2018年11月1日木曜日

診療報酬制度の徹底理解~その3

現在のカリキュラムでの国家試験は,第22回に始まりました。

現時点(2018年11月)までに,9回実施されていることになります。

「保健医療サービス」は,現行カリキュラムで加わったものです。

つまり9回出題されていることになります。

最初の頃は,どのような出題が適切なのかが図り切れなかったように思います。

チームfukufuku21が考える適切な問題というのは,受験者のうち6割程度が解ける問題です。

もちろん150問のうち,実際の正解率にはばらつきは出るでしょう。9割が解ける問題や2割が解ける問題もあるはずです。

全体で6割程度であれば良いのですが,科目全体で低い正解率になると,いわゆる0点科目になってしまう受験者が続出してしまいます。
そのため,できるだけ科目の中でも正解率を平均6割程度に収める必要があります。
全体で6割程度の正解率ばかりになると,合格率は6割くらいになってしまうのではないかと思う人もいるでしょう。

実際の合格率は25~30%の間です。

社会福祉振興・試験センター
http://www.sssc.or.jp/

この試験センターが国試を実施しているのですが,受験生がどのような点数を取ったのかといったデータは一切公表していません。

公表されているのは,受験者数,合格者数,合格基準点と合格率,合格者に占める年代別の割合,そして都道府県別合格者数のみです。

得点分布は分かりませんが,試験センターが蓄積しているデータによって,6割程度の難易度に設定すると合格率は25~30%の中に納まると考えて良いように思います。

つまり6割の正解率は受験者全体の平均なので,それ以上得点する受験生が半分,それ以下の得点である人が半分と考えられます。

その結果,6割の半分の3割の受験者が合格基準点を超えることになります。

社会調査の基礎で学ぶように,平均値は中央値と違い,いわゆる外れ値があると,平均値よりも高い人と平均値よりも低い人の数は同数にはなりません。
その結果として,合格率が上下すると考えられます。

さて,話を本題に戻します。

「保健医療サービス」は,現在の前のカリキュラムにはなかった科目です。

そのため,試験センターでは蓄積されたデータがなかったために,どのような出題がどのくらいの正解率になるのか図り切れなかったと考えられます。

その結果として難しい科目になったように思います。

それでなくても,医療ソーシャルワークをベースにする試験委員は張り切っているのです。自分の思うように問題は作られます。それらを組み合わせて試験センターは国試問題を作成します。

回数を重ねるうちに,正解率6割程度はどのような問題なのかを探り当てたのではないかと思います。

それでは今日の問題です。

第23回・問題65 診療報酬に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 診療報酬には,医科診療報酬・歯科診療報酬・調剤報酬がある。

2 診療報酬の算定に当たっては,実際に実施した医療行為ごとにそれぞれの項目に対応した点数を合算して算定しており,いわゆる包括払い方式と呼ばれている。 

3 診療報酬のがん患者カウンセリング料の施設基準には,緩和ケアの研修を修了した医師及び専任の社会福祉士がそれぞれ1名以上配置されていること,と規定されている。

4 診療報酬の慢性期病棟等退院調整加算の施設基準には,退院調整に関する経験を有する専従の看護師又は介護支援専門員が1名以上配置されていること,と規定されている。

5 通常の診療行為に加えて診療報酬に規定されていない医療行為を提供する場合,診療報酬に加えて保険医又は保険医療機関が自由に料金を設定したものを追加して,請求することができる。

これが加算が含まれた最初の出題です。

がん患者カウンセリング料は,その後,がん患者指導管理料となっています。

慢性期病棟等退院調整加算は,その後,退院調整加算,退院支援加算,入退院支援加算と名称を変えて現在に至ります。

診療報酬の具体的な内容は,すぐ使えない知識になることを意味します。

それでは解説です。


1 診療報酬には,医科診療報酬・歯科診療報酬・調剤報酬がある。

これが正解です。

しかし,これを正解にできる人はそんなに多くはなかったですです。


2 診療報酬の算定に当たっては,実際に実施した医療行為ごとにそれぞれの項目に対応した点数を合算して算定しており,いわゆる包括払い方式と呼ばれている。

これは間違いです。

保健医療サービスは,現行カリキュラムで加わった科目ですが,診療報酬自体の出題は,旧カリキュラム時代からあります。

包括払い方式は,診療の内容や回数にかわらず一定の金額を支払うものです。点数を合算して算定されるのは,出来高払い方式と呼ばれるものです。

包括払い方式は,当初は慢性期医療に導入されましたが,現在は急性期医療にも導入されています。ただし入院だけであり,外来診療には包括払い方式は導入されていません。なぜなら,それなら適切な検査等が行えなくなってしまうからです。


3 診療報酬のがん患者カウンセリング料の施設基準には,緩和ケアの研修を修了した医師及び専任の社会福祉士がそれぞれ1名以上配置されていること,と規定されている。

これも間違いです。

現在は,「がん患者指導管理料」と名称が変わっていますが,今も変わらないのは,社会福祉士は配置されないことです。配置されるのは医師と看護師です。

医療ソーシャルワーカーは,経済的な相談,入退院に関する支援等を行いますが,医療に関するものは,かかわりません。カウンセリングというと一見MSWの役割のように感じるかもしれませんが,MSWはカウンセリングの専門家ではありません。

カウンセリングというあいまいな名称だったために,おそらく指導料と名称を変えたのでしょう。


4 診療報酬の慢性期病棟等退院調整加算の施設基準には,退院調整に関する経験を有する専従の看護師又は介護支援専門員が1名以上配置されていること,と規定されている。

これも間違いです。慢性期病棟等退院調整加算の流れは,現在は入退院支援加算となっています。

カウンセリングと違って,入退院支援は,MSWの役割です。配置されるのは看護師又は社会福祉士ということになります。


5 通常の診療行為に加えて診療報酬に規定されていない医療行為を提供する場合,診療報酬に加えて保険医又は保険医療機関が自由に料金を設定したものを追加して,請求することができる。

これは間違いです。

診療には,保険適用されない自由診療がありますが,保険診療と組み合わせる,いわゆる「混合診療」は認められていません。そのために,現在は「保険外併用療養費」というものが設定されています。

これについては,また改めて説明したいと思います。


<今日の一言>

今日の正解は,

診療報酬には,医科診療報酬・歯科診療報酬・調剤報酬がある。

でした。

しかし,これを正解にできた人はそんなに多くはなかったように思います。

なぜなら,このように内容を列記したものには,間違った内容を含めることができるからです。

あるいは,本来のものを減らして出題することができます。

こういったことから,「何となく,違うかも・・・」と思ってしまう受験者心理が働きます。


<おまけ>

もう言い回しで不正解にするということは少ないと思います。

しかし,怪しい文章は,「●●●,●●●。そして●●●がある」というものであることを覚えておきましょう。

この場合注意して問題を見るときのポイントは,「そして」の後の部分です。そしての前はおそらく正しいものです。そしての後が正しければ正解になります。そこを重点的に注意しましょう。

最新の記事

子ども・子育て支援法

  子ども・子育て支援法は,これまでにも出題されてきましたが,正式に出題基準に含まれたのは,第37回国家試験です。 子ども・子育て支援制度は,市町村が実施主体になっています。 支給申請は,市町村に対して行います。 児童福祉法には,入所系があるので都道府県の役割がありますが,子ども...

過去一週間でよく読まれている記事