な相談・支援者として,自立支援や福祉サービスの利用援助などを行うことから,行政の補助機関とされている。

5 不登校の生徒に対する民生委員・児童委員の関与は,プライバシー保護の観点から,必要最小限にとどめるべきであるとされている。


民生委員に関する問題は,かなり頻出です。


絶対に押さえておきたいです。


それでは,詳しく見ていきましょう。


1 子育てサロン活動を普及させていくため,民生委員・児童委員がその活動の立ち上げや運営に携わることが法的に義務づけられている。


子育てサロン活動,ふれあい・いきいきサロン活動を行っている市町村社協は多いと思います。


しかし,それらは独自に行っている活動であり,法的根拠があるものではありません。


法域根拠のない子育てサロン活動に関して,その活動にかかわることが法的に義務づけられるわけがありせん。


もちろん×です。


こんな問題を間違えることはないだろうと思う人もいるでしょう。

何が起きるか分からないのが国家試験です。


深みにはまるパターンとして,「こんなこと知らない。勉強不足だった」と思ってしまうことです。


多くの場合は,勉強不足だから知らないのではなく,そのようなことは規定されていないため,つまりは間違い選択肢として無理に作成したため,見たことのないものとなります。


「義務付けられている」といった出題は,かなりの頻度でありますが,もし本当に義務付けられているなら,もっと広く知られているはずです。


ごちゃごちゃ考え込むとろくな結果になりません。


2 児童福祉法に定められる児童委員に関しては別途推薦の要件があるため,民生委員と兼務できないことがある。


民生委員は児童委員を兼ねます。

よって×。


3 民生委員は,その職務を遂行するに当たり,個人の人格を尊重し,その身上に関する秘密を守り,差別的又は優先的な取扱いをすることなく,実情に即して合理的にこれを行わなければならないとされている。


これは,民生委員法に規定されています。

よって正解です。


4 民生委員は,住民の身近な相談・支援者として,自立支援や福祉サービスの利用援助などを行うことから,行政の補助機関とされている。


民生委員が補助機関だったのは,旧・生活保護法までの時代です。


民生委員は現在,協力機関です。


現在の補助機関は社会福祉主事です。


よって×。


5 不登校の生徒に対する民生委員・児童委員の関与は,プライバシー保護の観点から,必要最小限にとどめるべきであるとされている。


必要最低限の関与とは,どのように誰がその範囲を決めるのでしょうか。

プライバシー保護は,いつも必要なことです。


これだと,民生委員,児童委員以外のフォーマルな職種はプライバシー保護ができるが,民生委員,児童委員はプライバシー保護ができない職種だということになってしまいます。

失礼な話ですよね。


もちろん×です。

2024年6月16日日曜日

動向に関する問題は,当たったらラッキー程度です!!

国家試験では,社会の動向や〇〇報告のようなものが出題されます。

どんなに勉強していても,それらのほとんどは初めて見るものです。


しかも勘が効かないものも多くあります。


そのような問題では,分かる問題は確実に消去することが何よりも大切です。


確率論で言えば・・・


1つ選ぶ問題の場合( )は正解を選ぶ率


1つも消去できなかった ⇒ 20%

1つ消去できた ⇒ 25%

2つ消去できた ⇒ 33%

3つ消去出来た ⇒ 50%


となります。


一つでも多く消去できれば,正解できる確率が高まります。

よく「2つまで絞れたけれど,選んだのはことごとく間違いだった」という話を聞きます。


確率論で言えば,2つまで絞り込むことができたら


正解を選ぶ確率 50%

不正解を選ぶ確率 50%


どちらも同じです。


それにもかかわらず先述のような声が聞かれるのは,間違ったことの方が記憶に残りやすいためです。もし本当に,不正解の方を選ぶのであれば,それはそれですごい能力かと思います。


