2018年11月12日月曜日

医療計画の徹底理解~医療に関するものは都道府県の役割

今回は,医療計画を取り上げます。

医療計画は,1985(昭和60)年の第一次医療法改正によって,都道府県に策定を義務付けられました。

その当時の医療計画では,医療圏を設けて必要な病床数を設定しました。

その理由は,医療施設の地域格差があり,その是正を目指すものだったからです。これにより,現在も病床規制が行われています。

現在では,このほかに

<5疾患>
・がん
・脳卒中
・心筋梗塞等の心疾患
・糖尿病
・精神疾患

<5事業>
・救急医療
・災害時における医療
・へき地の医療
・周産期医療
・小児医療(小児救急医療を含む。)

の達成目標

ほかに在宅医療の確保医療従事者の確保など医療計画で定めるものは多岐にわたります。

これらから医療計画は市町村が策定するものではないということが分かることでしょう。

それでは今日の問題です。

第27回・問題73 医療計画に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 医療計画の策定主体は,都道府県である。

2 現行の医療計画では,精神医療についての記述は求められていない。

3 現行の医療計画では,在宅医療についての記述は求められていない。

4 医療計画における病床規制は,規制改革の中で撤廃された。

5 医療計画における二次医療圏は,地域包括ケアの圏域である日常生活圏とほぼ同様に想定されている。

国家試験では,消去法によって答えをあぶり出す必要がある問題が多いですが,この問題は,消去法ではなく,答えがすぐ分かるものだと思います。

それでは解説です。


1 医療計画の策定主体は,都道府県である。

これが正解です。医療計画は都道府県に策定義務があります。


2 現行の医療計画では,精神医療についての記述は求められていない。

これは間違いです。5疾患の中には精神疾患が含まれています。

設問に「現行の」という但し書きがついているのは,精神疾患が加わったのは2012年の法改正の時だからです。


3 現行の医療計画では,在宅医療についての記述は求められていない。

これも間違いです。医療計画に定める内容として,

居宅等における医療の確保に係る医療連携体制(医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を確保するための体制をいう)に関する事項

とされています。

これも「現行の」という但し書きがついているのは,2015年の法改正で加わったものだからです。


4 医療計画における病床規制は,規制改革の中で撤廃された。

これも間違いです。

病床規制は,第一次医療法改正の時から現在まで一貫して行われています。


5 医療計画における二次医療圏は,地域包括ケアの圏域である日常生活圏とほぼ同様に想定されている。

これも間違いです。

前説では触れていませんでしたが,医療圏には,一次医療圏,二次医療圏,三次医療圏があります。

そのうち,二次医療圏は,都道府県介護保険事業支援計画で設定される老人福祉圏域とほぼ一緒です。

都道府県を必要に応じて,いくつかの圏域に分けています。

三次医療圏は,北海道と長野が複数になっていますが,基本的に都道府県単位です。

日常生活圏域は,市町村介護保険事業計画で設定されるものです。市町村をさらに生活圏域で分けます。

一次医療圏は,基本的に市町村を単位としています。介護保険法の老人福祉圏域,日常生活圏域,いずれとも重なりません。


<今日の一言>

医療計画は,福祉行財政と福祉計画でしっかり押さえることになりますが,2018年から策定期間が,5年から6年に変更されています。

そして3年ごとに見直すことになっています。
この変更は極めて重要です。しっかり押さえておきましょう。

この変更は,2025年に向けた地域包括ケアシステム構築の一環で,医療介護総合確保推進法の都道府県計画,介護保険法の介護保険事業支援計画と「整合性」を図るためのものです。

2018年は,さまざまなものが重なった年なので,これに合わせてそろえたのです。

整合性で結ばれているのは,この3つしかありません。


<覚え方のヒント>

医療に関して,市町村の役割は,ほとんどありません。

現在は,無医村はないかもしれません。しかし規模の小さい自治体では,医療機関は村立診療所のたった一つだけというところもあるでしょう。

そういった市町村を支援するのが都道府県の役割です。こんなところから,医療に関するものは,市町村ではなく,都道府県の役割になるものが多いと覚えましょう。。


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