2018年11月20日火曜日

保健医療サービスにおける専門職の役割の徹底理解~その3

今回の問題は,第29回の問題です。

昨今の問題の作られ方であることを意識しながら問題を読んでください。


第29回・問題73 医療・福祉の専門職に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 理学療法士は,在宅患者への訪問リハビリテーションについても,医師の指示の下に実施しなければならない。

2 社会福祉士は,要介護者に福祉用具に関する助言を提供する場合,医師からの助言の下で実施しなければならない。

3 医師は,患者に対し治療上,薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合,薬剤師に処方箋を交付させなければならない。

4 言語聴覚士は,摂食機能に障害のある者への療法については,歯科衛生士の了承の下で実施しなければならない。

5 看護師は,臨時応急の手当てを行う際にも,医師又は歯科医師の指示の下に実施しなければならない。



それぞれの選択肢の文章の長さも語尾表現もそろえられています。

特に語尾をそろえられると問題の難易度が格段に上がります。

勘の良さでは解けないものとなり,知識があることが答えを引き出す絶対的条件となるからです。


それでは,解説です。


1 理学療法士は,在宅患者への訪問リハビリテーションについても,医師の指示の下に実施しなければならない。

これが正解です。

理学療法を実施する場合は,実施場所がどこであれ,医師の指示か必要です。


2 社会福祉士は,要介護者に福祉用具に関する助言を提供する場合,医師からの助言の下で実施しなければならない。

これは間違いです。

専門科目で出題してもよい問題だと思いますが,社会福祉士が行う業務として,社会福祉士及び介護福祉士法では,医師の指導や指示が必要だとされるものはありません。

精神保健福祉士は,「精神保健福祉士は、その業務を行うに当たって精神障害者に主治の医師があるときは、その指導を受けなければならない」と規定されています。

社会福祉士と精神保健福祉士とはここに違いがあります。

ただし,医療ソーシャルワーカー業務指針では「受診・受療援助は,医療と特に密接な関連があるので,医師の指示を受けて行うことが必要である」と規定されています。


3 医師は,患者に対し治療上,薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合,薬剤師に処方箋を交付させなければならない。

これも間違いです。

医師は処方箋を交付します。

しかし処方箋を交付するのは薬剤師に対してではなく,「患者又は現にその看護に当っている者」に対してです。


4 言語聴覚士は,摂食機能に障害のある者への療法については,歯科衛生士の了承の下で実施しなければならない。

これも間違いです。

まったくのでたらめです。このような規定はありません。


5 看護師は,臨時応急の手当てを行う際にも,医師又は歯科医師の指示の下に実施しなければならない。

これも間違いです。

臨時応急の手当てとは,緊急避難的に行う医療行為です。

診療の補助業務は医師の指示の下に実施しなければなりません。

しかし,緊急時に医師の指示を待っていては間に合わないために,臨時応急の手当ては医師の指示がなくても行うことが認められています。


<今日の一言>

かつての国試問題と近年の国試問題の作問方法は明らかに違ってきています。

かつては,言い回しが難しいため,勉強した人でさえ,点数が取れない問題でした。

しかし,近年はその反省のためなのか分かりませんが,言い回しはすっきりして,問題文も短くなっています。

そのため,勉強した人は点数が取れるものになりました。

一方,今日の問題のように,各選択肢の文字数と表現をそろえるようになってきています。

このことによって,勘で解けなくなっています。そのため,勉強が足りない人にとっては得点しにくくなっています。

受験生の得点分布は発表されていませんが,以前よりも得点分布は広がっていると考えられます。

これがずっと主張している

勉強した人が解ける
勉強が足りない人は解けない

という国試の秘密です。

別の言い方をすると,正しい勉強法で国試に合格できる知識をつけた人は,必ず報われる国試です。

言い回しで引っ掛けるような国試ではなく,知識のありなしで差がつく問題が作られているからです。

今は苦しい時だと思いますが,合格した明るい未来を想像しながら,勉強をすすめていきましょう。

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