2024年11月30日土曜日

訪問看護ステーションについて

 

今回は,訪問看護ステーションを学びます。


それでは前説なしに問題です。


第33回・問題75

訪問看護ステーションの指定要件等に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 栄養士を配置していること。

2 特定行為研修を修了した看護師を配置していること。

3 管理者は医師であること。

4 機能強化型訪問看護ステーションでは,利用者や家族からの連絡及び相談を24時間受ける体制を整備していること。

5 訪問看護の対象は65歳以上の高齢者とすること。


この問題の正解は,選択肢4です。


4 機能強化型訪問看護ステーションでは,利用者や家族からの連絡及び相談を24時間受ける体制を整備していること。


スタンダードな問題のように見せかけて,押さえるところは押さえるというなかなか憎い問題ではないかと思います。


機能強化型訪問看護ステーションは,在宅療養している人を支えるための社会資源です。


ターミナル期などにも対応します。


それでは正解以外のものも解説します。


1 栄養士を配置していること。


訪問看護ステーションに栄養士は必要ありません。


2 特定行為研修を修了した看護師を配置していること。


特定行為研修を修了すると,医行為ができるようになりますが,修了している必要はありません。


3 管理者は医師であること。


管理者の要件は,看護師,保健師,それに助産師です。


5 訪問看護の対象は65歳以上の高齢者とすること。


訪問看護の対象年齢はありません。

2024年11月29日金曜日

医師法

 

今回は,医師に関する問題に取り組みます。

 

前説なしに今日の問題です。

 

かなり難しいです。

 

33回・問題74

日本における医師の資格,業務及び偏在に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 医師が正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らす行為は,刑法により罰せられる。

2 医師は診察治療の求めがあった場合には,事由のいかんにかかわらず,拒むことはできない。

3 医療施設に従事する医師の人口10万対の数を地域別にみると,東北地方に比べて近畿地方が少ない傾向にある。

4 医師の養成機関に対する指定権者は,厚生労働大臣である。

5 医療施設に従事する医師数を施設種別にみると,診療所に従事する医師が最も多い。

 

難しかったでしょう?

 

正解は,選択肢1でした。

 

1 医師が正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らす行為は,刑法により罰せられる。

 

医師法には秘密保持義務違反が規定されておらず,刑法にその規定があります。

 

 

医師,薬剤師,医薬品販売業者,助産師,弁護士,弁護人,公証人又はこれらの職にあった者が,正当な理由がないのに,その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは,6月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

 

刑法とはかなり唐突感があり,この選択肢を正解だと認識しにくいと思います。

 

このような問題は,国家試験当日は,わからなくても気にすることはありません。

 

それでは,ほかの選択肢を解説します。

 

2 医師は診察治療の求めがあった場合には,事由のいかんにかかわらず,拒むことはできない。

 

医師には,応召義務として「診察治療の求があった場合には,正当な事由がなければ,これを拒んではならない」と規定されています。

 

3 医療施設に従事する医師の人口10万対の数を地域別にみると,東北地方に比べて近畿地方が少ない傾向にある。

 

医師が少ないのは,東北地方です。

 

4 医師の養成機関に対する指定権者は,厚生労働大臣である。

 

医師の養成機関に対する指定は,文部科学大臣が行います。

 

医師の養成機関は大学なのですから当然でしょう。

 

5 医療施設に従事する医師数を施設種別にみると,診療所に従事する医師が最も多い。

 

医師の従事者が多いのは病院です。

2024年11月28日木曜日

日本のがん対策

今日は,日本のがん対策を学びます。


前説なしで今日の問題です。


第33回・問題72

日本のがん対策に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 都道府県は,がん対策基本法に基づき,がん対策推進基本計画を策定することが義務づけられている。

2 地域がん診療連携拠点病院では,患者や家族に対して,必要に応じて,アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を含めた意思決定支援を提供できる体制の整備が行われている。

