今回は,社会福祉調査における観察法を学びます。
観察法で出題されるキーワードは,参与観察,非参与観察,アクションリサーチなどです。
今日は,前説なしに問題を解きましょう。
第33回・問題90
調査手法としての観察法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 観察法における「完全な観察者」は,観察に徹して,その場の活動には参加しない。
2 観察法では,聞き取り,文書,写真などの資料は使用しない。
3 観察法の一つとしての参与観察法では,集団を観察対象としない。
4 観察法におけるノートへの記録は,観察時間内に行い,観察終了後には行わない。
5 観察法では,質的なデータは扱うが,量的なデータは扱わない。
この問題は,すべて否定形で統一されている高度な問題です。
今後は,こういった問題が多く出題されてくると思うので,覚悟が必要です。
それでは解説です。
1 観察法における「完全な観察者」は,観察に徹して,その場の活動には参加しない。
これが正解です。
観察法には,「完全な観察者」から「完全な参加者」までの段階があります。
完全な参加者は,観察をせずその場の参加に徹します。
完全な観察者は,その場の活動には参加せず,観察に徹します。
2 観察法では,聞き取り,文書,写真などの資料は使用しない。
観察法では,その場に参加しながらの聞き取りなどを行います。場合によっては写真を撮ることもあります。
3 観察法の一つとしての参与観察法では,集団を観察対象としない。
参与観察でも非参与観察でも集団は観察対象です。
4 観察法におけるノートへの記録は,観察時間内に行い,観察終了後には行わない。
観察対象者への承諾が得られれば,その場で観察したことをフィールドノートに記録します。
しかし,書ききれなかったこともあるので,忘れないうちに記録します。
5 観察法では,質的なデータは扱うが,量的なデータは扱わない。
観察法は,質的調査の手法ですが,観察によって得られた頻度なども貴重なデータとなります。
発達心理学では,子どもを観察し,どの頻度で親とアイコンタクトを取っているのか,なども貴重なデータとなるでしょう。
〈今日の注意ポイント〉
質的調査だからといって,量的データは扱わないといった固定的な理解だとミスするので注意が必要です。
同じようなことでは,社会福祉調査は,無作為抽出によって行うといった固定概念も注意が必要です。
社会福祉調査であっても,質的調査の場合は,有意抽出によって行われることが多いものです。
例えば,A村に住んでいるBさん宅に泊まり込みでその家族を観察する参与観察を行うとします。
観察対象者のBさん家族は,誰かからの紹介,あるいは,もともとの知人であるかもしれません。
これらの場合は,無作為抽出ではなく,有意抽出によって対象者を選んだということになります。