今回は,日本国憲法のしめくくりとして,第13条について考えてみたいと思います。
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
この条文は,憲法第11条の基本的人権の尊重を根拠にその内容を述べたものです。
ただし憲法は,施行以来改正がなされていないので,新しい人権と呼ばれるプライバシー権,環境権などは明記されていませんが,それらを含むものとなっています。
今日の問題では問われていませんが,この中で述べられている幸福追求権はこれからの福祉を考えるうえで重要なものです。
日本の社会保障の範囲と方向性は,1950年の社会保障制度審議会勧告で示されました。その頃の日本はまだまだ貧しく,社会保障は,第25条の最低限度の生活保障のためのものとされました。
その後,日本は飛躍的な発展を見せて,今日に至ります。
国民の生活が変化しているのに,社会保障はいつまでも最低限度の生活保障でよいわけではありません。
介護保障についてみても,社会福祉制度だったものが社会保険制度になるなど,21世紀になり,変わってきています。
今後の福祉を考えてみた場合,今よりも一つ高い段階の幸福追求権が根拠となっていくことでしょう。
それでは,今日の問題です。
第27回・問題77 福祉施設・職員の行為に関する次の記述のうち,その適否を考えるに当たり,憲法13条の人格権やプライバシー権が直接の根拠となるものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 利用者が信じる宗教の経典の持ち込みを禁止すること
2 利用者が拒否する作業を強要すること
3 利用者の承諾なしに施設の案内パンフレットにその顔写真を掲載すること
4 利用者の承諾なしに施設協力費を預り金から徴収すること
5 利用者が施設批判をしたことを理由に退所を求めること
正解は選択肢3です。
法は,知っていても知らなくても,生活の中で息づいているからです。
しかし実際にその根拠を求められると分からないこともあるでしょう。
参考書を読むと難しく書いてあると思いますが,実際の国家試験で問われる時はこんな感じの問題となります。
まったく難しくないでしょう?
小学校6年生の知識でも十二分に対応できます。
簡単に解説すると
1 信教の自由
2 奴隷的拘束及び苦役からの自由
3 「人格権」「プライバシー権」
4 財産権
5 思想及び良心の自由
<今日の一言>
「権利擁護と成年後見制度」は,旧カリにあった「法学」に変わって,現行カリキュラムで加わった科目です。
しかし最初の頃は,法学時代と変わらないような出題がありました。今はようやく「権利擁護」のり視点が定まったような出題に明らかに変わってきています。
そのため,科目としての難易度はかなり下がってきています。
法制度を知らなくても権利擁護という視点でじっくり考えると解けるものもあります。
しかししかし・・・
この科目は,午前中の最後の科目。
じっくり考える体力も時間もなくなっているかもしれません。
解けるのに時間がなくなって解けなかったというのではあまりにもったいないです。
時間は合格のためにとても重要なファクターです。
これからはぜひそれも意識していってください。
2018年11月30日金曜日
2018年11月29日木曜日
日本国憲法の出題ポイント~その3
憲法解釈は大変です。
憲法はその国の最高法規であり,理念法です。当然いろいろな立場によって解釈は変わるでしょう。
生活保護法はとても美しい法律だと言う人もいます。
なぜなら法では
(この法律の目的)
第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
と憲法との関係を明記しているからです。ステキな法だと思いませんか?
生活保護は,何かあると攻撃の矢面に遭いますが,生存権規定を具現化するためのものに同法があることを考えるとその成立過程もしっかり押さえておきたいところです。
今回取り上げる問題は,この科目の中では最も難易度が高かったものだと思います。
旧カリ時代の「法学」も含めてかなり難しいです。
第23回・問題71 生活保護法における保護基準は,「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を定めた日本国憲法第25条に由来する。次の記述のうち,この保護基準に関する最高裁判所の判決内容として,適切なものを1つ選びなさい。
1 主務大臣による保護基準の設定は,日本国憲法第25条に由来する生活保護法の規定によって拘束される羈束(きそく)行為である。
2 生活保護法の保護基準に基づいて実施機関が行う保護の要否に関する決定は,自由裁量行為である。
3 保護基準の設定に関して,主務大臣が日本国憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反し,法律によって与えられた裁量権の限界を超え又は裁量権を濫用した場合には,違法な行為として司法審査の対象となることを免れない。
4 保護基準に関する生活保護法の規定は,一般的方針を規定しているにすぎない訓示規定であり,同規定に基づく保護基準の設定は司法審査の対象とならない。
5 日本国憲法第25条が規定する「健康で文化的な最低限度の生活」は,人間としての生活の最低限度という一線を有する以上,理論的には特定の国における特定の時点において,客観的に決定すべきものである。
この問題が成り立つのは,その前の年に出題されたこれがあるからです。
最高裁判所の判例によれば,憲法第25条の内容については立法府の広い裁量に委ねられており,著しい濫用や逸脱があっても司法審査の対象とはならない。
これは間違いです。
最高裁判所の判例というのは,有名な朝日訴訟のことを言っていますが,そこでは,「憲法第25条の内容については立法府の広い裁量に委ねられているが,著しい濫用や逸脱があった場合は,司法審査の対象となる」とされました。
これが分からなくても「著しい濫用や逸脱」が認められるものではない,とは思えるのではないでしょうか。
と書きました。これがあるから成り立つ問題であり,羈束行為,自由裁量などはその後一度も出題されていないくらいの「たまに現れる」お客さんです。
このようなタイプのお客が一番お店側には迷惑です。お客は常連顔ですが,お店側は顔は見たことはあっても名前を思い出すことはかなり難しいことでしょう。
それでは解説です。
1 主務大臣による保護基準の設定は,日本国憲法第25条に由来する生活保護法の規定によって拘束される羈束(きそく)行為である。
これは間違いです。
「羈」は馬に乗るときの手綱(たづな)を意味し,しばりがあることです。行政では,後から出てくる自由裁量のないことを指します。
有名な朝日訴訟では,保護基準の設定は主務大臣,つまり厚生労働大臣による自由裁量が認められるという司法判断が出ています。
2 生活保護法の保護基準に基づいて実施機関が行う保護の要否に関する決定は,自由裁量行為である。
これも間違いです。
保護基準の設定は,主務大臣の自由裁量が認められますが,現場レベルでは自由裁量があるとはみなされません。なぜなら,保護基準を下回る場合,不足分を保護するからです。ここが自由裁量だと保護が適切に行われないおそれがあります。
3 保護基準の設定に関して,主務大臣が日本国憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反し,法律によって与えられた裁量権の限界を超え又は裁量権を濫用した場合には,違法な行為として司法審査の対象となることを免れない。
これが正解です。これは朝日訴訟で示されたものです。
保護基準の設定には裁量権を認めますが,それが著しく逸脱したものであってはならないことを示しています。
4 保護基準に関する生活保護法の規定は,一般的方針を規定しているにすぎない訓示規定であり,同規定に基づく保護基準の設定は司法審査の対象とならない。
これも間違いです。憲法第25条の生存権は,朝日訴訟では,プログラム規定説であると示されています。
プログラム規定説とは,この選択肢にあるように,国の方針を示したものにすぎないというものです。この対称となるのは「具体的権利説」です。法で定められなくても憲法第25条を根拠が裁判の基準となることを言います。
朝日訴訟は,プログラム規定説であることを示しましたが,「裁量権の限界を超え又は裁量権を濫用した場合には,違法な行為として司法審査の対象となることを免れない」という判断をしています。
5 日本国憲法第25条が規定する「健康で文化的な最低限度の生活」は,人間としての生活の最低限度という一線を有する以上,理論的には特定の国における特定の時点において,客観的に決定すべきものである。
これも間違いです。
これは朝日訴訟の第一審で示されたものです。最高裁判断ではないということで間違いです。
<今日の一言>
朝日訴訟は,保護基準を争ったものです。最高裁判断は,プログラム規定説を示しました。
旧カリキュラム時代には数回出題されていますが,現行カリキュラムでは第23回を最後に出題されていません。
しかし,朝日訴訟の原告側証人となった小川政亮(おがわ・まさあき)先生が2017年に亡くなっていることもあり,小川先生へのレクイエムとして出題されることもあるかもしれません。
ただし,一番ヶ瀬康子先生も三浦文夫先生も亡くなってからは出題されたことはありません。
保護基準の設定には主務大臣の裁量権が認められますが,「著しい濫用や逸脱」があった場合は司法審査の対象となるということくらいは覚えておきたいです。
憲法はその国の最高法規であり,理念法です。当然いろいろな立場によって解釈は変わるでしょう。
生活保護法はとても美しい法律だと言う人もいます。
なぜなら法では
(この法律の目的)
第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
と憲法との関係を明記しているからです。ステキな法だと思いませんか?
生活保護は,何かあると攻撃の矢面に遭いますが,生存権規定を具現化するためのものに同法があることを考えるとその成立過程もしっかり押さえておきたいところです。
今回取り上げる問題は,この科目の中では最も難易度が高かったものだと思います。
旧カリ時代の「法学」も含めてかなり難しいです。
第23回・問題71 生活保護法における保護基準は,「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を定めた日本国憲法第25条に由来する。次の記述のうち,この保護基準に関する最高裁判所の判決内容として,適切なものを1つ選びなさい。
1 主務大臣による保護基準の設定は,日本国憲法第25条に由来する生活保護法の規定によって拘束される羈束(きそく)行為である。
2 生活保護法の保護基準に基づいて実施機関が行う保護の要否に関する決定は,自由裁量行為である。
3 保護基準の設定に関して,主務大臣が日本国憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反し,法律によって与えられた裁量権の限界を超え又は裁量権を濫用した場合には,違法な行為として司法審査の対象となることを免れない。
4 保護基準に関する生活保護法の規定は,一般的方針を規定しているにすぎない訓示規定であり,同規定に基づく保護基準の設定は司法審査の対象とならない。
5 日本国憲法第25条が規定する「健康で文化的な最低限度の生活」は,人間としての生活の最低限度という一線を有する以上,理論的には特定の国における特定の時点において,客観的に決定すべきものである。
この問題が成り立つのは,その前の年に出題されたこれがあるからです。
最高裁判所の判例によれば,憲法第25条の内容については立法府の広い裁量に委ねられており,著しい濫用や逸脱があっても司法審査の対象とはならない。
これは間違いです。
最高裁判所の判例というのは,有名な朝日訴訟のことを言っていますが,そこでは,「憲法第25条の内容については立法府の広い裁量に委ねられているが,著しい濫用や逸脱があった場合は,司法審査の対象となる」とされました。
これが分からなくても「著しい濫用や逸脱」が認められるものではない,とは思えるのではないでしょうか。
と書きました。これがあるから成り立つ問題であり,羈束行為,自由裁量などはその後一度も出題されていないくらいの「たまに現れる」お客さんです。
このようなタイプのお客が一番お店側には迷惑です。お客は常連顔ですが,お店側は顔は見たことはあっても名前を思い出すことはかなり難しいことでしょう。
それでは解説です。
1 主務大臣による保護基準の設定は,日本国憲法第25条に由来する生活保護法の規定によって拘束される羈束(きそく)行為である。
これは間違いです。
「羈」は馬に乗るときの手綱(たづな)を意味し,しばりがあることです。行政では,後から出てくる自由裁量のないことを指します。
有名な朝日訴訟では,保護基準の設定は主務大臣,つまり厚生労働大臣による自由裁量が認められるという司法判断が出ています。
2 生活保護法の保護基準に基づいて実施機関が行う保護の要否に関する決定は,自由裁量行為である。
これも間違いです。
保護基準の設定は,主務大臣の自由裁量が認められますが,現場レベルでは自由裁量があるとはみなされません。なぜなら,保護基準を下回る場合,不足分を保護するからです。ここが自由裁量だと保護が適切に行われないおそれがあります。
3 保護基準の設定に関して,主務大臣が日本国憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反し,法律によって与えられた裁量権の限界を超え又は裁量権を濫用した場合には,違法な行為として司法審査の対象となることを免れない。
これが正解です。これは朝日訴訟で示されたものです。
保護基準の設定には裁量権を認めますが,それが著しく逸脱したものであってはならないことを示しています。
4 保護基準に関する生活保護法の規定は,一般的方針を規定しているにすぎない訓示規定であり,同規定に基づく保護基準の設定は司法審査の対象とならない。
これも間違いです。憲法第25条の生存権は,朝日訴訟では,プログラム規定説であると示されています。
プログラム規定説とは,この選択肢にあるように,国の方針を示したものにすぎないというものです。この対称となるのは「具体的権利説」です。法で定められなくても憲法第25条を根拠が裁判の基準となることを言います。
朝日訴訟は,プログラム規定説であることを示しましたが,「裁量権の限界を超え又は裁量権を濫用した場合には,違法な行為として司法審査の対象となることを免れない」という判断をしています。
5 日本国憲法第25条が規定する「健康で文化的な最低限度の生活」は,人間としての生活の最低限度という一線を有する以上,理論的には特定の国における特定の時点において,客観的に決定すべきものである。
これも間違いです。
これは朝日訴訟の第一審で示されたものです。最高裁判断ではないということで間違いです。
<今日の一言>
朝日訴訟は,保護基準を争ったものです。最高裁判断は,プログラム規定説を示しました。
旧カリキュラム時代には数回出題されていますが,現行カリキュラムでは第23回を最後に出題されていません。
しかし,朝日訴訟の原告側証人となった小川政亮(おがわ・まさあき)先生が2017年に亡くなっていることもあり,小川先生へのレクイエムとして出題されることもあるかもしれません。
ただし,一番ヶ瀬康子先生も三浦文夫先生も亡くなってからは出題されたことはありません。
保護基準の設定には主務大臣の裁量権が認められますが,「著しい濫用や逸脱」があった場合は司法審査の対象となるということくらいは覚えておきたいです。
2018年11月28日水曜日
日本国憲法の出題ポイント~その2
日本国憲法の基本原則は「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」です。
注意しておきたいのは,基本原則であり,基本原理ではないということです。
「低所得者に対する支援と生活保護制度」で紹介したように,
原理は,例外のないルール
原則は,例外のあるルール
です。
国家試験で出題されるのは,基本原則のうちの「基本的人権の尊重」です。
「この憲法が国民に保障する基本的人権は,侵すことのできない永久の権利」と規定されていますが,原理ではなく,原則なので,例外があります。
基本的人権は常に認められるものではなく,制限を受けることもあります。
今日取り上げる問題は,国家試験では実際には不適切問題となったものを適切なものに修正しています。
それでは今日の問題です。
第22回・問題70 日本国憲法が保障する基本的人権と権利に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 憲法の基本的人権の保障は,特別の定めがある場合を除き,外国人には及ばない。
2 憲法の基本的人権規定は,国又は地方公共団体と個人との関係を規律するものであり,私人間にその効力が及ぶことはない。
3 抑留又は拘禁された後,無罪の裁判を受けた者が,国に対してその補償を求めるのは,憲法が認める権利である。
4 基本的人権は,侵すことのできない永久の権利であり,憲法条文に制限の可能性が示されている場合に限り,制約を受ける。
5 最高裁判所の判例によれば,憲法第25条の内容については立法府の広い裁量に委ねられており,著しい濫用や逸脱があっても司法審査の対象とはならない。
これが不適切問題になった理由は,選択肢3の「抑留」が「拘留」になっていたためです。
細かく覚える必要は一切ありませんが,抑留は裁判を受けずにその場に押しとどめること,拘留は裁判を受けて言い渡される刑の一種です。
それでは解説です。
1 憲法の基本的人権の保障は,特別の定めがある場合を除き,外国人には及ばない。
これは間違いです。
外国人に関しては,難民条約批准前は,あまり適用されることが少なかったようですが,現在は,基本的に外国人にも及ぶものと考えられ,逆に「特別な定めのある場合,外国人に及ばない」とされます。
2 憲法の基本的人権規定は,国又は地方公共団体と個人との関係を規律するものであり,私人間にその効力が及ぶことはない。
これも間違いです。
今は,このスタイルの問題の作り方「●●は●●であるが,●●は●●ではない」といったものは,出題されなくなっていますが,このスタイルの出題はまず間違い選択肢となります。
もちろんこれも間違いです。
基本的人権の尊重は,基本原則です。例外が存在します。本来は,問題文のように基本的人権は「国又は地方公共団体と個人との関係を規律するもの」です。
しかし例外として民法などの規定によって私人間(しじんかん,つまり人と人の間)にも適用されます。こんな説明をしなくても,私人間に適用されないのだったら,福祉や教育などの現場での「人権尊重」は何の法的根拠を持たないことになっしまいます。
3 抑留又は拘禁された後,無罪の裁判を受けた者が,国に対してその補償を求めるのは,憲法が認める権利である。
これが正解です。
実際には先に述べたように「抑留」を「拘留」と出題されたので不適切問題となっしまいました。
再審の結果,無罪判決をつかみとった人が,国を相手に裁判を起こすことは,憲法で規定する権利なのです。しかし過ぎ去った時間は戻ってくるわけではありません。
4 基本的人権は,侵すことのできない永久の権利であり,憲法条文に制限の可能性が示されている場合に限り,制約を受ける。
これは間違いです。
先に述べたように,基本的人権は「侵すことのできない永久の権利」です。しかし憲法は国の最高法規であり,細かい内容は,具体的に他の立法によって規定されるもので,憲法には細かい規定はされません。
そのため,憲法の条文に制限の可能性が示されていないものであっても制限を受けます。特に「公共の福祉」に反するものは,制限を受けます。
5 最高裁判所の判例によれば,憲法第25条の内容については立法府の広い裁量に委ねられており,著しい濫用や逸脱があっても司法審査の対象とはならない。
これも間違いです。
最高裁判所の判例というのは,有名な朝日訴訟のことを言っていますが,そこでは,「憲法第25条の内容については立法府の広い裁量に委ねられているが,著しい濫用や逸脱があった場合は,司法審査の対象となる」とされました。
これが分からなくても「著しい濫用や逸脱」が認められるものではない,とは思えるのではないでしょうか。
<今日の一言>
この科目は,今日の問題のように法制度で構成されています。なじみのないものはとても難しく感じるかもしれません。
しかし,法制度ほ知っていても知らなくても,法制度は日常的に動いています。
そのため,今日の問題のように難しいものであっても,日常で見聞きしたものを頼りに考えることができる可能性があるのです。
それでも解けないものは,受験者みんなが解けません。
そんな問題は解けなくても良いです。
今日の問題のように,難しいように見えても落ち着いて読めば答えが分かるものもあります。
この問題は出題ミスがあり不適切問題となってしまったので,全員に加点されました。そうなると,本来解けなかった人も加点されるので合格基準点が上がることになります。
自己採点してみて点数があまり高くない人は不適切問題があることを望む声が聞こえますが,本当に不適切問題になると合格基準点が上がるので,決して良いことではありません。
注意しておきたいのは,基本原則であり,基本原理ではないということです。
「低所得者に対する支援と生活保護制度」で紹介したように,
原理は,例外のないルール
原則は,例外のあるルール
です。
国家試験で出題されるのは,基本原則のうちの「基本的人権の尊重」です。
「この憲法が国民に保障する基本的人権は,侵すことのできない永久の権利」と規定されていますが,原理ではなく,原則なので,例外があります。
基本的人権は常に認められるものではなく,制限を受けることもあります。
今日取り上げる問題は,国家試験では実際には不適切問題となったものを適切なものに修正しています。
それでは今日の問題です。
第22回・問題70 日本国憲法が保障する基本的人権と権利に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 憲法の基本的人権の保障は,特別の定めがある場合を除き,外国人には及ばない。
2 憲法の基本的人権規定は,国又は地方公共団体と個人との関係を規律するものであり,私人間にその効力が及ぶことはない。
3 抑留又は拘禁された後,無罪の裁判を受けた者が,国に対してその補償を求めるのは,憲法が認める権利である。
4 基本的人権は,侵すことのできない永久の権利であり,憲法条文に制限の可能性が示されている場合に限り,制約を受ける。
5 最高裁判所の判例によれば,憲法第25条の内容については立法府の広い裁量に委ねられており,著しい濫用や逸脱があっても司法審査の対象とはならない。
これが不適切問題になった理由は,選択肢3の「抑留」が「拘留」になっていたためです。
細かく覚える必要は一切ありませんが,抑留は裁判を受けずにその場に押しとどめること,拘留は裁判を受けて言い渡される刑の一種です。
それでは解説です。
1 憲法の基本的人権の保障は,特別の定めがある場合を除き,外国人には及ばない。
これは間違いです。
外国人に関しては,難民条約批准前は,あまり適用されることが少なかったようですが,現在は,基本的に外国人にも及ぶものと考えられ,逆に「特別な定めのある場合,外国人に及ばない」とされます。
2 憲法の基本的人権規定は,国又は地方公共団体と個人との関係を規律するものであり,私人間にその効力が及ぶことはない。
これも間違いです。
今は,このスタイルの問題の作り方「●●は●●であるが,●●は●●ではない」といったものは,出題されなくなっていますが,このスタイルの出題はまず間違い選択肢となります。
もちろんこれも間違いです。
基本的人権の尊重は,基本原則です。例外が存在します。本来は,問題文のように基本的人権は「国又は地方公共団体と個人との関係を規律するもの」です。
しかし例外として民法などの規定によって私人間(しじんかん,つまり人と人の間)にも適用されます。こんな説明をしなくても,私人間に適用されないのだったら,福祉や教育などの現場での「人権尊重」は何の法的根拠を持たないことになっしまいます。
3 抑留又は拘禁された後,無罪の裁判を受けた者が,国に対してその補償を求めるのは,憲法が認める権利である。
これが正解です。
実際には先に述べたように「抑留」を「拘留」と出題されたので不適切問題となっしまいました。
再審の結果,無罪判決をつかみとった人が,国を相手に裁判を起こすことは,憲法で規定する権利なのです。しかし過ぎ去った時間は戻ってくるわけではありません。
4 基本的人権は,侵すことのできない永久の権利であり,憲法条文に制限の可能性が示されている場合に限り,制約を受ける。
これは間違いです。
先に述べたように,基本的人権は「侵すことのできない永久の権利」です。しかし憲法は国の最高法規であり,細かい内容は,具体的に他の立法によって規定されるもので,憲法には細かい規定はされません。
そのため,憲法の条文に制限の可能性が示されていないものであっても制限を受けます。特に「公共の福祉」に反するものは,制限を受けます。
5 最高裁判所の判例によれば,憲法第25条の内容については立法府の広い裁量に委ねられており,著しい濫用や逸脱があっても司法審査の対象とはならない。
これも間違いです。
最高裁判所の判例というのは,有名な朝日訴訟のことを言っていますが,そこでは,「憲法第25条の内容については立法府の広い裁量に委ねられているが,著しい濫用や逸脱があった場合は,司法審査の対象となる」とされました。
これが分からなくても「著しい濫用や逸脱」が認められるものではない,とは思えるのではないでしょうか。
<今日の一言>
この科目は,今日の問題のように法制度で構成されています。なじみのないものはとても難しく感じるかもしれません。
しかし,法制度ほ知っていても知らなくても,法制度は日常的に動いています。
そのため,今日の問題のように難しいものであっても,日常で見聞きしたものを頼りに考えることができる可能性があるのです。
それでも解けないものは,受験者みんなが解けません。
そんな問題は解けなくても良いです。
今日の問題のように,難しいように見えても落ち着いて読めば答えが分かるものもあります。
この問題は出題ミスがあり不適切問題となってしまったので,全員に加点されました。そうなると,本来解けなかった人も加点されるので合格基準点が上がることになります。
自己採点してみて点数があまり高くない人は不適切問題があることを望む声が聞こえますが,本当に不適切問題になると合格基準点が上がるので,決して良いことではありません。
2018年11月27日火曜日
日本国憲法の出題ポイント~その1
今回から科目は,「権利擁護と成年後見制度」に移ります。
この科目は,旧カリキュラムの「法学」に変わって,現行カリキュラムで加わったものです。
法学時代はかなり難解な問題が出題されていたので,点数が取りにくい科目でした。
今でも難易度が高い科目であることには変わりはありませんが,その当時よりも取り組みやすいものになったと言えます。
今日のテーマは「日本国憲法」です。
この科目では「基本的人権」が多く出題されます。
基本的人権には,自由権,社会権,参政権,国務追求権があります。
自由権は歴史的にみると,フランス革命のスローガンである「自由,平等,博愛」に示されるように,国民が勝ち取った権利です。
社会権は,幸福な生活保障を要求する権利です。生存権などが社会権に含まれます。
生存権が規定されたのは,1919年のドイツのワイマール憲法が最初です。自由権よりも新しい権利です。日本国憲法第25条の生存権規定は,ワイマール憲法を参考にしたと言われています。
社会権は,外国人に適用されるものとされないものがあります。
それでは今日の問題です。
第29回・問題78 日本国憲法における社会権を具体化する立法の外国人への適用に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 労働基準法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。
2 労働者災害補償保険法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。
3 生活保護法は,就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されることはない。
4 国民年金法は,永住外国人に適用されることはない。
5 国民健康保険法は,永住外国人に適用されることはない。
(注) 「永住外国人」とは,特別永住者及び法務大臣による許可を得た永住資格者(一般永住者)のことである。
労働人口の減少を背景として,外国人労働者の受け入れが進んでいます。
そのため近年の国試では,外国人に関して出題されるようになってきました。
しっかり押さえておきたいところです。
それでは解説です。
1 労働基準法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。
これは間違いです。
労働基準法はすべての労働者に対して適用されるので,不法就労であっても適用されます。
2 労働者災害補償保険法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。
これも間違いです。
労災保険は労働者を雇用する事業所に適用されるので,不法就労であっても適用されます。
3 生活保護法は,就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されることはない。
これが正解です。
生活保護法は,永住権を有する永住外国人には適用されています。しかし就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されません。
4 国民年金法は,永住外国人に適用されることはない。
これも間違いです。
国民年金は,国民という名称がついていますが,日本が難民条約に批准したことで国籍要件が撤廃されています。そのため永住外国人にも適用されます。
5 国民健康保険法は,永住外国人に適用されることはない。
これも間違いです。国民健康保険法も難民条約の批准に伴い,国籍要件が撤廃されています。
<今日の一言>
1982年の難民条約の批准により,国民年金法,国民健康保険法,児童扶養手当法等から国籍要件が撤廃されました。
現在では,住民基本台帳法の改正で外国人登録制度が廃止となり,在留期間が3か月を超える外国人にも住民票が作成され,年金保険,国民健康保険の加入対象となっています。
年金保険は,帰国すると無駄になってしまうので,その場合は,脱退一時金を受け取ることができます。また社会保障協定を結んでいる国とは,日本で納付した分は母国でも認められます。
生活保護法は,社会保障関連法の中では数少ない国籍要件があるものです。ただし人道上の観点から永住外国人には行政上保護が実施されています。
この科目は,旧カリキュラムの「法学」に変わって,現行カリキュラムで加わったものです。
法学時代はかなり難解な問題が出題されていたので,点数が取りにくい科目でした。
今でも難易度が高い科目であることには変わりはありませんが,その当時よりも取り組みやすいものになったと言えます。
今日のテーマは「日本国憲法」です。
この科目では「基本的人権」が多く出題されます。
基本的人権には,自由権,社会権,参政権,国務追求権があります。
自由権は歴史的にみると,フランス革命のスローガンである「自由,平等,博愛」に示されるように,国民が勝ち取った権利です。
社会権は,幸福な生活保障を要求する権利です。生存権などが社会権に含まれます。
生存権が規定されたのは,1919年のドイツのワイマール憲法が最初です。自由権よりも新しい権利です。日本国憲法第25条の生存権規定は,ワイマール憲法を参考にしたと言われています。
社会権は,外国人に適用されるものとされないものがあります。
それでは今日の問題です。
第29回・問題78 日本国憲法における社会権を具体化する立法の外国人への適用に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 労働基準法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。
2 労働者災害補償保険法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。
3 生活保護法は,就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されることはない。
4 国民年金法は,永住外国人に適用されることはない。
5 国民健康保険法は,永住外国人に適用されることはない。
(注) 「永住外国人」とは,特別永住者及び法務大臣による許可を得た永住資格者(一般永住者)のことである。
労働人口の減少を背景として,外国人労働者の受け入れが進んでいます。
そのため近年の国試では,外国人に関して出題されるようになってきました。
しっかり押さえておきたいところです。
それでは解説です。
1 労働基準法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。
これは間違いです。
労働基準法はすべての労働者に対して適用されるので,不法就労であっても適用されます。
2 労働者災害補償保険法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。
これも間違いです。
労災保険は労働者を雇用する事業所に適用されるので,不法就労であっても適用されます。
3 生活保護法は,就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されることはない。
これが正解です。
生活保護法は,永住権を有する永住外国人には適用されています。しかし就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されません。
4 国民年金法は,永住外国人に適用されることはない。
これも間違いです。
国民年金は,国民という名称がついていますが,日本が難民条約に批准したことで国籍要件が撤廃されています。そのため永住外国人にも適用されます。
5 国民健康保険法は,永住外国人に適用されることはない。
これも間違いです。国民健康保険法も難民条約の批准に伴い,国籍要件が撤廃されています。
<今日の一言>
1982年の難民条約の批准により,国民年金法,国民健康保険法,児童扶養手当法等から国籍要件が撤廃されました。
現在では,住民基本台帳法の改正で外国人登録制度が廃止となり,在留期間が3か月を超える外国人にも住民票が作成され,年金保険,国民健康保険の加入対象となっています。
年金保険は,帰国すると無駄になってしまうので,その場合は,脱退一時金を受け取ることができます。また社会保障協定を結んでいる国とは,日本で納付した分は母国でも認められます。
生活保護法は,社会保障関連法の中では数少ない国籍要件があるものです。ただし人道上の観点から永住外国人には行政上保護が実施されています。
2018年11月26日月曜日
地域連携クリティカルパスとは?
保健医療サービスの締めくくりとして,地域連携クリティカルパスを取り上げます。
クリティカルパスには,院内パスと地域連携パスがあります。
院内パスは,入院から退院までのスケジュール表です。
地域連携パスは,地域生活を支えるための医療・介護の役割分担の仕組みです。
それでは今日の問題です。
第29回・問題76 地域連携クリティカルパスに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 連携する機関に保険薬局は含まれない。
2 病院内のチーム医療の推進が目的である。
3 連携する機関の間で診療計画や診療情報を共有する。
4 連携する機関に地域包括支援センターは含まれない。
5 患者が退院する病院の専門職が決定した診療方針に従い,地域の医療機関が診療を行う。
第29回の問題の割に問題文が洗練された感じがしないのは,語尾が統一されていないからでしょう。
また選択肢5が他の選択肢よりも長いのが気になります。
おそらく今後はこのようなスタイルは少なくなるでしょう。
いろいろな参考書にある「いわゆる解答テクニック」といったものは通用しなくなると思います。
具体的には
「のみ」
「すべて」
「断定」
こういったものに間違いが多いという傾向です。
それはさておき解説です。
1 連携する機関に保険薬局は含まれない。
これは間違いです。
保険薬局は服薬指導といった面で重要です。
2 病院内のチーム医療の推進が目的である。
これも間違いです。
病院内で使われるのは院内パスです。
3 連携する機関の間で診療計画や診療情報を共有する。
これが正解です。
患者の情報共有は連携に欠かせません。
4 連携する機関に地域包括支援センターは含まれない。
これも間違いです。
もちろん地域包括支援センターも含まれます。
5 患者が退院する病院の専門職が決定した診療方針に従い,地域の医療機関が診療を行う。
これも間違いです。
こんな役割分担はありません。
<今日の一言>
保健医療サービスは,現行カリキュラムによって加わった科目です。
そのため,初期は医療ソーシャルワーカー系の試験委員が張り切り,問題が難しくなる傾向にありました。
近年は少しずつこなれてきた傾向があります。
それでもまだまだ難しい問題も出題されることもあるでしょう。
しかししっかり勉強するとある程度の点数は取れます。
社会福祉士の国家試験は150問出題されます。
勉強すればするほど不安は高まっていくでしょう。
今まで勉強してきたことの範囲を広げてはいけません。
不安は今まで勉強してきたことを強化することで解消しましょう!!