3 がん診療連携拠点病院では,相談支援を行う部門としてがん相談支援センターが設置されている。

4 地域がん診療連携拠点病院では,社会福祉士がキャンサーボードと呼ばれるカンファレンスを開催することが義務づけられている。

5 都道府県は,健康増進法に基づき,がん検診を実施することが義務づけられている。


なかなか難しい問題ですが,知識が不足していても正解できる問題だと思います。


それでは,解説です。


1 都道府県は,がん対策基本法に基づき,がん対策推進基本計画を策定することが義務づけられている。


がん対策推進基本計画を策定するのは,政府です。


2 地域がん診療連携拠点病院では,患者や家族に対して,必要に応じて,アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を含めた意思決定支援を提供できる体制の整備が行われている。


これが1つめの正解です。


アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は,人生会議と訳されています。


元気なうちに治療方針などを話し合っておいて,意思決定支援を行うものです。


3 がん診療連携拠点病院では,相談支援を行う部門としてがん相談支援センターが設置されている。


これが2つめの正解です。

がん相談支援センターは,がん診療連携拠点病院などで相談支援を行う部門です。


4 地域がん診療連携拠点病院では,社会福祉士がキャンサーボードと呼ばれるカンファレンスを開催することが義務づけられている。


キャンサーボードを開催するのは,医療職です。


5 都道府県は,健康増進法に基づき,がん検診を実施することが義務づけられている。


がん検診を実施するのは,市町村です。

2024年11月27日水曜日

公的医療保険の保険給付

 

今回は,医療保険における保険給付を学びます。


日本の医療保険(現役世代)は,大きく分けると健康保険と国民健康保険があります。


保険者として,それぞれに組合(健康保険組合と国民健康保険組合)があります。

組合は忘れがちなので,注意が必要です。


医療保険の給付には,医療の現物給付である「療養の給付」と所得補償などの「現金給付」があります。


現金給付について,国家試験では,傷病手当金,出産手当金,出産育児一時金がよく出題されています。


傷病手当金は,傷病によって仕事ができず,給与が支払われない場合の所得保障です。


出産手当金は,出産によって仕事ができず,給与が支払われない場合の所得保障です。


出産育児一時金は,出産等の費用を給付するものです。


現時点(2024年11月)では,出産育児一時金は定額支給ですが,現在,保険給付化(定率支給)も検討されています。


出産育児一時金は,被保険者の妻が出産した場合にも給付されます。その場合は,名前に「家族」がついた「家族出産育児一時金」が支給されます。


それでは今日の問題です。


第33回・問題71

公的医療保険の保険給付に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 医療保険の保険給付は,現物給付に限られる。

2 高額療養費の給付は,国民健康保険を除く公的医療保険で受けられる。

3 療養の給付は,保険医の保険診療を受けた場合に受けられる。

4 出産手当金は,女子被保険者及び女子被扶養者が出産した場合に支給される。

5 入院時生活療養費は,特別の病室に入院した場合に限り支給される。


なかなか細かい出題です。

難しい内容のものもありますが,答えはかなりシンブルなものとなっています。


それでは,解説です。


1 医療保険の保険給付は,現物給付に限られる。


医療保険の保険給付には,「療養の給付」と「現物給付」があります。


2 高額療養費の給付は,国民健康保険を除く公的医療保険で受けられる。


月の医療費が自己負担限度額を超えた分が給付される高額療養費制度は,国民健康保険にもあります。


3 療養の給付は,保険医の保険診療を受けた場合に受けられる。


これが正解です。医療保険が適用されるのは,保険医に指定されている医療機関が医療を受けた場合です。


4 出産手当金は,女子被保険者及び女子被扶養者が出産した場合に支給される。


出産手当金は,出産によって仕事ができず,給与が支払われない場合の所得保障です。


給付されるのは,被保険者のみです。


被扶養者の出産には支給されません。


被扶養者が出産した場合に支給されるのは,「家族出産育児一時金」です。


5 入院時生活療養費は,特別の病室に入院した場合に限り支給される。


入院時生活療養費は,医療療養病床に入院した場合に支給されます。


入院時生活療養費とは,療養病床に入院した時の食費と居住費に対して,自己負担分を引いた分が支給されるものです。


療養病床に入院した場合は,入院時食事療養費が支給されます。入院時生活療養費と異なるのは,自己負担があるのは食事の部分に対してのみで,居住費の自己負担分はないことです。


