今回も医療施設を続けます。
それでは早速今日の問題です。
第30回・問題72 医療施設に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 特定機能病院は,300床以上の病床を有し,かつ高度の医療を提供する病院である。
2 地域医療支援病院は,その所在地の市町村長の承認を得て救急医療を提供する病院である。
3 在宅療養支援病院は,在宅での療養を行う患者が緊急時を除いて入院できる病床を確保する病院である。
4 在宅療養支援診療所は,在宅医療を担当する常勤の医師を配置し,地域で在宅医療を提供する診療所である。
5 有床診療所は,地域の患者が48時間以内に退院できるように努める義務を負う診療所である。
前回の反省のためなのか,それほど難易度は高くない問題かもしれません。
そんなところが過去最高の合格基準点になった理由なのかもしれません。
それでは解説です。
1 特定機能病院は,300床以上の病床を有し,かつ高度の医療を提供する病院である。
これは間違いです。
前回は,地域医療支援病院の病床数が100床(間違い。正しくは200床)以上が承認要件であると出題されていましたね。
今回は,特定機能病院は300床以上と出題されました。正しくは400床以上です。
2 地域医療支援病院は,その所在地の市町村長の承認を得て救急医療を提供する病院である。
これも間違いです。
地域医療支援病院は,都道府県知事が承認します。
市町村は医療に関してはほとんど出番がありません。
3 在宅療養支援病院は,在宅での療養を行う患者が緊急時を除いて入院できる病床を確保する病院である。
これも間違いです。
ひどい問題だと思いませんか?
緊急時に入院できなかったら,いつ入院するのでしょう?
緊急時に入院できる病床を確保しておく必要があります。
在宅療養支援診療所の場合も,地域の病院と連携して,入院できる体制を確保しておく必要があります。
4 在宅療養支援診療所は,在宅医療を担当する常勤の医師を配置し,地域で在宅医療を提供する診療所である。
これが正解です。
前回の解説で述べたようで,配置する医師の数は要件には含まれていません。
「地域で在宅医療を提供する」の具体的内容は,24時間の往診と訪問看護を提供できる体制,緊急時には入院できる体制の確保です。
5 有床診療所は,地域の患者が48時間以内に退院できるように努める義務を負う診療所である。
これは間違いです。
有床診療所は,20床未満の病床数を有する診療所です。
<覚え方のヒント(コツ)>
基本ポイント ➡ 2つある場合は,どちらかを基準にして覚える。
(例)
地域医療支援病院と特定機能病院の承認要件
「地域医療支援病院は,地域医療の中核的医療機関である」を押さえる。
病床数は200床以上。
承認は都道府県知事。※基礎的自治体は市町村だが,市町村には医療に関する役割はほとんどないので,市町村町が承認することは考えられない。
これを発展させて,特定機能病院を覚える。
病床数は,地域医療支援病院の2倍(つまり400床以上)。
承認は,厚生労働大臣(つまり都道府県知事ではない)。
記憶力に自信のある人なら,1つひとつを覚えても良いと思います。
しかし,国試会場で記憶があいまいになり,答えを間違わないように,基準になるもの(この場合は地域医療支援病院)を定めて,それを覚えると良いです。
これはすべての領域に共通の覚え方のコツです。
工夫次第で,記憶力は高まります。
別な言い方をすると「覚えるのが上手な人は,覚えるコツを知っている人」と言えます。
覚えるのが苦手な人は,おそらく昔から苦手だったと思います。
覚えられないのを「脳の機能低下」を理由にするのは簡単です。
しかし覚え方の工夫次第で,記憶力はいくらでも高まります。
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