次回からは,共通科目の最後の科目である「権利擁護と成年後見制度」に取り組んでいきます。
クリティカルパスには,院内パスと地域連携パスがあります。
院内パスは,入院から退院までのスケジュール表です。
地域連携パスは,地域生活を支えるための医療・介護の役割分担の仕組みです。
それでは今日の問題です。
第29回・問題76 地域連携クリティカルパスに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 連携する機関に保険薬局は含まれない。
2 病院内のチーム医療の推進が目的である。
3 連携する機関の間で診療計画や診療情報を共有する。
4 連携する機関に地域包括支援センターは含まれない。
5 患者が退院する病院の専門職が決定した診療方針に従い,地域の医療機関が診療を行う。
第29回の問題の割に問題文が洗練された感じがしないのは,語尾が統一されていないからでしょう。
また選択肢5が他の選択肢よりも長いのが気になります。
おそらく今後はこのようなスタイルは少なくなるでしょう。
いろいろな参考書にある「いわゆる解答テクニック」といったものは通用しなくなると思います。
具体的には
「のみ」
「すべて」
「断定」
こういったものに間違いが多いという傾向です。
それはさておき解説です。
1 連携する機関に保険薬局は含まれない。
これは間違いです。
保険薬局は服薬指導といった面で重要です。
2 病院内のチーム医療の推進が目的である。
これも間違いです。
病院内で使われるのは院内パスです。
3 連携する機関の間で診療計画や診療情報を共有する。
これが正解です。
患者の情報共有は連携に欠かせません。
4 連携する機関に地域包括支援センターは含まれない。
これも間違いです。
もちろん地域包括支援センターも含まれます。
5 患者が退院する病院の専門職が決定した診療方針に従い,地域の医療機関が診療を行う。
これも間違いです。
こんな役割分担はありません。
<今日の一言>
保健医療サービスは,現行カリキュラムによって加わった科目です。
そのため,初期は医療ソーシャルワーカー系の試験委員が張り切り,問題が難しくなる傾向にありました。
近年は少しずつこなれてきた傾向があります。
それでもまだまだ難しい問題も出題されることもあるでしょう。
しかししっかり勉強するとある程度の点数は取れます。
社会福祉士の国家試験は150問出題されます。
勉強すればするほど不安は高まっていくでしょう。
今まで勉強してきたことの範囲を広げてはいけません。
不安は今まで勉強してきたことを強化することで解消しましょう!!
次回からは,共通科目の最後の科目である「権利擁護と成年後見制度」に取り組んでいきます。
2018年11月25日日曜日
医療ソーシャルワーカーの業務の徹底理解~その4
今まで3回にわたり,医療ソーシャルワーカー業務指針について取り上げてきましたが,今回が最終回です。
今一度,業務指針の「受診・受療援助」を確認しておきましょう。
(4) 受診・受療援助
入院,入院外を問わず,患者やその家族等に対する次のような受診,受療の援助を行う。
① 生活と傷病の状況に適切に対応した医療の受け方,病院・診療所の機能等の情報提供等を行うこと。
② 診断,治療を拒否するなど医師等の医療上の指導を受け入れない場合に,その理由となっている心理的・社会的問題について情報を収集し,問題の解決を援助すること。
③ 診断,治療内容に関する不安がある場合に,患者,家族の心理的・社会的状況を踏まえて,その理解を援助すること。
④ 心理的・社会的原因で症状の出る患者について情報を収集し,医師等へ提供するとともに,人間関係の調整,社会資源の活用等による問題の解決を援助すること。
⑤ 入退院・入退所の判定に関する委員会が設けられている場合には,これに参加し,経済的,心理的・社会的観点から必要な情報の提供を行うこと。
⑥ その他診療に参考となる情報を収集し,医師,看護師等へ提供すること。
⑦ 通所リハビリテーション等の支援,集団療法のためのアルコール依存症者の会等の育成,支援を行うこと。
「受診・受療援助」以外は,https://fukufuku21.blogspot.com/2018/11/blog-post_23.html でご確認ください。
それでは今日の問題です。
第28回・問題75 救急医療の場面において,医療ソーシャルワーカーが医療ソーシャルワーカー業務指針にのっとって行う業務に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 患者の身元が不明な場合には,警察に通報する義務がある。
2 患者が医療費の支払いに困窮している場合には,福祉,保険等関係諸制度を活用できるように援助する。
3 患者が医療上の指導を受け入れない場合には,その理由となっている心理的・社会的問題の解決に向けて援助を行う。
4 継続治療が必要な場合には,同一病院での入院を推奨する。
5 家族が混乱している場合には,治療内容を説明する。
(注) 医療ソーシャルワーカー業務指針は,平成14年11月29日に改定されたものである。(厚生労働省健康局長通知)
業務指針の内容がそのまま正解選択肢になっているので,答えはすぐ分かるかもしれません。
「業務指針に沿った」という条件がなくても,医療ソーシャルワーカーはソーシャルワーカーなので「相談援助」が決め手です。
その視点が大切です。
このようなタイプの問題が出題される理由の一つには,医療ソーシャルワーカーは,社会福祉士の資格が創設されてからしばらくは実務経験として認められてこなかったこともあるように思います。
今となっては驚きですね。
それでは解説です。
1 患者の身元が不明な場合には,警察に通報する義務がある。
これは間違いです。
業務指針に,相談援助に関係しないものが含まれるはずがありません。このような義務はもちろんありません。
2 患者が医療費の支払いに困窮している場合には,福祉,保険等関係諸制度を活用できるように援助する。
これは正解です。先日紹介した「新らしい保健所」の映像の中にも,このような内容のことが紹介されていましたね。
3 患者が医療上の指導を受け入れない場合には,その理由となっている心理的・社会的問題の解決に向けて援助を行う。
これも正解です。「受診・受療援助」そのものです。
4 継続治療が必要な場合には,同一病院での入院を推奨する。
これは間違いです。
地域完結型医療の時代,これはあり得ないでしょう。
5 家族が混乱している場合には,治療内容を説明する。
これも間違いです。
医療そのものは医療ソーシャルワーカーの役割ではありません。
今一度,業務指針の「受診・受療援助」を確認しておきましょう。
(4) 受診・受療援助
入院,入院外を問わず,患者やその家族等に対する次のような受診,受療の援助を行う。
① 生活と傷病の状況に適切に対応した医療の受け方,病院・診療所の機能等の情報提供等を行うこと。
② 診断,治療を拒否するなど医師等の医療上の指導を受け入れない場合に,その理由となっている心理的・社会的問題について情報を収集し,問題の解決を援助すること。
③ 診断,治療内容に関する不安がある場合に,患者,家族の心理的・社会的状況を踏まえて,その理解を援助すること。
④ 心理的・社会的原因で症状の出る患者について情報を収集し,医師等へ提供するとともに,人間関係の調整,社会資源の活用等による問題の解決を援助すること。
⑤ 入退院・入退所の判定に関する委員会が設けられている場合には,これに参加し,経済的,心理的・社会的観点から必要な情報の提供を行うこと。
⑥ その他診療に参考となる情報を収集し,医師,看護師等へ提供すること。
⑦ 通所リハビリテーション等の支援,集団療法のためのアルコール依存症者の会等の育成,支援を行うこと。
「受診・受療援助」以外は,https://fukufuku21.blogspot.com/2018/11/blog-post_23.html でご確認ください。
それでは今日の問題です。
第28回・問題75 救急医療の場面において,医療ソーシャルワーカーが医療ソーシャルワーカー業務指針にのっとって行う業務に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 患者の身元が不明な場合には,警察に通報する義務がある。
2 患者が医療費の支払いに困窮している場合には,福祉,保険等関係諸制度を活用できるように援助する。
3 患者が医療上の指導を受け入れない場合には,その理由となっている心理的・社会的問題の解決に向けて援助を行う。
4 継続治療が必要な場合には,同一病院での入院を推奨する。
5 家族が混乱している場合には,治療内容を説明する。
(注) 医療ソーシャルワーカー業務指針は,平成14年11月29日に改定されたものである。(厚生労働省健康局長通知)
業務指針の内容がそのまま正解選択肢になっているので,答えはすぐ分かるかもしれません。
「業務指針に沿った」という条件がなくても,医療ソーシャルワーカーはソーシャルワーカーなので「相談援助」が決め手です。
その視点が大切です。
このようなタイプの問題が出題される理由の一つには,医療ソーシャルワーカーは,社会福祉士の資格が創設されてからしばらくは実務経験として認められてこなかったこともあるように思います。
今となっては驚きですね。
それでは解説です。
1 患者の身元が不明な場合には,警察に通報する義務がある。
これは間違いです。
業務指針に,相談援助に関係しないものが含まれるはずがありません。このような義務はもちろんありません。
2 患者が医療費の支払いに困窮している場合には,福祉,保険等関係諸制度を活用できるように援助する。
これは正解です。先日紹介した「新らしい保健所」の映像の中にも,このような内容のことが紹介されていましたね。
3 患者が医療上の指導を受け入れない場合には,その理由となっている心理的・社会的問題の解決に向けて援助を行う。
これも正解です。「受診・受療援助」そのものです。
4 継続治療が必要な場合には,同一病院での入院を推奨する。
これは間違いです。
地域完結型医療の時代,これはあり得ないでしょう。
5 家族が混乱している場合には,治療内容を説明する。
これも間違いです。
医療そのものは医療ソーシャルワーカーの役割ではありません。
2018年11月24日土曜日
医療ソーシャルワーカーの業務の徹底理解~その3
社会福祉士の国試に合格するのは,簡単なものではありません。
とは言うものの決して難しい試験ではありません。
合格できるポイントはただ一つ。
出題基準の範囲をひたすら覚えることです。
覚える方法はたくさんあります。しかし覚える内容は出題基準で示された内容をカバーしなければなりません。。
残念ながら「ここだけ覚えて大丈夫!!」といった秘策はないと言えます。
そんなことで合格できる試験なら,合格率のマックスが30%以上になると思いませんか。
出題基準の範囲をひたすら覚えることです。
内容を絞り込んだ参考書などは,ある程度勉強した人が最後のまとめとして使うのは良いと思いますが,勉強していない人がそれを使って合格するのは難しいのではないかと思います。
ここを間違えないようにしましょう。
それでは今日の問題です。
第29回・問題75 Kさん(20歳,男子大学生)は,2週間前にスノーボードの事故で脊椎損傷になり,特定機能病院に搬送され,入院となった。現在,両下肢不全麻痺があり,リハビリテーションが必要だが拒否しており,怒りや落ち込みなど精神的に不安定な状態にある。
Kさんの担当になった医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)が医療ソーシャルワーカー業務指針に沿って援助計画を立案するに当たって行うこととして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 急性期治療から回復期リハビリテーション,さらに復学支援まで自分が担当すると説明する。
2 精神的に不安定なKさんの支援のために,精神科医に診療を依頼する。
3 Kさんの家族に対して,治療方針と予後に関して説明する。
4 将来の在宅療養を予想し,Kさんの居住する地域の「障害者総合支援法」に基づく協議会に参加して,患者に関する情報を提供する。
5 Kさんに対して面接を行い,その中でリハビリテーションを受け入れない理由などの情報を収集する。
(注)1 医療ソーシャルワーカー業務指針は,平成14年11月29日に改定されたものである。(厚生労働省健康局長通知)
2 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
「医療ソーシャルワーカーの業務指針に沿って」という限定された問題になっているのは,正解にあいまいさの要素を含まないためという理由もあるのではないでしょうか。
それでは解説です。
1 急性期治療から回復期リハビリテーション,さらに復学支援まで自分が担当すると説明する。
これは間違いです。
医療ソーシャルワーカーでなければ,復学支援も行うかもしれません。しかし業務指針に沿ったという限定の中では適切とは言えないとでしょう。
2 精神的に不安定なKさんの支援のために,精神科医に診療を依頼する。
これも間違いです。
「受診・受療支援」は医療ソーシャルワーカーの業務として極めて重要なものです。しかし診療を受けるかどうかは患者の自己決定によります。
3 Kさんの家族に対して,治療方針と予後に関して説明する。
これも間違いです。
医療そのものの内容について説明するのは医療ソーシャルワーカーの役割ではありません。「業務指針に沿って」という限定された設問でなくても,この手の問題はすべて間違いです。しっかり覚えておきましょう。
4 将来の在宅療養を予想し,Kさんの居住する地域の「障害者総合支援法」に基づく協議会に参加して,患者に関する情報を提供する。
これも間違いです。
必要であれば地域連携は行うことになることもあるかもしれませんが,Kさんの了解もなく協議会への情報提供は極めて不適切です。
5 Kさんに対して面接を行い,その中でリハビリテーションを受け入れない理由などの情報を収集する。
これが正解です。
「受診・受療援助」そのものです。
<今日の一言>
事例問題は,現場で働く人にとって,易しいように思えるかもしれません。
しかし落とし穴がありますので,注意が必要です。
具体的には,今日の問題のように条件を限定したものの事例では,条件を限定されていなければすべての選択肢が適切な対応であることもあります。
慎重に解きましょう!!
とは言うものの決して難しい試験ではありません。
合格できるポイントはただ一つ。
出題基準の範囲をひたすら覚えることです。
覚える方法はたくさんあります。しかし覚える内容は出題基準で示された内容をカバーしなければなりません。。
残念ながら「ここだけ覚えて大丈夫!!」といった秘策はないと言えます。
そんなことで合格できる試験なら,合格率のマックスが30%以上になると思いませんか。
出題基準の範囲をひたすら覚えることです。
内容を絞り込んだ参考書などは,ある程度勉強した人が最後のまとめとして使うのは良いと思いますが,勉強していない人がそれを使って合格するのは難しいのではないかと思います。
ここを間違えないようにしましょう。
それでは今日の問題です。
第29回・問題75 Kさん(20歳,男子大学生)は,2週間前にスノーボードの事故で脊椎損傷になり,特定機能病院に搬送され,入院となった。現在,両下肢不全麻痺があり,リハビリテーションが必要だが拒否しており,怒りや落ち込みなど精神的に不安定な状態にある。
Kさんの担当になった医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)が医療ソーシャルワーカー業務指針に沿って援助計画を立案するに当たって行うこととして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 急性期治療から回復期リハビリテーション,さらに復学支援まで自分が担当すると説明する。
2 精神的に不安定なKさんの支援のために,精神科医に診療を依頼する。
3 Kさんの家族に対して,治療方針と予後に関して説明する。
4 将来の在宅療養を予想し,Kさんの居住する地域の「障害者総合支援法」に基づく協議会に参加して,患者に関する情報を提供する。
5 Kさんに対して面接を行い,その中でリハビリテーションを受け入れない理由などの情報を収集する。
(注)1 医療ソーシャルワーカー業務指針は,平成14年11月29日に改定されたものである。(厚生労働省健康局長通知)
2 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
「医療ソーシャルワーカーの業務指針に沿って」という限定された問題になっているのは,正解にあいまいさの要素を含まないためという理由もあるのではないでしょうか。
それでは解説です。
1 急性期治療から回復期リハビリテーション,さらに復学支援まで自分が担当すると説明する。
これは間違いです。
医療ソーシャルワーカーでなければ,復学支援も行うかもしれません。しかし業務指針に沿ったという限定の中では適切とは言えないとでしょう。
2 精神的に不安定なKさんの支援のために,精神科医に診療を依頼する。
これも間違いです。
「受診・受療支援」は医療ソーシャルワーカーの業務として極めて重要なものです。しかし診療を受けるかどうかは患者の自己決定によります。
3 Kさんの家族に対して,治療方針と予後に関して説明する。
これも間違いです。
医療そのものの内容について説明するのは医療ソーシャルワーカーの役割ではありません。「業務指針に沿って」という限定された設問でなくても,この手の問題はすべて間違いです。しっかり覚えておきましょう。
4 将来の在宅療養を予想し,Kさんの居住する地域の「障害者総合支援法」に基づく協議会に参加して,患者に関する情報を提供する。
これも間違いです。
必要であれば地域連携は行うことになることもあるかもしれませんが,Kさんの了解もなく協議会への情報提供は極めて不適切です。
5 Kさんに対して面接を行い,その中でリハビリテーションを受け入れない理由などの情報を収集する。
これが正解です。
「受診・受療援助」そのものです。
<今日の一言>
事例問題は,現場で働く人にとって,易しいように思えるかもしれません。
しかし落とし穴がありますので,注意が必要です。
具体的には,今日の問題のように条件を限定したものの事例では,条件を限定されていなければすべての選択肢が適切な対応であることもあります。
慎重に解きましょう!!
2018年11月23日金曜日
医療ソーシャルワーカーの業務の徹底理解~その2
日本の医療ソーシャルワーカーの業務指針は,1958年・昭和33年の「保健所における医療社会事業の業務指針について」が最初のものです。
1989年・平成元年には「医療ソーシャルワーカー業務指針」が当時の厚生省から通知されています。
業務指針の内容を詳しく知らなくても国試問題は解けますが,この機会に見てみましょう。
医療ソーシャルワーカー業務指針
<業務の範囲>
医療ソーシャルワーカーは,病院等において管理者の監督の下に次のような業務を行う。
(1) 療養中の心理的・社会的問題の解決,調整援助
入院,入院外を問わず,生活と傷病の状況から生ずる心理的・社会的問題の予防や早期の対応を行うため,社会福祉の専門的知識及び技術に基づき,これらの諸問題を予測し,患者やその家族からの相談に応じ,次のような解決,調整に必要な援助を行う。
① 受診や入院,在宅医療に伴う不安等の問題の解決を援助し,心理的に支援すること。
② 患者が安心して療養できるよう,多様な社会資源の活用を念頭に置いて,療養中の家事,育児,教育就労等の問題の解決を援助すること。
③ 高齢者等の在宅療養環境を整備するため,在宅ケア諸サービス,介護保険給付等についての情報を整備し,関係機関,関係職種等との連携の下に患者の生活と傷病の状況に応じたサービスの活用を援助すること。
④ 傷病や療養に伴って生じる家族関係の葛藤や家族内の暴力に対応し,その緩和を図るなど家族関係の調整を援助すること。
⑤ 患者同士や職員との人間関係の調整を援助すること。
⑥ 学校,職場,近隣等地域での人間関係の調整を援助すること。
⑦ がん,エイズ,難病等傷病の受容が困難な場合に,その問題の解決を援助すること。
⑧ 患者の死による家族の精神的苦痛の軽減・克服,生活の再設計を援助すること。
⑨ 療養中の患者や家族の心理的・社会的問題の解決援助のために患者会,家族会等を育成,支援すること。
(2) 退院援助
生活と傷病や障害の状況から退院・退所に伴い生ずる心理的・社会的問題の予防や早期の対応を行うため,社会福祉の専門的知識及び技術に基づき,これらの諸問題を予測し,退院・退所後の選択肢を説明し,相談に応じ,次のような解決,調整に必要な援助を行う。
① 地域における在宅ケア諸サービス等についての情報を整備し,関係機関,関係職種等との連携の下に,退院・退所する患者の生活及び療養の場の確保について話し合いを行うとともに,傷病や障害の状況に応じたサービスの利用の方向性を検討し,これに基づいた援助を行うこと。
② 介護保険制度の利用が予想される場合,制度の説明を行い,その利用の支援を行うこと。また,この場合,介護支援専門員等と連携を図り,患者,家族の了解を得た上で入院中に訪問調査を依頼するなど,退院準備について関係者に相談・協議すること。
③ 退院・退所後においても引き続き必要な医療を受け,地域の中で生活をすることができるよう,患者の多様なニーズを把握し,転院のための医療機関,退院・退所後の介護保険施設,社会福祉施設等利用可能な地域の社会資源の選定を援助すること。なお,その際には,患者の傷病・障害の状況に十分留意すること。
④ 転院,在宅医療等に伴う患者,家族の不安等の問題の解決を援助すること。
⑤ 住居の確保,傷病や障害に適した改修等住居問題の解決を援助すること。
(3) 社会復帰援助
退院・退所後において,社会復帰が円滑に進むように,社会福祉の専門的知識及び技術に基づき,次のような援助を行う。
① 患者の職場や学校と調整を行い,復職,復学を援助すること。
② 関係機関,関係職種との連携や訪問活動等により,社会復帰が円滑に進むように転院,退院・退所後の心理的・社会的問題の解決を援助すること。
(4) 受診・受療援助
入院,入院外を問わず,患者やその家族等に対する次のような受診,受療の援助を行う。
① 生活と傷病の状況に適切に対応した医療の受け方,病院・診療所の機能等の情報提供等を行うこと。
② 診断,治療を拒否するなど医師等の医療上の指導を受け入れない場合に,その理由となっている心理的・社会的問題について情報を収集し,問題の解決を援助すること。
③ 診断,治療内容に関する不安がある場合に,患者,家族の心理的・社会的状況を踏まえて,その理解を援助すること。
④ 心理的・社会的原因で症状の出る患者について情報を収集し,医師等へ提供するとともに,人間関係の調整,社会資源の活用等による問題の解決を援助すること。
⑤ 入退院・入退所の判定に関する委員会が設けられている場合には,これに参加し,経済的,心理的・社会的観点から必要な情報の提供を行うこと。
⑥ その他診療に参考となる情報を収集し,医師,看護師等へ提供すること。
⑦ 通所リハビリテーション等の支援,集団療法のためのアルコール依存症者の会等の育成,支援を行うこと。
(5) 経済的問題の解決,調整援助
入院,入院外を問わず,患者が医療費,生活費に困っている場合に,社会福祉,社会保険等の機関と連携を図りながら,福祉,保険等関係諸制度を活用できるように援助する。
(6) 地域活動
患者のニーズに合致したサービスが地域において提供されるよう,関係機関,関係職種等と連携し,地域の保健医療福祉システムづくりに次のような参画を行う。
① 他の保健医療機関,保健所,市町村等と連携して地域の患者会,家族会等を育成,支援すること。
② 他の保健医療機関,福祉関係機関等と連携し,保健・医療・福祉に係る地域のボランティアを育成,支援すること。
③ 地域ケア会議等を通じて保健医療の場から患者の在宅ケアを支援し,地域ケアシステムづくりへ参画するなど,地域におけるネットワークづくりに貢献すること。
④ 関係機関,関係職種等と連携し,高齢者,精神障害者等の在宅ケアや社会復帰について地域の理解を求め,普及を進めること。
<業務の方法等>
保健医療の場において患者やその家族を対象としてソーシャルワークを行う場合に採るべき方法・留意点は次のとおりである。
(1) 個別援助に係る業務の具体的展開
患者,家族への直接的な個別援助では,面接を重視するとともに,患者,家族との信頼関係を基盤としつつ,医療ソーシャルワーカーの認識やそれに基づく援助が患者,家族の意思を適切に反映するものであるかについて,継続的なアセスメントが必要である。
具体的展開としては,まず,患者,家族や他の保健医療スタッフ等から相談依頼を受理した後の初期の面接では,患者,家族の感情を率直に受け止め,信頼関係を形成するとともに,主訴等を聴取して問題を把握し,課題を整理・検討する。次に,患者及び家族から得た情報に,他の保健医療スタッフ等からの情報を加え,整理,分析して課題を明らかにする。援助の方向性や内容を検討した上で,援助の目標を設定し,課題の優先順位に応じて,援助の実施方法の選定や計画の作成を行う。援助の実施に際しては,面接やグループワークを通じた心理面での支援,社会資源に関する情報提供と活用の調整等の方法が用いられるが,その有効性について,絶えず確認を行い,有効な場合には,患者,家族と合意の上で終結の段階に入る。また,モニタリングの結果によっては,問題解決により適した援助の方法へ変更する。
(2) 患者の主体性の尊重
保健医療の場においては,患者が自らの健康を自らが守ろうとする主体性をもって予防や治療及び社会復帰に取り組むことが重要である。したがって,次の点に留意することが必要である。
① 業務に当たっては,傷病に加えて経済的,心理的・社会的問題を抱えた患者が,適切に判断ができるよう,患者の積極的な関わりの下,患者自身の状況把握や問題整理を援助し,解決方策の選択肢の提示等を行うこと。
② 問題解決のための代行等は,必要な場合に限るものとし,患者の自律性,主体性を尊重するようにすること。
(3) プライバシーの保護
一般に,保健医療の場においては,患者の傷病に関する個人情報に係るので,プライバシーの保護は当然であり,医療ソーシャルワーカーは,社会的に求められる守秘義務を遵守し,高い倫理性を保持する必要がある。また,傷病に関する情報に加えて,経済的,心理的,社会的な個人情報にも係ること,また,援助のために患者以外の第三者との連絡調整等を行うことから,次の点に特に留意することが必要である。
① 個人情報の収集は援助に必要な範囲に限ること。
② 面接や電話は,独立した相談室で行う等第三者に内容が聞こえないようにすること。
③ 記録等は,個人情報を第三者が了解なく入手できないように保管すること。
④ 第三者との連絡調整を行うために本人の状況を説明する場合も含め,本人の了解なしに個人情報を漏らさないこと。
⑤ 第三者からの情報の収集自体がその第三者に患者の個人情報を把握させてしまうこともあるので十分留意すること。
⑥ 患者からの求めがあった場合には,できる限り患者についての情報を説明すること。ただし,医療に関する情報については,説明の可否を含め,医師の指示を受けること。
(4) 他の保健医療スタッフ及び地域の関係機関との連携
保健医療の場においては,患者に対し様々な職種の者が,病院内あるいは地域において,チームを組んで関わっており,また,患者の経済的,心理的・社会的問題と傷病の状況が密接に関連していることも多いので,医師の医学的判断を踏まえ,また,他の保健医療スタッフと常に連携を密にすることが重要である。したがって,次の点に留意が必要である。
① 他の保健医療スタッフからの依頼や情報により,医療ソーシャルワーカーが係るべきケースについて把握すること。
② 対象患者について,他の保健医療スタッフから必要な情報提供を受けると同時に,診療や看護,保健指導等に参考となる経済的,心理的・社会的側面の情報を提供する等相互に情報や意見の交換をすること。
③ ケース・カンファレンスや入退院・入退所の判定に関する委員会が設けられている場合にはこれへの参加等により,他の保健医療スタッフと共同で検討するとともに,保健医療状況についての一般的な理解を深めること。
④ 必要に応じ,他の保健医療スタッフと共同で業務を行うこと。
⑤ 医療ソーシャルワーカーは,地域の社会資源との接点として,広範で多様なネットワークを構築し,地域の関係機関,関係職種,患者の家族,友人,患者会,家族会等と十分な連携・協力を図ること。
⑥ 地域の関係機関の提供しているサービスを十分把握し,患者に対し,医療,保健,福祉,教育,就労等のサービスが総合的に提供されるよう,また,必要に応じて新たな社会資源の開発が図られるよう,十分連携をとること。
⑦ ニーズに基づいたケア計画に沿って,様々なサービスを一体的・総合的に提供する支援方法として,近年,ケアマネジメントの手法が広く普及しているが,高齢者や精神障害者,難病患者等が,できる限り地域や家庭において自立した生活を送ることができるよう,地域においてケアマネジメントに携わる関係機関,関係職種等と十分に連携・協力を図りながら業務を行うこと。
(5) 受診・受療援助と医師の指示
医療ソーシャルワーカーが業務を行うに当たっては,(4)で述べたとおり,チームの一員として,医師の医学的判断を踏まえ,また,他の保健医療スタッフとの連携を密にすることが重要であるが,なかでも二の(4)に掲げる受診・受療援助は,医療と特に密接な関連があるので,医師の指示を受けて行うことが必要である。特に,次の点に留意が必要である。
① 医師からの指示により援助を行う場合はもとより,患者,家族から直接に受診・受療についての相談を受けた場合及び医療ソーシャルワーカーが自分で問題を発見した場合等も,医師に相談し,医師の指示を受けて援助を行うこと。
② 受診・受療援助の過程においても,適宜医師に報告し,指示を受けること。
③ 医師の指示を受けるに際して,必要に応じ,経済的,心理的・社会的観点から意見を述べること。
(6) 問題の予測と計画的対応
① 実際に問題が生じ,相談を受けてから業務を開始するのではなく,社会福祉の専門的知識及び技術を駆使して生活と傷病の状況から生ずる問題を予測し,予防的,計画的な対応を行うこと。
② 特に退院援助,社会復帰援助には時間を要するものが多いので入院,受療開始のできるかぎり早い時期から問題を予測し,患者の総合的なニーズを把握し,病院内あるいは地域の関係機関,関係職種等との連携の下に,具体的な目標を設定するなど,計画的,継続的な対応を行うこと。
(7) 記録の作成等
① 問題点を明確にし,専門的援助を行うために患者ごとに記録を作成すること。
② 記録をもとに医師等への報告,連絡を行うとともに,必要に応じ,在宅ケア,社会復帰の支援等のため,地域の関係機関,関係職種等への情報提供を行うこと。その場合,(3)で述べたとおり,プライバシーの保護に十分留意する必要がある。
③ 記録をもとに,業務分析,業務評価を行うこと。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題75 2002年(平成14年)に改訂された医療ソーシャルワーカーの業務指針に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 業務指針では,医療ソーシャルワーカーが配置される保健医療機関に,保健所,精神保健福祉センターは示されていない。
2 医療ソーシャルワーカーの業務における連携の対象には,他の保健医療スタッフだけでなく地域の関係機関も含まれる。
3 この改訂により,業務の範囲に新たに「療養中の心理的・社会的問題の解决,調整援助」が示された。
4 業務指針に記載してある事項は,医療ソーシャルワーカーが行う最大限の業務であり,業務指針の範囲内で業務を行うことが求められる。
5 業務指針に定められている業務については,医療ソーシャルワーカーが判断して行うことができ,医師の指示を受ける必要はない。
まだまだ文章のつくり方が下手な時の問題です。
おそらく正しい文章を先につくってから,間違い選択肢につくり替えたのでしょう。
文章が不自然過ぎて,業務指針を知らなくても消去できてしまう選択肢があります。
それでは解説です。
1 業務指針では,医療ソーシャルワーカーが配置される保健医療機関に,保健所,精神保健福祉センターは示されていない。
これは間違いです。
もともとの文章はおそらく「示されている」というものだったと思います。
それを「示されていない」という否定形にすることで間違い選択肢にしています。
そのため文章に違和感があります。
もちろん保健所,精神保健福祉センターは示されています。
保健所の医療社会事業の業務指針がもとになっているところからも保健所が示されないわけがありません。
2 医療ソーシャルワーカーの業務における連携の対象には,他の保健医療スタッフだけでなく地域の関係機関も含まれる。
これが正解です。もちろん含まれます。
今の問題なら,「含まれる」なら「含まれる」で各選択肢を統一し,「含まれない」なら「含まれない」で各選択肢を統一して出題することでしょう。
同じような内容の問題であっても,この処理によって難易度が上がります。問題を読むときに慎重さが求められるので注意が必要です。
3 この改訂により,業務の範囲に新たに「療養中の心理的・社会的問題の解决,調整援助」が示された。
これは間違いです。
業務指針の新旧を知らなくても,「心理的・社会的問題の解决,調整援助」はソーシャルワークそのものの内容なので,この改訂で新しく加わったことは考えにくいです。
4 業務指針に記載してある事項は,医療ソーシャルワーカーが行う最大限の業務であり,業務指針の範囲内で業務を行うことが求められる。
これも間違いです。
高校生アルバイトを多く使う店ではもしかするとマニュアルどおりの行動しか認めないというところももしかするとあるかもしれません。しかし医療ソーシャルワーカーは専門職です。「業務指針に書いてないから,それは私の仕事ではありません」ということはないでしょう。業務指針はあくまでも「指針」であり,業務内容を限定するものではありません。
5 業務指針に定められている業務については,医療ソーシャルワーカーが判断して行うことができ,医師の指示を受ける必要はない。
これも間違いです。
医療ソーシャルワーカー業務がほかの分野のワーカーと違うのは,医療現場で働く専門職であることです。そのため「受診・受療援助」が業務として示されています。そして適宜医師に報告し,必要な指示を受けて援助することが求められます。
ソーシャルワークで最も優先されるのは「生命の保持」です。「生命の質(QOL)」よりも上位にあります。これも合わせて覚えておきましょう。
<今日の一言>
医療ソーシャルワーカーに限りませんが,社会福祉士には多職種連携が求められます。
看護師やリハビリ専門職は,医師の指示のもとで「診療の補助」を行っています。社会福祉士は診療の補助を行いませんが,他職種が医師の指示のもとで業務を行っている中,医療ソーシャルワーカーだけが独自の判断のみで業務を行うことはあり得ない話です。
また,医療ソーシャルワーカーの業務として特徴的なことは,<受診・受療援助>があることです。
「受診・受療援助」を再掲して,今日のまとめとします。
(4) 受診・受療援助
入院,入院外を問わず,患者やその家族等に対する次のような受診,受療の援助を行う。
① 生活と傷病の状況に適切に対応した医療の受け方,病院・診療所の機能等の情報提供等を行うこと。
② 診断,治療を拒否するなど医師等の医療上の指導を受け入れない場合に,その理由となっている心理的・社会的問題について情報を収集し,問題の解決を援助すること。
③ 診断,治療内容に関する不安がある場合に,患者,家族の心理的・社会的状況を踏まえて,その理解を援助すること。