なお,入院時生活療養費と入院時食事療養費の自己負担分は,高額療養費制度の対象にはなりません。

2024年11月26日火曜日

医療保険の保険者

 

日本の医療保険は,さまざまな制度を組み合わせて,皆保険を構成しています。

 

その分,制度が複雑になり,理解するのに手間がかかります。

 

以下のように構成されています。

 

制度

被保険者

保険者

健康保険

一般被用者

全国健康保険協会(協会けんぽ)

健康保険組合

日雇特例被保険者

(健康保険法第3条第2項被保険者)

全国健康保険協会(協会けんぽ)

船員保険

船員

全国健康保険協会(協会けんぽ)

共済

国家公務員

各共済組合

地方公務員等

私学教職員

国民健康保険

自営業者等

都道府県等が行う国民健康保険

国民健康保険組合

後期高齢者医療制度

65歳以上で一定の障害のある者と75歳以上

都道府県単位の後期高齢者医療広域連合

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題70 

医療保険制度における保険者とその被保険者に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 健康保険の保険者には,全国健康保険協会が含まれる。

2 船員保険の保険者は,健康保険組合である。

3 日雇特例被保険者の保険の保険者は,国民健康保険組合である。

4 国民健康保険の被保険者には,国家公務員共済組合の組合員が含まれる。

5 後期高齢者医療制度の被保険者は,75歳以上の者に限られる。

 

社会保険を押さえるポイントには,保険者と被保険者がありますが,頭の中で,整理しておかないとこのような極めてスタンダードな問題でも正解することはできません。

 

国家試験の怖いところは,知らないものが出題されると混乱するところです。

これが試験委員の仕掛けるトラップです。

 

それでは解説です。

 

1 健康保険の保険者には,全国健康保険協会が含まれる。

 

これが正解です。

 

健康保険の保険者には,全国健康保険協会(協会けんぽ)と健康保険組合の2つがあります。

 

全国健康保険協会(協会けんぽ)は,中小企業等を対象とします。

 

健康保険組合は,大企業等で組合をつくり保険業務を行います。

 

2 船員保険の保険者は,健康保険組合である。

 

船員保険の保険者は,全国健康保険協会(協会けんぽ)です。

 

3 日雇特例被保険者の保険の保険者は,国民健康保険組合である。

 

日雇特例被保険者の保険(健康保険法第3条第2項被保険者)の保険者は,全国健康保険協会(協会けんぽ)です。

 

4 国民健康保険の被保険者には,国家公務員共済組合の組合員が含まれる。

 

国家公務員共済組合の組合員は,国家公務員共済組合が保険者です。

 

5 後期高齢者医療制度の被保険者は,75歳以上の者に限られる。

 

後期高齢者医療制度の被保険者は,75歳以上の者と65歳以上で一定の障害のある者です。

2024年11月25日月曜日

法務教官とは


法務教官は,少年院,少年鑑別所,少年刑務所,刑務所などで生活指導,教科指導,職業指導などを行います。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題142

子どもに関わる専門職等に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 家庭裁判所調査官は,家庭内の紛争や非行の原因などの調査や,児童福祉施設入所等の適否を判断するための調査等を行う。

2 法務教官は,児童自立支援施設において,生活指導,職業指導,教科教育等各種の教育訓練による矯正教育を行う。

3 保健師は,児童福祉法に基づき,妊産婦や新生児の訪問指導,乳幼児健診,保健指導などを行う。

4 児童委員は,要保護児童の把握や通告を行うこととされており,児童相談所の決定による子どもやその保護者への指導を行うことは業務外となっている。

5 保育士は,子どもを対象とした直接的な援助が主な業務であり,保護者への保育に関する指導を行うことは業務外となっている。


今日のテーマの法務教官は,選択肢2に出題されています。


それでは解説です。


1 家庭裁判所調査官は,家庭内の紛争や非行の原因などの調査や,児童福祉施設入所等の適否を判断するための調査等を行う。


これが正解です。


家庭裁判所調査官は,家庭裁判所に配置され,家庭内の紛争や非行の原因などの調査,児童福祉施設入所等の適否を判断するための調査等を行います。


2 法務教官は,児童自立支援施設において,生活指導,職業指導,教科教育等各種の教育訓練による矯正教育を行う。


法務教官の業務は,生活指導,職業指導,教科教育等各種の教育訓練による矯正教育を行うのは適切ですが,配置されるのは,少年院,少年鑑別所,少年刑務所,刑務所などです。