国家試験の合格基準は,6割程度です。

すべて2つまで絞り込むことができれば,確率的には5割取れます。


実際には答えがわかる問題もあるので,2つまで絞り込むことができれば,限りなく合格基準に近づきます。


確実に答えを選び出せなくても,消去する選択肢が1つでも2つでも多くなると合格に近づきます。


難しい問題であっても,消去できる選択肢があれば,正解できる確率が上がります。


今日の問題はいかにもそな問題です。


第25回・問題26

我が国の若年者の生活の現状と政策に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 高卒者の新規採用については,1980年代までに,「実績関係」と呼ばれる企業と学校との連携が確立し,その後も関係が強化されてきたため,現在は高卒無業者問題は解消している。

2 OECDの報告によると,高等教育への公財政支出の対GDP比は,OECD諸国の平均を下回り,国公立大学の平均授業料についても高いグループに属する。

3 近年の若年者非正規雇用比率の高さは,実際には女性の非正規雇用比率の高さに規定されているものであり,「平成19年就業構造基本調査」(総務省)によると,20歳~24歳での男性の正規雇用比率は80%を超えている。

4 若年者内部での経済格差は,正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間での結婚意欲の差異としても現れ,「第13回出生動向基本調査」(平成17年,国立社会保障人口問題研究所)によると,特に女性において顕著な差異が観察された。

5 いわゆるニートなどの若者の職業的自立を支援するための拠点として,政府は「地域若者サポートステーション事業」を実施し,この事業による就職等進路決定者を2020年までに100万人にする目標を掲げている。


これらも今は参考書に載っているかもしれません。

しかし再びこれらが出題される可能性は限りなく低いです。


これらを覚える意味は,社会構造を想像して,別の問題が出題された時に備えるというものです。


その訓練であることを頭に入れながら,取り組むことが大切です。


それでは詳しく見ていきましょう。


1 高卒者の新規採用については,1980年代までに,「実績関係」と呼ばれる企業と学校との連携が確立し,その後も関係が強化されてきたため,現在は高卒無業者問題は解消している。


「実績関係」というのは分からなくても,問題が解消された,という言い切り表現は間違いが多いので消去できるでしょう。


もちろん×です。


実績関係とは,ここの学校から何人採用するといった関係のことです。


バブル期までは大学進学がそれほど多くはなかったので,この関係は続いて来ましたが,現在は高校で就職する人はそんなに多くはないので,強化ではなく弱くなっています。


それに加えて,卒業しても仕事もしないいわゆるニートもいます。


2 OECDの報告によると,高等教育への公財政支出の対GDP比は,OECD諸国の平均を下回り,国公立大学の平均授業料についても高いグループに属する。


これはまったく分かりません。


ぜんぜんわからないので,とりあえず▲をつけておきます。


3 近年の若年者非正規雇用比率の高さは,実際には女性の非正規雇用比率の高さに規定されているものであり,「平成19年就業構造基本調査」(総務省)によると,20歳~24歳での男性の正規雇用比率は80%を超えている。


女性の非正規雇用は全年齢で約半数です。

そこから考えると80%は多すぎる感じがします。


実際には近年でも約60%です。


令和4年調査

https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kgaiyou.pdf


よって×。


4 若年者内部での経済格差は,正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間での結婚意欲の差異としても現れ,「第13回出生動向基本調査」(平成17年,国立社会保障人口問題研究所)によると,特に女性において顕著な差異が観察された。


これは女性よりも男性の方が顕著な差が出てきそうな感じがすると思います。


男性は稼ぐものという固定観念があるからです。


そこから考えると×です。


現時点の最新調査は,第16回(2021年)ですが,これと同様の質問はなかったようです。

第16回調査

https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/JNFS16_ReportALL.pdf


5 いわゆるニートなどの若者の職業的自立を支援するための拠点として,政府は「地域若者サポートステーション事業」を実施し,この事業による就職等進路決定者を2020年までに100万人にする目標を掲げている。