④ 心理的・社会的原因で症状の出る患者について情報を収集し,医師等へ提供するとともに,人間関係の調整,社会資源の活用等による問題の解決を援助すること。
⑤ 入退院・入退所の判定に関する委員会が設けられている場合には,これに参加し,経済的,心理的・社会的観点から必要な情報の提供を行うこと。
⑥ その他診療に参考となる情報を収集し,医師,看護師等へ提供すること。
⑦ 通所リハビリテーション等の支援,集団療法のためのアルコール依存症者の会等の育成,支援を行うこと。
1989年・平成元年には「医療ソーシャルワーカー業務指針」が当時の厚生省から通知されています。
業務指針の内容を詳しく知らなくても国試問題は解けますが,この機会に見てみましょう。
医療ソーシャルワーカー業務指針
<業務の範囲>
医療ソーシャルワーカーは,病院等において管理者の監督の下に次のような業務を行う。
(1) 療養中の心理的・社会的問題の解決,調整援助
入院,入院外を問わず,生活と傷病の状況から生ずる心理的・社会的問題の予防や早期の対応を行うため,社会福祉の専門的知識及び技術に基づき,これらの諸問題を予測し,患者やその家族からの相談に応じ,次のような解決,調整に必要な援助を行う。
① 受診や入院,在宅医療に伴う不安等の問題の解決を援助し,心理的に支援すること。
② 患者が安心して療養できるよう,多様な社会資源の活用を念頭に置いて,療養中の家事,育児,教育就労等の問題の解決を援助すること。
③ 高齢者等の在宅療養環境を整備するため,在宅ケア諸サービス,介護保険給付等についての情報を整備し,関係機関,関係職種等との連携の下に患者の生活と傷病の状況に応じたサービスの活用を援助すること。
④ 傷病や療養に伴って生じる家族関係の葛藤や家族内の暴力に対応し,その緩和を図るなど家族関係の調整を援助すること。
⑤ 患者同士や職員との人間関係の調整を援助すること。
⑥ 学校,職場,近隣等地域での人間関係の調整を援助すること。
⑦ がん,エイズ,難病等傷病の受容が困難な場合に,その問題の解決を援助すること。
⑧ 患者の死による家族の精神的苦痛の軽減・克服,生活の再設計を援助すること。
⑨ 療養中の患者や家族の心理的・社会的問題の解決援助のために患者会,家族会等を育成,支援すること。
(2) 退院援助
生活と傷病や障害の状況から退院・退所に伴い生ずる心理的・社会的問題の予防や早期の対応を行うため,社会福祉の専門的知識及び技術に基づき,これらの諸問題を予測し,退院・退所後の選択肢を説明し,相談に応じ,次のような解決,調整に必要な援助を行う。
① 地域における在宅ケア諸サービス等についての情報を整備し,関係機関,関係職種等との連携の下に,退院・退所する患者の生活及び療養の場の確保について話し合いを行うとともに,傷病や障害の状況に応じたサービスの利用の方向性を検討し,これに基づいた援助を行うこと。
② 介護保険制度の利用が予想される場合,制度の説明を行い,その利用の支援を行うこと。また,この場合,介護支援専門員等と連携を図り,患者,家族の了解を得た上で入院中に訪問調査を依頼するなど,退院準備について関係者に相談・協議すること。
③ 退院・退所後においても引き続き必要な医療を受け,地域の中で生活をすることができるよう,患者の多様なニーズを把握し,転院のための医療機関,退院・退所後の介護保険施設,社会福祉施設等利用可能な地域の社会資源の選定を援助すること。なお,その際には,患者の傷病・障害の状況に十分留意すること。
④ 転院,在宅医療等に伴う患者,家族の不安等の問題の解決を援助すること。
⑤ 住居の確保,傷病や障害に適した改修等住居問題の解決を援助すること。
(3) 社会復帰援助
退院・退所後において,社会復帰が円滑に進むように,社会福祉の専門的知識及び技術に基づき,次のような援助を行う。
① 患者の職場や学校と調整を行い,復職,復学を援助すること。
② 関係機関,関係職種との連携や訪問活動等により,社会復帰が円滑に進むように転院,退院・退所後の心理的・社会的問題の解決を援助すること。
(4) 受診・受療援助
入院,入院外を問わず,患者やその家族等に対する次のような受診,受療の援助を行う。
① 生活と傷病の状況に適切に対応した医療の受け方,病院・診療所の機能等の情報提供等を行うこと。
② 診断,治療を拒否するなど医師等の医療上の指導を受け入れない場合に,その理由となっている心理的・社会的問題について情報を収集し,問題の解決を援助すること。
③ 診断,治療内容に関する不安がある場合に,患者,家族の心理的・社会的状況を踏まえて,その理解を援助すること。
④ 心理的・社会的原因で症状の出る患者について情報を収集し,医師等へ提供するとともに,人間関係の調整,社会資源の活用等による問題の解決を援助すること。
⑤ 入退院・入退所の判定に関する委員会が設けられている場合には,これに参加し,経済的,心理的・社会的観点から必要な情報の提供を行うこと。
⑥ その他診療に参考となる情報を収集し,医師,看護師等へ提供すること。
⑦ 通所リハビリテーション等の支援,集団療法のためのアルコール依存症者の会等の育成,支援を行うこと。
(5) 経済的問題の解決,調整援助
入院,入院外を問わず,患者が医療費,生活費に困っている場合に,社会福祉,社会保険等の機関と連携を図りながら,福祉,保険等関係諸制度を活用できるように援助する。
(6) 地域活動
患者のニーズに合致したサービスが地域において提供されるよう,関係機関,関係職種等と連携し,地域の保健医療福祉システムづくりに次のような参画を行う。
① 他の保健医療機関,保健所,市町村等と連携して地域の患者会,家族会等を育成,支援すること。
② 他の保健医療機関,福祉関係機関等と連携し,保健・医療・福祉に係る地域のボランティアを育成,支援すること。
③ 地域ケア会議等を通じて保健医療の場から患者の在宅ケアを支援し,地域ケアシステムづくりへ参画するなど,地域におけるネットワークづくりに貢献すること。
④ 関係機関,関係職種等と連携し,高齢者,精神障害者等の在宅ケアや社会復帰について地域の理解を求め,普及を進めること。
<業務の方法等>
保健医療の場において患者やその家族を対象としてソーシャルワークを行う場合に採るべき方法・留意点は次のとおりである。
(1) 個別援助に係る業務の具体的展開
患者,家族への直接的な個別援助では,面接を重視するとともに,患者,家族との信頼関係を基盤としつつ,医療ソーシャルワーカーの認識やそれに基づく援助が患者,家族の意思を適切に反映するものであるかについて,継続的なアセスメントが必要である。
具体的展開としては,まず,患者,家族や他の保健医療スタッフ等から相談依頼を受理した後の初期の面接では,患者,家族の感情を率直に受け止め,信頼関係を形成するとともに,主訴等を聴取して問題を把握し,課題を整理・検討する。次に,患者及び家族から得た情報に,他の保健医療スタッフ等からの情報を加え,整理,分析して課題を明らかにする。援助の方向性や内容を検討した上で,援助の目標を設定し,課題の優先順位に応じて,援助の実施方法の選定や計画の作成を行う。援助の実施に際しては,面接やグループワークを通じた心理面での支援,社会資源に関する情報提供と活用の調整等の方法が用いられるが,その有効性について,絶えず確認を行い,有効な場合には,患者,家族と合意の上で終結の段階に入る。また,モニタリングの結果によっては,問題解決により適した援助の方法へ変更する。
(2) 患者の主体性の尊重
保健医療の場においては,患者が自らの健康を自らが守ろうとする主体性をもって予防や治療及び社会復帰に取り組むことが重要である。したがって,次の点に留意することが必要である。
① 業務に当たっては,傷病に加えて経済的,心理的・社会的問題を抱えた患者が,適切に判断ができるよう,患者の積極的な関わりの下,患者自身の状況把握や問題整理を援助し,解決方策の選択肢の提示等を行うこと。
② 問題解決のための代行等は,必要な場合に限るものとし,患者の自律性,主体性を尊重するようにすること。
(3) プライバシーの保護
一般に,保健医療の場においては,患者の傷病に関する個人情報に係るので,プライバシーの保護は当然であり,医療ソーシャルワーカーは,社会的に求められる守秘義務を遵守し,高い倫理性を保持する必要がある。また,傷病に関する情報に加えて,経済的,心理的,社会的な個人情報にも係ること,また,援助のために患者以外の第三者との連絡調整等を行うことから,次の点に特に留意することが必要である。
① 個人情報の収集は援助に必要な範囲に限ること。
② 面接や電話は,独立した相談室で行う等第三者に内容が聞こえないようにすること。
③ 記録等は,個人情報を第三者が了解なく入手できないように保管すること。
④ 第三者との連絡調整を行うために本人の状況を説明する場合も含め,本人の了解なしに個人情報を漏らさないこと。
⑤ 第三者からの情報の収集自体がその第三者に患者の個人情報を把握させてしまうこともあるので十分留意すること。
⑥ 患者からの求めがあった場合には,できる限り患者についての情報を説明すること。ただし,医療に関する情報については,説明の可否を含め,医師の指示を受けること。
(4) 他の保健医療スタッフ及び地域の関係機関との連携
保健医療の場においては,患者に対し様々な職種の者が,病院内あるいは地域において,チームを組んで関わっており,また,患者の経済的,心理的・社会的問題と傷病の状況が密接に関連していることも多いので,医師の医学的判断を踏まえ,また,他の保健医療スタッフと常に連携を密にすることが重要である。したがって,次の点に留意が必要である。
① 他の保健医療スタッフからの依頼や情報により,医療ソーシャルワーカーが係るべきケースについて把握すること。
② 対象患者について,他の保健医療スタッフから必要な情報提供を受けると同時に,診療や看護,保健指導等に参考となる経済的,心理的・社会的側面の情報を提供する等相互に情報や意見の交換をすること。
③ ケース・カンファレンスや入退院・入退所の判定に関する委員会が設けられている場合にはこれへの参加等により,他の保健医療スタッフと共同で検討するとともに,保健医療状況についての一般的な理解を深めること。
④ 必要に応じ,他の保健医療スタッフと共同で業務を行うこと。
⑤ 医療ソーシャルワーカーは,地域の社会資源との接点として,広範で多様なネットワークを構築し,地域の関係機関,関係職種,患者の家族,友人,患者会,家族会等と十分な連携・協力を図ること。
⑥ 地域の関係機関の提供しているサービスを十分把握し,患者に対し,医療,保健,福祉,教育,就労等のサービスが総合的に提供されるよう,また,必要に応じて新たな社会資源の開発が図られるよう,十分連携をとること。
⑦ ニーズに基づいたケア計画に沿って,様々なサービスを一体的・総合的に提供する支援方法として,近年,ケアマネジメントの手法が広く普及しているが,高齢者や精神障害者,難病患者等が,できる限り地域や家庭において自立した生活を送ることができるよう,地域においてケアマネジメントに携わる関係機関,関係職種等と十分に連携・協力を図りながら業務を行うこと。
(5) 受診・受療援助と医師の指示
医療ソーシャルワーカーが業務を行うに当たっては,(4)で述べたとおり,チームの一員として,医師の医学的判断を踏まえ,また,他の保健医療スタッフとの連携を密にすることが重要であるが,なかでも二の(4)に掲げる受診・受療援助は,医療と特に密接な関連があるので,医師の指示を受けて行うことが必要である。特に,次の点に留意が必要である。
① 医師からの指示により援助を行う場合はもとより,患者,家族から直接に受診・受療についての相談を受けた場合及び医療ソーシャルワーカーが自分で問題を発見した場合等も,医師に相談し,医師の指示を受けて援助を行うこと。
② 受診・受療援助の過程においても,適宜医師に報告し,指示を受けること。
③ 医師の指示を受けるに際して,必要に応じ,経済的,心理的・社会的観点から意見を述べること。
(6) 問題の予測と計画的対応
① 実際に問題が生じ,相談を受けてから業務を開始するのではなく,社会福祉の専門的知識及び技術を駆使して生活と傷病の状況から生ずる問題を予測し,予防的,計画的な対応を行うこと。
② 特に退院援助,社会復帰援助には時間を要するものが多いので入院,受療開始のできるかぎり早い時期から問題を予測し,患者の総合的なニーズを把握し,病院内あるいは地域の関係機関,関係職種等との連携の下に,具体的な目標を設定するなど,計画的,継続的な対応を行うこと。
(7) 記録の作成等
① 問題点を明確にし,専門的援助を行うために患者ごとに記録を作成すること。
② 記録をもとに医師等への報告,連絡を行うとともに,必要に応じ,在宅ケア,社会復帰の支援等のため,地域の関係機関,関係職種等への情報提供を行うこと。その場合,(3)で述べたとおり,プライバシーの保護に十分留意する必要がある。
③ 記録をもとに,業務分析,業務評価を行うこと。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題75 2002年(平成14年)に改訂された医療ソーシャルワーカーの業務指針に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 業務指針では,医療ソーシャルワーカーが配置される保健医療機関に,保健所,精神保健福祉センターは示されていない。
2 医療ソーシャルワーカーの業務における連携の対象には,他の保健医療スタッフだけでなく地域の関係機関も含まれる。
3 この改訂により,業務の範囲に新たに「療養中の心理的・社会的問題の解决,調整援助」が示された。
4 業務指針に記載してある事項は,医療ソーシャルワーカーが行う最大限の業務であり,業務指針の範囲内で業務を行うことが求められる。
5 業務指針に定められている業務については,医療ソーシャルワーカーが判断して行うことができ,医師の指示を受ける必要はない。
まだまだ文章のつくり方が下手な時の問題です。
おそらく正しい文章を先につくってから,間違い選択肢につくり替えたのでしょう。
文章が不自然過ぎて,業務指針を知らなくても消去できてしまう選択肢があります。
それでは解説です。
1 業務指針では,医療ソーシャルワーカーが配置される保健医療機関に,保健所,精神保健福祉センターは示されていない。
これは間違いです。
もともとの文章はおそらく「示されている」というものだったと思います。
それを「示されていない」という否定形にすることで間違い選択肢にしています。
そのため文章に違和感があります。
もちろん保健所,精神保健福祉センターは示されています。
保健所の医療社会事業の業務指針がもとになっているところからも保健所が示されないわけがありません。
2 医療ソーシャルワーカーの業務における連携の対象には,他の保健医療スタッフだけでなく地域の関係機関も含まれる。
これが正解です。もちろん含まれます。
今の問題なら,「含まれる」なら「含まれる」で各選択肢を統一し,「含まれない」なら「含まれない」で各選択肢を統一して出題することでしょう。
同じような内容の問題であっても,この処理によって難易度が上がります。問題を読むときに慎重さが求められるので注意が必要です。
3 この改訂により,業務の範囲に新たに「療養中の心理的・社会的問題の解决,調整援助」が示された。
これは間違いです。
業務指針の新旧を知らなくても,「心理的・社会的問題の解决,調整援助」はソーシャルワークそのものの内容なので,この改訂で新しく加わったことは考えにくいです。
4 業務指針に記載してある事項は,医療ソーシャルワーカーが行う最大限の業務であり,業務指針の範囲内で業務を行うことが求められる。
これも間違いです。
高校生アルバイトを多く使う店ではもしかするとマニュアルどおりの行動しか認めないというところももしかするとあるかもしれません。しかし医療ソーシャルワーカーは専門職です。「業務指針に書いてないから,それは私の仕事ではありません」ということはないでしょう。業務指針はあくまでも「指針」であり,業務内容を限定するものではありません。
5 業務指針に定められている業務については,医療ソーシャルワーカーが判断して行うことができ,医師の指示を受ける必要はない。
これも間違いです。
医療ソーシャルワーカー業務がほかの分野のワーカーと違うのは,医療現場で働く専門職であることです。そのため「受診・受療援助」が業務として示されています。そして適宜医師に報告し,必要な指示を受けて援助することが求められます。
ソーシャルワークで最も優先されるのは「生命の保持」です。「生命の質(QOL)」よりも上位にあります。これも合わせて覚えておきましょう。
<今日の一言>
医療ソーシャルワーカーに限りませんが,社会福祉士には多職種連携が求められます。
看護師やリハビリ専門職は,医師の指示のもとで「診療の補助」を行っています。社会福祉士は診療の補助を行いませんが,他職種が医師の指示のもとで業務を行っている中,医療ソーシャルワーカーだけが独自の判断のみで業務を行うことはあり得ない話です。
また,医療ソーシャルワーカーの業務として特徴的なことは,<受診・受療援助>があることです。
「受診・受療援助」を再掲して,今日のまとめとします。
(4) 受診・受療援助
入院,入院外を問わず,患者やその家族等に対する次のような受診,受療の援助を行う。
① 生活と傷病の状況に適切に対応した医療の受け方,病院・診療所の機能等の情報提供等を行うこと。
② 診断,治療を拒否するなど医師等の医療上の指導を受け入れない場合に,その理由となっている心理的・社会的問題について情報を収集し,問題の解決を援助すること。
③ 診断,治療内容に関する不安がある場合に,患者,家族の心理的・社会的状況を踏まえて,その理解を援助すること。
④ 心理的・社会的原因で症状の出る患者について情報を収集し,医師等へ提供するとともに,人間関係の調整,社会資源の活用等による問題の解決を援助すること。
⑤ 入退院・入退所の判定に関する委員会が設けられている場合には,これに参加し,経済的,心理的・社会的観点から必要な情報の提供を行うこと。
⑥ その他診療に参考となる情報を収集し,医師,看護師等へ提供すること。
⑦ 通所リハビリテーション等の支援,集団療法のためのアルコール依存症者の会等の育成,支援を行うこと。
2018年11月22日木曜日
医療ソーシャルワーカーの業務の徹底理解~その1
医療ソーシャルワーカーの歴史は,イギリスの慈善組織協会(COS)の訪問ボランティアであるアルモナー(アーモナー)制度を病院に導入したことから始まったことが沖縄大学の富樫八郎氏の研究http://www.jssw.jp/conf/62/pdf/A02-4.pdfで明らかになっています。
世界初の医療ソーシャルワーカーとして知られるメリー・スチュアートは,ロイヤル・フリー・ホスピタル(王立施療病院)にアルモナーとして配置される前は,COSのアルモナーとして活動していました。
教科書では,新たな職種としてアルモナーが誕生したように記述されていますが,実はCOSに起源があります。
COSの訪問ボランティアとしての熟練した活動を行っていたアルモナーを病院に導入したのです。
富樫氏も指摘するように,今後の教科書の記述も変えていく必要がありそうです。
日本に目を向けると,医療ソーシャルワーカーの職能団体である日本医療社会福祉協会(当時は日本医療社会事業家協会)の初代会長の浅賀ふささんの活動がよく知られます。
彼女は,聖路加病院(現・聖路加国際病院)の医療社会事業部で医療ソーシャルワーカーを務め,後年は日本福祉大学で教授として教鞭をとられました。
国際ソーシャルワーカー協会(IFSW)に加盟する日本の職能団体は,4つあります。その゜中で最も歴史が長いのは,日本医療社会福祉協会です。
4団体が設立された順番は以下のようになっています。
1.日本医療社会福祉協会(1953)
2.日本ソーシャルワーカー協会(1960)
3.日本精神保健福祉士協会(1964)
4.日本社会福祉士会(1993)
国家資格としては,精神保健福祉士よりも社会福祉士の方が10年早く創設されていますが,職能団体としては,日本精神保健福祉士協会は,日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会として資格ができる以前から組織化されています。
それでは今日の問題です。
第27回・問題75 日本における医療ソーシャルワーカーの職能としての発展に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 第二次世界大戦前に,聖路加国際病院の前身病院の医療社会事業部に医療ソーシャルワーカーとして清水利子が採用された。
2 第二次世界大戦後に,連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)主導の下,モデル保健所として初めて専任の「医療社会事業係」が配置されたのは板橋保健所である。
3 1953年(昭和28年)に,日本医療社会事業家協会が設立されたことにより,日本における全国的な医療ソーシャルワーカーの職能団体が立ち上がった。
4 医療機関が社会福祉士養成課程における実習施設等の範囲に含められたのは,社会福祉士及び介護福祉士法が成立した時からである。
5 診療報酬改定により,初めて社会福祉士が報酬点数上に位置づけられるようになったのは1992年(平成4年)からである。
難易度はかなり高めの問題です。
それでは解説です。
1 第二次世界大戦前に,聖路加国際病院の前身病院の医療社会事業部に医療ソーシャルワーカーとして清水利子が採用された。
これは間違いです。
前説に書いたように,聖路加病院で医療ソーシャルワーカーとして採用されたのは浅賀ふささんです。
清水利子さんという名前は聞いたことがなくても,浅賀ふささんの名前は知っておいてほしいところです。
2 第二次世界大戦後に,連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)主導の下,モデル保健所として初めて専任の「医療社会事業係」が配置されたのは板橋保健所である。
これも間違いです。この問題の難易度を上げた理由は,この選択肢があったからです。モデル保健所になったのは,杉並保健所です。
当時の保健所の活動は,youtubeで見ることができます。
「新らしい保健所」(当時の教育用映画)
https://www.youtube.com/watch?v=oPNE-Wo_Zh0
この中に,先日書いた保健所に配置される医療社会事業員の活動も紹介されています。
3 1953年(昭和28年)に,日本医療社会事業家協会が設立されたことにより,日本における全国的な医療ソーシャルワーカーの職能団体が立ち上がった。
これが正解です。
日本の職能4団体で最も早く現在の日本医療社会事業家協会が1953年に設立されています。
その後,会の名称は日本医療社会事業協会と変更され,現在は日本医療社会福祉協会となっています。
社会福祉事業法ができたのは1951年なので,会が設立されたときは社会事業は社会福祉事業に名称が変更になっていますが,会はその当時使われていた「医療社会事業」の名称が使われています。
4 医療機関が社会福祉士養成課程における実習施設等の範囲に含められたのは,社会福祉士及び介護福祉士法が成立した時からである。
これは間違いです。
医療機関が実習施設等の範囲に含められたのは,法ができたずっと後の2006年からです。
5 診療報酬改定により,初めて社会福祉士が報酬点数上に位置づけられるようになったのは1992年(平成4年)からである。
これも間違いです。
初めて社会福祉士が報酬点数上に位置づけられるようになったのは,2008年のことです。
「退院調整加算」と「後期高齢者退院調整加算」が設けられたことが最初です。
これらの後継となるものは,現在の入退院支援加算です。
この加算の算定要件の一つには,退院支援部門に専従の看護師または社会福祉士が配置されていることがあります。
世界初の医療ソーシャルワーカーとして知られるメリー・スチュアートは,ロイヤル・フリー・ホスピタル(王立施療病院)にアルモナーとして配置される前は,COSのアルモナーとして活動していました。
教科書では,新たな職種としてアルモナーが誕生したように記述されていますが,実はCOSに起源があります。
COSの訪問ボランティアとしての熟練した活動を行っていたアルモナーを病院に導入したのです。
富樫氏も指摘するように,今後の教科書の記述も変えていく必要がありそうです。
日本に目を向けると,医療ソーシャルワーカーの職能団体である日本医療社会福祉協会(当時は日本医療社会事業家協会)の初代会長の浅賀ふささんの活動がよく知られます。
彼女は,聖路加病院(現・聖路加国際病院)の医療社会事業部で医療ソーシャルワーカーを務め,後年は日本福祉大学で教授として教鞭をとられました。
国際ソーシャルワーカー協会(IFSW)に加盟する日本の職能団体は,4つあります。その゜中で最も歴史が長いのは,日本医療社会福祉協会です。
4団体が設立された順番は以下のようになっています。
1.日本医療社会福祉協会(1953)
2.日本ソーシャルワーカー協会(1960)
3.日本精神保健福祉士協会(1964)
4.日本社会福祉士会(1993)
国家資格としては,精神保健福祉士よりも社会福祉士の方が10年早く創設されていますが,職能団体としては,日本精神保健福祉士協会は,日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会として資格ができる以前から組織化されています。
それでは今日の問題です。
第27回・問題75 日本における医療ソーシャルワーカーの職能としての発展に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 第二次世界大戦前に,聖路加国際病院の前身病院の医療社会事業部に医療ソーシャルワーカーとして清水利子が採用された。
2 第二次世界大戦後に,連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)主導の下,モデル保健所として初めて専任の「医療社会事業係」が配置されたのは板橋保健所である。
3 1953年(昭和28年)に,日本医療社会事業家協会が設立されたことにより,日本における全国的な医療ソーシャルワーカーの職能団体が立ち上がった。
4 医療機関が社会福祉士養成課程における実習施設等の範囲に含められたのは,社会福祉士及び介護福祉士法が成立した時からである。
5 診療報酬改定により,初めて社会福祉士が報酬点数上に位置づけられるようになったのは1992年(平成4年)からである。
難易度はかなり高めの問題です。
それでは解説です。
1 第二次世界大戦前に,聖路加国際病院の前身病院の医療社会事業部に医療ソーシャルワーカーとして清水利子が採用された。
これは間違いです。
前説に書いたように,聖路加病院で医療ソーシャルワーカーとして採用されたのは浅賀ふささんです。
清水利子さんという名前は聞いたことがなくても,浅賀ふささんの名前は知っておいてほしいところです。
2 第二次世界大戦後に,連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)主導の下,モデル保健所として初めて専任の「医療社会事業係」が配置されたのは板橋保健所である。
これも間違いです。この問題の難易度を上げた理由は,この選択肢があったからです。モデル保健所になったのは,杉並保健所です。
当時の保健所の活動は,youtubeで見ることができます。
「新らしい保健所」(当時の教育用映画)
https://www.youtube.com/watch?v=oPNE-Wo_Zh0
この中に,先日書いた保健所に配置される医療社会事業員の活動も紹介されています。
3 1953年(昭和28年)に,日本医療社会事業家協会が設立されたことにより,日本における全国的な医療ソーシャルワーカーの職能団体が立ち上がった。
これが正解です。
日本の職能4団体で最も早く現在の日本医療社会事業家協会が1953年に設立されています。
その後,会の名称は日本医療社会事業協会と変更され,現在は日本医療社会福祉協会となっています。
社会福祉事業法ができたのは1951年なので,会が設立されたときは社会事業は社会福祉事業に名称が変更になっていますが,会はその当時使われていた「医療社会事業」の名称が使われています。
4 医療機関が社会福祉士養成課程における実習施設等の範囲に含められたのは,社会福祉士及び介護福祉士法が成立した時からである。
これは間違いです。
医療機関が実習施設等の範囲に含められたのは,法ができたずっと後の2006年からです。
5 診療報酬改定により,初めて社会福祉士が報酬点数上に位置づけられるようになったのは1992年(平成4年)からである。
これも間違いです。
初めて社会福祉士が報酬点数上に位置づけられるようになったのは,2008年のことです。
「退院調整加算」と「後期高齢者退院調整加算」が設けられたことが最初です。
これらの後継となるものは,現在の入退院支援加算です。
この加算の算定要件の一つには,退院支援部門に専従の看護師または社会福祉士が配置されていることがあります。
2018年11月21日水曜日
医師の業務の徹底理解
福祉の国家資格には業務独占の資格はありません。
医療の国家資格には,業務独占の資格はたくさんあります。誤った業務を行うと生死にかかわるからでしょう。
今回は,保健医療サービスにおける専門職の役割の締めくくりとして,医師の業務を取り上げます。
医師法において,医師の業務は,以下のように規定されています。
(業務)
第十七条 医師でなければ,医業をなしてはならない。
第十八条 医師でなければ,医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
第十九条 診療に従事する医師は,診察治療の求があつた場合には,正当な事由がなければ,これを拒んではならない。
2 診察若しくは検案をし,又は出産に立ち会つた医師は,診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には,正当の事由がなければ,これを拒んではならない。
第二十条 医師は,自ら診察しないで治療をし,若しくは診断書若しくは処方せんを交付し,自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し,又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し,診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については,この限りでない。
第二十一条 医師は,死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは,二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。
第二十二条 医師は,患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には,患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければならない。ただし,患者又は現にその看護に当つている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては,この限りでない。
一 暗示的効果を期待する場合において,処方せんを交付することがその目的の達成を妨げるおそれがある場合
二 処方せんを交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与え,その疾病の治療を困難にするおそれがある場合
三 病状の短時間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合
四 診断又は治療方法の決定していない場合
五 治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合
六 安静を要する患者以外に薬剤の交付を受けることができる者がいない場合
七 覚せい剤を投与する場合
八 薬剤師が乗り組んでいない船舶内において薬剤を投与する場合
第二十三条 医師は,診療をしたときは,本人又はその保護者に対し,療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない。
第二十四条 医師は,診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
2 前項の診療録であつて,病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは,その病院又は診療所の管理者において,その他の診療に関するものは,その医師において,五年間これを保存しなければならない。
細かくこれを覚える必要はありません。
こういったものは,何度か目にしておくだけで十分です。
本来は覚えなければならないですが,国家試験は一問一答式ではないので,他の選択肢との関連で答えは引き出せるからです。
勉強が足りない人は,ゼロから考えなければなりません。しかしこういったものをしっかり確認した人は,それが頭の中に残り,国試の時の判断材料になります。
今日は,2問続けて紹介します。
まずは,1問目です。難易度は高めです。
第24回・問題67 医師等に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 医師は,死体に異状を認めたときは,厚生労働大臣に届け出なければならない。
2 医師の臨床研修のマッチング結果は,近年,臨床研修病院が大学病院を上回っている。
3 医師は業務として,医薬品の調剤を行ってはならない。
4 いわゆる医薬分業とは,医師の指示の基に薬剤師が処方箋を発行することをいう。
5 助産師以外の者は,助産所を開設することはできない。
前回の問題と比較すると,各選択肢の文字数及び表現にはかなりのばらつきがあるのが分かります。
近年はこのような作問が少なくなっているので,このような古い問題を見ると何となく気持ちが悪くなってきます。
難易度が高めである理由は,参考書等に掲載されている知識ではないものが問われたからです。国家試験終了後,この問題は試験委員の中では,問題となったのではないでしょうか。
それでは解説です。
1 医師は,死体に異状を認めたときは,厚生労働大臣に届け出なければならない。
これは間違いです。
医師は,死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは,二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。
と規定されています。
届け出先は,所轄警察署です。
参考書等には,おそらく法を引用して,上記のように記載されていると思います。
国家試験を知らない人は,妊娠4か月の「4か月」,あるいは「24時間」といったところを覚えようとするかもしれません。
しかしそんなところを引っ掛けるような出題はされていません。
覚えるポイントは,
死体に異常を認めたときの届け出先は,所轄警察署
これで良いのです。
2 医師の臨床研修のマッチング結果は,近年,臨床研修病院が大学病院を上回っている。
これが正解です。
臨床研修は,国家試験合格者に対する卒後教育です。大学病院又は厚生労働大臣が指定する臨床研修病院で研修を受けます。
臨床研修のマッチングとは,研修希望者の希望と臨床研修病院の研修プログラムの組み合わせについてコンピュータを使って,最適なものを見つけるものです。結婚相談所のようなものと言えるでしょう。
「あなたの最適な臨床研修先は,大学病院ではなく,臨床研修病院です」という結果が続ているのです。
これを正解選択肢にした理由が見えないと思いませんか?