3 保健師は,児童福祉法に基づき,妊産婦や新生児の訪問指導,乳幼児健診,保健指導などを行う。


妊産婦や新生児の訪問指導,乳幼児健診,保健指導などの根拠法は,母子保健法です。


4 児童委員は,要保護児童の把握や通告を行うこととされており,児童相談所の決定による子どもやその保護者への指導を行うことは業務外となっている。


児童相談所の決定による子どもやその保護者への指導を行うことも児童委員の業務です。


5 保育士は,子どもを対象とした直接的な援助が主な業務であり,保護者への保育に関する指導を行うことは業務外となっている。


保護者への保育に関する指導も保育士の業務です。

2024年11月24日日曜日

子どもの貧困対策の推進に関する法律

出題基準に示されている「子どもの貧困対策の推進に関する法律」は,2024年(令和6年)に改正され,「こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律」となりました。

 

法の目的

この法律は、貧困により、こどもが適切な養育及び教育並びに医療を受けられないこと、こどもが多様な体験の機会を得られないことその他のこどもがその権利利益を害され及び社会から孤立することのないようにするため、日本国憲法第二十五条その他の基本的人権に関する規定、児童の権利に関する条約及びこども基本法の精神にのっとり、こどもの貧困の解消に向けた対策に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、及びこどもの貧困の解消に向けた対策の基本となる事項を定めることにより、こどもの貧困の解消に向けた対策を総合的に推進することを目的とする。

 

法の目的に,憲法第25条のことを述べられているのは,生活保護法以外では初めてかもしれません。

 

 

基本理念

・子どもの貧困対策は、社会のあらゆる分野において、子どもの年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、子どもが心身ともに健やかに育成されることを旨として、推進されなければならない。

・子どもの貧困対策は、子ども等に対する教育の支援、生活の安定に資するための支援、職業生活の安定と向上に資するための就労の支援、経済的支援等の施策を、子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として、子ども等の生活及び取り巻く環境の状況に応じて包括的かつ早期に講ずることにより、推進されなければならない。

・子どもの貧困対策は、子どもの貧困の背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ、推進されなければならない。

・子どもの貧困対策は、国及び地方公共団体の関係機関相互の密接な連携の下に、関連分野における総合的な取組として行われなければならない。

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題141

子どもの貧困対策の推進に関する法律に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 基本理念として,子どもの貧困対策が児童虐待の予防に資するものとなるよう,明記している。

2 子どもの貧困対策では,子どもの年齢及び発達の程度に応じて,その意見が尊重され,その最善の利益が優先して考慮されなければならない。

3 政府は2年ごとに,子どもの貧困の状況と貧困対策の実施状況を公表しなければならない。

4 社会福祉協議会は,貧困の状況にある子どもの保護者に対する就労支援に関して必要な対策を講じなければならない。

5 文部科学省に,特別の機関として,子どもの貧困対策会議を置く。

 

子どもの貧困対策の推進に関する法律が出題されたのは,現時点(第36回国家試験実施後)このときの一回だけです。

 

それでは,解説です。

 

1 基本理念として,子どもの貧困対策が児童虐待の予防に資するものとなるよう,明記している。

 

このような規定はありません。

 

2 子どもの貧困対策では,子どもの年齢及び発達の程度に応じて,その意見が尊重され,その最善の利益が優先して考慮されなければならない。

 

これが正解です。

 

これと同様の規定は,児童福祉法にもあります。

 

全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。

 

「その意見が尊重され」と規定されている理由は,「児童の権利に関する条約」が保障する「能動的権利」を反映しているからです。

 

3 政府は2年ごとに,子どもの貧困の状況と貧困対策の実施状況を公表しなければならない。

 

公表は毎年度です。

 

4 社会福祉協議会は,貧困の状況にある子どもの保護者に対する就労支援に関して必要な対策を講じなければならない。

 

貧困の状況にある子どもの保護者に対する就労支援に関して必要な対策を講じなければならないのは,国及び地方公共団体です。

 

