今年受験された方は,なかなか勉強を再開する気にならない,という方も多いことと思います。
悔しくてショックで立ち上がれない,というのはそれだけ全力で国試に向かった証拠です。その悔しさは,必ず次のパワーになるはずです。
別な言い方をすれば,悔しさがないと合格に向けたパワーにつながらないと言えます。
何度か受験すると,これ以上何をすべきなのか分からないという方もいます。
しかし合格に向けてすべきことはたくさんあります。
分かりにくいところは調べてみる。
法制度は,法を読んでみる。
社会福祉士の国試に合格するために必要な知識は無限なわけではありません。
出題基準に示された内容に沿って,国試問題は作られているからです。
時々出題基準に示されていないものが出題されることもあります。
しかしそれはレアケース。
また,様々な報告書の内容が出題されています。
これらに目を通しておかなければならない,と思うと深みにはまります。
どのように出題されるか分からない内容を頭に入れるのは至難の業です。
学校の先生は,
報告者や白書に目を通しておきましょう!
と言うかもしれません。
それはその分野の専門家だから,報告書などを読めば,どこがポイントなのか分かるので,対応可能です。
しかし一般的な人は,それが分かりません。
そんなものに時間をかけるなら,参考書に記述されている内容を確実に覚えることに時間を費やした方が良いと思います。
合否は1・2点差で決まることが多いものです。
その点数で泣いた人は,あの報告書に目を通しておかなかったからだ,といった後悔もするかもしれません。
しかし本当に合否を分ける1・2点差を生み出しているのは,落ち着いて問題を読めば解けた問題です。あるいは,毎年出題されている内容です。
そこをかっちり覚えることが,合格ラインを超えるために必要です。
勉強不足の人が合格できる国試ではありません。
第31回問題です。
問題142 「平成28年度福祉行政報告例」(厚生労働省)における児童相談所の相談に関する統計の説明のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 児童相談所が対応した児童虐待相談件数は,10万件を超えている。
2 児童相談所が対応した虐待相談を虐待種別でみると,身体的虐待が最も多い。
3 児童相談所が対応した相談のうち,児童福祉法に基づく入所措置をとったものは3割程度である。
4 児童相談所が受け付けた相談の相談経路は,学校が最も多い。
5 児童相談所が受け付けた障害相談の内訳でみると, 肢体不自由相談が最も多い。
こういった出題があると,この報告書も目を通さなければ正解できないと思うかもしれません。
正解は選択肢1です。
正解した人は,消去法ではなく,確信をもってこれを正解にしたはずです。
なぜなら,これは参考書などに書かれていた内容だからです。
参考書に書かれているものには,
2 児童相談所が対応した虐待相談を虐待種別でみると,身体的虐待が最も多い。
書かれていないのは
3 児童相談所が対応した相談のうち,児童福祉法に基づく入所措置をとったものは3割程度である。
4 児童相談所が受け付けた相談の相談経路は,学校が最も多い。
5 児童相談所が受け付けた障害相談の内訳でみると, 肢体不自由相談が最も多い。
と整理することができます。
知識ゼロで考えなければならない選択肢が3つあると,難易度は増します。
しかし,先に述べたように,正解できた人は,自信を持って答えたはずです。
なぜなら,参考書にも書かれている内容に加えて,過去に出題されていた内容でもあるからです。
第28回・問題136 「平成25年度福祉行政報告例」(厚生労働省)における「児童相談所における児童虐待相談の対応件数」に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 平成25年度の児童虐待相談の対応件数は,約3万件である。
2 「相談種別」では,「性的虐待」が全体の3割を占めている。
3 「主な虐待者別」では,「実母」の方が「実父」よりも多い。
4 「相談の経路別」では,「虐待者本人」が全体の4割を占めている。
5 「被虐待者の年齢別」では,「中学生」と「高校生」を合わせたものが,全体の7割を占めている。
正解は,選択肢3です。
国試受験される方は,参考書の方に過去問も勉強することでしょう。
何度か繰り返すと,答えを覚えてしまいます。
そうすると,間違い選択肢は,スルーしてしまう可能性が高いです。
第28回と第31回国試問題を比べてみると,第28回国試で間違い選択肢として出題されたものが第31回国試では正解に焼き直して出題されていることが分かります。
これが,今まで主張してきた
国試は,少しずつ重なっていて,少しずつ違う
という意味です。
第31回問題では,答えが分からないと
3 児童相談所が対応した相談のうち,児童福祉法に基づく入所措置をとったものは3割程度である。
4 児童相談所が受け付けた相談の相談経路は,学校が最も多い。
5 児童相談所が受け付けた障害相談の内訳でみると, 肢体不自由相談が最も多い。
に意識がいってしまい,正解を選び出すのが極めて難しくなってしまいます。
参考書では,細かい数値まで記載され,しかも新しい参考書では最新の数値が記載されています。
しかし,国試で必要な知識は,大体の傾向で良いのです。
この場合は,10万件を超えているといったことです。
細かい数値を覚えれば覚えるほど,情報はすぐ古くなります。
参考書が作られてから,国試までの間には新しい数値が発表されるものもあります。
そうすると,どの数値を覚えたらよいのか分からなくなる人もいるでしょう。
数値はざっくり覚えるだけで良いです。どちらの数値でもなくざっくりで良いのです。
例えば50%を超えるのが超えないのか,といったことです。
年度によって順位が入れ替わるようなものは出題されたことがありません。
こういった覚え方のポイントは,過去にどのように出題されているのか知っているから言えます。
せっかく時間をかけて覚えても,ポイントがずれていたり,あいまいになるようでは,国試で得点するのは難しいです。
私たちチームfukufuku21は,本気で合格を目指す方のサポーター集団です。
国試以外のテーマは取り扱いません。
国試に合格するために必要な本物の情報を伝えていく予定です。
最新の記事
児童手当法と児童手当
今回は児童手当法と児童手当を学びます。 児童手当法,児童扶養手当法,特別児童扶養手当法は,児童扶養手当法(1961年),特別児童扶養手当法(1964年),児童手当法(1971年)の順で成立していきました。 児童手当法の児童の定義は,18歳に達する日以後の最初の3月31日までの...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
質的調査では,インタビューや観察などでデータを収集します。 その際にとる記録をフィールドノーツといいます。 一般的には,野外活動をフィールドワーク,野外活動記録をフィールドノーツといいます。 こんなところからも,質的調査は,文化人類学から生まれてきたものであることがう...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...
-
今回は,ピンカスとミナハンが提唱したシステム理論を取り上げたいと思います。 システム 内容 クライエント・システム 個人,家族,地域社会など,クライエントを包み込む環境すべてのも...
-
ヒラリーという人は,さまざまに定義される「コミュニティ」を整理しました。 その結果,コミュニティの定義に共通するものとして ・社会的相互作用 ・空間の限定 ・共通の絆 があることが明らかとなりました。 ところが,現代社会は,交通手段が発達し,SNSやインターネットなどによって,人...
-
今回は,ソーシャルワークにおけるエンゲージメントを取り上げます。 第30回の国試で出題されるまでは,あまり知られていなかったものです。 エンゲージメントは,インテーク(受理面接)とほぼ同義語です。 それにもかかわらず,インテークのほかにエンゲージメントが使われるようになった理由は...