覚えておいて損はありませんが,同じような出題はないように思います。
この問題の難易度が高いのは,この選択肢を正解にしたからです。
しかも勘の良い人ならこれを選ぶと思います。知識のありなしではなく,勘の良しあしで解ける問題は,国家試験には本来は向かないです。
保健医療サービスは,第22回国試から加わったものです。この問題は3回目に当たるので,まだまだ内容が安定していなかった時なので,仕方がないところかもしれません。
試験センターも毎年試行錯誤しながら出題しているのです。
3 医師は業務として,医薬品の調剤を行ってはならない。
これは間違いです。
調剤は,薬剤師しか行うことができない業務独占です。しかし医師には調剤が認められています。
4 いわゆる医薬分業とは,医師の指示の基に薬剤師が処方箋を発行することをいう。
これも間違いです。
東洋医学では,医師が調剤も行っていました。この名残が選択肢3の医師も調剤を行うことが認められている理由です。
明治になって,薬剤師のルーツとなる資格が生まれて,医師は処方を行い,薬剤師は調剤を行うという仕組みができます。これが「医薬分業」です。
ある程度の年齢の人なら「薬価差益」ということばを聞いたことがあるかもしれません。病院が院内調剤を行うことで,薬代も設けることを言います。
そのため,薬価を引き下げ,調剤薬局で調剤を行うように政策誘導がなされました。
その結果として,現代の医薬分業は,病院は医療を提供し,調剤は調剤薬局で行うという形で進んでいます。
5 助産師以外の者は,助産所を開設することはできない。
これも間違いです。
助産師以外の者でも,助産所を開設することができます。
それでは続けてもう一つの問題です。
第30回・問題75 医師法に規定された医師の業務に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 時間外の診療治療の求めに対しては,診療を断る権利がある。
2 医師の名称は独占ではないが,医師の業務は独占である。
3 処方せんの交付は薬剤師に委任できない。
4 診療録の記載は義務となるが,その保存は義務とはならない。
5 患者の保健指導は義務とはならない。
この問題の文字数は,123文字です(設問は除く)。
1問目の問題の文字数は,180文字です。文字数の差は57文字です。
それほど大きな差ではありませんが,このような小さな差であっても積み重ねるとジャブのように効いていきます。選択肢一つ分に匹敵します。
各選択肢の文字数が完全にそろっていませんが,ばらつきは小さくなっています。
それでは解説です。
1 時間外の診療治療の求めに対しては,診療を断る権利がある。
これは間違いです。
第十九条 診療に従事する医師は,診察治療の求があつた場合には,正当な事由がなければ,これを拒んではならない。
正当な事由があれば診療を断ることはできますが,それは権利ではありません。
正当な事由に当たるものには以下のようなケースが考えられます。
・医師が不在
・ほかの患者の診療中 など
休診中でも,患者からの求めがあった場合は応じなければなりません。
医師の報酬は高いですが,24時間にわたって患者に向き合わなければならないことを考えると決して高すぎるとは言えないのかもしれません。
2 医師の名称は独占ではないが,医師の業務は独占である。
これも間違いです。
医師は,名称独占であり,業務独占です。
今は,ニセ医師の話はあまり聞くことはありませんでしたが,昔は時々聞いたものです。
ニセ医師は,名称独占も業務独占も違反していることになります。
3 処方せんの交付は薬剤師に委任できない。
これが正解です。
処方せんの交付は薬剤師に委任することができません。
委任してしまうと医薬分業ではなくなってしまいます。
4 診療録の記載は義務となるが,その保存は義務とはならない。
これも間違いです。
第二十四条 医師は,診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
2 前項の診療録であつて,病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは,その病院又は診療所の管理者において,その他の診療に関するものは,その医師において,五年間これを保存しなければならない。
このように,診療録の記載とともに5年間の保存の義務があります。
5 患者の保健指導は義務とはならない。
これも間違いです。
第二十三条 医師は,診療をしたときは,本人又はその保護者に対し,療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない。
このように療養の方法とともに保健の指導の義務があります。
<今日の一言>
医師に関する問題は,第24回と第30回に一問まるごと出題されています。
第31回はまるごと出題されないと思います。
しかし,ほかの専門職と含めて出題されてくることはあると思いますので,第24回と第30回の内容だけは最低でも覚えておきたいです。
そして,理学療法と作業療法,診療の補助についての整理もしておくと良いです。
なお,参考書を読むとこれだけの内容をすべて覚えなければならない,と思うことでしょう。
しかし国試問題を見てみれば分かりますが,必ずしもそれらをしっかり覚えておかなくても正誤が分かるものもたくさんあります。
「覚えられない」と焦る必要はありません。
落ち着いて勉強を進めていくことが大切です。
医療の国家資格には,業務独占の資格はたくさんあります。誤った業務を行うと生死にかかわるからでしょう。
今回は,保健医療サービスにおける専門職の役割の締めくくりとして,医師の業務を取り上げます。
医師法において,医師の業務は,以下のように規定されています。
(業務)
第十七条 医師でなければ,医業をなしてはならない。
第十八条 医師でなければ,医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
第十九条 診療に従事する医師は,診察治療の求があつた場合には,正当な事由がなければ,これを拒んではならない。
2 診察若しくは検案をし,又は出産に立ち会つた医師は,診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には,正当の事由がなければ,これを拒んではならない。
第二十条 医師は,自ら診察しないで治療をし,若しくは診断書若しくは処方せんを交付し,自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し,又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し,診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については,この限りでない。
第二十一条 医師は,死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは,二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。
第二十二条 医師は,患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には,患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければならない。ただし,患者又は現にその看護に当つている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては,この限りでない。
一 暗示的効果を期待する場合において,処方せんを交付することがその目的の達成を妨げるおそれがある場合
二 処方せんを交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与え,その疾病の治療を困難にするおそれがある場合
三 病状の短時間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合
四 診断又は治療方法の決定していない場合
五 治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合
六 安静を要する患者以外に薬剤の交付を受けることができる者がいない場合
七 覚せい剤を投与する場合
八 薬剤師が乗り組んでいない船舶内において薬剤を投与する場合
第二十三条 医師は,診療をしたときは,本人又はその保護者に対し,療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない。
第二十四条 医師は,診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
2 前項の診療録であつて,病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは,その病院又は診療所の管理者において,その他の診療に関するものは,その医師において,五年間これを保存しなければならない。
細かくこれを覚える必要はありません。
こういったものは,何度か目にしておくだけで十分です。
本来は覚えなければならないですが,国家試験は一問一答式ではないので,他の選択肢との関連で答えは引き出せるからです。
勉強が足りない人は,ゼロから考えなければなりません。しかしこういったものをしっかり確認した人は,それが頭の中に残り,国試の時の判断材料になります。
今日は,2問続けて紹介します。
まずは,1問目です。難易度は高めです。
第24回・問題67 医師等に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 医師は,死体に異状を認めたときは,厚生労働大臣に届け出なければならない。
2 医師の臨床研修のマッチング結果は,近年,臨床研修病院が大学病院を上回っている。
3 医師は業務として,医薬品の調剤を行ってはならない。
4 いわゆる医薬分業とは,医師の指示の基に薬剤師が処方箋を発行することをいう。
5 助産師以外の者は,助産所を開設することはできない。
前回の問題と比較すると,各選択肢の文字数及び表現にはかなりのばらつきがあるのが分かります。
近年はこのような作問が少なくなっているので,このような古い問題を見ると何となく気持ちが悪くなってきます。
難易度が高めである理由は,参考書等に掲載されている知識ではないものが問われたからです。国家試験終了後,この問題は試験委員の中では,問題となったのではないでしょうか。
それでは解説です。
1 医師は,死体に異状を認めたときは,厚生労働大臣に届け出なければならない。
これは間違いです。
医師は,死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは,二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。
と規定されています。
届け出先は,所轄警察署です。
参考書等には,おそらく法を引用して,上記のように記載されていると思います。
国家試験を知らない人は,妊娠4か月の「4か月」,あるいは「24時間」といったところを覚えようとするかもしれません。
しかしそんなところを引っ掛けるような出題はされていません。
覚えるポイントは,
死体に異常を認めたときの届け出先は,所轄警察署
これで良いのです。
2 医師の臨床研修のマッチング結果は,近年,臨床研修病院が大学病院を上回っている。
これが正解です。
臨床研修は,国家試験合格者に対する卒後教育です。大学病院又は厚生労働大臣が指定する臨床研修病院で研修を受けます。
臨床研修のマッチングとは,研修希望者の希望と臨床研修病院の研修プログラムの組み合わせについてコンピュータを使って,最適なものを見つけるものです。結婚相談所のようなものと言えるでしょう。
「あなたの最適な臨床研修先は,大学病院ではなく,臨床研修病院です」という結果が続ているのです。
これを正解選択肢にした理由が見えないと思いませんか?
覚えておいて損はありませんが,同じような出題はないように思います。
この問題の難易度が高いのは,この選択肢を正解にしたからです。
しかも勘の良い人ならこれを選ぶと思います。知識のありなしではなく,勘の良しあしで解ける問題は,国家試験には本来は向かないです。
保健医療サービスは,第22回国試から加わったものです。この問題は3回目に当たるので,まだまだ内容が安定していなかった時なので,仕方がないところかもしれません。
試験センターも毎年試行錯誤しながら出題しているのです。
3 医師は業務として,医薬品の調剤を行ってはならない。
これは間違いです。
調剤は,薬剤師しか行うことができない業務独占です。しかし医師には調剤が認められています。
4 いわゆる医薬分業とは,医師の指示の基に薬剤師が処方箋を発行することをいう。
これも間違いです。
東洋医学では,医師が調剤も行っていました。この名残が選択肢3の医師も調剤を行うことが認められている理由です。
明治になって,薬剤師のルーツとなる資格が生まれて,医師は処方を行い,薬剤師は調剤を行うという仕組みができます。これが「医薬分業」です。
ある程度の年齢の人なら「薬価差益」ということばを聞いたことがあるかもしれません。病院が院内調剤を行うことで,薬代も設けることを言います。
そのため,薬価を引き下げ,調剤薬局で調剤を行うように政策誘導がなされました。
その結果として,現代の医薬分業は,病院は医療を提供し,調剤は調剤薬局で行うという形で進んでいます。
5 助産師以外の者は,助産所を開設することはできない。
これも間違いです。
助産師以外の者でも,助産所を開設することができます。
それでは続けてもう一つの問題です。
第30回・問題75 医師法に規定された医師の業務に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 時間外の診療治療の求めに対しては,診療を断る権利がある。
2 医師の名称は独占ではないが,医師の業務は独占である。
3 処方せんの交付は薬剤師に委任できない。
4 診療録の記載は義務となるが,その保存は義務とはならない。
5 患者の保健指導は義務とはならない。
この問題の文字数は,123文字です(設問は除く)。
1問目の問題の文字数は,180文字です。文字数の差は57文字です。
それほど大きな差ではありませんが,このような小さな差であっても積み重ねるとジャブのように効いていきます。選択肢一つ分に匹敵します。
各選択肢の文字数が完全にそろっていませんが,ばらつきは小さくなっています。
それでは解説です。
1 時間外の診療治療の求めに対しては,診療を断る権利がある。
これは間違いです。
第十九条 診療に従事する医師は,診察治療の求があつた場合には,正当な事由がなければ,これを拒んではならない。
正当な事由があれば診療を断ることはできますが,それは権利ではありません。
正当な事由に当たるものには以下のようなケースが考えられます。
・医師が不在
・ほかの患者の診療中 など
休診中でも,患者からの求めがあった場合は応じなければなりません。
医師の報酬は高いですが,24時間にわたって患者に向き合わなければならないことを考えると決して高すぎるとは言えないのかもしれません。
2 医師の名称は独占ではないが,医師の業務は独占である。
これも間違いです。
医師は,名称独占であり,業務独占です。
今は,ニセ医師の話はあまり聞くことはありませんでしたが,昔は時々聞いたものです。
ニセ医師は,名称独占も業務独占も違反していることになります。
3 処方せんの交付は薬剤師に委任できない。
これが正解です。
処方せんの交付は薬剤師に委任することができません。
委任してしまうと医薬分業ではなくなってしまいます。
4 診療録の記載は義務となるが,その保存は義務とはならない。
これも間違いです。
第二十四条 医師は,診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
2 前項の診療録であつて,病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは,その病院又は診療所の管理者において,その他の診療に関するものは,その医師において,五年間これを保存しなければならない。
このように,診療録の記載とともに5年間の保存の義務があります。
5 患者の保健指導は義務とはならない。
これも間違いです。
第二十三条 医師は,診療をしたときは,本人又はその保護者に対し,療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない。
このように療養の方法とともに保健の指導の義務があります。
<今日の一言>
医師に関する問題は,第24回と第30回に一問まるごと出題されています。
第31回はまるごと出題されないと思います。
しかし,ほかの専門職と含めて出題されてくることはあると思いますので,第24回と第30回の内容だけは最低でも覚えておきたいです。
そして,理学療法と作業療法,診療の補助についての整理もしておくと良いです。
なお,参考書を読むとこれだけの内容をすべて覚えなければならない,と思うことでしょう。
しかし国試問題を見てみれば分かりますが,必ずしもそれらをしっかり覚えておかなくても正誤が分かるものもたくさんあります。
「覚えられない」と焦る必要はありません。
落ち着いて勉強を進めていくことが大切です。
2018年11月20日火曜日
保健医療サービスにおける専門職の役割の徹底理解~その3
今回の問題は,第29回の問題です。
昨今の問題の作られ方であることを意識しながら問題を読んでください。
第29回・問題73 医療・福祉の専門職に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 理学療法士は,在宅患者への訪問リハビリテーションについても,医師の指示の下に実施しなければならない。
2 社会福祉士は,要介護者に福祉用具に関する助言を提供する場合,医師からの助言の下で実施しなければならない。
3 医師は,患者に対し治療上,薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合,薬剤師に処方箋を交付させなければならない。
4 言語聴覚士は,摂食機能に障害のある者への療法については,歯科衛生士の了承の下で実施しなければならない。
5 看護師は,臨時応急の手当てを行う際にも,医師又は歯科医師の指示の下に実施しなければならない。
それぞれの選択肢の文章の長さも語尾表現もそろえられています。
特に語尾をそろえられると問題の難易度が格段に上がります。
勘の良さでは解けないものとなり,知識があることが答えを引き出す絶対的条件となるからです。
それでは,解説です。
1 理学療法士は,在宅患者への訪問リハビリテーションについても,医師の指示の下に実施しなければならない。
これが正解です。
理学療法を実施する場合は,実施場所がどこであれ,医師の指示か必要です。
2 社会福祉士は,要介護者に福祉用具に関する助言を提供する場合,医師からの助言の下で実施しなければならない。
これは間違いです。
専門科目で出題してもよい問題だと思いますが,社会福祉士が行う業務として,社会福祉士及び介護福祉士法では,医師の指導や指示が必要だとされるものはありません。
精神保健福祉士は,「精神保健福祉士は、その業務を行うに当たって精神障害者に主治の医師があるときは、その指導を受けなければならない」と規定されています。
社会福祉士と精神保健福祉士とはここに違いがあります。
ただし,医療ソーシャルワーカー業務指針では「受診・受療援助は,医療と特に密接な関連があるので,医師の指示を受けて行うことが必要である」と規定されています。
3 医師は,患者に対し治療上,薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合,薬剤師に処方箋を交付させなければならない。
これも間違いです。
医師は処方箋を交付します。
しかし処方箋を交付するのは薬剤師に対してではなく,「患者又は現にその看護に当っている者」に対してです。
4 言語聴覚士は,摂食機能に障害のある者への療法については,歯科衛生士の了承の下で実施しなければならない。
これも間違いです。
まったくのでたらめです。このような規定はありません。
5 看護師は,臨時応急の手当てを行う際にも,医師又は歯科医師の指示の下に実施しなければならない。
これも間違いです。
臨時応急の手当てとは,緊急避難的に行う医療行為です。
診療の補助業務は医師の指示の下に実施しなければなりません。
しかし,緊急時に医師の指示を待っていては間に合わないために,臨時応急の手当ては医師の指示がなくても行うことが認められています。
<今日の一言>
かつての国試問題と近年の国試問題の作問方法は明らかに違ってきています。
かつては,言い回しが難しいため,勉強した人でさえ,点数が取れない問題でした。
しかし,近年はその反省のためなのか分かりませんが,言い回しはすっきりして,問題文も短くなっています。
そのため,勉強した人は点数が取れるものになりました。
一方,今日の問題のように,各選択肢の文字数と表現をそろえるようになってきています。
このことによって,勘で解けなくなっています。そのため,勉強が足りない人にとっては得点しにくくなっています。
受験生の得点分布は発表されていませんが,以前よりも得点分布は広がっていると考えられます。
これがずっと主張している
勉強した人が解ける
勉強が足りない人は解けない
という国試の秘密です。
別の言い方をすると,正しい勉強法で国試に合格できる知識をつけた人は,必ず報われる国試です。
言い回しで引っ掛けるような国試ではなく,知識のありなしで差がつく問題が作られているからです。
今は苦しい時だと思いますが,合格した明るい未来を想像しながら,勉強をすすめていきましょう。
昨今の問題の作られ方であることを意識しながら問題を読んでください。
第29回・問題73 医療・福祉の専門職に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 理学療法士は,在宅患者への訪問リハビリテーションについても,医師の指示の下に実施しなければならない。
2 社会福祉士は,要介護者に福祉用具に関する助言を提供する場合,医師からの助言の下で実施しなければならない。
3 医師は,患者に対し治療上,薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合,薬剤師に処方箋を交付させなければならない。
4 言語聴覚士は,摂食機能に障害のある者への療法については,歯科衛生士の了承の下で実施しなければならない。
5 看護師は,臨時応急の手当てを行う際にも,医師又は歯科医師の指示の下に実施しなければならない。
それぞれの選択肢の文章の長さも語尾表現もそろえられています。
特に語尾をそろえられると問題の難易度が格段に上がります。
勘の良さでは解けないものとなり,知識があることが答えを引き出す絶対的条件となるからです。
それでは,解説です。
1 理学療法士は,在宅患者への訪問リハビリテーションについても,医師の指示の下に実施しなければならない。
これが正解です。
理学療法を実施する場合は,実施場所がどこであれ,医師の指示か必要です。
2 社会福祉士は,要介護者に福祉用具に関する助言を提供する場合,医師からの助言の下で実施しなければならない。
これは間違いです。
専門科目で出題してもよい問題だと思いますが,社会福祉士が行う業務として,社会福祉士及び介護福祉士法では,医師の指導や指示が必要だとされるものはありません。
精神保健福祉士は,「精神保健福祉士は、その業務を行うに当たって精神障害者に主治の医師があるときは、その指導を受けなければならない」と規定されています。
社会福祉士と精神保健福祉士とはここに違いがあります。
ただし,医療ソーシャルワーカー業務指針では「受診・受療援助は,医療と特に密接な関連があるので,医師の指示を受けて行うことが必要である」と規定されています。
3 医師は,患者に対し治療上,薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合,薬剤師に処方箋を交付させなければならない。
これも間違いです。
医師は処方箋を交付します。
しかし処方箋を交付するのは薬剤師に対してではなく,「患者又は現にその看護に当っている者」に対してです。
4 言語聴覚士は,摂食機能に障害のある者への療法については,歯科衛生士の了承の下で実施しなければならない。
これも間違いです。
まったくのでたらめです。このような規定はありません。
5 看護師は,臨時応急の手当てを行う際にも,医師又は歯科医師の指示の下に実施しなければならない。
これも間違いです。
臨時応急の手当てとは,緊急避難的に行う医療行為です。
診療の補助業務は医師の指示の下に実施しなければなりません。
しかし,緊急時に医師の指示を待っていては間に合わないために,臨時応急の手当ては医師の指示がなくても行うことが認められています。
<今日の一言>
かつての国試問題と近年の国試問題の作問方法は明らかに違ってきています。
かつては,言い回しが難しいため,勉強した人でさえ,点数が取れない問題でした。
しかし,近年はその反省のためなのか分かりませんが,言い回しはすっきりして,問題文も短くなっています。
そのため,勉強した人は点数が取れるものになりました。
一方,今日の問題のように,各選択肢の文字数と表現をそろえるようになってきています。
このことによって,勘で解けなくなっています。そのため,勉強が足りない人にとっては得点しにくくなっています。
受験生の得点分布は発表されていませんが,以前よりも得点分布は広がっていると考えられます。
これがずっと主張している
勉強した人が解ける
勉強が足りない人は解けない
という国試の秘密です。
別の言い方をすると,正しい勉強法で国試に合格できる知識をつけた人は,必ず報われる国試です。
言い回しで引っ掛けるような国試ではなく,知識のありなしで差がつく問題が作られているからです。
今は苦しい時だと思いますが,合格した明るい未来を想像しながら,勉強をすすめていきましょう。
2018年11月19日月曜日
保健医療サービスにおける専門職の役割の徹底理解~その2
このブログでは,出題ポイント,覚え方のコツなどをお伝えしています。
勉強が進んでいない
勉強時間が十分確保できないことへの焦りもあることでしょう。
しかし勉強は「どれだけ勉強するか」ではなく,「どんな勉強をするか」が大切です。
実際に勉強時間が長く取れる現役大学生よりも,社会人の方が一般的には合格率が高いです。現役の受験生よりも既卒の方が合格が高い大学もあります。
これは何を意味していると思いますか?
現役の時よりも卒業してからの方が,強く資格を訴求していることに他ならないことのように思います。
心が弱くなりそうになったら,「この資格を取ろうと思ったのはなぜなのか」を思い出してほしいと思います。
そして資格取得に向けた今までの努力を思い出してください。資格取得への強い気持ちは,必ず最後の最後の力となるはずです。
さて,前回から保健医療サービスにおける専門職の役割に取り組んでいます。
前回の問題では,理学療法,作業療法の違い,診療の補助について学びました。
理学療法と作業療法の違いは,作業療法は精神に障害のある者を対象とすることです。
別な言い方をすると以下のようになります。
理学療法は,精神に障害のある者を対象とはしない
診療の補助業務は,医師の指示に基づいて実施されるものです。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題74 理学療法士,作業療法士,言語聴覚士に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 作業療法士の行う作業療法は,身体又は精神に障害のある者を対象としている。
2 理学療法士は,診療の補助に該当しない範囲の業務を行うときであっても,医師の指示が必要とされている。
3 理学療法士の行う理学療法の対象者は,障害支援区分の認定,若しくは要介護認定を受けていることが条件とされている。
4 言語聴覚士は,業務独占の国家資格である。
5 理学療法士,作業療法士の配置が必要とされるのは,病院,診療所に限られる。
これはそんなに難しい問題ではないかと思います。
理学療法と作業療法の違いをしっかり理解していると,すぐに答えが分かる問題ではないでしょうか。
それでは解説です。
1 作業療法士の行う作業療法は,身体又は精神に障害のある者を対象としている。
これが正解です。
精神に障害のある者を対象とするのは,作業療法です。理学療法は精神に障害のある者は対象としません。
絶対に押さえておきたいです。
2 理学療法士は,診療の補助に該当しない範囲の業務を行うときであっても,医師の指示が必要とされている。
これは間違いです。
またまた診療の補助が出題されました。
医師の指示が必要なのは,診療の補助業務である理学療法の実施に関してです。
診療の補助業務に関して医師の指示が必要なのは,理学療法士に限らず,作業療法士,言語聴覚士,そして看護師も同様です。
しかしそれ以外の業務,例えば看護師なら,療養上の生活の世話に関する業務は,看護師独自の領域となります。
3 理学療法士の行う理学療法の対象者は,障害支援区分の認定,若しくは要介護認定を受けていることが条件とされている。
これは間違いです。
理学療法の対象は,身体に障害のある者です。たとえばけがをした人のリハビリテーションとして理学療法が実施されます。
4 言語聴覚士は,業務独占の国家資格である。
これも間違いです。
業務独占は,その資格を持っていないと業とすることができない資格です。
名称独占は,その資格を持っていないとその名称を使うことができない資格です。
言語聴覚士は,名称独占の資格です。
5 理学療法士,作業療法士の配置が必要とされるのは,病院,診療所に限られる。
これも間違いです。
限られるというところから間違いであると想像はつきますが,介護保険施設,デイケア,訪問看護ステーションなど広く配置されています。
<今日の一言>
理学療法の対象は,身体に障害のある者
作業療法の対象は,身体又は精神に障害のある者
これは絶対に押さえておきたいです。
勉強が進んでいない
勉強時間が十分確保できないことへの焦りもあることでしょう。
しかし勉強は「どれだけ勉強するか」ではなく,「どんな勉強をするか」が大切です。
実際に勉強時間が長く取れる現役大学生よりも,社会人の方が一般的には合格率が高いです。現役の受験生よりも既卒の方が合格が高い大学もあります。
これは何を意味していると思いますか?