5 文部科学省に,特別の機関として,子どもの貧困対策会議を置く。

 

子どもの貧困対策会議は,内閣府に置かれています。

2024年11月23日土曜日

子ども・子育て支援法

 

子ども・子育て支援法は,これまでにも出題されてきましたが,正式に出題基準に含まれたのは,第37回国家試験です。


子ども・子育て支援制度は,市町村が実施主体になっています。


支給申請は,市町村に対して行います。


児童福祉法には,入所系があるので都道府県の役割がありますが,子ども・子育て支援制度には通所系しかありません。通所系は市町村の役割です。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題140 

子育て支援に係る法律に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 子ども・子育て支援法に基づき,国は,子どもと保護者に必要な子ども・子育て支援給付,地域子ども・子育て支援事業を総合的・計画的に行う。

2 次世代育成支援対策推進法に基づき,市町村は,3年ごとに次世代育成支援対策の実施に関する計画を策定することが義務づけられている。

3 次世代育成支援対策推進法に基づき,常時雇用する労働者が100人を超える一般事業主は,一般事業主行動計画を策定しなければならない。

4 児童福祉法に基づき,保育所等訪問支援では,小学校長が命じる者が保育所等を訪問して,就学前教育に関する助言を行う。

5 母子保健法に基づき,乳児家庭全戸訪問事業では,生後8か月に達した乳児の家庭を訪問して,指導を行う。


今日のテーマは,選択肢1に登場しています。


この問題にはあまりよいものではない選択肢があります。

それは後で話します。


それでは,解説です。


1 子ども・子育て支援法に基づき,国は,子どもと保護者に必要な子ども・子育て支援給付,地域子ども・子育て支援事業を総合的・計画的に行う。


子ども・子育て支援制度の実施主体は,市町村です。


2 次世代育成支援対策推進法に基づき,市町村は,3年ごとに次世代育成支援対策の実施に関する計画を策定することが義務づけられている。


市町村行動計画の策定は,かつては義務でしたが,今は任意です。


3 次世代育成支援対策推進法に基づき,常時雇用する労働者が100人を超える一般事業主は,一般事業主行動計画を策定しなければならない。


これが正解です。


4 児童福祉法に基づき,保育所等訪問支援では,小学校長が命じる者が保育所等を訪問して,就学前教育に関する助言を行う。


就学前相談は,訪問ではなく,相談機関に出かけていきます。


保育所等訪問支援と就学前相談は別物です。


5 母子保健法に基づき,乳児家庭全戸訪問事業では,生後8か月に達した乳児の家庭を訪問して,指導を行う。


これがよくないと思う選択肢です。

1つの文に誤りポイントが2つあります。


乳児家庭全戸訪問事業の根拠法は,児童福祉法です。


対象となるのは,生後4か月までの乳児です。

2024年11月22日金曜日

児童手当法と児童手当

 

今回は児童手当法と児童手当を学びます。


児童手当法,児童扶養手当法,特別児童扶養手当法は,児童扶養手当法(1961年),特別児童扶養手当法(1964年),児童手当法(1971年)の順で成立していきました。


児童手当法の児童の定義は,18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者です。


児童手当は,15歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者に支給されていましたが,2024年(令和6年)10月から,18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者に拡大されています。


以前は定義と支給年齢が異なっていましたが,この改正によって統一されています。覚えやすくなったと言えます。


児童手当は親に給付されますが,児童が施設入所している場合は,施設の設置者に支給されます。


なお,この改正では,所得制限が撤廃されています。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題13

事例を読んで,Kさんの児童手当の支給先として,正しいものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Kさん(13歳,女性)は,父からの身体的虐待によりS市に住む家族と離れ,T市にあるU児童養護施設に入所した。S市役所にKさんの母が来て,これまで父に支払われていたKさんの児童手当は誰に支払われるのかと聴いた。

1 T市

2 Kさん本人

3 Kさんの父

4 U児童養護施設の設置者

5 支給は停止される。


KさんはU児童養護施設に入所しています。


そのため,支給先は「4 U児童養護施設の設置者」となります。

2024年11月21日木曜日

面前DVは,心理的虐待です

 

