2018年11月27日火曜日

日本国憲法の出題ポイント~その1

今回から科目は,「権利擁護と成年後見制度」に移ります。

この科目は,旧カリキュラムの「法学」に変わって,現行カリキュラムで加わったものです。

法学時代はかなり難解な問題が出題されていたので,点数が取りにくい科目でした。

今でも難易度が高い科目であることには変わりはありませんが,その当時よりも取り組みやすいものになったと言えます。

今日のテーマは「日本国憲法」です。

この科目では「基本的人権」が多く出題されます。

基本的人権には,自由権,社会権,参政権,国務追求権があります。

自由権は歴史的にみると,フランス革命のスローガンである「自由,平等,博愛」に示されるように,国民が勝ち取った権利です。

社会権は,幸福な生活保障を要求する権利です。生存権などが社会権に含まれます。

生存権が規定されたのは,1919年のドイツのワイマール憲法が最初です。自由権よりも新しい権利です。日本国憲法第25条の生存権規定は,ワイマール憲法を参考にしたと言われています。


社会権は,外国人に適用されるものとされないものがあります。

それでは今日の問題です。


第29回・問題78 日本国憲法における社会権を具体化する立法の外国人への適用に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 労働基準法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。

2 労働者災害補償保険法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。

3 生活保護法は,就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されることはない。

4 国民年金法は,永住外国人に適用されることはない。


5 国民健康保険法は,永住外国人に適用されることはない。

(注) 「永住外国人」とは,特別永住者及び法務大臣による許可を得た永住資格者(一般永住者)のことである。


労働人口の減少を背景として,外国人労働者の受け入れが進んでいます。

そのため近年の国試では,外国人に関して出題されるようになってきました。

しっかり押さえておきたいところです。

それでは解説です。


1 労働基準法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。

これは間違いです。

労働基準法はすべての労働者に対して適用されるので,不法就労であっても適用されます。


2 労働者災害補償保険法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。

これも間違いです。

労災保険は労働者を雇用する事業所に適用されるので,不法就労であっても適用されます。


3 生活保護法は,就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されることはない。

これが正解です。

生活保護法は,永住権を有する永住外国人には適用されています。しかし就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されません。


4 国民年金法は,永住外国人に適用されることはない。

これも間違いです。

国民年金は,国民という名称がついていますが,日本が難民条約に批准したことで国籍要件が撤廃されています。そのため永住外国人にも適用されます。


5 国民健康保険法は,永住外国人に適用されることはない。

これも間違いです。国民健康保険法も難民条約の批准に伴い,国籍要件が撤廃されています。


<今日の一言>

1982年の難民条約の批准により,国民年金法,国民健康保険法,児童扶養手当法等から国籍要件が撤廃されました。

現在では,住民基本台帳法の改正で外国人登録制度が廃止となり,在留期間が3か月を超える外国人にも住民票が作成され,年金保険,国民健康保険の加入対象となっています。

年金保険は,帰国すると無駄になってしまうので,その場合は,脱退一時金を受け取ることができます。また社会保障協定を結んでいる国とは,日本で納付した分は母国でも認められます。

生活保護法は,社会保障関連法の中では数少ない国籍要件があるものです。ただし人道上の観点から永住外国人には行政上保護が実施されています。

最新の記事

子ども・子育て支援法

  子ども・子育て支援法は,これまでにも出題されてきましたが,正式に出題基準に含まれたのは,第37回国家試験です。 子ども・子育て支援制度は,市町村が実施主体になっています。 支給申請は,市町村に対して行います。 児童福祉法には,入所系があるので都道府県の役割がありますが,子ども...

過去一週間でよく読まれている記事