今回は,地域保健法に規定される保健所業務を取り上げたいと思います。
地域保健法は,昭和12年(1937年)に保健所法として成立したものを,平成6年(1994年)に改正した際に名称を変更したものです。
かつての日本では感染症による死亡が最も多かった時代が続きました。
今となってはちょっと驚きですが,子どもが病気になったら,医者を呼ぶのではなく,祈祷師を呼ぶ,といった風習も残っていた時代があります。
戦後GHQの政策により,昭和22年(1947年)に同法を改正して,保健所が公衆衛生第一線機関として位置づけされます。
またまたびっくりですが,この改正前は,食品衛生は警察の仕事だったのです。この改正で保健所業務となりました。
また別の機会に紹介することもあるかもしれませんが,この時以降,保健所に医療ソーシャルワーカー(医療社会事業員)が配置されていきます。
医療ソーシャルワーカーが保健所に配置された理由は,病気になった人及びその家族への相談業務を行うためです。保健所で医療が必要だと認められた人であっても,医療を受けたがらない人は大勢いました。医療を受けるためにはお金がかかるためです。
つまり保健所の相談業務は,経済的不安に対応するものでした。
保健所が実施している事業には,対人保健分野と対物保健分野があります。
そのうちの対物保健分野は食品衛生に関するものなので,社会福祉士の国家試験にはあまり関係ないので,重要なのは対人保健分野となります。ただし,食品衛生に関しては,食中毒に関する知識が問われます。
<対人保健分野>
感染症等対策
健康診断,患者発生の報告等
結核の定期外健康診断,予防接種,訪問指導,管理検診等
エイズ・難病対策
エイズ個別カウンセリング事業(無料匿名検査を含む),エイズ相談
難病医療相談等
精神保健対策
精神保健に関する現状把握,精神保健福祉相談,精神保健訪問指導,医療・保護に関する事務等
母子保健対策
未熟児に対する訪問指導,養育医療の給付等
これらを押さえたところで今日の問題です。
第29回・問題72 保健所に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 保健所が行うメンタルヘルスの相談では,精神障害者保健福祉手帳所持者は対象外である。
2 保健所における対人保健分野の業務として,エイズに関する個別カウンセリング事業がある。
3 保健所は,「感染症法」に基づき結核患者の発生届を受理した場合には,治療に当たることが義務づけられている。
4 都道府県が設置する保健所の所管区域は,医療法に規定する三次医療圏と一致する。
5 保健所は,母子保健法に基づき母子健康手帳を交付する。
(注) 「感染症法」とは,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」のことである。
保健所の業務が一問丸ごと出題されたのは,第6回国試以来です。
しかし,問題の難易度で言えば,「中くらい」といったところでしょうか。
それでは解説です。
1 保健所が行うメンタルヘルスの相談では,精神障害者保健福祉手帳所持者は対象外である。
これは間違いです。
保健所は広く国民を対象とします。精神障害者保健福祉手帳所持者ももちろん対象としますが,むしろ所持していない人の方がメンタルヘルスの面では重要でしょう。
2 保健所における対人保健分野の業務として,エイズに関する個別カウンセリング事業がある。
これが正解です。保健所では無料匿名検査を含むエイズ個別カウンセリングを行っています。
3 保健所は,「感染症法」に基づき結核患者の発生届を受理した場合には,治療に当たることが義務づけられている。
これは間違いです。
保健所にも治療機能はもちますが,義務付けはありません。治療は専門機関に任せれば良いからです。それよりも重要なのは訪問指導などです。
4 都道府県が設置する保健所の所管区域は,医療法に規定する三次医療圏と一致する。
これも間違いです。
この問題の難易度が少し高くなっている理由は,この選択肢があるからです。
医療圏が分かっていないと判断できないからです。
医療圏は基本的には以下のように分かれます。
一次医療圏 市町村
二次医療圏 都道府県をいくつかに分けたもの
三次医療圏 基本的には都道府県
保健所の所管区域はこのうちの二次医療圏に重なります。
二次医療圏は,介護保険法が規定する老人福祉圏域とも重なります。
5 保健所は,母子保健法に基づき母子健康手帳を交付する。
これも間違いです。
保健所の業務には,母子保健法に基づく母子保健業務を行っていますが,それは未熟児に対するものです。
母子保健手帳の交付は市町村の業務です。
<今日の一言>
今日の問題にも,前回述べた覚えるコツの一つである
制度間に共通するものを見つけ出すこと。
の要素が含まれています。
手帳類の交付についてです。
母子健康手帳は,妊娠を届け出たものに対して交付します。交付には高度な判断は求められません。そのため市町村の業務となります。健康手帳も同様です。
それに対して,身体障害者手帳,療育手帳,精神障害者保健福祉手帳は,障害の程度の判断が必要です。そのため,交付は都道府県となります。
高度な判断が必要なのに市町村が交付するものには介護保険証,障害福祉サービス受給者証があります。これらは例外事項です。
こういったものを整理して覚えていけば,得点力は格段に上がっていくことでしょう。
国試受験の日まで頑張り抜きましょう!!
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