今日のテーマは,「面前DVは,心理的虐待です」です。

 

面前DVとは,子どもの前で配偶者から暴力を受けることをいいます。

 

児童虐待防止法ができた当時は,この考え方はなく,途中で加わりました。

 

その時に,自分のきょうだいへの虐待も,心理的虐待に含まれるようになりました。

 

この変更により,法ができた当初は,身体的虐待が最も多かったものが,現在では心理的虐待が最も多くなっています。

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題138

事例を読んで,Z配偶者暴力相談支援センターのH相談員(社会福祉士)によるこの時点での対応として,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 Jさん(35歳)は夫(45歳)と娘(7歳)の3人暮らしである。日々の生活の中で,「誰のおかげで飯を食わせてもらっているのか。母親失格,人間としても駄目だ」等と毎日のように娘の前で罵倒され,娘もおびえでおり,Z配偶者暴力相談支援センターに相談に来た。H相談員に,夫の言葉の暴力に苦しんでいることを相談し,「もう限界です」と話した。Jさんは娘の成長にとってもよくないと思っている。

1 家庭裁判所に保護命令を申し立てるようJさんに勧める。

2 Jさんの希望があれば,Jさんと娘の一時保護を検討できるとJさんに伝える。

3 「身体的暴力はないのだから」と,もう少し様子を見るようJさんに伝える。

4 警察に通報する。

5 父親の行為は児童虐待の疑いがあるので,児童相談所に通告する。

 

この問題で得点するためには,児童虐待防止法には,通告義務があることと面前DVは心理的虐待であることを知っていることが必要です。

 

それでは解説です。

 

1 家庭裁判所に保護命令を申し立てるようJさんに勧める。

 

DV防止法にかかわる裁判所は,家庭裁判所ではなく,地方裁判所です。

 

保護命令の申立先が間違っています。

 

2 Jさんの希望があれば,Jさんと娘の一時保護を検討できるとJさんに伝える。

 

これが1つめの正解です。

 

困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(困難女性支援新法)が規定する女性相談支援センターがDV防止法に規定される配偶者暴力相談支援センターとしての役割を果たしています。

 

女性相談支援センターには,一時保護を行う施設が設置されます。これをDV被害者のシェルターとして活用します。

 

3 「身体的暴力はないのだから」と,もう少し様子を見るようJさんに伝える。

 

児童虐待防止法では,児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者には通告義務を規定しています。

 

身体的暴力はありませんが,面前DVはあります。

 

 

4 警察に通報する。

 

DV防止法では,「配偶者からの暴力を受けている者を発見した者は,その旨を配偶者暴力相談支援センター又は警察官に通報するよう努めなければならない」と通報の努力義務を規定しています。

 

DV防止法が規定する警察は通報先の一つですが,この事例の場合,Jさんは配偶者暴力相談支援センターに相談に来ています。

改めて警察に通報する必要があるのは,DVの制止,DV被害者の保護などを求める場合です。

 

現時点では,Jさんは安全な場所にいるので,警察に通報する優先度合いは低いと言えます。

 

5 父親の行為は児童虐待の疑いがあるので,児童相談所に通告する。

 

これが2つめの正解です。

 

夫による娘の前でのJさんへの罵倒は面前DVなので,児童虐待防止法の心理的虐待に当たります。

 

罵倒があったのかどうかにかわらず,「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者」には通告義務があります。

 

児童虐待防止法の通告先は,市町村,福祉事務所,児童相談所です。

 

〈今日の一言〉

 

児童虐待の事例問題で注意しなければならないのは,児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者」には通告義務があることです。

2024年11月20日水曜日

児童福祉法の改正

 

1947年(昭和22年)に作られた児童福祉法は,何度も何度も改正され,現在も児童福祉の中心的法制度として重要な位置づけにあります。

 

特に近年では,児童虐待が増加する中,それに対応するための改正が続いています。

 

今日の問題もそんな問題です。

 

33回・問題137

2019年(令和元年)に改正された児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 児童相談所における介入担当と保護者支援担当は,同一の児童福祉司が担うこととなった。