現役の時よりも卒業してからの方が,強く資格を訴求していることに他ならないことのように思います。
心が弱くなりそうになったら,「この資格を取ろうと思ったのはなぜなのか」を思い出してほしいと思います。
そして資格取得に向けた今までの努力を思い出してください。資格取得への強い気持ちは,必ず最後の最後の力となるはずです。
さて,前回から保健医療サービスにおける専門職の役割に取り組んでいます。
前回の問題では,理学療法,作業療法の違い,診療の補助について学びました。
理学療法と作業療法の違いは,作業療法は精神に障害のある者を対象とすることです。
別な言い方をすると以下のようになります。
理学療法は,精神に障害のある者を対象とはしない
診療の補助業務は,医師の指示に基づいて実施されるものです。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題74 理学療法士,作業療法士,言語聴覚士に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 作業療法士の行う作業療法は,身体又は精神に障害のある者を対象としている。
2 理学療法士は,診療の補助に該当しない範囲の業務を行うときであっても,医師の指示が必要とされている。
3 理学療法士の行う理学療法の対象者は,障害支援区分の認定,若しくは要介護認定を受けていることが条件とされている。
4 言語聴覚士は,業務独占の国家資格である。
5 理学療法士,作業療法士の配置が必要とされるのは,病院,診療所に限られる。
これはそんなに難しい問題ではないかと思います。
理学療法と作業療法の違いをしっかり理解していると,すぐに答えが分かる問題ではないでしょうか。
それでは解説です。
1 作業療法士の行う作業療法は,身体又は精神に障害のある者を対象としている。
これが正解です。
精神に障害のある者を対象とするのは,作業療法です。理学療法は精神に障害のある者は対象としません。
絶対に押さえておきたいです。
2 理学療法士は,診療の補助に該当しない範囲の業務を行うときであっても,医師の指示が必要とされている。
これは間違いです。
またまた診療の補助が出題されました。
医師の指示が必要なのは,診療の補助業務である理学療法の実施に関してです。
診療の補助業務に関して医師の指示が必要なのは,理学療法士に限らず,作業療法士,言語聴覚士,そして看護師も同様です。
しかしそれ以外の業務,例えば看護師なら,療養上の生活の世話に関する業務は,看護師独自の領域となります。
3 理学療法士の行う理学療法の対象者は,障害支援区分の認定,若しくは要介護認定を受けていることが条件とされている。
これは間違いです。
理学療法の対象は,身体に障害のある者です。たとえばけがをした人のリハビリテーションとして理学療法が実施されます。
4 言語聴覚士は,業務独占の国家資格である。
これも間違いです。
業務独占は,その資格を持っていないと業とすることができない資格です。
名称独占は,その資格を持っていないとその名称を使うことができない資格です。
言語聴覚士は,名称独占の資格です。
5 理学療法士,作業療法士の配置が必要とされるのは,病院,診療所に限られる。
これも間違いです。
限られるというところから間違いであると想像はつきますが,介護保険施設,デイケア,訪問看護ステーションなど広く配置されています。
<今日の一言>
理学療法の対象は,身体に障害のある者
作業療法の対象は,身体又は精神に障害のある者
これは絶対に押さえておきたいです。
2018年11月18日日曜日
保健医療サービスにおける専門職の役割の徹底理解~その1
今回から保健医療サービスに関連する専門職に取り組んでいきます。
現行カリキュラムで出題された専門職は以下のとおりです(社会福祉士及び医療ソーシャルワーカーを除く)。
( )内の数字は出現度数。
医師(4)
薬剤師(1)
看護師(3)
保健師(2)
助産師(1)
理学療法士(6)
作業療法士(3)
言語聴覚士(4)
介護福祉士(1)
理学療法士の出題が多いことが分かります。
理学療法と作業療法の違いはしっかり覚えておきたいです。
それでは今日の問題です。
第25回・問題75 理学療法士,作業療法士,言語聴覚士及び介護福祉士の資格と業務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 理学療法士又は作業療法士の行う理学療法又は作業療法は,保健師助産師看護師法の規定にかかわらず,診療の補助としての位置づけがなされている。
2 理学療法とは,身体又は精神に障害のある者に対し,主として応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図ることを目的としている。
3 作業療法の対象となる者に,精神に障害のある者は含まれていない。
4 言語聴覚士の業務の範囲に,嚥下訓練は含まれていない。
5 介護福祉士であれば,痰の吸引,経管栄養等の医行為を,介護施設,在宅の訪問介護等において実施できる。
難易度は「中」といったところでしょうか。
内容的には,決して簡単ではないですが,日本語的に消去できるものがあるからです。
今はこういったものはほとんど見られません。しっかり覚えることが必要です。
それでは解説です。
1 理学療法士又は作業療法士の行う理学療法又は作業療法は,保健師助産師看護師法の規定にかかわらず,診療の補助としての位置づけがなされている。
これが正解です。
これだけが抜き出されているととても難しいと思います。さすがは「魔の25回国試」の出題です。
保健師助産師看護師法(保助看法)の規定とは,「看護師でないものは療養上の世話又は診療の補助を業として行ってはならない」というものです。
保助看法のこの規定があるために,あとから制定された理学療法士及び作業療法士法で,「保助看法の診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。」と規定することになったのでしょう。
2 理学療法とは,身体又は精神に障害のある者に対し,主として応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図ることを目的としている。
これは間違いです。
理学療法は,身体に障害のある者を対象とします。
作業療法は,身体又は精神に障害のある者を対象とします。
理学療法なのに,「精神」と出てきたら消去できます。
見分けポイントは「精神」です。
3 作業療法の対象となる者に,精神に障害のある者は含まれていない。
これは間違いです。
先述のように,精神は作業療法の対象です。
4 言語聴覚士の業務の範囲に,嚥下訓練は含まれていない。
これも間違いです。
言語聴覚士も診療の補助業務を行うことができます。
言語聴覚士が行う診療の補助業務は
嚥下訓練,人工内耳の調整その他厚生労働省令で定める行為
です。
5 介護福祉士であれば,痰の吸引,経管栄養等の医行為を,介護施設,在宅の訪問介護等において実施できる。
これも間違いです。
現カリキュラムの介護福祉士養成校で資格を取った人は,医行為を行うことができます。
しかしそれ以外の人は介護福祉士であっても研修を受ける必要があります。
<今日の一言>
解説の中でも書きましたが,理学療法と作業療法の違いは,精神障害を対象にするかしないかです。
それだけ覚えれば,あとの部分は覚える必要はありません。
作業療法=精神
国試で必要な知識はこの部分だけだからです。
覚えるポイントはシンプルに
これを心がけると国試での得点力は数段上がります。
ただし,覚えるポイントを間違うと大変なことになりますので注意が必要です。
現行カリキュラムで出題された専門職は以下のとおりです(社会福祉士及び医療ソーシャルワーカーを除く)。
( )内の数字は出現度数。
医師(4)
薬剤師(1)
看護師(3)
保健師(2)
助産師(1)
理学療法士(6)
作業療法士(3)
言語聴覚士(4)
介護福祉士(1)
理学療法士の出題が多いことが分かります。
理学療法と作業療法の違いはしっかり覚えておきたいです。
それでは今日の問題です。
第25回・問題75 理学療法士,作業療法士,言語聴覚士及び介護福祉士の資格と業務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 理学療法士又は作業療法士の行う理学療法又は作業療法は,保健師助産師看護師法の規定にかかわらず,診療の補助としての位置づけがなされている。
2 理学療法とは,身体又は精神に障害のある者に対し,主として応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図ることを目的としている。
3 作業療法の対象となる者に,精神に障害のある者は含まれていない。
4 言語聴覚士の業務の範囲に,嚥下訓練は含まれていない。
5 介護福祉士であれば,痰の吸引,経管栄養等の医行為を,介護施設,在宅の訪問介護等において実施できる。
難易度は「中」といったところでしょうか。
内容的には,決して簡単ではないですが,日本語的に消去できるものがあるからです。
今はこういったものはほとんど見られません。しっかり覚えることが必要です。
それでは解説です。
1 理学療法士又は作業療法士の行う理学療法又は作業療法は,保健師助産師看護師法の規定にかかわらず,診療の補助としての位置づけがなされている。
これが正解です。
これだけが抜き出されているととても難しいと思います。さすがは「魔の25回国試」の出題です。
保健師助産師看護師法(保助看法)の規定とは,「看護師でないものは療養上の世話又は診療の補助を業として行ってはならない」というものです。
保助看法のこの規定があるために,あとから制定された理学療法士及び作業療法士法で,「保助看法の診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。」と規定することになったのでしょう。
2 理学療法とは,身体又は精神に障害のある者に対し,主として応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図ることを目的としている。
これは間違いです。
理学療法は,身体に障害のある者を対象とします。
作業療法は,身体又は精神に障害のある者を対象とします。
理学療法なのに,「精神」と出てきたら消去できます。
見分けポイントは「精神」です。
3 作業療法の対象となる者に,精神に障害のある者は含まれていない。
これは間違いです。
先述のように,精神は作業療法の対象です。
4 言語聴覚士の業務の範囲に,嚥下訓練は含まれていない。
これも間違いです。
言語聴覚士も診療の補助業務を行うことができます。
言語聴覚士が行う診療の補助業務は
嚥下訓練,人工内耳の調整その他厚生労働省令で定める行為
です。
5 介護福祉士であれば,痰の吸引,経管栄養等の医行為を,介護施設,在宅の訪問介護等において実施できる。
これも間違いです。
現カリキュラムの介護福祉士養成校で資格を取った人は,医行為を行うことができます。
しかしそれ以外の人は介護福祉士であっても研修を受ける必要があります。
<今日の一言>
解説の中でも書きましたが,理学療法と作業療法の違いは,精神障害を対象にするかしないかです。
それだけ覚えれば,あとの部分は覚える必要はありません。
作業療法=精神
国試で必要な知識はこの部分だけだからです。
覚えるポイントはシンプルに
これを心がけると国試での得点力は数段上がります。
ただし,覚えるポイントを間違うと大変なことになりますので注意が必要です。
2018年11月17日土曜日
保健所業務の徹底理解
今回は,地域保健法に規定される保健所業務を取り上げたいと思います。
地域保健法は,昭和12年(1937年)に保健所法として成立したものを,平成6年(1994年)に改正した際に名称を変更したものです。
かつての日本では感染症による死亡が最も多かった時代が続きました。
今となってはちょっと驚きですが,子どもが病気になったら,医者を呼ぶのではなく,祈祷師を呼ぶ,といった風習も残っていた時代があります。
戦後GHQの政策により,昭和22年(1947年)に同法を改正して,保健所が公衆衛生第一線機関として位置づけされます。
またまたびっくりですが,この改正前は,食品衛生は警察の仕事だったのです。この改正で保健所業務となりました。
また別の機会に紹介することもあるかもしれませんが,この時以降,保健所に医療ソーシャルワーカー(医療社会事業員)が配置されていきます。
医療ソーシャルワーカーが保健所に配置された理由は,病気になった人及びその家族への相談業務を行うためです。保健所で医療が必要だと認められた人であっても,医療を受けたがらない人は大勢いました。医療を受けるためにはお金がかかるためです。
つまり保健所の相談業務は,経済的不安に対応するものでした。
保健所が実施している事業には,対人保健分野と対物保健分野があります。
そのうちの対物保健分野は食品衛生に関するものなので,社会福祉士の国家試験にはあまり関係ないので,重要なのは対人保健分野となります。ただし,食品衛生に関しては,食中毒に関する知識が問われます。
<対人保健分野>
感染症等対策
健康診断,患者発生の報告等
結核の定期外健康診断,予防接種,訪問指導,管理検診等
エイズ・難病対策
エイズ個別カウンセリング事業(無料匿名検査を含む),エイズ相談
難病医療相談等
精神保健対策
精神保健に関する現状把握,精神保健福祉相談,精神保健訪問指導,医療・保護に関する事務等
母子保健対策
未熟児に対する訪問指導,養育医療の給付等
これらを押さえたところで今日の問題です。
第29回・問題72 保健所に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 保健所が行うメンタルヘルスの相談では,精神障害者保健福祉手帳所持者は対象外である。
2 保健所における対人保健分野の業務として,エイズに関する個別カウンセリング事業がある。
3 保健所は,「感染症法」に基づき結核患者の発生届を受理した場合には,治療に当たることが義務づけられている。
4 都道府県が設置する保健所の所管区域は,医療法に規定する三次医療圏と一致する。
5 保健所は,母子保健法に基づき母子健康手帳を交付する。
(注) 「感染症法」とは,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」のことである。
保健所の業務が一問丸ごと出題されたのは,第6回国試以来です。
しかし,問題の難易度で言えば,「中くらい」といったところでしょうか。
それでは解説です。
1 保健所が行うメンタルヘルスの相談では,精神障害者保健福祉手帳所持者は対象外である。
これは間違いです。
保健所は広く国民を対象とします。精神障害者保健福祉手帳所持者ももちろん対象としますが,むしろ所持していない人の方がメンタルヘルスの面では重要でしょう。
2 保健所における対人保健分野の業務として,エイズに関する個別カウンセリング事業がある。
これが正解です。保健所では無料匿名検査を含むエイズ個別カウンセリングを行っています。
3 保健所は,「感染症法」に基づき結核患者の発生届を受理した場合には,治療に当たることが義務づけられている。
これは間違いです。
保健所にも治療機能はもちますが,義務付けはありません。治療は専門機関に任せれば良いからです。それよりも重要なのは訪問指導などです。
4 都道府県が設置する保健所の所管区域は,医療法に規定する三次医療圏と一致する。
これも間違いです。
この問題の難易度が少し高くなっている理由は,この選択肢があるからです。
医療圏が分かっていないと判断できないからです。
医療圏は基本的には以下のように分かれます。
一次医療圏 市町村
二次医療圏 都道府県をいくつかに分けたもの
三次医療圏 基本的には都道府県
保健所の所管区域はこのうちの二次医療圏に重なります。
二次医療圏は,介護保険法が規定する老人福祉圏域とも重なります。
5 保健所は,母子保健法に基づき母子健康手帳を交付する。
これも間違いです。
保健所の業務には,母子保健法に基づく母子保健業務を行っていますが,それは未熟児に対するものです。
母子保健手帳の交付は市町村の業務です。
<今日の一言>
今日の問題にも,前回述べた覚えるコツの一つである
制度間に共通するものを見つけ出すこと。
の要素が含まれています。
手帳類の交付についてです。
母子健康手帳は,妊娠を届け出たものに対して交付します。交付には高度な判断は求められません。そのため市町村の業務となります。健康手帳も同様です。
それに対して,身体障害者手帳,療育手帳,精神障害者保健福祉手帳は,障害の程度の判断が必要です。そのため,交付は都道府県となります。
高度な判断が必要なのに市町村が交付するものには介護保険証,障害福祉サービス受給者証があります。これらは例外事項です。
こういったものを整理して覚えていけば,得点力は格段に上がっていくことでしょう。
国試受験の日まで頑張り抜きましょう!!
地域保健法は,昭和12年(1937年)に保健所法として成立したものを,平成6年(1994年)に改正した際に名称を変更したものです。
かつての日本では感染症による死亡が最も多かった時代が続きました。
今となってはちょっと驚きですが,子どもが病気になったら,医者を呼ぶのではなく,祈祷師を呼ぶ,といった風習も残っていた時代があります。
戦後GHQの政策により,昭和22年(1947年)に同法を改正して,保健所が公衆衛生第一線機関として位置づけされます。
またまたびっくりですが,この改正前は,食品衛生は警察の仕事だったのです。この改正で保健所業務となりました。
また別の機会に紹介することもあるかもしれませんが,この時以降,保健所に医療ソーシャルワーカー(医療社会事業員)が配置されていきます。
医療ソーシャルワーカーが保健所に配置された理由は,病気になった人及びその家族への相談業務を行うためです。保健所で医療が必要だと認められた人であっても,医療を受けたがらない人は大勢いました。医療を受けるためにはお金がかかるためです。
つまり保健所の相談業務は,経済的不安に対応するものでした。
保健所が実施している事業には,対人保健分野と対物保健分野があります。
そのうちの対物保健分野は食品衛生に関するものなので,社会福祉士の国家試験にはあまり関係ないので,重要なのは対人保健分野となります。ただし,食品衛生に関しては,食中毒に関する知識が問われます。
<対人保健分野>
感染症等対策
健康診断,患者発生の報告等
結核の定期外健康診断,予防接種,訪問指導,管理検診等
エイズ・難病対策
エイズ個別カウンセリング事業(無料匿名検査を含む),エイズ相談
難病医療相談等
精神保健対策
精神保健に関する現状把握,精神保健福祉相談,精神保健訪問指導,医療・保護に関する事務等
母子保健対策
未熟児に対する訪問指導,養育医療の給付等
これらを押さえたところで今日の問題です。
第29回・問題72 保健所に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 保健所が行うメンタルヘルスの相談では,精神障害者保健福祉手帳所持者は対象外である。
2 保健所における対人保健分野の業務として,エイズに関する個別カウンセリング事業がある。
3 保健所は,「感染症法」に基づき結核患者の発生届を受理した場合には,治療に当たることが義務づけられている。
4 都道府県が設置する保健所の所管区域は,医療法に規定する三次医療圏と一致する。
5 保健所は,母子保健法に基づき母子健康手帳を交付する。
(注) 「感染症法」とは,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」のことである。
保健所の業務が一問丸ごと出題されたのは,第6回国試以来です。
しかし,問題の難易度で言えば,「中くらい」といったところでしょうか。
それでは解説です。
1 保健所が行うメンタルヘルスの相談では,精神障害者保健福祉手帳所持者は対象外である。
これは間違いです。
保健所は広く国民を対象とします。精神障害者保健福祉手帳所持者ももちろん対象としますが,むしろ所持していない人の方がメンタルヘルスの面では重要でしょう。
2 保健所における対人保健分野の業務として,エイズに関する個別カウンセリング事業がある。
これが正解です。保健所では無料匿名検査を含むエイズ個別カウンセリングを行っています。
3 保健所は,「感染症法」に基づき結核患者の発生届を受理した場合には,治療に当たることが義務づけられている。
これは間違いです。
保健所にも治療機能はもちますが,義務付けはありません。治療は専門機関に任せれば良いからです。それよりも重要なのは訪問指導などです。
4 都道府県が設置する保健所の所管区域は,医療法に規定する三次医療圏と一致する。
これも間違いです。
この問題の難易度が少し高くなっている理由は,この選択肢があるからです。
医療圏が分かっていないと判断できないからです。
医療圏は基本的には以下のように分かれます。
一次医療圏 市町村
二次医療圏 都道府県をいくつかに分けたもの
三次医療圏 基本的には都道府県
保健所の所管区域はこのうちの二次医療圏に重なります。
二次医療圏は,介護保険法が規定する老人福祉圏域とも重なります。
5 保健所は,母子保健法に基づき母子健康手帳を交付する。
これも間違いです。
保健所の業務には,母子保健法に基づく母子保健業務を行っていますが,それは未熟児に対するものです。
母子保健手帳の交付は市町村の業務です。
<今日の一言>
今日の問題にも,前回述べた覚えるコツの一つである
制度間に共通するものを見つけ出すこと。
の要素が含まれています。
手帳類の交付についてです。
母子健康手帳は,妊娠を届け出たものに対して交付します。交付には高度な判断は求められません。そのため市町村の業務となります。健康手帳も同様です。
それに対して,身体障害者手帳,療育手帳,精神障害者保健福祉手帳は,障害の程度の判断が必要です。そのため,交付は都道府県となります。
高度な判断が必要なのに市町村が交付するものには介護保険証,障害福祉サービス受給者証があります。これらは例外事項です。
こういったものを整理して覚えていけば,得点力は格段に上がっていくことでしょう。
国試受験の日まで頑張り抜きましょう!!
2018年11月16日金曜日
障害者総合支援法に規定される医療サービスの徹底理解
本気で合格を目指すなら今が最後!
11月に入ってアクセス数が増えて来ています。昨年を調べてみたところ,やっぱり11月からアクセスが増えていました。
11月は一つの分岐点なのかもしれません。
何の分岐点かと言えば,もちろん合格・不合格です。
大学生なら短期集中ができます。
そういった意味で,本気で合格を目指すなら今の時期が最後なのかなぁ,と思ったりします。
合格するには,決して近道はありませんが,短期間で走り抜けることはできます。
そこにはコツがいくつか存在します。
制度間に共通するものを見つけ出すこと。
無駄なものは覚えない。
絶対に忘れない覚え方をすること。
などなど。
現代の大学生には,高校入試も大学入試も経験したことがない,という人もいます。
試験勉強慣れしていない人には,かなり辛いと思いますが,コツを会得してしまえば,若い頭をフルに活用して突き進んでいくことができるでしょう。
社会人は短期集中する時間はありません。しかし,学生には負けない豊富な人生経験があります。
それこそ平成という時代をリアルタイムで見てきた人もいるでしょう。それらは,学生にはないメリットです。
今までの人生の中で見聞きしたり,実際に経験したりしたことなどをフル回転させて,関連づけながら覚えていきましょう。
更に言えば,国家試験はマーク式。答えは必ず問題文の中にあります。
少々間違って覚えようとも,記述式ではないので,選択肢の中から正解を選び出すことができます。
さて,今日は,障害者総合支援法で規定される医療サービスを取り上げます。昨年も一度紹介していますが,違う視点から考えたいと思います。
それでは早速今日の問題です。
第26回・問題74 「障害者総合支援法」の保健医療サービスに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 自立支援医療には,療育医療,更生医療,育成医療の3種類の公費負担医療がある。
2 療養介護医療とは,在宅で医療と常時介護を必要とする人に,機能訓練,療養上の管理,看護・介護及び日常生活の世話を行うことのうち,医療にかかるものをいう。
3 自立支援医療費の給付を受けようとする障害者又は障害児の保護者は,都道府県の窓口に申請をしなければならない。
4 自立支援医療の利用者は,当該医療費の3割を負担する。ただし,世帯の所得に応じて月額の負担上限額が設定される。
5 入院時の食事療養費と生活療養費(いずれも標準負担額相当)については原則自己負担となる。
知識がないとまず正解できない問題でしょう。
こういった問題が国試の理想です。
勉強した人は解けて,勉強が足りない人は解けない。
勉強が足りない人が解ける問題は良い問題とは言えないと考えています。
それでは解説です。
1 自立支援医療には,療育医療,更生医療,育成医療の3種類の公費負担医療がある。
これは間違いです。
自立支援医療は,児童福祉法に規定される「育成医療」,身体障害者福祉法に規定される「更生医療」,精神保健福祉法に規定される「精神通院医療」を障害者自立支援法が成立した時に同法で自立支援医療として規定したものです。
療育医療は児童福祉法に規定される結核児に対する医療です。似たようなものには,母子保健法に規定される未熟児に対する医療である「養育医療」があります。
医療に関して,市町村の役割はほとんどありませんが,障害者総合支援法の実施主体は基本的に市町村なので,育成医療と更生医療は市町村の役割となります。
精神通院医療は,歴史的にみた場合,1964年(昭和39年)に駐日大使のライシャワーが精神病患者に刺されるライシャワー事件がきっかけとなり,1965年(昭和40年)に精神衛生法が改正されて精神障害者の通院医療費公費負担制度が創設したところに始まります。
言葉は悪いですが,「精神病患者を野放しにするな」といった世論の風潮に応えて在宅の精神病患者にしっかり治療を受けさせることを目的に始まったものです。福祉というよりは治安維持の目的の方が強かったと言える制度です。
そのため,市町村には未だに権限移譲せず,都道府県が支給決定しているのです。
2 療養介護医療とは,在宅で医療と常時介護を必要とする人に,機能訓練,療養上の管理,看護・介護及び日常生活の世話を行うことのうち,医療にかかるものをいう。
これも間違いです。
療養介護は自立支援給付のサービスの一つですが,医療型入所施設で行うものです。在宅ではありません。
障害者総合支援法には,在宅ではないのに,在宅っぽい名称のサービスがあります。それは生活介護です。生活介護は障害者支援施設等で提供するものです。
障害者総合支援法に規定されるサービスのうち,介護がつくサービスは,居宅介護,重度訪問介護,生活介護,療養介護の4つがあります。
居宅介護と重度訪問介護 ➡ 在宅系サービス
生活介護と療養介護 ➡ 施設系サービス
整理して覚えましょう。
3 自立支援医療費の給付を受けようとする障害者又は障害児の保護者は,都道府県の窓口に申請をしなければならない。
これも間違いです。
障害者総合支援法の実施主体は基本的に市町村です。申請窓口は市町村です。
医療に関するものは市町村の役割にはほとんどありませんが,自立支援医療は例外事項です。
精神通院医療は都道府県が支給決定しますが,申請窓口はあくまでも市町村です。市町村を経由して都道府県に送られます。
4 自立支援医療の利用者は,当該医療費の3割を負担する。ただし,世帯の所得に応じて月額の負担上限額が設定される。
これも間違いです。
自己負担は1割負担で,所得によって上限額が設定されています。
自立支援医療は医療保険ではありませんが,医療保険でも高齢者の場合,現役並み所得者が3割負担であると考えると3割負担はあり得ないと思えるはずです。
こういったところに気づくことができるのも,社会人のメリットです。
5 入院時の食事療養費と生活療養費(いずれも標準負担額相当)については原則自己負担となる。
これが正解です。
入院に伴い,食事や生活にかかる費用であるいわゆるホテルコストは,自己負担となっています。これは,社会保険制度である医療保険,介護保険ともに共通の制度です。
<今日の一言>
今日の問題で,他の領域に応用できるものがいくつかあります。
①医療に関する原則
原則は都道府県の役割。例外は,自立支援医療の育成医療と更生医療。
②ホテルコスト
原則は自己負担。社会保険制度である医療保険,介護保険も同様。
こういったことを一緒に覚えていくことで,知識量は何倍にもなり,しかも固定されていきます。
国試まで残された時間は限られていますが,合格するために必要な知識をつける時間は十分あります。
勉強にはコツがあります。
しかし間違った勉強方法をしても努力すれば結果が出るので,それが間違った勉強方法であることに気がつきにくいものです。
この場合の結果とは,過去問などを解いた時に,解ける率が上がることを指します。
間違った勉強を続けても国家試験に合格することはできます。ただしそれはおそらく直近に行われる試験ではないはずです。
つまり遠回りをすることになります。合格に向けたベクトルは,最短距離にしたいです。
間違った勉強方法の一つには,
A=B的な覚え方があります。
例えば,
ブース=ロンドンの貧困調査
といった覚え方です。
合格に必要な知識は,だれが行ったか,ではありません。
最低限必要な知識は
貧困調査の結果,ロンドン市民の30%が貧困線以下の生活を送っていること,貧困の原因は雇用や環境によるものであることが分かった。
といったものです。
ここから分かる間違った勉強法の一つは
手作りの暗記カードを作って勉強すること。
国試で出題されるポイントを間違った暗記カードでは,得点することはできないでしょう。しかも作成に時間がかかりすぎます。
勉強の過程で気づいたことは,参考書などに書き込むこと。
こういったことが効果のある勉強法です。
これからは,過去問などを解きながら,最後の仕上げを行う時期です。
人は不思議なもので,間違った問題は何度も間違います。
こういったものを少しでも減らしてしていくことが大切です。
国家試験で問われる内容は,複雑怪奇なものではありません。一つひとつを丁寧に見ていけば,そんなに難しいものではないことが分かるはずです。
何度も受験して不合格になっている人は,こう思うでしょう。
なんて私は頭が悪いのだろう
そして知識量を増やそうとして勉強します。
しかし何度も受験している人は,今までの勉強で知識は十分あるはずです。
必要なことは,勉強法の見直しです。
今なら,まだ軌道修正ができます。
11月に入ってアクセス数が増えて来ています。昨年を調べてみたところ,やっぱり11月からアクセスが増えていました。
11月は一つの分岐点なのかもしれません。
何の分岐点かと言えば,もちろん合格・不合格です。
大学生なら短期集中ができます。
そういった意味で,本気で合格を目指すなら今の時期が最後なのかなぁ,と思ったりします。
合格するには,決して近道はありませんが,短期間で走り抜けることはできます。
そこにはコツがいくつか存在します。
制度間に共通するものを見つけ出すこと。
無駄なものは覚えない。
絶対に忘れない覚え方をすること。
などなど。
現代の大学生には,高校入試も大学入試も経験したことがない,という人もいます。
試験勉強慣れしていない人には,かなり辛いと思いますが,コツを会得してしまえば,若い頭をフルに活用して突き進んでいくことができるでしょう。
社会人は短期集中する時間はありません。しかし,学生には負けない豊富な人生経験があります。
それこそ平成という時代をリアルタイムで見てきた人もいるでしょう。それらは,学生にはないメリットです。
今までの人生の中で見聞きしたり,実際に経験したりしたことなどをフル回転させて,関連づけながら覚えていきましょう。
更に言えば,国家試験はマーク式。答えは必ず問題文の中にあります。
少々間違って覚えようとも,記述式ではないので,選択肢の中から正解を選び出すことができます。
さて,今日は,障害者総合支援法で規定される医療サービスを取り上げます。昨年も一度紹介していますが,違う視点から考えたいと思います。
それでは早速今日の問題です。
第26回・問題74 「障害者総合支援法」の保健医療サービスに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 自立支援医療には,療育医療,更生医療,育成医療の3種類の公費負担医療がある。
2 療養介護医療とは,在宅で医療と常時介護を必要とする人に,機能訓練,療養上の管理,看護・介護及び日常生活の世話を行うことのうち,医療にかかるものをいう。
3 自立支援医療費の給付を受けようとする障害者又は障害児の保護者は,都道府県の窓口に申請をしなければならない。
4 自立支援医療の利用者は,当該医療費の3割を負担する。ただし,世帯の所得に応じて月額の負担上限額が設定される。
5 入院時の食事療養費と生活療養費(いずれも標準負担額相当)については原則自己負担となる。
知識がないとまず正解できない問題でしょう。
こういった問題が国試の理想です。
勉強した人は解けて,勉強が足りない人は解けない。
勉強が足りない人が解ける問題は良い問題とは言えないと考えています。
それでは解説です。
1 自立支援医療には,療育医療,更生医療,育成医療の3種類の公費負担医療がある。
これは間違いです。
自立支援医療は,児童福祉法に規定される「育成医療」,身体障害者福祉法に規定される「更生医療」,精神保健福祉法に規定される「精神通院医療」を障害者自立支援法が成立した時に同法で自立支援医療として規定したものです。
療育医療は児童福祉法に規定される結核児に対する医療です。似たようなものには,母子保健法に規定される未熟児に対する医療である「養育医療」があります。
医療に関して,市町村の役割はほとんどありませんが,障害者総合支援法の実施主体は基本的に市町村なので,育成医療と更生医療は市町村の役割となります。
精神通院医療は,歴史的にみた場合,1964年(昭和39年)に駐日大使のライシャワーが精神病患者に刺されるライシャワー事件がきっかけとなり,1965年(昭和40年)に精神衛生法が改正されて精神障害者の通院医療費公費負担制度が創設したところに始まります。
言葉は悪いですが,「精神病患者を野放しにするな」といった世論の風潮に応えて在宅の精神病患者にしっかり治療を受けさせることを目的に始まったものです。福祉というよりは治安維持の目的の方が強かったと言える制度です。
そのため,市町村には未だに権限移譲せず,都道府県が支給決定しているのです。
2 療養介護医療とは,在宅で医療と常時介護を必要とする人に,機能訓練,療養上の管理,看護・介護及び日常生活の世話を行うことのうち,医療にかかるものをいう。
これも間違いです。
療養介護は自立支援給付のサービスの一つですが,医療型入所施設で行うものです。在宅ではありません。
障害者総合支援法には,在宅ではないのに,在宅っぽい名称のサービスがあります。それは生活介護です。生活介護は障害者支援施設等で提供するものです。
障害者総合支援法に規定されるサービスのうち,介護がつくサービスは,居宅介護,重度訪問介護,生活介護,療養介護の4つがあります。
居宅介護と重度訪問介護 ➡ 在宅系サービス
生活介護と療養介護 ➡ 施設系サービス
整理して覚えましょう。
3 自立支援医療費の給付を受けようとする障害者又は障害児の保護者は,都道府県の窓口に申請をしなければならない。
これも間違いです。
障害者総合支援法の実施主体は基本的に市町村です。申請窓口は市町村です。
医療に関するものは市町村の役割にはほとんどありませんが,自立支援医療は例外事項です。
精神通院医療は都道府県が支給決定しますが,申請窓口はあくまでも市町村です。市町村を経由して都道府県に送られます。
4 自立支援医療の利用者は,当該医療費の3割を負担する。ただし,世帯の所得に応じて月額の負担上限額が設定される。
これも間違いです。
自己負担は1割負担で,所得によって上限額が設定されています。
自立支援医療は医療保険ではありませんが,医療保険でも高齢者の場合,現役並み所得者が3割負担であると考えると3割負担はあり得ないと思えるはずです。
こういったところに気づくことができるのも,社会人のメリットです。
5 入院時の食事療養費と生活療養費(いずれも標準負担額相当)については原則自己負担となる。
これが正解です。
入院に伴い,食事や生活にかかる費用であるいわゆるホテルコストは,自己負担となっています。これは,社会保険制度である医療保険,介護保険ともに共通の制度です。
<今日の一言>
今日の問題で,他の領域に応用できるものがいくつかあります。
①医療に関する原則
原則は都道府県の役割。例外は,自立支援医療の育成医療と更生医療。
②ホテルコスト
原則は自己負担。社会保険制度である医療保険,介護保険も同様。
こういったことを一緒に覚えていくことで,知識量は何倍にもなり,しかも固定されていきます。
国試まで残された時間は限られていますが,合格するために必要な知識をつける時間は十分あります。
勉強にはコツがあります。
しかし間違った勉強方法をしても努力すれば結果が出るので,それが間違った勉強方法であることに気がつきにくいものです。
この場合の結果とは,過去問などを解いた時に,解ける率が上がることを指します。
間違った勉強を続けても国家試験に合格することはできます。ただしそれはおそらく直近に行われる試験ではないはずです。
つまり遠回りをすることになります。合格に向けたベクトルは,最短距離にしたいです。
間違った勉強方法の一つには,
A=B的な覚え方があります。
例えば,
ブース=ロンドンの貧困調査
といった覚え方です。
合格に必要な知識は,だれが行ったか,ではありません。
最低限必要な知識は
貧困調査の結果,ロンドン市民の30%が貧困線以下の生活を送っていること,貧困の原因は雇用や環境によるものであることが分かった。
といったものです。
ここから分かる間違った勉強法の一つは
手作りの暗記カードを作って勉強すること。
国試で出題されるポイントを間違った暗記カードでは,得点することはできないでしょう。しかも作成に時間がかかりすぎます。
勉強の過程で気づいたことは,参考書などに書き込むこと。
こういったことが効果のある勉強法です。
これからは,過去問などを解きながら,最後の仕上げを行う時期です。
人は不思議なもので,間違った問題は何度も間違います。
こういったものを少しでも減らしてしていくことが大切です。
国家試験で問われる内容は,複雑怪奇なものではありません。一つひとつを丁寧に見ていけば,そんなに難しいものではないことが分かるはずです。
何度も受験して不合格になっている人は,こう思うでしょう。
なんて私は頭が悪いのだろう
そして知識量を増やそうとして勉強します。
しかし何度も受験している人は,今までの勉強で知識は十分あるはずです。
必要なことは,勉強法の見直しです。
今なら,まだ軌道修正ができます。
2018年11月15日木曜日
医療安全の徹底理解~その2
今回も医療法に取り組んでいきたいと思います。
医療法では,医療の安全の確保の規定があります。
それに関連して,医療安全に係る医療法施行規則というのもあります。
施行規則から出題すると細かくなりすぎますが,過去に出題されたのは,安全管理委員会に関するものです。
それでは,今日の問題です。
なお,第28回の国試問題ですが,最近の国試にしては,問題の作られ方が雑な問題です。
第28回・問題73 医療法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 市町村は,医療機関に関する医療機能情報を集約し住民に提供する。
2 退院療養計画書には,患者の退院後の療養に必要な保健医療又は福祉サービスに関する事項が記載されている。
3 入院診療計画書には,リハビリテーションに関する事項は含まれていない。
4 医療に係る安全管理のための委員会の開催は,無床診療所にも義務づけられている。
5 医療計画における医療の確保に必要な事業の中に,災害時における医療は含まれていない。
「雑な作られ方」という意味は分かりましたか?
