今まで3回にわたり,医療ソーシャルワーカー業務指針について取り上げてきましたが,今回が最終回です。
今一度,業務指針の「受診・受療援助」を確認しておきましょう。
(4) 受診・受療援助
入院,入院外を問わず,患者やその家族等に対する次のような受診,受療の援助を行う。
① 生活と傷病の状況に適切に対応した医療の受け方,病院・診療所の機能等の情報提供等を行うこと。
② 診断,治療を拒否するなど医師等の医療上の指導を受け入れない場合に,その理由となっている心理的・社会的問題について情報を収集し,問題の解決を援助すること。
③ 診断,治療内容に関する不安がある場合に,患者,家族の心理的・社会的状況を踏まえて,その理解を援助すること。
④ 心理的・社会的原因で症状の出る患者について情報を収集し,医師等へ提供するとともに,人間関係の調整,社会資源の活用等による問題の解決を援助すること。
⑤ 入退院・入退所の判定に関する委員会が設けられている場合には,これに参加し,経済的,心理的・社会的観点から必要な情報の提供を行うこと。
⑥ その他診療に参考となる情報を収集し,医師,看護師等へ提供すること。
⑦ 通所リハビリテーション等の支援,集団療法のためのアルコール依存症者の会等の育成,支援を行うこと。
「受診・受療援助」以外は,https://fukufuku21.blogspot.com/2018/11/blog-post_23.html でご確認ください。
それでは今日の問題です。
第28回・問題75 救急医療の場面において,医療ソーシャルワーカーが医療ソーシャルワーカー業務指針にのっとって行う業務に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 患者の身元が不明な場合には,警察に通報する義務がある。
2 患者が医療費の支払いに困窮している場合には,福祉,保険等関係諸制度を活用できるように援助する。
3 患者が医療上の指導を受け入れない場合には,その理由となっている心理的・社会的問題の解決に向けて援助を行う。
4 継続治療が必要な場合には,同一病院での入院を推奨する。
5 家族が混乱している場合には,治療内容を説明する。
(注) 医療ソーシャルワーカー業務指針は,平成14年11月29日に改定されたものである。(厚生労働省健康局長通知)
業務指針の内容がそのまま正解選択肢になっているので,答えはすぐ分かるかもしれません。
「業務指針に沿った」という条件がなくても,医療ソーシャルワーカーはソーシャルワーカーなので「相談援助」が決め手です。
その視点が大切です。
このようなタイプの問題が出題される理由の一つには,医療ソーシャルワーカーは,社会福祉士の資格が創設されてからしばらくは実務経験として認められてこなかったこともあるように思います。
今となっては驚きですね。
それでは解説です。
1 患者の身元が不明な場合には,警察に通報する義務がある。
これは間違いです。
業務指針に,相談援助に関係しないものが含まれるはずがありません。このような義務はもちろんありません。
2 患者が医療費の支払いに困窮している場合には,福祉,保険等関係諸制度を活用できるように援助する。
これは正解です。先日紹介した「新らしい保健所」の映像の中にも,このような内容のことが紹介されていましたね。
3 患者が医療上の指導を受け入れない場合には,その理由となっている心理的・社会的問題の解決に向けて援助を行う。
これも正解です。「受診・受療援助」そのものです。
4 継続治療が必要な場合には,同一病院での入院を推奨する。
これは間違いです。
地域完結型医療の時代,これはあり得ないでしょう。
5 家族が混乱している場合には,治療内容を説明する。
これも間違いです。
医療そのものは医療ソーシャルワーカーの役割ではありません。
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