2 児童相談所の業務の質について,毎年,評価を実施することが義務づけられた。

3 親権者は,児童のしつけに際して体罰を加えてはならないとされた。

4 特別区(東京23区)に,児童相談所を設置することが義務づけられた。

5 一時保護の解除後の児童の安全の確保が,市町村に義務づけられた。

 

2019年の改正法は「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」という名称で,改正の趣旨は,児童虐待防止対策の強化を図るため,児童の権利擁護,児童相談所の体制強化及び関係機関間の連携強化等の所要の措置を講ずることでした。

 

それでは解説です。

 

1 児童相談所における介入担当と保護者支援担当は,同一の児童福祉司が担うこととなった。

 

この改正で行われたのは,一時保護等の介入的対応を行う職員と保護者支援を行う職員を分ける等の措置を講ずることでした。

 

2 児童相談所の業務の質について,毎年,評価を実施することが義務づけられた。

 

児童相談所の業務の質を評価することは,努力義務です。

 

3 親権者は,児童のしつけに際して体罰を加えてはならないとされた。

 

これが正解です。

 

「親権者は,児童のしつけに際して体罰を加えてはならない」と明文化されました。

 

この時の改正では,同時に児童福祉施設の長等についても体罰禁止が規定しています。

 

4 特別区(東京23区)に,児童相談所を設置することが義務づけられた。

 

特別区の児童相談所の設置は,任意です。

 

この改正によって,児童相談所の設置は以下のようになりました。

 

都道府県・指定都市

義務

中核市・特別区

任意

 

5 一時保護の解除後の児童の安全の確保が,市町村に義務づけられた。

 

一時保護の解除後の児童の安全の確保が義務づけられたのは,児童相談所です。

2024年11月19日火曜日

サービス付き高齢者向け住宅

 

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は,高齢者住まい法(高齢者の居住の安定確保に関する法律)に規定され,状況把握サービス及び生活相談サービスその他の高齢者が日常生活を営むために必要な福祉サービスを提供します。


高齢者向けの賃貸住宅や老人福祉法に規定される有料老人ホームが,都道府県知事の登録を受け,サ高住となります。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題135

高齢者の住まいに関する法制度についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 住宅確保要配慮者に対して居住支援に取り組む法人(居住支援法人)は,その申請により,都道府県知事から指定されることとなっている。

2 サービス付き高齢者向け住宅は,入居者に対し,介護保険制度における居宅介護サービス若しくは地域密着型サービスの提供が義務づけられている。

3 シルバーハウジングにおいては生活支援コーディネーターが配置され,必要に応じて入居者の相談や一時的な身体介護を行うこととなっている。

4 終身建物賃貸借制度は,賃借人が死亡することによって賃貸借契約が終了する借家契約であり,75歳以上の高齢者が対象とされている。

5 市町村は,住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する計画(市町村賃貸住宅供給促進計画)の作成を義務づけられている。


今見てもなかなかの難問です。


この科目の前身となる「高齢者に対する支援と介護保険制度」は10問出題される科目だったために,このようなチャレンジングな出題が可能だったのでしょう。


今は,6問になったために,これだけの難問は出題されないのではないかと思います。


それでは解説です。


1 住宅確保要配慮者に対して居住支援に取り組む法人(居住支援法人)は,その申請により,都道府県知事から指定されることとなっている。


これが正解です。


居住支援法人は,住宅セーフティネット法が規定されるもので,高齢者など住宅確保要配慮者に対して,居住支援を行うもので,都道府県知事の指定を受けます。


2 サービス付き高齢者向け住宅は,入居者に対し,介護保険制度における居宅介護サービス若しくは地域密着型サービスの提供が義務づけられている。


今日のテーマのサ高住が登場してきました。


サ高住が提供するサービスは,状況把握サービス及び生活相談サービスその他の高齢者が日常生活を営むために必要な福祉サービスです。


介護保険サービスは,外部のサービスを利用します。


3 シルバーハウジングにおいては生活支援コーディネーターが配置され,必要に応じて入居者の相談や一時的な身体介護を行うこととなっている。


シルバーハウジングは,高齢者世帯向けの公的賃貸住宅等で,生活援助員(ライフサポートアドバイザー)が日常生活支援サービスを提供するものです。

根拠法はありません。



4 終身建物賃貸借制度は,賃借人が死亡することによって賃貸借契約が終了する借家契約であり,75歳以上の高齢者が対象とされている。


終身建物賃貸借制度の対象年齢は,60歳以上です。


5 市町村は,住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する計画(市町村賃貸住宅供給促進計画)の作成を義務づけられている。


