今回も医療施設に取り組んでいきます。
まず前々回と前回のものの復習をしましょう。
それでは今日の問題です。少しひねりが入っているので,難易度は高いです。
第29回・問題71 医療機関の基準に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 特定機能病院は,都道府県知事の承認を受けることとされている。
2 地域医療支援病院は,100床以上の病床を有することとされている。
3 診療所は,最大20人の患者を入院させる施設であることとされている。
4 在宅療養支援病院は,在宅医療の担当医師を1名以上配置することとされている。
5 在宅療養支援診療所は,24時間,往診が可能な体制を確保することとされている。
この時,初めて在宅療養支援病院(診療所)が出題されました。
地域包括ケアシステムを構築するためには極めて重要な医療機関です。
それでは解説です。
1 特定機能病院は,都道府県知事の承認を受けることとされている。
これは間違いです。特定機能病院が承認を受けるのは,厚生労働大臣です。都道府県知事の承認を受けるのは,地域医療支援病院です。
「地域」という言葉から都道府県である,というイメージをつくりましょう。
「地域」といっても市町村ではありません。
医療に関しては市町村の役割はほとんどないのです。
今は「無医村」はなくなったと思いますが,昭和30年代には無医村が存在していたのです。
もしかすると村だけではなく小さな町にも無医町というものがあったかもしれません。そんなことを考えると市町村の役割で医療に関するものはほとんどないのは何となく納得できるのではないでしょうか。
2 地域医療支援病院は,100床以上の病床を有することとされている。
これも間違いです。
地域医療支援病院の承認要件は,200床以上です。都会では500床を超えるような医療施設も承認されています。
100床は病院としては小規模です。
中規模と言えるのは,200床を超える病床を持つ医療施設です。そのくらいの規模があって初めて,地域の中核になる病院となり得るのでしょう。
調べてみると分かりますが,実際に承認されているのは,200床よりももっと大きな病院です。
3 診療所は,最大20人の患者を入院させる施設であることとされている。
これも間違いです。診療所20床未満です。20床以上は病院です。
ここまでの選択肢は過去問の知識で順調に消去できるでしょう。
4 在宅療養支援病院は,在宅医療の担当医師を1名以上配置することとされている。
この問題の難易度が高いのは,初めて出題されるものが2つあり,そのうち一つは間違い,そのうち一つは正解であるからです。
これは答えが分からないので,冷静に△をつけておきましょう。
ここで慌てると絶対に良い結果にはなりません。
「分からない」「ええ~い,これを選んでしまえ~」と思うとだめです。
冷静に△をつけます。
5 在宅療養支援診療所は,24時間,往診が可能な体制を確保することとされている。
これも分かりません。
冷静に△をつけておきましょう。
2つまで絞り込めたという状況です。
結果から言えば,この問題は解けても解けなくても良い問題に分類されます。
このブログを毎回読んでくれている,あるいは前々回のものを読んでくれた人は正解できると思いますが,国試が実施された時点では,かなり難しかったのです。
この時点で,選択肢の1・2・3を正解に選んでしまった人は,ちょっと問題ありです。勉強不足か,そうでなければかなりのおっちょこちょいの人です。
過去問は解けるのに,本試験は解けないという問題はたくさんあります。
そういった問題をある程度入れておかなければ,第30回国試のように合格基準点が99点になるといったおかしなことが起きてしまいます。
それでは残った2つを並べてみましょう。
4 在宅療養支援病院は,在宅医療の担当医師を1名以上配置することとされている。
5 在宅療養支援診療所は,24時間,往診が可能な体制を確保することとされている。
この問題が難しいのは,この2つ以外の選択肢も同じような文章で構成されていることも影響しています。表現をそろえるのは,これからも続くと思います。それは覚悟しておきましょう。
それはさておき・・・
2つのうち,どちらかは正解です。
ここまで迷う問題はめったにありません。
在宅医療の担当医師の配置を1名以上
24時間の往診体制
どちらも正解っぽいですね。
このうち,どちらが現実的に重要なのかを考えた時,24時間の往診体制は欠かせないと思います。
もしこれが間違いであったなら,24時間の往診ではなく,18時間とか12時間ということになることでしょう。それは困ります。そう思えれば,選択肢5を正解だと思えるでしょう。
正解は選択肢5でした。
<今日の一言>
この国試の時は,実は選択肢4は,配置数は2名以上ではないか,と思って消去したのです。
答えは,選択肢5で正解だったのですが,選択肢4が間違いだった理由は,在宅医療の担当医師の配置数は要件に入っていない,ということでした。知ってビックリでした。
在宅療養支援病院(診療所)の要件は,常勤の医師の配置です。
一人では24時間の往診ができなければ,複数を配置しなければなりません。配置については,自分たちで考えなさい,ということなのなのかもしれません。
3人以上配置されれば,診療報酬は高くなります。
最後におまけです。他に必要な要件があります。それは24時間の往診と訪問看護ができる体制です。
訪問看護は自ら提供せずとも訪問看護ステーションと連携が取れていればよいとされています。また緊急入院できることも必要です。診療所の場合は病院と連携して確保することが必要です。
在宅療養支援病院(診療所)の要件としての24時間の往診及び訪問看護ができる体制は,在宅療養を安心して送るために極めて重要なものです。
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