今回は,医療保険における保険給付を学びます。
日本の医療保険(現役世代)は,大きく分けると健康保険と国民健康保険があります。
保険者として,それぞれに組合(健康保険組合と国民健康保険組合)があります。
組合は忘れがちなので,注意が必要です。
医療保険の給付には,医療の現物給付である「療養の給付」と所得補償などの「現金給付」があります。
現金給付について,国家試験では,傷病手当金,出産手当金,出産育児一時金がよく出題されています。
傷病手当金は,傷病によって仕事ができず,給与が支払われない場合の所得保障です。
出産手当金は,出産によって仕事ができず,給与が支払われない場合の所得保障です。
出産育児一時金は,出産等の費用を給付するものです。
現時点(2024年11月)では,出産育児一時金は定額支給ですが,現在,保険給付化(定率支給)も検討されています。
出産育児一時金は,被保険者の妻が出産した場合にも給付されます。その場合は,名前に「家族」がついた「家族出産育児一時金」が支給されます。
それでは今日の問題です。
第33回・問題71
公的医療保険の保険給付に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 医療保険の保険給付は,現物給付に限られる。
2 高額療養費の給付は,国民健康保険を除く公的医療保険で受けられる。
3 療養の給付は,保険医の保険診療を受けた場合に受けられる。
4 出産手当金は,女子被保険者及び女子被扶養者が出産した場合に支給される。
5 入院時生活療養費は,特別の病室に入院した場合に限り支給される。
なかなか細かい出題です。
難しい内容のものもありますが,答えはかなりシンブルなものとなっています。
それでは,解説です。
1 医療保険の保険給付は,現物給付に限られる。
医療保険の保険給付には,「療養の給付」と「現物給付」があります。
2 高額療養費の給付は,国民健康保険を除く公的医療保険で受けられる。
月の医療費が自己負担限度額を超えた分が給付される高額療養費制度は,国民健康保険にもあります。
3 療養の給付は,保険医の保険診療を受けた場合に受けられる。
これが正解です。医療保険が適用されるのは,保険医に指定されている医療機関が医療を受けた場合です。
4 出産手当金は,女子被保険者及び女子被扶養者が出産した場合に支給される。
出産手当金は,出産によって仕事ができず,給与が支払われない場合の所得保障です。
給付されるのは,被保険者のみです。
被扶養者の出産には支給されません。
被扶養者が出産した場合に支給されるのは,「家族出産育児一時金」です。
5 入院時生活療養費は,特別の病室に入院した場合に限り支給される。
入院時生活療養費は,医療療養病床に入院した場合に支給されます。
入院時生活療養費とは,療養病床に入院した時の食費と居住費に対して,自己負担分を引いた分が支給されるものです。
療養病床に入院した場合は,入院時食事療養費が支給されます。入院時生活療養費と異なるのは,自己負担があるのは食事の部分に対してのみで,居住費の自己負担分はないことです。
なお,入院時生活療養費と入院時食事療養費の自己負担分は,高額療養費制度の対象にはなりません。