今回は,実存主義アプローチを取り上げます。
実存主義アプローチは,
疎外感のあるクライエントに対して「人は人。あなたはあなた。人はどうであれ,あなたが存在していることに意味があるのです」と気づきを与え,疎外感からの解放を目指す援助法です。
国家試験でこのアプローチが出現したのは1回しかありませんが,実際には2回あります。
中高年の引きこもりが増加している中,ますます重要になるアプローチだと言えます。
それでは今日の問題です。
第25回・問題103 ソーシャルワークのアプローチに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 危機介入アプローチは,急性の心理的危機状態にあるクライエントに対して,新しい対処パターンを教示しつつ,長期処遇で対処能力を強化する。
2 実存主義アプローチは,実存主義思想による概念を用いて,クライエントが自らの存在意味を把握し,自己を安定させることで,疎外からの解放を目指す。
3 行動変容アプローチは,学習理論をソーシャルワーク理論に導入したもので,クライエントのコンピテンスの消去や強化により,問題行動全体の変容を図る。
4 解決志向アプローチは,社会変革のために,ソーシャルワーカーが解決イメージを提示しながら,解決方法を構築する。
5 フェミニストアプローチは,女性が体験している現実を自ら認識させ,個人が抱える問題の解決を意図した治療的なかかわりを支援の焦点とする。
この問題は,「魔の第25回国試」で出題された問題です。
フェミニストアプローチという聞き慣れないものが出題されているので,難易度が上がっています。
さて,正解は前回に予告したとおり,選択肢2です。
2 実存主義アプローチは,実存主義思想による概念を用いて,クライエントが自らの存在意味を把握し,自己を安定させることで,疎外からの解放を目指す。
前回の問題では,
利用者が他者とのつながりを形成し,疎外状態から解放されることに焦点を当てる。
と出題されています。
これでわかるのは,
実存主義アプローチの肝は,疎外感からの解放を目指すものであることです。
しっかり覚えておきましょう。
それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。
1 危機介入アプローチは,急性の心理的危機状態にあるクライエントに対して,新しい対処パターンを教示しつつ,長期処遇で対処能力を強化する。
危機介入アプローチは,課題中心アプローチと同様に短期処遇が特徴です。
3 行動変容アプローチは,学習理論をソーシャルワーク理論に導入したもので,クライエントのコンピテンスの消去や強化により,問題行動全体の変容を図る。
コンピテンスは「能力」と訳されます。
行動変容アプローチは,学習理論に基づくものであるのは正しいですが,消去や強化するのは,コンピテンスではなく,問題となる行動です。
4 解決志向アプローチは,社会変革のために,ソーシャルワーカーが解決イメージを提示しながら,解決方法を構築する。
解決志向アプローチは,社会変革を目指すものではなく,クライエントが抱える問題を解決するためのものです。またワーカーが解決イメージを提示するのではなく,クライエントとワーカーが協力して解決イメージを持ちます。
その時に,特徴的な質問の技法を用います。
5 フェミニストアプローチは,女性が体験している現実を自ら認識させ,個人が抱える問題の解決を意図した治療的なかかわりを支援の焦点とする。
フェミニストアプローチはこの時初めて出題されています。
そのため,参考書等には記載がなく,実際に受験した人はかなり焦ったことでしょう。
フェミニストアプローチは,エンパワメントアプローチの女性版です。
女性にとっての差別や抑圧などの社会的な現実を顕在化させ,個人のエンパワメントと社会的抑圧の根絶を目指した援助法です。
<今日の一言>
国試は,少しずつ重なっていて,少しずつ違う
同じような問題でも,少しずつ違うことを意味した言葉です。
今日の問題では,フェミニストアプローチが少しずつ違うところに当たります。
正解は,同じく選択肢2の実存主義アプローチだとしても,間違い選択肢の中に,このようなものを含めるだけで,受験生は混乱し間違います。
しかし多くの場合は,初めて出題されるものを正解にする時には,ほかの選択肢を消去できる選択肢で固められていることが多いものです。
中には,そういったパターンではない問題もあります。
そのような問題は誰も解けないので,解けなくてもよい問題となります。
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