2018年11月2日金曜日

診療報酬制度の徹底理解~その4

今回も診療報酬制度を取り上げます。

最初に取り上げる問題は,MSW以外は最も難しい問題だったのはないかと思います。

この解説はしません。このような出題はもうされないだろうという参考のために紹介します。


第24回・問題69 事例を読んで,地域連携に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

〔事例〕
 Gさん(70歳,女性)は,脳梗塞により左片麻痺を発症し,R急性期病院で入院加療の後,脳卒中地域連携クリティカルパスによりS回復期リハビリテーション病院へ転院した。そこで約100日間のリハビリテーションを受け,退院前に要介護3の認定を受けて自宅退院することとなった。Gさんは退院後もリハビリテーションの継続を希望しており,S病院はT介護支援事業所と連携し,退院調整を行うことを検討している。

1 地域連携クリティカルパスを用いる場合は,どの保険医療機関も「地域連携診療計画管理料」を算定できる。

2 R病院がGさんの同意を得て地域連携診療計画を作成し,S病院に情報を提供した場合には,R病院は「地域連携診療計画退院時指導料」を算定できる。

3 T事業所の介護支援専門員が,退院後のGさんのケアプランを策定するためにS病院へ出向いで情報収集をした場合には,T事業所は「医療連携加算」を算定できる。

4 S病院の社会福祉士等が,T事業所の介護支援専門員と共同して利用可能なサービスなどについてGさんに説明,指導を行った場合には,S病院は「介護支援連携指導料」を算定できる。

5 T事業所の介護支援専門員が,退院後3か月間医療保険と介護保険によるリハビリテーションを受けられるようにケアプランを策定した場合には,S病院は「地域連携診療計画管理料」を算定できる。


地域連携に関する出題になっていますが,内容は診療報酬となっています。

地域連携診療計画管理料
地域連携診療計画退院時指導料
医療連携加算
介護支援連携指導料

が出題されています。これらは今どうなっているのか,調べる気にもなりません。

この時の正解は,選択肢4でした。

介護支援連携指導料は,現在は介護支援等連携指導料となっています。

この問題は,かなり正解率が低かったのではないかと思います。

その後,同じようなタイプの問題は二度と出題されていません。
試験センターが蓄積している膨大なデータの中で,正解率が極端に低くなるタイプの問題として,この問題が認識されたと考えてよいと思います。


それでは,本当の今日の問題です。

第28回・問題72 日本の診療報酬制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 DPC対象病院の入院医療にかかる費用は,包括医療費支払い制度が適用される。

2 訪問看護にかかる費用は,居宅サービス計画に基づく利用であっても,医療保険から支払われる。

3 在宅医療の往診では,患家の求めにかかわらず医師の判断に基づき行った場合であっても,往診料を請求できる。

4 療養病床の入院基本料は,出来高払い方式によって診療報酬が算定される。

5 退院調整加算を請求できる病院の施設基準の中では,退院に係る調整部門の設置と理学療法士又は作業療法士の配置が定められている。

加算は,選択肢5の「退院調整加算」だけです。これは現在「入退院支援加算」と変わっています。

それでは解説です。


1 DPC対象病院の入院医療にかかる費用は,包括医療費支払い制度が適用される。

これが正解です。

実は,第25回に「DPC制度(DPC/PDPS)は,入院1件当たり診療報酬包括支払制度である」と出題されています。この出題がなければ,この問題の正解率も下がったことでしょう。

しかし,この出題があったおかげで,参考書にはDPC制度の説明が記載され,勉強した人は正解できたはずです。

DPC制度は,病気によって決められた診療報酬が支払われる包括支払制度です。

手術が下手な医師は傷口が大きくなります。手術が上手な医師は傷口が小さいので治りが早くなります。下手な方は処置が多く必要となり,その分儲かるというのはおかしな話です。医療費適正化のための制度がDPCということになります。


2 訪問看護にかかる費用は,居宅サービス計画に基づく利用であっても,医療保険から支払われる。

これは間違いです。

訪問看護は医療保険でも介護保険でも使えるサービスです。居宅サービス計画は介護支援専門員が作成する介護保険法に基づくものです。居宅サービス計画は介護保険ですから,介護保険から介護報酬が支払われます。


3 在宅医療の往診では,患家の求めにかかわらず医師の判断に基づき行った場合であっても,往診料を請求できる。

これも間違いです。

往診料を請求できるのは,患家の求めに応じて行った場合のみです。医師が勝手に来て,往診料を請求されたらたまったものではありません。


4 療養病床の入院基本料は,出来高払い方式によって診療報酬が算定される。

これも間違いです。

出来高払い方式と包括払い方式は,旧カリの時代,つまりまだ「保健医療サービス」という科目がなかったころから繰り返し出題されてきたものです。

療養病床は廃止されますが,診療報酬は包括払い方式です。いわゆる老人病院が「介護力強化病院」という名称になった1990年代に包括払い方式が導入され,今日に至っています。


5 退院調整加算を請求できる病院の施設基準の中では,退院に係る調整部門の設置と理学療法士又は作業療法士の配置が定められている。

これも間違いです。

退院調整加算は,現在は入退院支援加算と名称が変わっていますが,配置されるのは,看護師と社会福祉士です。これについては,第23回にも同様に

「診療報酬の入退院支援加算の施設基準には,退院支援に関する経験を有する専従の看護師又は介護支援専門員が1名以上配置されていること,と規定されている」と出題されています。


<今日の一言>

今日の最初の問題は,布石を打つこともなく出題されて,受験した人を混乱させたことでしょう。

その結果,2問めのような出題になりました。

退院調整加算は,社会福祉士の配置が初めて診療報酬で評価されたものなので,極めて重要な意味を持ちます。しかし丸ごと加算等が出題されることはもうないでしょう。

トピックを追っかけると,その分,情報はあっと言う間に古くなります。間違い選択肢の一つとして組み込むことは適切だと思いますが,正解選択肢に配置されるのは適切とは言えません。

正解選択肢は,試験委員の思いが込められている重要なものです。

しかし試験委員の思いだけではなく,それが正解選択肢になるだけの説得力を持っていることが大切なのです。過去問を解く時は,そこを意識すると,格段に得点力は増すはずです。

今日の2つめの問題は,退院調整加算という重要なものを取り入れながら,DPCという診療報酬の支払い方式,つまり根幹を正解にしています。

加算等は枝葉である,と思う理由はここにあります。
受験者の6割程度が正解できるためには,枝葉を正解選択肢にしてはいけないのです。

正解選択肢になったものをずっと追っかけていくと

根幹とは何か

といったことが見えてきます。

文脈が見えることは,得点力を上げる大きな要素となります。

毎年「あと数点」で合格できそうなのに,合格できないでいる人は,文脈を読むことを心がけると良いと思います。

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