それも含めて,解説します。
1 市町村は,医療機関に関する医療機能情報を集約し住民に提供する。
これは間違いです。
医療機能情報の公表は都道府県の役割です。
この問題の作り方は,超定番です。
都道府県と市町村を入れ替えれば,簡単に間違い選択肢を作ることができます。
医療に関するもののほとんどは都道府県の役割です。
というか,医療に関するもので市町村の役割はほとんどありません。
村立診療所が一つしかないという小さな村を考えると集約もなにもないだろうと想像することができます。
サービスの公表に関するものもほとんどが都道府県の役割です。
基本を押さえて,例外事項を押さえる覚え方が最も効率的です。
2 退院療養計画書には,患者の退院後の療養に必要な保健医療又は福祉サービスに関する事項が記載されている。
これが正解です。
これが分からなくても,ほかの選択肢はあるポイントに気がつけば消去できます。
3 入院診療計画書には,リハビリテーションに関する事項は含まれていない。
これは間違いです。
この選択肢が雑な問題の筆頭です。
もちろん含まれるということになります。
もし,含まれない,という表現にしたいなら,すべての選択肢を「含まれない」とそろえて現在は出題されます。そのように出題すると難易度が上がります。
知識が足りない人は正解できないことになります。
4 医療に係る安全管理のための委員会の開催は,無床診療所にも義務づけられている。
これも間違いです。
この選択肢も雑な問題です。
「にも義務づけられている」という表現から,「には義務づけられていない」が正しいのだろうと類推することができるからです。
今の問題は,文章が短くなっているのて,類推がほとんどできなくなっています。
勘の良さでは合格できないのです。
5 医療計画における医療の確保に必要な事業の中に,災害時における医療は含まれていない。
これも間違いです。
選択肢3と同じように,災害時における医療は含まれます。
医療計画で定める5事業は,救急医療,災害時における医療,へき地の医療,周産期医療,小児医療(小児救急医療を含む。)です。
<今日の一言>
参考書で勉強していると,例えば,医療計画に定める「5疾患・5事業」の内容をしっかり覚えないといけないと思うでしょう。
もちろんしっかり覚えて覚えたほうが良いに決まっています。時間あるときなら,もちろん覚えたほうが良いです。
しかし,実際に出題される時には,今日の問題のようにすべてをしっかり覚えておかなければならないというものではありません。
過去問を使って勉強することの意味はたくさんありますが,無駄な勉強をしないというために,出題されるポイントを知っておくという意味は特に重要です。
よくある疑問に
どのくらいの勉強時間を確保したら合格できるの?
というものがあります。
しかし間違った勉強をしていたら,どれだけ勉強時間をかけても合格するのは難しいですし,覚えなくてもよいポイントを覚えようとする効率性が悪い勉強では時間をかけても得点するのは難しいということになります。
覚えなくてもよいのは,「●●説(理論)は,●●が提唱した」といった人名です。
設立したのは人名は覚える意義がありますが,「●●説(論)」の提唱者が問われることは,ほとんどないからです。
社会福祉士の国家試験は,多くの人が思うほど難易度は高くはありません。
今日の問題を例にとると,医療機能情報の提供は都道府県の役割であるということが分かれば,正解できたことでしょう。
医療に関するもので市町村の役割はほとんどない,とい大原則はほかのものにも応用できる知識です。
こういった原則が分かっているのと分かっていないのでは,大きな差が出てきます。
しっかり覚えておきたいです。
医療法では,医療の安全の確保の規定があります。
それに関連して,医療安全に係る医療法施行規則というのもあります。
施行規則から出題すると細かくなりすぎますが,過去に出題されたのは,安全管理委員会に関するものです。
それでは,今日の問題です。
なお,第28回の国試問題ですが,最近の国試にしては,問題の作られ方が雑な問題です。
第28回・問題73 医療法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 市町村は,医療機関に関する医療機能情報を集約し住民に提供する。
2 退院療養計画書には,患者の退院後の療養に必要な保健医療又は福祉サービスに関する事項が記載されている。
3 入院診療計画書には,リハビリテーションに関する事項は含まれていない。
4 医療に係る安全管理のための委員会の開催は,無床診療所にも義務づけられている。
5 医療計画における医療の確保に必要な事業の中に,災害時における医療は含まれていない。
「雑な作られ方」という意味は分かりましたか?
それも含めて,解説します。
1 市町村は,医療機関に関する医療機能情報を集約し住民に提供する。
これは間違いです。
医療機能情報の公表は都道府県の役割です。
この問題の作り方は,超定番です。
都道府県と市町村を入れ替えれば,簡単に間違い選択肢を作ることができます。
医療に関するもののほとんどは都道府県の役割です。
というか,医療に関するもので市町村の役割はほとんどありません。
村立診療所が一つしかないという小さな村を考えると集約もなにもないだろうと想像することができます。
サービスの公表に関するものもほとんどが都道府県の役割です。
基本を押さえて,例外事項を押さえる覚え方が最も効率的です。
2 退院療養計画書には,患者の退院後の療養に必要な保健医療又は福祉サービスに関する事項が記載されている。
これが正解です。
これが分からなくても,ほかの選択肢はあるポイントに気がつけば消去できます。
3 入院診療計画書には,リハビリテーションに関する事項は含まれていない。
これは間違いです。
この選択肢が雑な問題の筆頭です。
もちろん含まれるということになります。
もし,含まれない,という表現にしたいなら,すべての選択肢を「含まれない」とそろえて現在は出題されます。そのように出題すると難易度が上がります。
知識が足りない人は正解できないことになります。
4 医療に係る安全管理のための委員会の開催は,無床診療所にも義務づけられている。
これも間違いです。
この選択肢も雑な問題です。
「にも義務づけられている」という表現から,「には義務づけられていない」が正しいのだろうと類推することができるからです。
今の問題は,文章が短くなっているのて,類推がほとんどできなくなっています。
勘の良さでは合格できないのです。
5 医療計画における医療の確保に必要な事業の中に,災害時における医療は含まれていない。
これも間違いです。
選択肢3と同じように,災害時における医療は含まれます。
医療計画で定める5事業は,救急医療,災害時における医療,へき地の医療,周産期医療,小児医療(小児救急医療を含む。)です。
<今日の一言>
参考書で勉強していると,例えば,医療計画に定める「5疾患・5事業」の内容をしっかり覚えないといけないと思うでしょう。
もちろんしっかり覚えて覚えたほうが良いに決まっています。時間あるときなら,もちろん覚えたほうが良いです。
しかし,実際に出題される時には,今日の問題のようにすべてをしっかり覚えておかなければならないというものではありません。
過去問を使って勉強することの意味はたくさんありますが,無駄な勉強をしないというために,出題されるポイントを知っておくという意味は特に重要です。
よくある疑問に
どのくらいの勉強時間を確保したら合格できるの?
というものがあります。
しかし間違った勉強をしていたら,どれだけ勉強時間をかけても合格するのは難しいですし,覚えなくてもよいポイントを覚えようとする効率性が悪い勉強では時間をかけても得点するのは難しいということになります。
覚えなくてもよいのは,「●●説(理論)は,●●が提唱した」といった人名です。
設立したのは人名は覚える意義がありますが,「●●説(論)」の提唱者が問われることは,ほとんどないからです。
社会福祉士の国家試験は,多くの人が思うほど難易度は高くはありません。
今日の問題を例にとると,医療機能情報の提供は都道府県の役割であるということが分かれば,正解できたことでしょう。
医療に関するもので市町村の役割はほとんどない,とい大原則はほかのものにも応用できる知識です。
こういった原則が分かっているのと分かっていないのでは,大きな差が出てきます。
しっかり覚えておきたいです。
2018年11月14日水曜日
国家試験に向けた勉強法
11月に入って,この学習部屋に訪れる方が急に増加しています。
本格的な学習シーズンに入ったことを示しているのだと思います。
今回は,今日の問題はお休みして,これからの勉強法を考えたいと思います。
どのような勉強をしたら社会福祉士の国家試験に合格できますか?
誰もが知りたいことだと思います。
しかし,答えはありません。
どのような勉強をしても,合格基準点に到達しなければ合格できないからです。
どうしたら社会福祉士の国家試験に合格できますか?
という質問になら明確にお答えすることができます。
0点科目がなくて,合格基準点に到達していれば合格します。
多くの方は合格基準点に到達できる実力がついたのかどうかわからなくて,不安で不安でたまらない日々を過ごすことになります。
社会福祉士の国家試験は,19科目もある出題範囲の広い試験です。
しかし限りなく広いかと言えばそうでもありません。
なぜなら,出題範囲はもともと設定されているからです。
それが社会福祉振興・試験センターが示している「出題基準」です。
毎年6月頃に発表されています。
すべての参考書,模擬問題集,模擬試験はこの基準に沿って作成されています。
国試に合格するには,これらを活用して勉強することになります。
どのような勉強をしたら社会福祉士の国家試験に合格できますか?
という疑問には明確な答えはありませんが,その逆にどのような勉強をしていたら合格できないかはよく分かります。
それは今までずっと主張してきたこと
過去3年間の過去問の知識だけでは合格できない
出題基準と照合していくとすぐ分かりますが,過去3年間に出題されたものは,出題基準のほんの一部にしか過ぎません。
スカスカです。
そんなスカスカの知識だけで国試に合格しようと思うのは無謀です。
今まで国試勉強をまったくしていなくて,これからの勉強で合格しようと思うと,それなりの努力が求められます。
1日10時間も勉強した,という人もいるでしょう。
勉強のスタートが遅くなった分,それを挽回するには簡単なことではありません。
大変かもしれませんが,出題基準の範囲をひたすら覚えていくことが極めて大切です。
3年間の過去問の知識だけで国試に臨むのは無謀です。
ネットで見てみると,過去問を3回繰り返したら合格できた,という情報が散見されています。
しかしそれはほんの一部の人の話です。
辛いかもしれませんが,まずは参考書をひたすら覚えることです。
学校によっては,参考書のほかに過去3年以上の問題を最新のデータに変えて提供してくれていることもあります。
そういった人は,それを徹底して取り組みましょう。
過去3年間の過去問ではスカスカの知識にかなりませんが,現在のカリキュラムで出題された国試問題は出題基準をほぼ網羅しています。
知識がついたことを実感しながら,問題を解く練習ができます。
参考書にひたすら取り組んできた人は,いよいよ過去問などに取り組む時期となります。
仕上げの時期です。
国家試験は決して難しい問題ではありません。
それは,記念受験が減った第30回国試で極端に合格基準点が上がったことからも分かりまます。
合格基準点が90点程度,合格率が25~30%になっているのは,勉強不足で国試に臨んでいる人が一定程度いるからです。
第30回国試の合格基準点が99点にもなったのは,そのような人が減ったことも影響しています。
現在の国試は,
正しい勉強をして,適切な知識を持った人は合格できるように作られています。
勉強不足の人が合格するのはかなり困難です。
なぜなら,勘の良さで解ける問題はほとんどなくなっているからです。
しかし地道な努力は必ず報われます。
地道な努力は必ず報われます。
覚えるコツは,これからもご紹介していきますね。
本格的な学習シーズンに入ったことを示しているのだと思います。
今回は,今日の問題はお休みして,これからの勉強法を考えたいと思います。
どのような勉強をしたら社会福祉士の国家試験に合格できますか?
誰もが知りたいことだと思います。
しかし,答えはありません。
どのような勉強をしても,合格基準点に到達しなければ合格できないからです。
どうしたら社会福祉士の国家試験に合格できますか?
という質問になら明確にお答えすることができます。
0点科目がなくて,合格基準点に到達していれば合格します。
多くの方は合格基準点に到達できる実力がついたのかどうかわからなくて,不安で不安でたまらない日々を過ごすことになります。
社会福祉士の国家試験は,19科目もある出題範囲の広い試験です。
しかし限りなく広いかと言えばそうでもありません。
なぜなら,出題範囲はもともと設定されているからです。
それが社会福祉振興・試験センターが示している「出題基準」です。
毎年6月頃に発表されています。
すべての参考書,模擬問題集,模擬試験はこの基準に沿って作成されています。
国試に合格するには,これらを活用して勉強することになります。
どのような勉強をしたら社会福祉士の国家試験に合格できますか?
という疑問には明確な答えはありませんが,その逆にどのような勉強をしていたら合格できないかはよく分かります。
それは今までずっと主張してきたこと
過去3年間の過去問の知識だけでは合格できない
出題基準と照合していくとすぐ分かりますが,過去3年間に出題されたものは,出題基準のほんの一部にしか過ぎません。
スカスカです。
そんなスカスカの知識だけで国試に合格しようと思うのは無謀です。
今まで国試勉強をまったくしていなくて,これからの勉強で合格しようと思うと,それなりの努力が求められます。
1日10時間も勉強した,という人もいるでしょう。
勉強のスタートが遅くなった分,それを挽回するには簡単なことではありません。
大変かもしれませんが,出題基準の範囲をひたすら覚えていくことが極めて大切です。
3年間の過去問の知識だけで国試に臨むのは無謀です。
ネットで見てみると,過去問を3回繰り返したら合格できた,という情報が散見されています。
しかしそれはほんの一部の人の話です。
辛いかもしれませんが,まずは参考書をひたすら覚えることです。
学校によっては,参考書のほかに過去3年以上の問題を最新のデータに変えて提供してくれていることもあります。
そういった人は,それを徹底して取り組みましょう。
過去3年間の過去問ではスカスカの知識にかなりませんが,現在のカリキュラムで出題された国試問題は出題基準をほぼ網羅しています。
知識がついたことを実感しながら,問題を解く練習ができます。
参考書にひたすら取り組んできた人は,いよいよ過去問などに取り組む時期となります。
仕上げの時期です。
国家試験は決して難しい問題ではありません。
それは,記念受験が減った第30回国試で極端に合格基準点が上がったことからも分かりまます。
合格基準点が90点程度,合格率が25~30%になっているのは,勉強不足で国試に臨んでいる人が一定程度いるからです。
第30回国試の合格基準点が99点にもなったのは,そのような人が減ったことも影響しています。
現在の国試は,
正しい勉強をして,適切な知識を持った人は合格できるように作られています。
勉強不足の人が合格するのはかなり困難です。
なぜなら,勘の良さで解ける問題はほとんどなくなっているからです。
しかし地道な努力は必ず報われます。
地道な努力は必ず報われます。
覚えるコツは,これからもご紹介していきますね。
2018年11月13日火曜日
医療安全の徹底理解~その1~医療事故調査・支援センター
医療法は,病院・診療所の開設,医療提供体制の確保,医療法人などを規定していますが,医療の安全の確保も規定しています。
平成27年改正の医療法では,医療の安全の確保に関して,「医療事故調査制度」を規定しました。
<医療事故調査制度の概要>
医療事故が発生した場合,当該医療機関で院内調査を行い,民間の第三者機関である医療事故調査・支援センターに調査結果を報告し,センターがデータを収集・分析することで再発防止につなげる。
医療機関で,患者取り違え事故など,重大な医療事故が発生したことを受けて制度化したものです。
各医療機関は,事故が発生するとそれを独自に調査・分析していましたが,センターにデータを集積することにしたのです。
それでは今日の問題です。
第30回・問題74 医療法の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 病院又は診療所の管理者は,入院時の治療計画の書面の作成及び交付を口頭での説明に代えることができる。
2 市町村は,地域における現在の医療提供体制の把握と将来の医療需要の推計を勘案し,地域医療構想を策定することができる。
3 病床機能報告制度に規定された病床の機能は,急性期機能,回復期機能,慢性期機能の三つである。
4 一般病床,療養病床を有する病院又は診療所の管理者は,2年に1度,病床機能を報告しなければならない。
5 病院,診療所又は助産所の管理者は,医療事故が発生した場合には,医療事故調査・支援センターに報告しなければならない。
落ち着いて問題を読めば,消去法によって,答えは導き出せるはずです。
この手の問題は,とにかく落ち着いて冷静になることが必要です。
「勉強していない。分からない。ええ~い,これを選んでしまえ」と投げやりな気持ちになっては,負けです。
さて,それでは解説です。
1 病院又は診療所の管理者は,入院時の治療計画の書面の作成及び交付を口頭での説明に代えることができる。
これは間違いです。
入院診療計画書は,作成して交付しなければなりません。
生活保護などの申請は口頭でも受け付けることができますが,それは権利の主体は国民にあるからです。医療機関でも同じです。権利の主体は患者です。
医療機関が口頭による説明で済まされるなら,患者の権利は確保するのは難しいです。
権利の主体は口頭によるものは認められても,その逆は認められるものではありません。
2 市町村は,地域における現在の医療提供体制の把握と将来の医療需要の推計を勘案し,地域医療構想を策定することができる。
これも間違いです。
医療に関しては,市町村の役割はほとんどありません。これは基本形です。しっかり押さえておきましょう。
地域医療構想を策定するのは,市町村ではなく都道府県です。
3 病床機能報告制度に規定された病床の機能は,急性期機能,回復期機能,慢性期機能の三つである。
これも間違いです。
とても難しいです。
病床機能報告制度なんて聞いたことがない,と思うと負けです。
この選択肢を選ばないためのポイントが一つあります。
それは「三つである」というところです。
久々の登場
人は嘘をつくとき饒舌になる
という解答テクニックです。
この選択肢が正しければ・・・
病床機能報告制度に規定された病床の機能は,急性期機能,回復期機能,慢性期機能である。
で良いはずです。
しかし,本当はこれにもう一つ「高度急性期機能」が加わります。
「三つ」と限定しなければ,ケチをつけようと思えば,不適切問題だと指摘することができそうだと思いませんか?
それを防ぐため,つまり確実に不正解にするために「三つ」という言葉をつける必要があるのです。
正解であれば,わざわざ「三つ」と限定する必要がないのです。
4 一般病床,療養病床を有する病院又は診療所の管理者は,2年に1度,病床機能を報告しなければならない。
これも間違いです。
報告するのは,1年に1度です。
2年に1度と出題したのは,診療報酬改定に引っ掛けたものたと思いますが,報告が2年に一度というのは,あまりにも中途半端です。
5 病院,診療所又は助産所の管理者は,医療事故が発生した場合には,医療事故調査・支援センターに報告しなければならない。
これが正解です。
<今日の一言>
国試で正解するのは,簡単なものではありませんが,今日の問題のように,落ち着いて問題を読めば,答えは導き出せる問題もたくさんあります。
今は,過去問を解きながら勉強をしている人が多いと思います。
3年間の過去問から繰り返し出題されるのは,極めて少ないです。
3年間の過去問の知識で合格できる
嘘の情報です。
それにも関わらず過去問を解くことが必要なのは,国試問題に慣れることが大切だからです。
国家試験の合格は,決して難しくないですが,3年間の過去問の知識で合格できる試験ではありません。
平成27年改正の医療法では,医療の安全の確保に関して,「医療事故調査制度」を規定しました。
<医療事故調査制度の概要>
医療事故が発生した場合,当該医療機関で院内調査を行い,民間の第三者機関である医療事故調査・支援センターに調査結果を報告し,センターがデータを収集・分析することで再発防止につなげる。
医療機関で,患者取り違え事故など,重大な医療事故が発生したことを受けて制度化したものです。
各医療機関は,事故が発生するとそれを独自に調査・分析していましたが,センターにデータを集積することにしたのです。
それでは今日の問題です。
第30回・問題74 医療法の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 病院又は診療所の管理者は,入院時の治療計画の書面の作成及び交付を口頭での説明に代えることができる。
2 市町村は,地域における現在の医療提供体制の把握と将来の医療需要の推計を勘案し,地域医療構想を策定することができる。
3 病床機能報告制度に規定された病床の機能は,急性期機能,回復期機能,慢性期機能の三つである。
4 一般病床,療養病床を有する病院又は診療所の管理者は,2年に1度,病床機能を報告しなければならない。
5 病院,診療所又は助産所の管理者は,医療事故が発生した場合には,医療事故調査・支援センターに報告しなければならない。
落ち着いて問題を読めば,消去法によって,答えは導き出せるはずです。
この手の問題は,とにかく落ち着いて冷静になることが必要です。
「勉強していない。分からない。ええ~い,これを選んでしまえ」と投げやりな気持ちになっては,負けです。
さて,それでは解説です。
1 病院又は診療所の管理者は,入院時の治療計画の書面の作成及び交付を口頭での説明に代えることができる。
これは間違いです。
入院診療計画書は,作成して交付しなければなりません。
生活保護などの申請は口頭でも受け付けることができますが,それは権利の主体は国民にあるからです。医療機関でも同じです。権利の主体は患者です。
医療機関が口頭による説明で済まされるなら,患者の権利は確保するのは難しいです。
権利の主体は口頭によるものは認められても,その逆は認められるものではありません。
2 市町村は,地域における現在の医療提供体制の把握と将来の医療需要の推計を勘案し,地域医療構想を策定することができる。
これも間違いです。
医療に関しては,市町村の役割はほとんどありません。これは基本形です。しっかり押さえておきましょう。
地域医療構想を策定するのは,市町村ではなく都道府県です。
3 病床機能報告制度に規定された病床の機能は,急性期機能,回復期機能,慢性期機能の三つである。
これも間違いです。
とても難しいです。
病床機能報告制度なんて聞いたことがない,と思うと負けです。
この選択肢を選ばないためのポイントが一つあります。
それは「三つである」というところです。
久々の登場
人は嘘をつくとき饒舌になる
という解答テクニックです。
この選択肢が正しければ・・・
病床機能報告制度に規定された病床の機能は,急性期機能,回復期機能,慢性期機能である。
で良いはずです。
しかし,本当はこれにもう一つ「高度急性期機能」が加わります。
「三つ」と限定しなければ,ケチをつけようと思えば,不適切問題だと指摘することができそうだと思いませんか?
それを防ぐため,つまり確実に不正解にするために「三つ」という言葉をつける必要があるのです。
正解であれば,わざわざ「三つ」と限定する必要がないのです。
4 一般病床,療養病床を有する病院又は診療所の管理者は,2年に1度,病床機能を報告しなければならない。
これも間違いです。
報告するのは,1年に1度です。
2年に1度と出題したのは,診療報酬改定に引っ掛けたものたと思いますが,報告が2年に一度というのは,あまりにも中途半端です。
5 病院,診療所又は助産所の管理者は,医療事故が発生した場合には,医療事故調査・支援センターに報告しなければならない。
これが正解です。
<今日の一言>
国試で正解するのは,簡単なものではありませんが,今日の問題のように,落ち着いて問題を読めば,答えは導き出せる問題もたくさんあります。
今は,過去問を解きながら勉強をしている人が多いと思います。
3年間の過去問から繰り返し出題されるのは,極めて少ないです。
3年間の過去問の知識で合格できる
嘘の情報です。
それにも関わらず過去問を解くことが必要なのは,国試問題に慣れることが大切だからです。
国家試験の合格は,決して難しくないですが,3年間の過去問の知識で合格できる試験ではありません。
2018年11月12日月曜日
医療計画の徹底理解~医療に関するものは都道府県の役割
今回は,医療計画を取り上げます。
医療計画は,1985(昭和60)年の第一次医療法改正によって,都道府県に策定を義務付けられました。
その当時の医療計画では,医療圏を設けて必要な病床数を設定しました。
その理由は,医療施設の地域格差があり,その是正を目指すものだったからです。これにより,現在も病床規制が行われています。
現在では,このほかに
<5疾患>
・がん
・脳卒中
・心筋梗塞等の心疾患
・糖尿病
・精神疾患
<5事業>
・救急医療
・災害時における医療
・へき地の医療
・周産期医療
・小児医療(小児救急医療を含む。)
の達成目標
ほかに在宅医療の確保,医療従事者の確保など医療計画で定めるものは多岐にわたります。
これらから医療計画は市町村が策定するものではないということが分かることでしょう。
それでは今日の問題です。
第27回・問題73 医療計画に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 医療計画の策定主体は,都道府県である。
2 現行の医療計画では,精神医療についての記述は求められていない。
3 現行の医療計画では,在宅医療についての記述は求められていない。
4 医療計画における病床規制は,規制改革の中で撤廃された。
5 医療計画における二次医療圏は,地域包括ケアの圏域である日常生活圏とほぼ同様に想定されている。
国家試験では,消去法によって答えをあぶり出す必要がある問題が多いですが,この問題は,消去法ではなく,答えがすぐ分かるものだと思います。
それでは解説です。
1 医療計画の策定主体は,都道府県である。
これが正解です。医療計画は都道府県に策定義務があります。
2 現行の医療計画では,精神医療についての記述は求められていない。
これは間違いです。5疾患の中には精神疾患が含まれています。
設問に「現行の」という但し書きがついているのは,精神疾患が加わったのは2012年の法改正の時だからです。
3 現行の医療計画では,在宅医療についての記述は求められていない。
これも間違いです。医療計画に定める内容として,
居宅等における医療の確保に係る医療連携体制(医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を確保するための体制をいう)に関する事項
とされています。
これも「現行の」という但し書きがついているのは,2015年の法改正で加わったものだからです。
4 医療計画における病床規制は,規制改革の中で撤廃された。
これも間違いです。
病床規制は,第一次医療法改正の時から現在まで一貫して行われています。
5 医療計画における二次医療圏は,地域包括ケアの圏域である日常生活圏とほぼ同様に想定されている。
これも間違いです。
前説では触れていませんでしたが,医療圏には,一次医療圏,二次医療圏,三次医療圏があります。
そのうち,二次医療圏は,都道府県介護保険事業支援計画で設定される老人福祉圏域とほぼ一緒です。
都道府県を必要に応じて,いくつかの圏域に分けています。
三次医療圏は,北海道と長野が複数になっていますが,基本的に都道府県単位です。
日常生活圏域は,市町村介護保険事業計画で設定されるものです。市町村をさらに生活圏域で分けます。
一次医療圏は,基本的に市町村を単位としています。介護保険法の老人福祉圏域,日常生活圏域,いずれとも重なりません。
<今日の一言>
医療計画は,福祉行財政と福祉計画でしっかり押さえることになりますが,2018年から策定期間が,5年から6年に変更されています。
そして3年ごとに見直すことになっています。
この変更は極めて重要です。しっかり押さえておきましょう。
この変更は,2025年に向けた地域包括ケアシステム構築の一環で,医療介護総合確保推進法の都道府県計画,介護保険法の介護保険事業支援計画と「整合性」を図るためのものです。
2018年は,さまざまなものが重なった年なので,これに合わせてそろえたのです。
整合性で結ばれているのは,この3つしかありません。
<覚え方のヒント>
医療に関して,市町村の役割は,ほとんどありません。
現在は,無医村はないかもしれません。しかし規模の小さい自治体では,医療機関は村立診療所のたった一つだけというところもあるでしょう。
そういった市町村を支援するのが都道府県の役割です。こんなところから,医療に関するものは,市町村ではなく,都道府県の役割になるものが多いと覚えましょう。。
医療計画は,1985(昭和60)年の第一次医療法改正によって,都道府県に策定を義務付けられました。
その当時の医療計画では,医療圏を設けて必要な病床数を設定しました。
その理由は,医療施設の地域格差があり,その是正を目指すものだったからです。これにより,現在も病床規制が行われています。
現在では,このほかに
<5疾患>
・がん
・脳卒中
・心筋梗塞等の心疾患
・糖尿病
・精神疾患
<5事業>
・救急医療
・災害時における医療
・へき地の医療
・周産期医療
・小児医療(小児救急医療を含む。)
の達成目標
ほかに在宅医療の確保,医療従事者の確保など医療計画で定めるものは多岐にわたります。
これらから医療計画は市町村が策定するものではないということが分かることでしょう。
それでは今日の問題です。
第27回・問題73 医療計画に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 医療計画の策定主体は,都道府県である。
2 現行の医療計画では,精神医療についての記述は求められていない。
3 現行の医療計画では,在宅医療についての記述は求められていない。
4 医療計画における病床規制は,規制改革の中で撤廃された。
5 医療計画における二次医療圏は,地域包括ケアの圏域である日常生活圏とほぼ同様に想定されている。
国家試験では,消去法によって答えをあぶり出す必要がある問題が多いですが,この問題は,消去法ではなく,答えがすぐ分かるものだと思います。
それでは解説です。
1 医療計画の策定主体は,都道府県である。
これが正解です。医療計画は都道府県に策定義務があります。
2 現行の医療計画では,精神医療についての記述は求められていない。
これは間違いです。5疾患の中には精神疾患が含まれています。
設問に「現行の」という但し書きがついているのは,精神疾患が加わったのは2012年の法改正の時だからです。
3 現行の医療計画では,在宅医療についての記述は求められていない。
これも間違いです。医療計画に定める内容として,
居宅等における医療の確保に係る医療連携体制(医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を確保するための体制をいう)に関する事項
とされています。
これも「現行の」という但し書きがついているのは,2015年の法改正で加わったものだからです。
4 医療計画における病床規制は,規制改革の中で撤廃された。
これも間違いです。
病床規制は,第一次医療法改正の時から現在まで一貫して行われています。
5 医療計画における二次医療圏は,地域包括ケアの圏域である日常生活圏とほぼ同様に想定されている。
これも間違いです。
前説では触れていませんでしたが,医療圏には,一次医療圏,二次医療圏,三次医療圏があります。
そのうち,二次医療圏は,都道府県介護保険事業支援計画で設定される老人福祉圏域とほぼ一緒です。
都道府県を必要に応じて,いくつかの圏域に分けています。
三次医療圏は,北海道と長野が複数になっていますが,基本的に都道府県単位です。
日常生活圏域は,市町村介護保険事業計画で設定されるものです。市町村をさらに生活圏域で分けます。
一次医療圏は,基本的に市町村を単位としています。介護保険法の老人福祉圏域,日常生活圏域,いずれとも重なりません。
<今日の一言>
医療計画は,福祉行財政と福祉計画でしっかり押さえることになりますが,2018年から策定期間が,5年から6年に変更されています。
そして3年ごとに見直すことになっています。
この変更は極めて重要です。しっかり押さえておきましょう。
この変更は,2025年に向けた地域包括ケアシステム構築の一環で,医療介護総合確保推進法の都道府県計画,介護保険法の介護保険事業支援計画と「整合性」を図るためのものです。
2018年は,さまざまなものが重なった年なので,これに合わせてそろえたのです。
整合性で結ばれているのは,この3つしかありません。
<覚え方のヒント>
医療に関して,市町村の役割は,ほとんどありません。
現在は,無医村はないかもしれません。しかし規模の小さい自治体では,医療機関は村立診療所のたった一つだけというところもあるでしょう。
そういった市町村を支援するのが都道府県の役割です。こんなところから,医療に関するものは,市町村ではなく,都道府県の役割になるものが多いと覚えましょう。。
2018年11月11日日曜日
医療施設の徹底理解~その7~在宅医療専門診療所とは?