これは分かりません。


▲をつけておきます。



選択肢1,3,4の3つが消去出来ました。



正解を選ぶ確率は50%です。



この手の問題にしては,3つ消去できたのは,とてもラッキーです。


答えは,2が正解。


5が不正解です。


5が不正解なのは,100万人ではなく,20万人だからです。


因みに,合格基準点が150点中72点となった魔の第25回国試でなければ,きっと選択肢5が正解になっていた確率は高かったと思います。


国試は,国の施策を広める効果があるからです。


国試に一度出題すれば,次の年の参考書に載ります。そうすると受験生は勉強します。確実に認知が広がります。


しかし,その時はこれを正解にしなかったのは,第25回という稀有な国試の問題であることと,国立大学の授業料が高いことを問題視している試験委員がいたこと(これは想像)だと思われます。


<今日の一言>


一つでも多く,消去できれば,正解できる確率が高まる!

2024年6月15日土曜日

マイナス言葉はご法度です!!

 覚えられないと・・・


不安

焦る


といった気持ちになります。


リフレーミングすると・・・


これはとても良いことです。なぜなら,勉強をしているからこそ,焦りや不安を感じます。


覚えられない


リフレーミングすると・・・


これもとても良いことです。


なぜなら,覚えようとしているから,覚えられないと感じます。


見方,考え方を変えることを「リフレーミング」と言います。


自分でリフレーミングができれば良いですが,これからマイナス言葉はできるだけ封印しましょう。

辛い,苦しい,勉強時間が取れない,覚えられない,などの言葉は国家試験まで発しないように心がけましょう。

それよりも,楽しいことを考えましょう。


今日の問題です。


第25回・問題25

人間のニードをめぐる諸理論に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 スミス(Smith,A.)は,『諸国民の富』(1776年)において,人間にとっての必需品は,どのような社会においても変わらない内容をもつものであると論じ,そのような共通性が自由競争市場の基盤であると主張した。

2 マルクス(Marx,K.)は,「ゴータ網領批判」(1875年)において,人間のニード充足における資本主義の特性を論ずるなかで,人間のニードは個々人の能力に応じて充足されるべきであると主張した。

3 マズロー(Maslow,A.)は,「人間の動機の理論」(1943年)において,人間の基本的ニードが5種類の要素に分類され,それらは相互に関連しあっているために人間は総合的な発達を遂げると論じた。

4 セン(Sen,A.)は,「財と潜在能力」(1985年)において,人間のニード充足を財の消費からもたらされる効用によって定義する学説を批判して,達成できる機能の集合である潜在能力(capabilities)によって評価すべき,とする理論を提唱した。

5 ドイアル(Doyal,L.)とゴフ(Gough,I.)は,「ヒューマンニードの理論」(1991年)において,基本的ニードは人間が自己善を追求する上で妨げとなる重大な侵害を避けるために必要とするものであるため,本質的に主観的かつ相対的であると論じた。


すべてが人名になっている問題です。


外国人の名前を覚えるのが苦手だと思っている人には,最悪に思える問題でしょう。


これらも現在はすべて参考書に載っていると思うので,勉強が進んだ人なら,何となくでも意味は分かるかもしれません。

しかしほとんどは,初めて出題された内容です。

この中でなじみがあるものは,マズローとセンくらいでしょう。


このタイプの問題は,人名を入れ替えることはあまりありません。


つまり


AはBを提唱した

CはDを提唱した


の主語を入れ替えて


CはBを提唱した

AはDを提唱した


とはしないということです。


何度も出題さているものなら,入れ替え問題はありますが,初めて出題されるものは,入れ替えをしてしまうと,それでなくても難しいのに更に難しくなってしまうからです。


問題を成立させるためには,文章を間違ったものに作り替えなければなりません。

そのために,慎重に文章を見てみると不自然さが感じられることは多々あります。


口の悪い人は「国語力」が試される試験である,と言ったりします。

ここが医学などの自然科学系の学問領域とは違うところだと思います。


それではどんなところに違和感があるのかを,それぞれ詳しく見て行きましょう。


1 スミス(Smith,A.)は,『諸国民の富』(1776年)において,人間にとっての必需品は,どのような社会においても変わらない内容をもつものであると論じ,そのような共通性が自由競争市場の基盤であると主張した。


