根幹とは,制度の仕組みそのものです。
その先の先,またその先に診療報酬の加算があります。それが枝葉です。
根幹の部分を整理しましょう。
診療報酬は,厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)に諮問して,厚生労働大臣が決定します。
金額は,点数表に1点10円で示され,地域差,保険者によって違いはなく,全国どこの医療機関を受診しても共通です。
診療報酬の支払い方式には,出来高払い方式と包括払い方式があります。
出来高払い方式は,診療を受けた分を積み上げてその合算額を支払うものです。外来診療及び急性期医療(DPC方式ではないもの)に対して,出来高払い方式が採用されています。
包括払い方式は,病気ごとに決められた金額のみを支払うものです。診療の回数などが多くても少なくても支払われる金額は変わりません。療養型及び急性期医療のDPC制度の入院に対して,包括払い方式が採用されています。
日本の医療保障は社会保険制度が採用されています。
社会保険の給付方法には,償還払い方式と代理受領方式があります。
償還払い方式は,社会保険の被保険者が,窓口で全額を支払い,そのあとで保険者に申請することで,社会保険料分が被保険者に給付されるものです。フランスがこの方式を採用しています。
代理受領方式は,被保険者は窓口で個人負担分のみを支払い,事業所(医療機関など)が保険者に請求して,保険者が事業所に社会保険料分を給付するものです。
診療報酬の審査及び支払い権限は保険者にあります。しかしそれでは保険者の事務は大変なので,健康保険の場合は社会保険診療報酬支払基金,国民健康保険の場合は国民健康保険団体連合会(国保連)に委託しています。しかし権限はあくまでも保険者にあります。それぞれは委託されているだけです。
それでは今日の問題です。
第26回・問題72 我が国の診療報酬制度に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 診療報酬の改定は,中央社会保険医療協議会の答申を経て行われる。
2 診療報酬の審査・支払権限は,健康保険組合等の保険者にある。
3 外来診療報酬については,1日当たり包括払い制度がとられている。
4 診療報酬は,健康保険と国民健康保険では異なった内容となっている。
5 診療報酬点数表において,1点単価は1円とされている。
もし答えが分からなければ,前説をもう一度確認してみましょう。
それでは,解説です。正解は2つですから注意が必要です。
1 診療報酬の改定は,中央社会保険医療協議会の答申を経て行われる。
これは正解です。
改定は中医協に諮問して,その答申を経て厚生労働大臣が決定します。決定するのは厚生労働大臣なので注意が必要です。
2 診療報酬の審査・支払権限は,健康保険組合等の保険者にある。
これも正解です。
審査・支払いの権限は保険者がもっています。実際には審査支払機関に委託していますが,権限があるのは保険者です。これは介護保険も同様です。
3 外来診療報酬については,1日当たり包括払い制度がとられている。
これは間違いです。
外来は,出来高払い方式が採用されています。包括払い方式があるのは入院の診療報酬です。
外来で包括払い方式がされると必要な検査などが受けられなくなってしまうおそれがあるため,外来に包括払い方式は絶対に採用されることはないでしょう。
4 診療報酬は,健康保険と国民健康保険では異なった内容となっている。
これも間違いです。
診療報酬は,保険者による違いはありません。また病院,診療所でも共通です。
5 診療報酬点数表において,1点単価は1円とされている。
これも間違いです。
診療報酬の点数は,1点10円です。介護報酬のように地域差はなく,全国共通です。
<今日の一言>
数年で変わってしまう加算と違って,根幹にかかわるものは,骨太であることが分かるでしょう。
本当に覚えなければならないのは,このような制度そのものにかかわるものです。
最新の法制度を覚えないとならない
そのために参考書は最新のものではないとならない
といったことを言う人がいます。
根幹にかかわるものは,最新の制度改正も出題されることはあるかもしれませんが,根幹にかかわらないような制度改正はほとんど出題されません。
出題されたとしても正解選択肢にはなり得ないでしょう。そうすると正解率の低下を招くからです。
制度改正の根幹とは,例えば社会保険の場合は,保険者や被保険者に変更があることなどです。
現場にいると,制度改正があるたびにその対応に追われることでしょう。
しかし,社会福祉士の国試においては,制度改正に振り回される必要はありません。
ひたすら根幹を覚えていくのみです。
制度を知らなければ仕事ができない介護支援専門員などとは違うのです。