今回が医療施設の最終回です。
前説なしで今日の問題にいきましょう。
第30回・問題73 医療提供体制に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 保険薬局は,居宅における医学的管理,指導を行う。
2 かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所は,口腔機能の管理を行う。
3 在宅医療専門の診療所は,訪問診療に特化しているため,外来応需体制を有していなくてもよい。
4 有料老人ホームは,公的医療保険における在宅医療の適用外となっている。
5 介護老人保健施設の理学療法士は,医師の指示がなくてもリハビリテーションの実施が認められている。
医療提供体制と出題されているので,医療施設以外のものも含まれています。
初めて出題されたものが正解選択肢になった問題なので,問題のつくり方が少し違えば,難易度が何倍にも上がったことと思います。
しかし,間違い選択肢は消去しやすい表現が含まれているので,それほどではなくなっています。
それでは,解説です。
1 保険薬局は,居宅における医学的管理,指導を行う。
これは間違いです。保険薬局は,医師の処方箋に基づき,調剤,服薬指導を行います。医学的管理は,身体的管理を行うことですが,保険薬局の機能ではありません。
2 かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所は,口腔機能の管理を行う。
これが正解です。
<かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所>
平成28年の診療報酬改定によって新設されたもので,口腔機能の管理を実施します。長い名称なので,「か強診」と略されています。
3 在宅医療専門の診療所は,訪問診療に特化しているため,外来応需体制を有していなくてもよい。
これは間違いです。
<在宅医療専門診療所>
これも平成28年の診療報酬改定によって新設されたもので,訪問診療を専門に行います。
外来診療ができる体制を有していることが原則ですが,ない場合はその地域の医療機関と連携し,外来診療できる体制が必要です。
4 有料老人ホームは,公的医療保険における在宅医療の適用外となっている。
これも間違いです。
在宅医療は,医師が在宅に訪問して診療を行うものです。有料老人ホームは,医療提供施設ではないので,在宅診療の対象となります。
5 介護老人保健施設の理学療法士は,医師の指示がなくてもリハビリテーションの実施が認められている。
これも間違いです。
理学療法は,診療の補助と実施されるものです。医師の指示か必要です。
<今日の一言>
いわゆる団塊の世代が後期高齢者になる2025年に向けて,地域包括ケアシステムの構築が急がれています。
誰もが安心して地域で暮らすことができることが地域包括ケアシステムの基本です。その中心をなすものが,地域での医療の提供です。
多死社会なると現在のように,亡くなるときは医療施設で・・・といった死に方を選択できない人が多くなります。
その中で,在宅診療を専門に実施する診療所が生まれています。
前説なしで今日の問題にいきましょう。
第30回・問題73 医療提供体制に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 保険薬局は,居宅における医学的管理,指導を行う。
2 かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所は,口腔機能の管理を行う。
3 在宅医療専門の診療所は,訪問診療に特化しているため,外来応需体制を有していなくてもよい。
4 有料老人ホームは,公的医療保険における在宅医療の適用外となっている。
5 介護老人保健施設の理学療法士は,医師の指示がなくてもリハビリテーションの実施が認められている。
医療提供体制と出題されているので,医療施設以外のものも含まれています。
初めて出題されたものが正解選択肢になった問題なので,問題のつくり方が少し違えば,難易度が何倍にも上がったことと思います。
しかし,間違い選択肢は消去しやすい表現が含まれているので,それほどではなくなっています。
それでは,解説です。
1 保険薬局は,居宅における医学的管理,指導を行う。
これは間違いです。保険薬局は,医師の処方箋に基づき,調剤,服薬指導を行います。医学的管理は,身体的管理を行うことですが,保険薬局の機能ではありません。
2 かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所は,口腔機能の管理を行う。
これが正解です。
<かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所>
平成28年の診療報酬改定によって新設されたもので,口腔機能の管理を実施します。長い名称なので,「か強診」と略されています。
3 在宅医療専門の診療所は,訪問診療に特化しているため,外来応需体制を有していなくてもよい。
これは間違いです。
<在宅医療専門診療所>
これも平成28年の診療報酬改定によって新設されたもので,訪問診療を専門に行います。
外来診療ができる体制を有していることが原則ですが,ない場合はその地域の医療機関と連携し,外来診療できる体制が必要です。
4 有料老人ホームは,公的医療保険における在宅医療の適用外となっている。
これも間違いです。
在宅医療は,医師が在宅に訪問して診療を行うものです。有料老人ホームは,医療提供施設ではないので,在宅診療の対象となります。
5 介護老人保健施設の理学療法士は,医師の指示がなくてもリハビリテーションの実施が認められている。
これも間違いです。
理学療法は,診療の補助と実施されるものです。医師の指示か必要です。
<今日の一言>
いわゆる団塊の世代が後期高齢者になる2025年に向けて,地域包括ケアシステムの構築が急がれています。
誰もが安心して地域で暮らすことができることが地域包括ケアシステムの基本です。その中心をなすものが,地域での医療の提供です。
多死社会なると現在のように,亡くなるときは医療施設で・・・といった死に方を選択できない人が多くなります。
その中で,在宅診療を専門に実施する診療所が生まれています。
2018年11月10日土曜日
医療施設の徹底理解~その6~特定機能病院と地域医療支援病院の整理
今回は,今まで何度も出題されてきた「特定機能病院」と「地域医療支援病院」を整理しましょう。
<特定機能病院>
400床以上の病床を有し,高度な医療を提供できる医療機関です。承認するのは厚生労働大臣です。承認されているほとんどの医療機関は大学病院です。高度の医療に関する研修実施能力も必要です。
<地域医療支援病院>
200床以上の病床を有し,救急医療の提供,地域の中核病院として地域の医療従事者に対する研修能力,連携などを行います。承認するのは都道府県知事です。
これを押さえて,今日の問題です。
第22回・問題65 次のうち,地域医療支援病院に必要とされる要件として,正しいものを一つ選びなさい。
1 高度医療の提供能力
2 高度の医療技術の開発・評価及び研修能力
3 厚生労働大臣の承認
4 臨床研修病院としての能力
5 地域の医療従事者に対する研修能力
今までの問題で何度も出題されてきた地域医療支援病院です。
年度の順番から言えば,実はこれが最初の出題です。これを下敷きにして,今までの出題があったのです。
それでは解説です。
1 高度医療の提供能力
これは間違いです。
高度医療の提供能力は,特定機能病院の承認要件です。
2 高度の医療技術の開発・評価及び研修能力
これも間違いです
高度の医療技術の開発・評価及び研修能力は,特定機能病院の承認要件です。
3 厚生労働大臣の承認
これも間違いです。
厚生労働大臣の承認を受けるのは,特定機能病院です。地域医療支援病院は都道府県知事の承認を受けます。
4 臨床研修病院としての能力
これも間違いです。
臨床研修は,医師の卒後教育です。臨床研修病院は地域医療支援病院の承認要件とは何らかかわりません。
5 地域の医療従事者に対する研修能力
これが正解です。
<今日の一言>
国試で得点できるために基礎力をつけることは必須条件です。
しかしあいまいな知識がどれだけあっても得点を伸ばすことはできません。
社会福祉士の国試は,出題範囲は広いですが,一つひとつを見ていくと,とんでもなく難しいという問題はほとんどありません。
医療施設で言えば,今日の問題のように,特定機能病院と地域医療支援病院の違いを整理することです。
今日の問題には含まれていませんでしたが,救急医療の提供は,特定機能病院の承認要件のように感じますが,地域医療支援病院の承認要件です。
このようなところをしっかり押さえておくことが国試での得点を上げるコツなのです。
対になるものがあるものは特に注意が必要です。
<特定機能病院>
400床以上の病床を有し,高度な医療を提供できる医療機関です。承認するのは厚生労働大臣です。承認されているほとんどの医療機関は大学病院です。高度の医療に関する研修実施能力も必要です。
<地域医療支援病院>
200床以上の病床を有し,救急医療の提供,地域の中核病院として地域の医療従事者に対する研修能力,連携などを行います。承認するのは都道府県知事です。
これを押さえて,今日の問題です。
第22回・問題65 次のうち,地域医療支援病院に必要とされる要件として,正しいものを一つ選びなさい。
1 高度医療の提供能力
2 高度の医療技術の開発・評価及び研修能力
3 厚生労働大臣の承認
4 臨床研修病院としての能力
5 地域の医療従事者に対する研修能力
今までの問題で何度も出題されてきた地域医療支援病院です。
年度の順番から言えば,実はこれが最初の出題です。これを下敷きにして,今までの出題があったのです。
それでは解説です。
1 高度医療の提供能力
これは間違いです。
高度医療の提供能力は,特定機能病院の承認要件です。
2 高度の医療技術の開発・評価及び研修能力
これも間違いです
高度の医療技術の開発・評価及び研修能力は,特定機能病院の承認要件です。
3 厚生労働大臣の承認
これも間違いです。
厚生労働大臣の承認を受けるのは,特定機能病院です。地域医療支援病院は都道府県知事の承認を受けます。
4 臨床研修病院としての能力
これも間違いです。
臨床研修は,医師の卒後教育です。臨床研修病院は地域医療支援病院の承認要件とは何らかかわりません。
5 地域の医療従事者に対する研修能力
これが正解です。
<今日の一言>
国試で得点できるために基礎力をつけることは必須条件です。
しかしあいまいな知識がどれだけあっても得点を伸ばすことはできません。
社会福祉士の国試は,出題範囲は広いですが,一つひとつを見ていくと,とんでもなく難しいという問題はほとんどありません。
医療施設で言えば,今日の問題のように,特定機能病院と地域医療支援病院の違いを整理することです。
今日の問題には含まれていませんでしたが,救急医療の提供は,特定機能病院の承認要件のように感じますが,地域医療支援病院の承認要件です。
このようなところをしっかり押さえておくことが国試での得点を上げるコツなのです。
対になるものがあるものは特に注意が必要です。
2018年11月9日金曜日
医療施設の徹底理解~その5~記憶力を高める覚え方のコツ
今回も医療施設を続けます。
それでは早速今日の問題です。
第30回・問題72 医療施設に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 特定機能病院は,300床以上の病床を有し,かつ高度の医療を提供する病院である。
2 地域医療支援病院は,その所在地の市町村長の承認を得て救急医療を提供する病院である。
3 在宅療養支援病院は,在宅での療養を行う患者が緊急時を除いて入院できる病床を確保する病院である。
4 在宅療養支援診療所は,在宅医療を担当する常勤の医師を配置し,地域で在宅医療を提供する診療所である。
5 有床診療所は,地域の患者が48時間以内に退院できるように努める義務を負う診療所である。
前回の反省のためなのか,それほど難易度は高くない問題かもしれません。
そんなところが過去最高の合格基準点になった理由なのかもしれません。
それでは解説です。
1 特定機能病院は,300床以上の病床を有し,かつ高度の医療を提供する病院である。
これは間違いです。
前回は,地域医療支援病院の病床数が100床(間違い。正しくは200床)以上が承認要件であると出題されていましたね。
今回は,特定機能病院は300床以上と出題されました。正しくは400床以上です。
2 地域医療支援病院は,その所在地の市町村長の承認を得て救急医療を提供する病院である。
これも間違いです。
地域医療支援病院は,都道府県知事が承認します。
市町村は医療に関してはほとんど出番がありません。
3 在宅療養支援病院は,在宅での療養を行う患者が緊急時を除いて入院できる病床を確保する病院である。
これも間違いです。
ひどい問題だと思いませんか?
緊急時に入院できなかったら,いつ入院するのでしょう?
緊急時に入院できる病床を確保しておく必要があります。
在宅療養支援診療所の場合も,地域の病院と連携して,入院できる体制を確保しておく必要があります。
4 在宅療養支援診療所は,在宅医療を担当する常勤の医師を配置し,地域で在宅医療を提供する診療所である。
これが正解です。
前回の解説で述べたようで,配置する医師の数は要件には含まれていません。
「地域で在宅医療を提供する」の具体的内容は,24時間の往診と訪問看護を提供できる体制,緊急時には入院できる体制の確保です。
5 有床診療所は,地域の患者が48時間以内に退院できるように努める義務を負う診療所である。
これは間違いです。
有床診療所は,20床未満の病床数を有する診療所です。
<覚え方のヒント(コツ)>
基本ポイント ➡ 2つある場合は,どちらかを基準にして覚える。
(例)
地域医療支援病院と特定機能病院の承認要件
「地域医療支援病院は,地域医療の中核的医療機関である」を押さえる。
病床数は200床以上。
承認は都道府県知事。※基礎的自治体は市町村だが,市町村には医療に関する役割はほとんどないので,市町村町が承認することは考えられない。
これを発展させて,特定機能病院を覚える。
病床数は,地域医療支援病院の2倍(つまり400床以上)。
承認は,厚生労働大臣(つまり都道府県知事ではない)。
記憶力に自信のある人なら,1つひとつを覚えても良いと思います。
しかし,国試会場で記憶があいまいになり,答えを間違わないように,基準になるもの(この場合は地域医療支援病院)を定めて,それを覚えると良いです。
これはすべての領域に共通の覚え方のコツです。
工夫次第で,記憶力は高まります。
別な言い方をすると「覚えるのが上手な人は,覚えるコツを知っている人」と言えます。
覚えるのが苦手な人は,おそらく昔から苦手だったと思います。
覚えられないのを「脳の機能低下」を理由にするのは簡単です。
しかし覚え方の工夫次第で,記憶力はいくらでも高まります。
それでは早速今日の問題です。
第30回・問題72 医療施設に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 特定機能病院は,300床以上の病床を有し,かつ高度の医療を提供する病院である。
2 地域医療支援病院は,その所在地の市町村長の承認を得て救急医療を提供する病院である。
3 在宅療養支援病院は,在宅での療養を行う患者が緊急時を除いて入院できる病床を確保する病院である。
4 在宅療養支援診療所は,在宅医療を担当する常勤の医師を配置し,地域で在宅医療を提供する診療所である。
5 有床診療所は,地域の患者が48時間以内に退院できるように努める義務を負う診療所である。
前回の反省のためなのか,それほど難易度は高くない問題かもしれません。
そんなところが過去最高の合格基準点になった理由なのかもしれません。
それでは解説です。
1 特定機能病院は,300床以上の病床を有し,かつ高度の医療を提供する病院である。
これは間違いです。
前回は,地域医療支援病院の病床数が100床(間違い。正しくは200床)以上が承認要件であると出題されていましたね。
今回は,特定機能病院は300床以上と出題されました。正しくは400床以上です。
2 地域医療支援病院は,その所在地の市町村長の承認を得て救急医療を提供する病院である。
これも間違いです。
地域医療支援病院は,都道府県知事が承認します。
市町村は医療に関してはほとんど出番がありません。
3 在宅療養支援病院は,在宅での療養を行う患者が緊急時を除いて入院できる病床を確保する病院である。
これも間違いです。
ひどい問題だと思いませんか?
緊急時に入院できなかったら,いつ入院するのでしょう?
緊急時に入院できる病床を確保しておく必要があります。
在宅療養支援診療所の場合も,地域の病院と連携して,入院できる体制を確保しておく必要があります。
4 在宅療養支援診療所は,在宅医療を担当する常勤の医師を配置し,地域で在宅医療を提供する診療所である。
これが正解です。
前回の解説で述べたようで,配置する医師の数は要件には含まれていません。
「地域で在宅医療を提供する」の具体的内容は,24時間の往診と訪問看護を提供できる体制,緊急時には入院できる体制の確保です。
5 有床診療所は,地域の患者が48時間以内に退院できるように努める義務を負う診療所である。
これは間違いです。
有床診療所は,20床未満の病床数を有する診療所です。
<覚え方のヒント(コツ)>
基本ポイント ➡ 2つある場合は,どちらかを基準にして覚える。
(例)
地域医療支援病院と特定機能病院の承認要件
「地域医療支援病院は,地域医療の中核的医療機関である」を押さえる。
病床数は200床以上。
承認は都道府県知事。※基礎的自治体は市町村だが,市町村には医療に関する役割はほとんどないので,市町村町が承認することは考えられない。
これを発展させて,特定機能病院を覚える。
病床数は,地域医療支援病院の2倍(つまり400床以上)。
承認は,厚生労働大臣(つまり都道府県知事ではない)。
記憶力に自信のある人なら,1つひとつを覚えても良いと思います。
しかし,国試会場で記憶があいまいになり,答えを間違わないように,基準になるもの(この場合は地域医療支援病院)を定めて,それを覚えると良いです。
これはすべての領域に共通の覚え方のコツです。
工夫次第で,記憶力は高まります。
別な言い方をすると「覚えるのが上手な人は,覚えるコツを知っている人」と言えます。
覚えるのが苦手な人は,おそらく昔から苦手だったと思います。
覚えられないのを「脳の機能低下」を理由にするのは簡単です。
しかし覚え方の工夫次第で,記憶力はいくらでも高まります。
2018年11月8日木曜日
医療施設の徹底理解~その4~在宅療養支援病院(診療所)とは?
今回も医療施設に取り組んでいきます。
まず前々回と前回のものの復習をしましょう。
それでは今日の問題です。少しひねりが入っているので,難易度は高いです。
第29回・問題71 医療機関の基準に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 特定機能病院は,都道府県知事の承認を受けることとされている。
2 地域医療支援病院は,100床以上の病床を有することとされている。
3 診療所は,最大20人の患者を入院させる施設であることとされている。
4 在宅療養支援病院は,在宅医療の担当医師を1名以上配置することとされている。
5 在宅療養支援診療所は,24時間,往診が可能な体制を確保することとされている。
この時,初めて在宅療養支援病院(診療所)が出題されました。
地域包括ケアシステムを構築するためには極めて重要な医療機関です。
それでは解説です。
1 特定機能病院は,都道府県知事の承認を受けることとされている。
これは間違いです。特定機能病院が承認を受けるのは,厚生労働大臣です。都道府県知事の承認を受けるのは,地域医療支援病院です。
「地域」という言葉から都道府県である,というイメージをつくりましょう。
「地域」といっても市町村ではありません。
医療に関しては市町村の役割はほとんどないのです。
今は「無医村」はなくなったと思いますが,昭和30年代には無医村が存在していたのです。
もしかすると村だけではなく小さな町にも無医町というものがあったかもしれません。そんなことを考えると市町村の役割で医療に関するものはほとんどないのは何となく納得できるのではないでしょうか。
2 地域医療支援病院は,100床以上の病床を有することとされている。
これも間違いです。
地域医療支援病院の承認要件は,200床以上です。都会では500床を超えるような医療施設も承認されています。
100床は病院としては小規模です。
中規模と言えるのは,200床を超える病床を持つ医療施設です。そのくらいの規模があって初めて,地域の中核になる病院となり得るのでしょう。
調べてみると分かりますが,実際に承認されているのは,200床よりももっと大きな病院です。
3 診療所は,最大20人の患者を入院させる施設であることとされている。
これも間違いです。診療所20床未満です。20床以上は病院です。
ここまでの選択肢は過去問の知識で順調に消去できるでしょう。
4 在宅療養支援病院は,在宅医療の担当医師を1名以上配置することとされている。
この問題の難易度が高いのは,初めて出題されるものが2つあり,そのうち一つは間違い,そのうち一つは正解であるからです。
これは答えが分からないので,冷静に△をつけておきましょう。
ここで慌てると絶対に良い結果にはなりません。
「分からない」「ええ~い,これを選んでしまえ~」と思うとだめです。
冷静に△をつけます。
5 在宅療養支援診療所は,24時間,往診が可能な体制を確保することとされている。
これも分かりません。
冷静に△をつけておきましょう。
2つまで絞り込めたという状況です。
結果から言えば,この問題は解けても解けなくても良い問題に分類されます。
このブログを毎回読んでくれている,あるいは前々回のものを読んでくれた人は正解できると思いますが,国試が実施された時点では,かなり難しかったのです。
この時点で,選択肢の1・2・3を正解に選んでしまった人は,ちょっと問題ありです。勉強不足か,そうでなければかなりのおっちょこちょいの人です。
過去問は解けるのに,本試験は解けないという問題はたくさんあります。
そういった問題をある程度入れておかなければ,第30回国試のように合格基準点が99点になるといったおかしなことが起きてしまいます。
それでは残った2つを並べてみましょう。
4 在宅療養支援病院は,在宅医療の担当医師を1名以上配置することとされている。
5 在宅療養支援診療所は,24時間,往診が可能な体制を確保することとされている。
この問題が難しいのは,この2つ以外の選択肢も同じような文章で構成されていることも影響しています。表現をそろえるのは,これからも続くと思います。それは覚悟しておきましょう。
それはさておき・・・
2つのうち,どちらかは正解です。
ここまで迷う問題はめったにありません。
在宅医療の担当医師の配置を1名以上
24時間の往診体制
どちらも正解っぽいですね。
このうち,どちらが現実的に重要なのかを考えた時,24時間の往診体制は欠かせないと思います。
もしこれが間違いであったなら,24時間の往診ではなく,18時間とか12時間ということになることでしょう。それは困ります。そう思えれば,選択肢5を正解だと思えるでしょう。
正解は選択肢5でした。
<今日の一言>
この国試の時は,実は選択肢4は,配置数は2名以上ではないか,と思って消去したのです。
答えは,選択肢5で正解だったのですが,選択肢4が間違いだった理由は,在宅医療の担当医師の配置数は要件に入っていない,ということでした。知ってビックリでした。
在宅療養支援病院(診療所)の要件は,常勤の医師の配置です。
一人では24時間の往診ができなければ,複数を配置しなければなりません。配置については,自分たちで考えなさい,ということなのなのかもしれません。
3人以上配置されれば,診療報酬は高くなります。
最後におまけです。他に必要な要件があります。それは24時間の往診と訪問看護ができる体制です。
訪問看護は自ら提供せずとも訪問看護ステーションと連携が取れていればよいとされています。また緊急入院できることも必要です。診療所の場合は病院と連携して確保することが必要です。
在宅療養支援病院(診療所)の要件としての24時間の往診及び訪問看護ができる体制は,在宅療養を安心して送るために極めて重要なものです。
まず前々回と前回のものの復習をしましょう。
それでは今日の問題です。少しひねりが入っているので,難易度は高いです。
第29回・問題71 医療機関の基準に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 特定機能病院は,都道府県知事の承認を受けることとされている。
2 地域医療支援病院は,100床以上の病床を有することとされている。
3 診療所は,最大20人の患者を入院させる施設であることとされている。
4 在宅療養支援病院は,在宅医療の担当医師を1名以上配置することとされている。
5 在宅療養支援診療所は,24時間,往診が可能な体制を確保することとされている。
この時,初めて在宅療養支援病院(診療所)が出題されました。
地域包括ケアシステムを構築するためには極めて重要な医療機関です。
それでは解説です。
1 特定機能病院は,都道府県知事の承認を受けることとされている。
これは間違いです。特定機能病院が承認を受けるのは,厚生労働大臣です。都道府県知事の承認を受けるのは,地域医療支援病院です。
「地域」という言葉から都道府県である,というイメージをつくりましょう。
「地域」といっても市町村ではありません。
医療に関しては市町村の役割はほとんどないのです。
今は「無医村」はなくなったと思いますが,昭和30年代には無医村が存在していたのです。
もしかすると村だけではなく小さな町にも無医町というものがあったかもしれません。そんなことを考えると市町村の役割で医療に関するものはほとんどないのは何となく納得できるのではないでしょうか。
2 地域医療支援病院は,100床以上の病床を有することとされている。
これも間違いです。
地域医療支援病院の承認要件は,200床以上です。都会では500床を超えるような医療施設も承認されています。
100床は病院としては小規模です。
中規模と言えるのは,200床を超える病床を持つ医療施設です。そのくらいの規模があって初めて,地域の中核になる病院となり得るのでしょう。
調べてみると分かりますが,実際に承認されているのは,200床よりももっと大きな病院です。
3 診療所は,最大20人の患者を入院させる施設であることとされている。
これも間違いです。診療所20床未満です。20床以上は病院です。
ここまでの選択肢は過去問の知識で順調に消去できるでしょう。
4 在宅療養支援病院は,在宅医療の担当医師を1名以上配置することとされている。
この問題の難易度が高いのは,初めて出題されるものが2つあり,そのうち一つは間違い,そのうち一つは正解であるからです。
これは答えが分からないので,冷静に△をつけておきましょう。
ここで慌てると絶対に良い結果にはなりません。
「分からない」「ええ~い,これを選んでしまえ~」と思うとだめです。
冷静に△をつけます。
5 在宅療養支援診療所は,24時間,往診が可能な体制を確保することとされている。
これも分かりません。
冷静に△をつけておきましょう。
2つまで絞り込めたという状況です。
結果から言えば,この問題は解けても解けなくても良い問題に分類されます。
このブログを毎回読んでくれている,あるいは前々回のものを読んでくれた人は正解できると思いますが,国試が実施された時点では,かなり難しかったのです。
この時点で,選択肢の1・2・3を正解に選んでしまった人は,ちょっと問題ありです。勉強不足か,そうでなければかなりのおっちょこちょいの人です。
過去問は解けるのに,本試験は解けないという問題はたくさんあります。
そういった問題をある程度入れておかなければ,第30回国試のように合格基準点が99点になるといったおかしなことが起きてしまいます。
それでは残った2つを並べてみましょう。
4 在宅療養支援病院は,在宅医療の担当医師を1名以上配置することとされている。
5 在宅療養支援診療所は,24時間,往診が可能な体制を確保することとされている。
この問題が難しいのは,この2つ以外の選択肢も同じような文章で構成されていることも影響しています。表現をそろえるのは,これからも続くと思います。それは覚悟しておきましょう。
それはさておき・・・
2つのうち,どちらかは正解です。
ここまで迷う問題はめったにありません。
在宅医療の担当医師の配置を1名以上
24時間の往診体制
どちらも正解っぽいですね。
このうち,どちらが現実的に重要なのかを考えた時,24時間の往診体制は欠かせないと思います。
もしこれが間違いであったなら,24時間の往診ではなく,18時間とか12時間ということになることでしょう。それは困ります。そう思えれば,選択肢5を正解だと思えるでしょう。
正解は選択肢5でした。
<今日の一言>
この国試の時は,実は選択肢4は,配置数は2名以上ではないか,と思って消去したのです。
答えは,選択肢5で正解だったのですが,選択肢4が間違いだった理由は,在宅医療の担当医師の配置数は要件に入っていない,ということでした。知ってビックリでした。
在宅療養支援病院(診療所)の要件は,常勤の医師の配置です。
一人では24時間の往診ができなければ,複数を配置しなければなりません。配置については,自分たちで考えなさい,ということなのなのかもしれません。
3人以上配置されれば,診療報酬は高くなります。
最後におまけです。他に必要な要件があります。それは24時間の往診と訪問看護ができる体制です。
訪問看護は自ら提供せずとも訪問看護ステーションと連携が取れていればよいとされています。また緊急入院できることも必要です。診療所の場合は病院と連携して確保することが必要です。
在宅療養支援病院(診療所)の要件としての24時間の往診及び訪問看護ができる体制は,在宅療養を安心して送るために極めて重要なものです。
2018年11月7日水曜日
医療施設の徹底理解~その3~3か月で得点力を上げる方法
今回も医療法に基づく医療施設を取り上げます。
まずは前回の復習です。
https://fukufuku21.blogspot.com/2018/11/blog-post_6.html
過去の出題が多いのは,特定機能病院と地域医療支援病院でしたね。
近年,出題が増えてきているのは,在宅療養支援病院です。
これらの違いは確実に覚えておく必要があります。
それでは今日の問題です。この問題は一年前にも一度取り上げていると思いますが,もう一度取り上げます。
第26回・問題73 我が国の医療提供施設に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 病院とは,医療法上,病床数10床以上を有する医業又は歯科医業を行う施設のことである。
2 病院施設の中の一般病院数の年次推移をみると,最近10年間の総数は増加し続けている。
3 臨床研修を修了した医師又は歯科医師が診療所を開設するときは,都道府県知事に開設の許可を得なければならない。
4 地域医療支援病院の承認要件には,救急医療を提供する能力を有することが含まれる。
5 病床種別の中で病院病床数を比較すると,療養病床の方が一般病床よりも多い。
前回の復習をしっかりやった人はそれほど難しくはないと思います。
しかし,勉強していない人はまず解けないと思います。
それでは解説です。
1 病院とは,医療法上,病床数10床以上を有する医業又は歯科医業を行う施設のことである。
これは間違いです。
病院は20床以上,診療所は20床未満です。
2 病院施設の中の一般病院数の年次推移をみると,最近10年間の総数は増加し続けている。
これも間違いです。
病院数は,減少を続けています。一番多かったのは1990年で,1万を超えていました。現在では8,500弱まで減少しています。
3 臨床研修を修了した医師又は歯科医師が診療所を開設するときは,都道府県知事に開設の許可を得なければならない。
これも間違いです。
診療所を開設する際に都道府県知事に許可を得なければならないのは,臨床研修を修了していない医師又は歯科医師の場合です。
病院開設の場合は,臨床研修を修了していても許可を得なければなりません。
4 地域医療支援病院の承認要件には,救急医療を提供する能力を有することが含まれる。
これが正解です。
今一度,復習しておきましょう。
<地域医療支援病院>
200床以上の病床を有し,救急医療の提供,地域の中核病院として地域の医療従事者に対する研修能力,連携などを行います。承認するのは都道府県知事です。
救急医療の提供能力は,特定機能病院という感じがすると思いますが,地域医療支援病院の承認要件です。しっかり覚えておきましょう。
5 病床種別の中で病院病床数を比較すると,療養病床の方が一般病床よりも多い。
これは間違いです。一般病床は療養病床の倍以上あります。
<今日の一言>
第26回あたりから,現在の国試問題に近くなっていきます。
問題を解くことの難しさはいつも変わりませんが,勉強をしっかりした人は解ける,勉強が足りない人は解けない,という資格試験にとって,理想的なスタイルが出来上がりつつあると言えます。
しっかり勉強した人は,合格基準点を超えることができます。
大事なことは,
一つひとつをあいまいな知識にしないことです。
対になるものがあるものは,要注意です。
あいまいになりがちだからです。
今日の問題であれば,特定機能病院と地域医療支援病院の違いをしっかり覚えおくことです。
その他には,
病院と診療所の病床数の違い
といったものも対になるものです。
変型版では,臨床研修を修了した医師は,病院を開設する時は都道府県知事の許可が必要ですが,診療所を開設する時は,許可を必要としない,といったものもあります。
対になるものがあるものは,間違い選択肢を作りやすいことになります。
作りやすいということは,問題文に不自然さがないので,勉強が足りない人が勘で解けるということはまずありません。
対になるものがあるものは,しっかり覚えることが得点力を上げることにつながります。
逆に言えば,対になるものをしっかり覚えておかないとあいまいになってしまうので,得点できないということになります。
後からよく読めば解けた
国試ではよくあることです。
国試の問題は,一つひとつを分解してみると,それほど難しいものではありません。
しかし,得点するのは決して簡単なものではありません。それはいかにも正しいように見えるからです。
勘で解けるような問題は,特に法制度に関するものは少ないので本当に大変だと思います。
しかししかし・・・
しっかり勉強した人は,必ず合格基準点を超えることができます。
これから国試までの時間は短いようですが,結構長いです。得点力を上げるには十分すぎる時間があります。
対になるものがあるものは,しっかり覚えること
これを心がけていきましょう!!