市町村賃貸住宅供給促進計画は,住宅セーフティネット法に規定されるもので,策定は任意です。

2024年11月18日月曜日

老人福祉法

 

今回は,老人福祉法を学びます。

 

こんにちの高齢者の介護ニーズには,介護保険法による介護サービスを提供しますが,老人福祉法は今も重要です。

 

市町村長の措置によって介護サービスを提供することもあるからです。

 

緊急性がある場合,介護保険による契約ができない場合,虐待によって世帯分離を行う場合などに措置が行われます。

 

それでは今日の問題です。


第33回・問題134

老人福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村は,市町村老人福祉計画において,当該市町村の区域において確保すべき老人福祉事業の量の目標を定めるものとしている。

2 養護老人ホームの入所要件は,60歳以上の者であって,経済的理由により居宅において介護を受けることが困難な者としている。

3 老人福祉法に基づく福祉の措置の対象となる施設の一つとして,救護施設が含まれている。

4 特別養護老人ホームについて,高齢者がやむを得ない事由により自ら申請できない場合に限って,市町村の意見を聴いた上で都道府県が入所措置を行う。

5 老人介護支援センターは,介護保険法の改正(2005年(平成17年))に伴って,老人福祉法から削除され,介護保険法上に規定された。


ちょっと難問かもしれませんが,良い問題だと思います。

それでは解説です。

 

1 市町村は,市町村老人福祉計画において,当該市町村の区域において確保すべき老人福祉事業の量の目標を定めるものとしている。

 

これが正解です。

 

老人福祉事業とは,老人居宅生活支援事業及び老人福祉施設のことです。

 

老人福祉計画で定める内容

市町村老人福祉計画

都道府県老人福祉計画

老人福祉事業(老人居宅生活支援事業及び老人福祉施設による事業)の量の目標など。

養護老人ホーム及び特別養護老人ホームの必要入所定員総数その他老人福祉事業の量の目標など。

 

都道府県は,入所系サービスが加わっているところに着目して覚えます。

 

 

2 養護老人ホームの入所要件は,60歳以上の者であって,経済的理由により居宅において介護を受けることが困難な者としている。

 

養護老人ホームの入所対象年齢は65歳以上です。

 

養護老人ホームは老人福祉法の中でもとても重要です。

 

入所要件に経済的理由が含まれている理由は,養護老人ホームのルーツは,救護法に規定されていた養老院だからです。

 

戦後,生活保護法によって,養老施設となり,老人福祉法で養護老人ホームとなり,現在に至ります。

 

なお,養護老人ホームの入所要件は,「65歳以上の者であって,環境上の理由及び経済的理由により居宅において養護を受けることが困難なもの」です。

 

3 老人福祉法に基づく福祉の措置の対象となる施設の一つとして,救護施設が含まれている。

 

救護施設は,生活保護法に基づく保護施設です。根拠法は老人福祉法ではありません。

 

4 特別養護老人ホームについて,高齢者がやむを得ない事由により自ら申請できない場合に限って,市町村の意見を聴いた上で都道府県が入所措置を行う。

 

特別養護老人ホームの入所措置は,市町村が行います。

 

1990年(平成2年)の福祉関係八法改正で,入所措置が都道府県から町村に権限移譲されています。

 

細かい理由ですが,「市町村」ではなく,「町村」である理由は,市には福祉事務所があるため,もともと入所措置を行っていたためです。

 

5 老人介護支援センターは,介護保険法の改正(2005年(平成17年))に伴って,老人福祉法から削除され,介護保険法上に規定された。

 

老人介護支援センターは,今も老人福祉法のままです。

 

老人福祉法が定める老人福祉施設

・老人デイサービスセンター

・老人短期入所施設

・養護老人ホーム

・特別養護老人ホーム

・軽費老人ホーム

・老人福祉センター

・老人介護支援センター


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