スミスが言ったかどうかは分かりません。


しかし,必需品がどの社会でも同じというのは違和感があります。

社会によって違いがあるから交換が行われて,市場が成立します。

もしみんなが同じものしか必要としなければ,交換は行われることはないでしょう。


よって×。


2 マルクス(Marx,K.)は,「ゴータ網領批判」(1875年)において,人間のニード充足における資本主義の特性を論ずるなかで,人間のニードは個々人の能力に応じて充足されるべきであると主張した。


マルクスの「資本論」は聞いたことがあっても,「ゴータ綱領批判」は聞いたことはないでしょう。


資本論は,日本の若者が熱くエネルギッシュだった1960年代,学生運動に身を投じた学生は,資本論を読んで理論武装したものです。


資本論を読まない学生は,プチブル扱いされて批判を受けたものです。


資本論は,共産主義国家を誕生させたものです。


そのマルクスが書いた本が違ったとしても,「人間のニードは個々人の能力に応じて充足されるべきである」とは言わないです。


ニードが個々人の能力に応じて充足される考え方であれば,共産主義につながっていかないでしょう。


共産主義は,私有財産を排除して,国のみんなで共有し,資本家に搾取されることのない社会を目指したものです。


調べてみると,マルクスは,ゴータ綱領批判で,「能力に応じて働き,必要に応じて受け取るべきである,と述べているようです。


これは納得です。


よって×。


3 マズロー(Maslow,A.)は,「人間の動機の理論」(1943年)において,人間の基本的ニードが5種類の要素に分類され,それらは相互に関連しあっているために人間は総合的な発達を遂げると論じた。


 共産主義は労働者にとって理想の国家を目指したものでしたが,現在では一部の国を除き,崩壊してしまいました。


それは,マズローが示した人は「自己実現欲求をもった存在である」ということを排除したからです。


自由競争の行き過ぎは敗者を生み出すので,ある程度のバランスは必要ですが,頑張ったらそれが報われる社会,そしてその上には,なりたい自分になりたい,という欲求が認められることはモチベーションにつながります。


共産主義では頑張っても頑張らなくても,必要なものは得られるので,社会の発展が見込めません。


マズローの欲求段階説では,低次のニードが充足されることでより高次のニードを充足しようとする欲求が生まれるとされます。


相互に関連しあっているわけではありません。


よって×。


4 セン(Sen,A.)は,「財と潜在能力」(1985年)において,人間のニード充足を財の消費からもたらされる効用によって定義する学説を批判して,達成できる機能の集合である潜在能力(capabilities)によって評価すべき,とする理論を提唱した。


センの提唱する「ケイパビリティ・アプローチ」は,それまでは物があるかないかが重要であったものを,物があるかないかではなく,物があってもそれを使うことができるかどうかが重要であるとしています。


よって正解です。


5 ドイアル(Doyal,L.)とゴフ(Gough,I.)は,「ヒューマンニードの理論」(1991年)において,基本的ニードは人間が自己善を追求する上で妨げとなる重大な侵害を避けるために必要とするものであるため,本質的に主観的かつ相対的であると論じた。


ドイアルとゴフも聞いたことがないかもしれません。

しかし,これも恐れることはありません。


この年の国試は,「社会善」と「自己善」という対になるものが出題されました。


このように書かれると難しいですが,「〇〇善」は,「〇〇にとって善いこと」の意味です。


全体の意味は,分からなくても,間違い選択肢にするための常とう手段がこの文章に含まれているのが分かりますか。


「主観的」と「相対的」の部分です。これらはそれぞれ反対の意味の言葉として「客観的と「絶対的」があります。


右を左に,左を右に,などと同じです。分かりやすいのは「主観的かつ相対的」と並列で出題してくれていることです。ボーナスと言っても良いです。



〈今日の一言〉

今日の問題はとんでもなく難しいです。

しかし,こんな問題を解けることは幸せです。

健康で,勉強できているからです。

今日も素敵な日をお送りください。

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