医学概論の出題基準
国家試験の合格に向けて,この内容を網羅していくことが必要です。
現時点(2025年3月)の直近の国家試験である第37回を出題基準に当てはめると以下のようになります。
大項目 |
設問 |
1 ライフステージにおける心身の変化 |
問題1 思春期・青年期における心身の特徴に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 問題2 高齢者における薬害有害事象の発生予防や発生時の対処方法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。 |
2 健康及び疾病のとらえ方 |
|
3 身体構造と心身機能 |
問題3 筋骨格系に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 |
4 疾病と障害の成り立ち及び回復過程 |
問題4 難病に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。 問題5 肺炎に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。 問題6 事例を読んで,Aさんに最も適切な入院形態を1つ選びなさい。 〔事 例〕 B市に住むAさん(21歳)は,大学4年生で就職活動中であったが,なかなかうまくいかず,次第に抑うつ気分,意欲の低下,思考制止,不安,不眠を呈するようになった。同居する両親(両親ともに50歳代で共働き)とともに,精神科のクリニックを受診し,うつ病の診断となり治療開始となった。しかし,自宅では生活が乱れ,家に閉じこもりがちになり,定期的な受診や薬物治療が困難な状況となった。自傷行為や家族に対する他害行為はみられないが,なかなか抑うつ症状は改善を認めなかったため,主治医が入院加療の必要性があると判断した。主治医が本人及び面親に入院加療の必要性を説明したところ,本人は入院加療を希望した。その後,紹介状を持参のうえで,入院病床を有する精神科病院に受診した。 |
5 公衆衛生 |
|
それぞれの項目の分量は異なるので,バランス良く出題されていません。
こういったものを見て,試験対策の会社等は,「ここが出そうだ」といったように出題予測します。
しかし,それが当たったからといって,それだけで合格できるわけではありません。
合格するためには,出題基準に示された範囲をまんべんなく学んでいくことが必要です。
それでは,今日の問題です。
第34回・問題1
加齢に伴う身体の変化に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 肺の残気量が増加する。
2 拡張期血圧が低下する。
3 聴力は低音域から低下する。
4 下部食道括約筋の収縮力が増強する。
5 膀胱容量が増大する。
これは,不適切問題になりました。
医学関連の問題で不適切問題になったのは,この問題が唯一です。
不適切問題になることが多いのは,圧倒的に制度系の問題です。
しかし,事例問題の正答には正答にするための明確な根拠があるので,ソーシャルワーク系の事例問題はめったに不適切問題になりません。事例問題でも不適切問題になる可能性があるのは,用語にかかわるもの,制度を絡めたものです。
なお,今日の問題が不適切問題になった理由は,正解が2つあったためです。
それでは解説です。
これが1つめの正解です。
肺は,若いうちは弾力があり,空気を吐き出す場合は,風船の仕組みのように肺がしぼみます。
しかし,加齢に伴い,弾力が低下し,だんだん吐き出す空気量が減ります。
風船も古くなると,空気の吐き出しが弱くなります。
肺に残った空気は残気量といいます。
2 拡張期血圧が低下する。
これが2つめの正解です。
拡張期血圧とは,最低血圧のことです。
加齢によって,最高血圧である収縮期血圧は上昇するのに対し,拡張期血圧は低下するかあまり変化しません。
そのために加齢に伴い,収縮期血圧と拡張期血圧の差は,広がります。
3 聴力は低音域から低下する。
加齢によって低下していく聴力は,高音域です。
害虫除けなどに用いられる高音域のモスキート音は,大人には聞こえにくい周波数を使っています。
子どもや若者の中にはモスキート音が聞こえて「耳がキーン」と痛くなる人もいます。
耳の中にはかたつむりの形をした「蝸牛(かぎゅう)」があり,入り口に近いところが高い音,奥に従って低い音を感知します。
蝸牛の中には,毛が生えているのですが,加齢に伴い,その毛は入り口付近から抜けていきます。
そのために,だんだん高い音が聞こえなくなっていきます。
4 下部食道括約筋の収縮力が増強する。
下部食道括約筋は,その名のとおり,食道の下部にある筋肉です。
加齢に伴い弱くなっていきます。
そのため,胃酸が食道に逆流しやすくなり,逆流性食道炎を患う高齢者が多くなります。
5 膀胱容量が増大する。
膀胱は,加齢によって伸びにくくなります。そのために,容量が小さくなります。