まずは前回の復習です。
https://fukufuku21.blogspot.com/2018/11/blog-post_6.html
過去の出題が多いのは,特定機能病院と地域医療支援病院でしたね。
近年,出題が増えてきているのは,在宅療養支援病院です。
これらの違いは確実に覚えておく必要があります。
それでは今日の問題です。この問題は一年前にも一度取り上げていると思いますが,もう一度取り上げます。
第26回・問題73 我が国の医療提供施設に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 病院とは,医療法上,病床数10床以上を有する医業又は歯科医業を行う施設のことである。
2 病院施設の中の一般病院数の年次推移をみると,最近10年間の総数は増加し続けている。
3 臨床研修を修了した医師又は歯科医師が診療所を開設するときは,都道府県知事に開設の許可を得なければならない。
4 地域医療支援病院の承認要件には,救急医療を提供する能力を有することが含まれる。
5 病床種別の中で病院病床数を比較すると,療養病床の方が一般病床よりも多い。
前回の復習をしっかりやった人はそれほど難しくはないと思います。
しかし,勉強していない人はまず解けないと思います。
それでは解説です。
1 病院とは,医療法上,病床数10床以上を有する医業又は歯科医業を行う施設のことである。
これは間違いです。
病院は20床以上,診療所は20床未満です。
2 病院施設の中の一般病院数の年次推移をみると,最近10年間の総数は増加し続けている。
これも間違いです。
病院数は,減少を続けています。一番多かったのは1990年で,1万を超えていました。現在では8,500弱まで減少しています。
3 臨床研修を修了した医師又は歯科医師が診療所を開設するときは,都道府県知事に開設の許可を得なければならない。
これも間違いです。
診療所を開設する際に都道府県知事に許可を得なければならないのは,臨床研修を修了していない医師又は歯科医師の場合です。
病院開設の場合は,臨床研修を修了していても許可を得なければなりません。
4 地域医療支援病院の承認要件には,救急医療を提供する能力を有することが含まれる。
これが正解です。
今一度,復習しておきましょう。
<地域医療支援病院>
200床以上の病床を有し,救急医療の提供,地域の中核病院として地域の医療従事者に対する研修能力,連携などを行います。承認するのは都道府県知事です。
救急医療の提供能力は,特定機能病院という感じがすると思いますが,地域医療支援病院の承認要件です。しっかり覚えておきましょう。
5 病床種別の中で病院病床数を比較すると,療養病床の方が一般病床よりも多い。
これは間違いです。一般病床は療養病床の倍以上あります。
<今日の一言>
第26回あたりから,現在の国試問題に近くなっていきます。
問題を解くことの難しさはいつも変わりませんが,勉強をしっかりした人は解ける,勉強が足りない人は解けない,という資格試験にとって,理想的なスタイルが出来上がりつつあると言えます。
しっかり勉強した人は,合格基準点を超えることができます。
大事なことは,
一つひとつをあいまいな知識にしないことです。
対になるものがあるものは,要注意です。
あいまいになりがちだからです。
今日の問題であれば,特定機能病院と地域医療支援病院の違いをしっかり覚えおくことです。
その他には,
病院と診療所の病床数の違い
といったものも対になるものです。
変型版では,臨床研修を修了した医師は,病院を開設する時は都道府県知事の許可が必要ですが,診療所を開設する時は,許可を必要としない,といったものもあります。
対になるものがあるものは,間違い選択肢を作りやすいことになります。
作りやすいということは,問題文に不自然さがないので,勉強が足りない人が勘で解けるということはまずありません。
対になるものがあるものは,しっかり覚えることが得点力を上げることにつながります。
逆に言えば,対になるものをしっかり覚えておかないとあいまいになってしまうので,得点できないということになります。
後からよく読めば解けた
国試ではよくあることです。
国試の問題は,一つひとつを分解してみると,それほど難しいものではありません。
しかし,得点するのは決して簡単なものではありません。それはいかにも正しいように見えるからです。
勘で解けるような問題は,特に法制度に関するものは少ないので本当に大変だと思います。
しかししかし・・・
しっかり勉強した人は,必ず合格基準点を超えることができます。
これから国試までの時間は短いようですが,結構長いです。得点力を上げるには十分すぎる時間があります。
対になるものがあるものは,しっかり覚えること
これを心がけていきましょう!!
2018年11月6日火曜日
医療施設の徹底理解~その2
今回は,医療施設の機能区分を整理したいと思います。
今までの国家試験に出題されたのは,以下の5つです。
1.特定機能病院
2.地域医療支援病院
3.在宅療養支援病院・在宅療養支援診療所
4.かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所
5.在宅医療専門の診療所
これらについて説明します。( )内は過去の出題回数です。
1.特定機能病院(5回)
400床以上の病床を有し,高度な医療を提供できる医療機関です。承認するのは厚生労働大臣です。承認されているほとんどの医療機関は大学病院です。高度の医療に関する研修実施能力も必要です。
2.地域医療支援病院(5回)
200床以上の病床を有し,救急医療の提供,地域の中核病院として地域の医療従事者に対する研修能力,連携などを行います。承認するのは都道府県知事です。
3.在宅療養支援病院・在宅療養支援診療所(4回)
24時間の往診と訪問看護等の提供を行います。往診と訪問看護を担当する者は事前に患家に提示しておかなければなりません。訪問看護は必ずしも自ら提供しなければならないものではなく,訪問看護ステーション等との連携で実施する体制があることが承認要件です。そして忘れてはならないのは,緊急入院できる医療体制も要件の一つになっていることです。
4.かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(1回)
平成28年の診療報酬改定によって新設されたもので,口腔機能の管理を実施します。長い名称なので,「か強診」と略されています。
5.在宅医療専門診療所(1回)
これも平成28年の診療報酬改定によって新設されたもので,訪問診療を専門に行います。外来診療ができる体制を有していることが原則ですが,ない場合はその地域の医療機関と連携し,外来診療できる体制が必要です。
さて,それでは今日の問題です。
第25回・問題73 我が国の医療提供施設に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 診療所の管理者には,医師,歯科医師以外の者でもなることができる。
2 介護老人保健施設は,医療法上の医療提供施設である。
3 病院や診療所は,自施設の平均在院日数を広告してはならないこととされている。
4 医師が病院を開設しようとするときは,都道府県知事の許可は必要としない。
5 特定機能病院に要求される機能には,高度の医療に関する研修実施能力は含まれていない。
魔の第25回の国家試験問題ですが,かなり素直な出題なので,難易度は低めなものとなっています。
それでは,解説です。
1 診療所の管理者には,医師,歯科医師以外の者でもなることができる。
これは間違いです。病院及び診療所の管理者は,医師,歯科医師です。
2 介護老人保健施設は,医療法上の医療提供施設である。
これが正解です。介護老人保健施設は,介護保険法上の介護保険施設であるとともに,医療法上の医療提供施設でもあります。
3 病院や診療所は,自施設の平均在院日数を広告してはならないこととされている。
これは間違いです。
医療法によって広告規制がありますが,平均在院日数は広告できます。
4 医師が病院を開設しようとするときは,都道府県知事の許可は必要としない。
これも間違いです。医師が病院を開設する場合は,都道府県知事の許可が必要です。
診療所を開設する場合,臨床研修修了している医師は許可を必要とせず,修了していない医師は都道府県知事の許可が必要です。
5 特定機能病院に要求される機能には,高度の医療に関する研修実施能力は含まれていない。
これも間違いです。高度の医療に関する研修実施能力は,特定機能病院の承認要件です。
<今日の一言>
特定機能病院と地域医療支援病院を混同しないように整理しておくことが大切です。
要注意なのは,救急医療の提供は,特定機能病院の機能のように思いがちですが,地域医療支援病院の機能であることです。
今までの国家試験に出題されたのは,以下の5つです。
1.特定機能病院
2.地域医療支援病院
3.在宅療養支援病院・在宅療養支援診療所
4.かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所
5.在宅医療専門の診療所
これらについて説明します。( )内は過去の出題回数です。
1.特定機能病院(5回)
400床以上の病床を有し,高度な医療を提供できる医療機関です。承認するのは厚生労働大臣です。承認されているほとんどの医療機関は大学病院です。高度の医療に関する研修実施能力も必要です。
2.地域医療支援病院(5回)
200床以上の病床を有し,救急医療の提供,地域の中核病院として地域の医療従事者に対する研修能力,連携などを行います。承認するのは都道府県知事です。
3.在宅療養支援病院・在宅療養支援診療所(4回)
24時間の往診と訪問看護等の提供を行います。往診と訪問看護を担当する者は事前に患家に提示しておかなければなりません。訪問看護は必ずしも自ら提供しなければならないものではなく,訪問看護ステーション等との連携で実施する体制があることが承認要件です。そして忘れてはならないのは,緊急入院できる医療体制も要件の一つになっていることです。
4.かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(1回)
平成28年の診療報酬改定によって新設されたもので,口腔機能の管理を実施します。長い名称なので,「か強診」と略されています。
5.在宅医療専門診療所(1回)
これも平成28年の診療報酬改定によって新設されたもので,訪問診療を専門に行います。外来診療ができる体制を有していることが原則ですが,ない場合はその地域の医療機関と連携し,外来診療できる体制が必要です。
さて,それでは今日の問題です。
第25回・問題73 我が国の医療提供施設に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 診療所の管理者には,医師,歯科医師以外の者でもなることができる。
2 介護老人保健施設は,医療法上の医療提供施設である。
3 病院や診療所は,自施設の平均在院日数を広告してはならないこととされている。
4 医師が病院を開設しようとするときは,都道府県知事の許可は必要としない。
5 特定機能病院に要求される機能には,高度の医療に関する研修実施能力は含まれていない。
魔の第25回の国家試験問題ですが,かなり素直な出題なので,難易度は低めなものとなっています。
それでは,解説です。
1 診療所の管理者には,医師,歯科医師以外の者でもなることができる。
これは間違いです。病院及び診療所の管理者は,医師,歯科医師です。
2 介護老人保健施設は,医療法上の医療提供施設である。
これが正解です。介護老人保健施設は,介護保険法上の介護保険施設であるとともに,医療法上の医療提供施設でもあります。
3 病院や診療所は,自施設の平均在院日数を広告してはならないこととされている。
これは間違いです。
医療法によって広告規制がありますが,平均在院日数は広告できます。
4 医師が病院を開設しようとするときは,都道府県知事の許可は必要としない。
これも間違いです。医師が病院を開設する場合は,都道府県知事の許可が必要です。
診療所を開設する場合,臨床研修修了している医師は許可を必要とせず,修了していない医師は都道府県知事の許可が必要です。
5 特定機能病院に要求される機能には,高度の医療に関する研修実施能力は含まれていない。
これも間違いです。高度の医療に関する研修実施能力は,特定機能病院の承認要件です。
<今日の一言>
特定機能病院と地域医療支援病院を混同しないように整理しておくことが大切です。
要注意なのは,救急医療の提供は,特定機能病院の機能のように思いがちですが,地域医療支援病院の機能であることです。
2018年11月5日月曜日
医療施設の徹底理解~その1
今回から医療法に基づく医療施設に取り組んでいきましょう。
前回まで取り上げていた診療報酬ほどは細かくはありません。
過去に出題されたものをたどっていけば,得点を稼ぐことができる範囲です。
ただし今日取り上げるものは少し難しい問題です。
それでは前説なしに今日の問題を解いてみましょう。
第24回・問題65 医療法上の医療提供施設に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 調剤薬局は,医療法上の医療提供施設には含まれない。
2 病床数が20床未満であっても,病院と名乗ることができる。
3 臨床研修制度成立後は,新たに医籍登録された医師が病院の管理者になるためには,臨床研修等を修了しなければならないと定められた。
4 病院の管理者は,医療の安全を確保するための指針を策定する必要があるが,診療所ではその必要はない。
5 診療所は,療養病床を設けることはできない。
知識ゼロでは解けない問題です。
現行カリキュラム3回目の出題方針が定まっていない時点での問題なので,難しさは倍増です。その理由は後述します。
それでは解説です。
1 調剤薬局は,医療法上の医療提供施設には含まれない。
これは間違いです。
医療法に基づく医療提供施設は,診療所,病院,介護老人保健施設,介護医療院,調剤薬局です。助産院が医療提供施設に含むかは法の解釈によります。解釈によって違いがあるものは絶対に出題されないので,心配ご無用です。
さて調剤薬局です。なぜこの出題があるのかと言えば,調剤薬局が医療提供施設に規定されたのは,平成18年の医療法の改正だからです。
今後は,平成30年から加わった介護医療院が要注意です。
2 病床数が20床未満であっても,病院と名乗ることができる。
これも間違いです。
前回,解説した通り,病院は病床数が20床以上,20床未満は診療所となります。
現在はこのようなタイプの言い回しはされません。勘の良い人なら,「20床未満であっても」という言い回しから,何か裏があると気づいてしまうからです。
今なら,間違い選択肢を作るなら
「医療法では,病床を有するものを病院,病床を有しないものを診療所としている」
といったものになるのではないかと思います。20床未満は有床診療所となるので間違いです。
3 臨床研修制度成立後は,新たに医籍登録された医師が病院の管理者になるためには,臨床研修等を修了しなければならないと定められた。
これが正解です。
この問題の難易度を高めたのは,旧カリキュラム時代も含めてこの時が初めての出題となった臨床研修制度を正解にしたことでしょう。
臨床研修制度とは,平成18年の医師法改正によって義務付けになったものです。
それ以前に医師免許を取得したものは臨床研修を修了したものとみなされます。
平成18年の医師法改正と伴い,病院及び診療所の開設者は,臨床研修を修了していることが条件となっています。
4 病院の管理者は,医療の安全を確保するための指針を策定する必要があるが,診療所ではその必要はない。
これは間違いです。
医療の安全に関する出題は,この後も続きます。医療の安全は医療法の目的の一つだからです。
指針の策定は病院も診療所も策定しなければなりません。
5 診療所は,療養病床を設けることはできない。
これも間違いです。
診療所も療養病床を設けることができます。
診療所が設けることができる病床は,一般病床と療養病床です。
精神病床,結核病床,感染症病床は病院でなければ設けることができません。
<今日の一言>
社会福祉士の国家試験の実施機関である「社会福祉振興・試験センター」は,問題ごとの正解率を重視していると考えられます。
そのため,6割程度の人が正解できる問題を目指して出題しているように思います。
しかし,実際に試験を行ってみると,試験センターや試験委員の思惑と違って,極端に正解率が高かったり,低かったりする問題が生じます。
その結果として,合格基準点を上下させています。
第30回国試のように,合格基準点が極端に上がってしまうと,今後はどんな勉強をしたら良いのか心配になる人も多いかと思います。
しかし,勉強法は今もこれからも一切変わることはありません。
必要なのは,出題基準に示された範囲をしっかり押さえていくことです。
難しい問題が出題されれば,多くの人は正解できません。
簡単な問題が出題されれば,多くの人が正解できます。
合格するために重要なことは,難しい問題を正解するこどはなく,誰もが正解できる問題を自分も正解できる確実性です。
難しい問題が多く出題されれば,合格基準点は下がります。
簡単な問題が多く出題されれば,合格基準点は上がります。
合格基準点の上下はそういった理由です。
ほかの受験者と差をつけるしたら,一つひとつをあいまいにせず,確実な知識にするこどか何よりも大切です。
今日の問題は,難易度が高めでしたが,基本的にはここまで難しくはないです。
あいまいにしないというのは,過去に出題されたポイントを押さえて,覚えていくことです。
参考書の内容を覚えるのは必須です。しかしこれからは最後の仕上げの時期です。
国試でどのように出題されるのかを知って,そのポイントを覚えておくと,得点力は確実に上がります。
これが「あいまいにしない」ということの神髄です。
前回まで取り上げていた診療報酬ほどは細かくはありません。
過去に出題されたものをたどっていけば,得点を稼ぐことができる範囲です。
ただし今日取り上げるものは少し難しい問題です。
それでは前説なしに今日の問題を解いてみましょう。
第24回・問題65 医療法上の医療提供施設に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 調剤薬局は,医療法上の医療提供施設には含まれない。
2 病床数が20床未満であっても,病院と名乗ることができる。
3 臨床研修制度成立後は,新たに医籍登録された医師が病院の管理者になるためには,臨床研修等を修了しなければならないと定められた。
4 病院の管理者は,医療の安全を確保するための指針を策定する必要があるが,診療所ではその必要はない。
5 診療所は,療養病床を設けることはできない。
知識ゼロでは解けない問題です。
現行カリキュラム3回目の出題方針が定まっていない時点での問題なので,難しさは倍増です。その理由は後述します。
それでは解説です。
1 調剤薬局は,医療法上の医療提供施設には含まれない。
これは間違いです。
医療法に基づく医療提供施設は,診療所,病院,介護老人保健施設,介護医療院,調剤薬局です。助産院が医療提供施設に含むかは法の解釈によります。解釈によって違いがあるものは絶対に出題されないので,心配ご無用です。
さて調剤薬局です。なぜこの出題があるのかと言えば,調剤薬局が医療提供施設に規定されたのは,平成18年の医療法の改正だからです。
今後は,平成30年から加わった介護医療院が要注意です。
2 病床数が20床未満であっても,病院と名乗ることができる。
これも間違いです。
前回,解説した通り,病院は病床数が20床以上,20床未満は診療所となります。
現在はこのようなタイプの言い回しはされません。勘の良い人なら,「20床未満であっても」という言い回しから,何か裏があると気づいてしまうからです。
今なら,間違い選択肢を作るなら
「医療法では,病床を有するものを病院,病床を有しないものを診療所としている」
といったものになるのではないかと思います。20床未満は有床診療所となるので間違いです。
3 臨床研修制度成立後は,新たに医籍登録された医師が病院の管理者になるためには,臨床研修等を修了しなければならないと定められた。
これが正解です。
この問題の難易度を高めたのは,旧カリキュラム時代も含めてこの時が初めての出題となった臨床研修制度を正解にしたことでしょう。
臨床研修制度とは,平成18年の医師法改正によって義務付けになったものです。
それ以前に医師免許を取得したものは臨床研修を修了したものとみなされます。
平成18年の医師法改正と伴い,病院及び診療所の開設者は,臨床研修を修了していることが条件となっています。
4 病院の管理者は,医療の安全を確保するための指針を策定する必要があるが,診療所ではその必要はない。
これは間違いです。
医療の安全に関する出題は,この後も続きます。医療の安全は医療法の目的の一つだからです。
指針の策定は病院も診療所も策定しなければなりません。
5 診療所は,療養病床を設けることはできない。
これも間違いです。
診療所も療養病床を設けることができます。
診療所が設けることができる病床は,一般病床と療養病床です。
精神病床,結核病床,感染症病床は病院でなければ設けることができません。
<今日の一言>
社会福祉士の国家試験の実施機関である「社会福祉振興・試験センター」は,問題ごとの正解率を重視していると考えられます。
そのため,6割程度の人が正解できる問題を目指して出題しているように思います。
しかし,実際に試験を行ってみると,試験センターや試験委員の思惑と違って,極端に正解率が高かったり,低かったりする問題が生じます。
その結果として,合格基準点を上下させています。
第30回国試のように,合格基準点が極端に上がってしまうと,今後はどんな勉強をしたら良いのか心配になる人も多いかと思います。
しかし,勉強法は今もこれからも一切変わることはありません。
必要なのは,出題基準に示された範囲をしっかり押さえていくことです。
難しい問題が出題されれば,多くの人は正解できません。
簡単な問題が出題されれば,多くの人が正解できます。
合格するために重要なことは,難しい問題を正解するこどはなく,誰もが正解できる問題を自分も正解できる確実性です。
難しい問題が多く出題されれば,合格基準点は下がります。
簡単な問題が多く出題されれば,合格基準点は上がります。
合格基準点の上下はそういった理由です。
ほかの受験者と差をつけるしたら,一つひとつをあいまいにせず,確実な知識にするこどか何よりも大切です。
今日の問題は,難易度が高めでしたが,基本的にはここまで難しくはないです。
あいまいにしないというのは,過去に出題されたポイントを押さえて,覚えていくことです。
参考書の内容を覚えるのは必須です。しかしこれからは最後の仕上げの時期です。
国試でどのように出題されるのかを知って,そのポイントを覚えておくと,得点力は確実に上がります。
これが「あいまいにしない」ということの神髄です。
2018年11月4日日曜日
診療報酬制度の徹底理解~その6
診療報酬は,深掘りすればいくらでもできます。しかし,それでは正解率が低くなってしまいます。
今まで見てきたように,難しい問題も存在します。
今日の問題も難しい部類に入るものかもしれません。
なぜなら,1つの科目の知識で完結するものではなく,ほかの科目にまたがった知識が問われるからです。
それでは今日の問題です。
第30回・問題71 診療報酬に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 一般病棟入院基本料で算定される一般病棟には,療養病床の病棟が含まれる。
2 有床診療所入院基本料で算定される有床診療所には,20人の患者を入院させる医療施設が含まれる。
3 地域包括ケア病棟入院料で算定される病院には,特定機能病院が含まれる。
4 障害者施設等入院基本料で算定される障害者施設等には,医療型障害児入所施設が含まれる。
5 特定機能病院入院基本料で算定される病棟には,特定機能病院の療養病棟が含まれる。
次回から,医療法に規定される医療提供施設を取り上げていきますが,この問題ではそれと絡めて出題されています。
この問題が難しくなっているのは,過去問の知識では正解を導くことはできないからです。
また,「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」で学ぶ知識が必要であるということもあります。
しかし,落ち着けば決して答えられないものではありません。
ただし,「入院基本料って何?」「分からない」と思ってしまうと,迷いの森に入り込みますので注意が必要です。
そこさえ気をつければ,勉強をしっかりしてきた人なら,問題の多くには正解できる仕掛けがなされています。
なお,入院基本料とは,医学的管理,看護,寝具類等の基本的な入院医療体制を評価した診療報酬です。
それでは解説です。
1 一般病棟入院基本料で算定される一般病棟には,療養病床の病棟が含まれる。
これは間違いです。
入院基本料は,以下のように体型づけられています。
<病院>
・一般病棟入院基本料
・療養病棟入院基本料
・結核病棟入院基本料
・精神病棟入院基本料
・特定機能病院(一般病棟,結核病棟,精神病棟)入院基本料
・専門病院入院基本料
・障害者施設等入院基本料
<有床診療所>
・有床診療所入院基本料
・有床診療所療養病床入院基本料
このように,一般病棟と療養病棟の入院基本料は別になっています。
入院基本料って何? と思うとまったく分からなくなってしまいますが,一般病棟と療養病棟は,看護師の配置数などが大きく違うので,一緒のものではないと見当をつけることができるでしょう。
話は逸れますが,1980年代後半の第1次医療法改正によって,病床数の規制が行われました。規制が始まる前は自由開業制がとられていました。そのため,規制が行われる前に,いわゆる「駆け込み増床」が行われました。その結果発生したのは看護師不足という問題です。そこで,看護師が確保できない病院は,介護力強化病院(その後の療養型病床群,現在の療養病床に続くもの)に移行した医療機関もあります。
駆け込み増床した病院やその時期に開設した病院は,30年以上が経過し,現在はちょうど建て替えの時期に差し掛かっています。近年建て替えられた病院は,駆け込み増床の時期に建てられたものが多いはずです。
2 有床診療所入院基本料で算定される有床診療所には,20人の患者を入院させる医療施設が含まれる。
これも間違いです。
医療法では,病床数が20床以上の医療機関を病院,病床がない,あるいは20床未満の医療機関を診療所と分けています。過去に何度も出題されています。しっかり覚えておきましょう。
入院基本料は知らなくても,病院と診療所の違いが分かっていれば,消去できたことでしょう。
3 地域包括ケア病棟入院料で算定される病院には,特定機能病院が含まれる。
これも間違いです。
特定機能病院には,一般病床,結核病棟,精神病棟があり,地域包括ケア病棟入院料は,特定機能病院は含まれないものとなっています。
診療報酬で地域包括ケア病棟の条件(現時点)としては,「看護職員配置13対1」「在宅復帰に係る職員1名の専任」「理学療法士等のリハスタッフ1名の専従配置」があります。これらの条件があることを知っておけば,特定機能病院ではなさそうな感じがするでしょう。
4 障害者施設等入院基本料で算定される障害者施設等には,医療型障害児入所施設が含まれる。
これが正解です。
障害児入所支援は福祉型と医療型があり,そのうちの医療型障害児入所施設は児童福祉法と医療法に基づいてサービスが提供されています。
医療法に基づき治療を実施するので,病院として診療報酬が設定されています。「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」の知識が必要な選択肢です。
5 特定機能病院入院基本料で算定される病棟には,特定機能病院の療養病棟が含まれる。
これも間違いです。
先述のように,特定機能病院は,一般病棟,結核病棟,精神病棟が含まれます。療養病棟は含まれていません。
<今日の一言>
今日の問題は,今後の出題を示唆するようなものとなっています。
というのは,社会福祉士には,既にある法制度に基づくものだけでなく,制度をまたがるような多問題を抱えるクライエントへの対応が求められるからです。
とはいうもの,基本は既制度をしっかり押さえることです。
法制度が縦割りになる理由は,法の適用対象を明確にしなければ,法を適用できないからです。
今まで見てきたように,難しい問題も存在します。
今日の問題も難しい部類に入るものかもしれません。
なぜなら,1つの科目の知識で完結するものではなく,ほかの科目にまたがった知識が問われるからです。
それでは今日の問題です。
第30回・問題71 診療報酬に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 一般病棟入院基本料で算定される一般病棟には,療養病床の病棟が含まれる。
2 有床診療所入院基本料で算定される有床診療所には,20人の患者を入院させる医療施設が含まれる。
3 地域包括ケア病棟入院料で算定される病院には,特定機能病院が含まれる。
4 障害者施設等入院基本料で算定される障害者施設等には,医療型障害児入所施設が含まれる。
5 特定機能病院入院基本料で算定される病棟には,特定機能病院の療養病棟が含まれる。
次回から,医療法に規定される医療提供施設を取り上げていきますが,この問題ではそれと絡めて出題されています。
この問題が難しくなっているのは,過去問の知識では正解を導くことはできないからです。
また,「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」で学ぶ知識が必要であるということもあります。
しかし,落ち着けば決して答えられないものではありません。
ただし,「入院基本料って何?」「分からない」と思ってしまうと,迷いの森に入り込みますので注意が必要です。
そこさえ気をつければ,勉強をしっかりしてきた人なら,問題の多くには正解できる仕掛けがなされています。
なお,入院基本料とは,医学的管理,看護,寝具類等の基本的な入院医療体制を評価した診療報酬です。
それでは解説です。
1 一般病棟入院基本料で算定される一般病棟には,療養病床の病棟が含まれる。
これは間違いです。
入院基本料は,以下のように体型づけられています。
<病院>
・一般病棟入院基本料
・療養病棟入院基本料
・結核病棟入院基本料
・精神病棟入院基本料
・特定機能病院(一般病棟,結核病棟,精神病棟)入院基本料
・専門病院入院基本料
・障害者施設等入院基本料
<有床診療所>
・有床診療所入院基本料
・有床診療所療養病床入院基本料
このように,一般病棟と療養病棟の入院基本料は別になっています。
入院基本料って何? と思うとまったく分からなくなってしまいますが,一般病棟と療養病棟は,看護師の配置数などが大きく違うので,一緒のものではないと見当をつけることができるでしょう。
話は逸れますが,1980年代後半の第1次医療法改正によって,病床数の規制が行われました。規制が始まる前は自由開業制がとられていました。そのため,規制が行われる前に,いわゆる「駆け込み増床」が行われました。その結果発生したのは看護師不足という問題です。そこで,看護師が確保できない病院は,介護力強化病院(その後の療養型病床群,現在の療養病床に続くもの)に移行した医療機関もあります。
駆け込み増床した病院やその時期に開設した病院は,30年以上が経過し,現在はちょうど建て替えの時期に差し掛かっています。近年建て替えられた病院は,駆け込み増床の時期に建てられたものが多いはずです。
2 有床診療所入院基本料で算定される有床診療所には,20人の患者を入院させる医療施設が含まれる。
これも間違いです。
医療法では,病床数が20床以上の医療機関を病院,病床がない,あるいは20床未満の医療機関を診療所と分けています。過去に何度も出題されています。しっかり覚えておきましょう。
入院基本料は知らなくても,病院と診療所の違いが分かっていれば,消去できたことでしょう。
3 地域包括ケア病棟入院料で算定される病院には,特定機能病院が含まれる。
これも間違いです。
特定機能病院には,一般病床,結核病棟,精神病棟があり,地域包括ケア病棟入院料は,特定機能病院は含まれないものとなっています。
診療報酬で地域包括ケア病棟の条件(現時点)としては,「看護職員配置13対1」「在宅復帰に係る職員1名の専任」「理学療法士等のリハスタッフ1名の専従配置」があります。これらの条件があることを知っておけば,特定機能病院ではなさそうな感じがするでしょう。
4 障害者施設等入院基本料で算定される障害者施設等には,医療型障害児入所施設が含まれる。
これが正解です。
障害児入所支援は福祉型と医療型があり,そのうちの医療型障害児入所施設は児童福祉法と医療法に基づいてサービスが提供されています。
医療法に基づき治療を実施するので,病院として診療報酬が設定されています。「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」の知識が必要な選択肢です。
5 特定機能病院入院基本料で算定される病棟には,特定機能病院の療養病棟が含まれる。
これも間違いです。
先述のように,特定機能病院は,一般病棟,結核病棟,精神病棟が含まれます。療養病棟は含まれていません。
<今日の一言>
今日の問題は,今後の出題を示唆するようなものとなっています。
というのは,社会福祉士には,既にある法制度に基づくものだけでなく,制度をまたがるような多問題を抱えるクライエントへの対応が求められるからです。
とはいうもの,基本は既制度をしっかり押さえることです。
法制度が縦割りになる理由は,法の適用対象を明確にしなければ,法を適用できないからです。
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